※本記事は、株式会社安楽亭 の有価証券報告書(第47期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 安楽亭ってどんな会社?
埼玉県を拠点に、焼肉レストラン「安楽亭」やステーキハウス等を展開する外食チェーン企業です。
■(1) 会社概要
1978年に設立され、1997年にイタリアン等の新業態開発を行う子会社アン情報サービスを設立しました。2000年に東証二部(現スタンダード)へ上場を果たしています。2020年には「ステーキのどん」等を運営するアークミールを完全子会社化し、事業規模を拡大しました。2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は462名、単体従業員数は163名です。筆頭株主は代表取締役社長一族の資産管理会社である豊山開発で、第2位も同様に一族の資産管理会社である北与野エステートです。第3位には代表取締役社長が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 豊山開発 | 11.60% |
| 北与野エステート | 4.58% |
| 柳 先 | 4.42% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は柳先氏が務めています。社外取締役比率は約22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柳 先 | 代表取締役社長 | 2000年同社入社。アン情報サービス社長などを経て、2019年より現職。アークミール社長を兼任。 |
| 柳 允 | 常務取締役商品本部長 | 2001年同社入社。サリックスマーチャンダイズシステムズ社長などを経て、2022年より現職。 |
| 青 木 茂 雄 | 取締役営業副本部長 | 2001年同社入社。営業本部長、運営本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 日比野 健朗 | 取締役東海エリア部長 | 2010年同社入社。静岡エリア次長などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、河合明弘(公認会計士・税理士)、蒲島竜也(社会保険労務士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「安楽亭・七輪房業態」「アークミール業態」および「その他」事業を展開しています。
■安楽亭・七輪房業態
郊外型で開放的な空間にてリーズナブルな価格で焼肉を提供する「安楽亭」と、個室を多く配置し落ち着いた空間で高単価な食事を提供する「七輪房」を展開しています。ファミリー層などを主な顧客としています。
飲食代金として顧客から収益を得るモデルです。運営は主に同社および連結子会社3社が行っています。自社工場での加工や物流網を活用し、安全で安価な商品提供を行っています。
■アークミール業態
「ステーキのどん」、「しゃぶしゃぶどん亭」、「フォルクス(ステーキ)」のレストラン事業を展開しています。ステーキやしゃぶしゃぶなどの専門性の高いメニューを提供しています。
飲食代金として顧客から収益を得るモデルです。運営は連結子会社である株式会社アークミールが行っています。
■その他業態
上記業態とは異なるコンセプトの焼肉レストランや、中華料理店「上海菜館」、喫茶店「カフェビーンズ」などを運営しています。また、ベトナムにおいて焼肉レストラン事業を展開しています。
飲食代金として顧客から収益を得るモデルです。運営は同社、連結子会社および安楽亭ベトナム有限責任会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は回復・増加傾向にあり、300億円台で推移しています。経常損益は赤字の時期もありましたが、直近2期は黒字化し、利益額も拡大しています。一方、当期利益は変動が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 265億円 | 235億円 | 286億円 | 303億円 | 304億円 |
| 経常利益 | -8億円 | 9億円 | 2億円 | 13億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | -2.9% | 3.7% | 0.9% | 4.3% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5億円 | -1億円 | -6億円 | 0.5億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は微増しており、原価率の改善などにより売上総利益も増加しています。営業利益は横ばいで推移しており、安定した収益性を維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 303億円 | 304億円 |
| 売上総利益 | 188億円 | 189億円 |
| 売上総利益率(%) | 62.1% | 62.3% |
| 営業利益 | 15億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 4.8% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が78億円(構成比45%)、地代家賃が34億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の安楽亭・七輪房業態は減収となったものの、アークミール業態が増収となり全体を支えました。利益面でもアークミール業態が大きく貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 安楽亭・七輪房業態 | 122億円 | 114億円 |
| アークミール業態 | 176億円 | 186億円 |
| その他業態 | 5億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 303億円 | 304億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 25億円 | 13億円 |
| 投資CF | -7億円 | -3億円 |
| 財務CF | 7億円 | 12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「食を通じて地域社会の豊かな生活文化の向上に貢献する」という理念を掲げています。顧客の要望に適う、魅力あふれる「安全・健康」に配慮した商品を、心をこめた「おもてなし」のサービスにより提供することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
顧客から信頼される地域サービスの提供者として、継続的な発展を追求するとともに、企業活動に関わる多くの人々の喜びを実現できる企業になることを目指しています。また、明確な目的感を持った組織構築と、それを支える多様な人材の確保と育成を進めています。
■(3) 経営計画・目標
株主の期待に応えるべく株主資本利益率(ROE)の向上を目標としています。また、利益については、売上高営業利益率を経営指標とし、安定的、継続的な利益を確保し企業価値を高めていくことを基本的な責務と考えています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「外部環境の変化への対応と店舗営業力の強化」および「社会的責任への対応」を2大方針としています。コストパフォーマンスの高い外食体験の提供を重視し、業態のブラッシュアップや開発に注力する方針です。また、設備投資と人的投資を計画的に推し進め、新たな時代のニーズに応える商品・サービス・店舗デザインを創出します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の確保と育成を経営の最重要課題と位置づけ、お客様第一主義に徹した人材育成を重視しています。多様な人材の確保に関しては、性別・国籍・採用ルート・勤続年数等の制約を設けず、能力や適性により管理職登用を行う方針です。また、人事制度の刷新やIT支援導入による労働環境改善にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.8歳 | 9.6年 | 4,393,062円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.1% |
| 男性育児休業取得率 | 71.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 104.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食の安全・安心
食材の安全性確保やトレーサビリティ情報の提供に取り組んでいますが、BSE問題や食中毒事故など、食の安全に対する顧客心理に悪影響を与える事態が発生した場合、風評被害等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 大規模災害、天候不順等
グループ工場を中心とした製造・物流体制を構築していますが、災害等でこれらの機能が停止した場合、店舗運営に支障が出る可能性があります。また、天候不順による原材料価格の高騰や調達難が生じた場合も、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人材の確保と育成
人材の確保と育成を最重要課題としていますが、計画通りに人材を確保・育成できなかった場合、サービスの質の低下などを招き、将来の成長や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 財務体質
ロードサイドを中心とした多店舗展開に伴い、設備投資資金を借入金で調達しているため、借入依存度が高い水準にあります。金利変動や金融市場の動向によっては、金利負担の増加等により業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



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