幸楽苑 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

幸楽苑 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の外食チェーン企業です。主力事業としてラーメン店「幸楽苑」等を展開しています。2024年10月に完全子会社を吸収合併し、経営体制を一本化しました。直近の業績(単体)は売上高188億円、経常利益4億円となり、黒字化を果たしています。


※本記事は、株式会社幸楽苑 の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 幸楽苑ってどんな会社?


福島県発祥のラーメンチェーン「幸楽苑」を主力とし、製造から販売までを一貫して行う外食企業です。

(1) 会社概要


1954年9月に福島県会津若松市で「味よし食堂」として創業し、1970年に株式会社幸楽苑へ改組しました。2003年3月に東証一部(現プライム市場)へ上場を果たしています。2015年には持株会社体制へ移行しましたが、経営効率化のため2024年10月に事業子会社を吸収合併し、商号を現在の「株式会社幸楽苑」へ変更しました。

同社(単体)の従業員数は537名です。筆頭株主は創業家出身の代表取締役会長兼社長である新井田傳氏の資産管理会社と思われる株式会社ラニケアコーポレーションで、第2位は日本マスタートラスト信託銀行です。

氏名 持株比率
ラニケアコーポレーション 11.79%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.95%
アリアケジャパン 2.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表者は代表取締役会長兼社長の新井田傳氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
新井田 傳 代表取締役会長兼社長 1966年4月入社。1970年11月代表取締役専務、1978年9月代表取締役社長を経て、2023年6月より現職。
渡辺 秀夫 専務取締役管理本部長 1975年4月東邦銀行入行。2011年5月同社入社。総務部長、内部監査室長等を歴任し、2024年11月より現職。
芳賀 正彦 常務取締役営業本部長 1999年4月入社。各地区ディストリクトマネジャー、FC業態推進部長、財務経理部長等を歴任し、2025年4月より現職。
佐野 篤 取締役社長室長 2003年2月入社。社長室長、広報マーケティング部広報室長を経て一度退社。2024年2月再入社し、同年6月より現職。


社外取締役は、小河原佳子(武蔵丘短期大学教授)、鈴木廣明(元東邦土地建物代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ラーメン事業」および「その他の事業」を展開しています。

ラーメン事業


ラーメン、餃子等の製造および直販を行っています。主力ブランド「幸楽苑」をはじめとする店舗を展開し、一般消費者に飲食サービスを提供しています。

収益は、店舗を利用する顧客からの飲食代金等が主な源泉です。運営は株式会社幸楽苑(同社)が行っています。

その他の事業


フランチャイズ加盟店の募集や加盟店への食材・消耗品の販売、経営指導、店舗内装設計などを行うフランチャイズ事業を展開しています。また、洋・和食等を販売する外食事業も含まれます。

収益は、加盟店からのロイヤリティ収入や食材販売代金、およびその他外食店舗での飲食代金等です。運営は主に株式会社幸楽苑(同社)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第55期より完全子会社を吸収合併し非連結決算へ移行したため、前期までの連結数値と単純比較はできませんが、第55期は最終黒字を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 266億円 250億円 255億円 268億円 188億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 -10億円 15億円 -15億円 -1億円 4億円
利益率(%) -3.6% 5.8% -6.0% -0.4% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 -6億円 -39億円 -5億円 8億円


※第55期(2025年3月期)は単体(非連結)の数値です。

(2) 損益計算書


第55期より非連結決算のため、前連結会計年度との単純比較はできませんが、第55期単体では営業利益4億円を計上し、黒字化しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 268億円 188億円
売上総利益 68億円 105億円
売上総利益率(%) 25.6% 55.8%
営業利益 -1億円 4億円
営業利益率(%) -0.5% 2.4%


※2024年3月期は連結、2025年3月期は単体の数値です。

販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が42億円(構成比41%)、賃借料が13億円(同13%)を占めています。売上原価においては、当期製品製造原価が45億円(構成比54%)、当期店舗材料等仕入高が40億円(同48%)を占めています。

(3) セグメント収益


報告セグメントは「ラーメン事業」のみであり、売上の9割以上を占めています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ラーメン事業 - 181億円
その他の事業 - 8億円
連結(合計) - 188億円


※第55期より非連結へ移行したため、前期比較は記載していません。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11億円 20億円
投資CF 4億円 0.3億円
財務CF -7億円 9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.8%で市場平均とほぼ同じ水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「原点回帰」を経営方針に掲げています。外食の原点である「魅力のある商品作りとメニューの絞り込み」、「全店舗のQSC立て直し」、「安全安心な食事環境の提供」に取り組んでいます。また、店舗ひとつひとつを社会インフラと考え、地域社会の発展に貢献することで企業価値を高め、地域に必要とされる企業を目指しています。

(2) 企業文化


中期経営ビジョンとして「幸楽苑レジリエンス(幸楽苑の回復力)」を掲げており、逆境からの回復や強靭さを重視する姿勢が見られます。地域社会に密着し、安全安心な食事環境を提供することを通じて、顧客満足と地域貢献を両立させる文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を初年度とする中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)を策定し、中期経営ビジョン「幸楽苑レジリエンス」の実行を目指しています。具体的な数値目標として、サステナビリティ関連では2028年3月期に以下の目標を掲げています。

* 年間売上高あたりのCO2削減量:2025年3月期比6%削減
* 店舗食品廃棄物リサイクル率:30%
* 店長級以上に占める女性の割合:20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の初年度となる今期は、「幸楽苑レジリエンス」を着実に実行し、調達資金を活用した投資戦略を推進します。具体的には、ブランドイメージ強化のための店舗改装、営業時間延長や新規出店に対応するための工場生産能力拡大、ネットワーク及びシステムの再構築を実施します。また、金利上昇局面に対応した借入金残高の適正化による金融コスト低減にも努めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員だけでなくパートナー従業員に対してもモチベーション向上と勤務時間の適正化を図り、心身の健康確保とワーク・ライフ・バランスの実現を目指しています。また、人材の多様性確保のため、女性従業員の継続就業環境の整備や、パートナー従業員の正社員登用を積極的に推進しています。長時間労働の是正やハラスメント防止対策にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.1歳 14.4年 4,926,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.5%
男性育児休業取得率 16.7%
男女賃金差異(全労働者) 76.1%
男女賃金差異(正規) 76.8%
男女賃金差異(非正規) 146.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、店長級以上に占める女性の割合(14%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業内容について


同社はラーメン事業への依存度が高く、売上高の大部分を占めています。そのため、国内外の景気悪化や電力供給事情の悪化、あるいは同社固有の問題発生等により、当該事業の展開に支障が生じた場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 営業戦略について


店舗展開エリアが東北・関東に集中しており、ドミナント出店方式を採用しています。消費者嗜好の変化や自社競合の発生等により営業戦略の変更を余儀なくされる可能性があります。また、主力ブランド「幸楽苑」が事業の大部分を占めていることによるリスクもあります。

(3) 出店政策について


直営店を主体とした出店継続を計画しており、店舗新設資金は自己資金や借入金等で調達予定です。新設店舗が計画通りの収益を上げられず投資回収が遅れた場合、有利子負債の負担増などにより業績に悪影響を与える可能性があります。

(4) 食材の生産体制及び仕入体制等について


麺や餃子等の主要食材は郡山工場と小田原工場の2工場で集中生産しています。店舗展開に伴う生産量増大や物流コスト増、工場でのトラブルによる生産能力低下、あるいは原材料価格の高騰などが業績に影響を与える可能性があります。また、出店計画の遅れによる工場の稼働率低下リスクもあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。