※本記事は、株式会社ワークマン の有価証券報告書(第44期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ワークマンってどんな会社?
作業服・作業用品の専門店として国内トップシェアを誇る企業です。フランチャイズシステムによるローコスト経営と、高機能・低価格なPB商品で成長を続けています。
■(1) 会社概要
1982年に作業服及び作業用品の専門小売業として設立されました。1997年に店頭登録、2004年にジャスダック上場を果たし、現在は東証スタンダード市場に上場しています。2018年には一般客向けの新業態「ワークマンプラス」、2020年には「#ワークマン女子」を展開し、市場を拡大。2025年3月期末時点で全国に1,051店舗を展開しています。
単体従業員数は417名です。筆頭株主はベイシアグループの資産管理会社であるベイシア興業、第2位は創業家出身の土屋裕雅氏、第3位はグループ会社でホームセンターを運営するカインズとなっています。同社はベイシアグループの中核企業の一つです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ベイシア興業 | 28.23% |
| 土屋裕雅 | 14.09% |
| カインズ | 9.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は小濱英之氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小濱英之 | 代表取締役社長 | 1990年入社。商品部やスーパーバイズ部の要職を歴任し、商品部海外商品部長、執行役員商品部長などを経て、2019年より現職。 |
| 土屋哲雄 | 専務取締役 | 三井物産入社後、三井情報取締役などを経て2012年に同社顧問就任。常務取締役として情報システムやロジスティクス等を担当し、2019年より現職。 |
| 飯塚幸孝 | 取締役 | 1989年入社。財務部一筋でキャリアを重ね、財務部長代理、執行役員待遇財務部長などを経て、2017年より現職。 |
| 大内康二 | 取締役 | 1996年入社。スーパーバイズ部ブロック長代理や商品部部長代理を経て、執行役員商品本部長を務め、2025年より現職。 |
社外取締役は、濱屋理沙(映像クリエイター・同社公式アンバサダー)、堀口均(弁護士)、信澤山洋(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社は、「小売事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 小売事業
作業服、作業用品、アウトドア・スポーツウエア、カジュアルウエア等を販売しています。主要顧客はプロの職人ですが、近年は高機能・低価格な商品を求める一般消費者へも客層を拡大しています。商品は「ワークマン」「ワークマンプラス」「#ワークマン女子」などの店舗ブランドで展開され、全国47都道府県に店舗網を持っています。
収益は主に、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入(ワークマン・チャージ収入)と、加盟店への商品供給による売上から成り立っています。また、一部の直営店における小売売上も収益源です。運営は同社が行っており、製造は中国やASEAN諸国の協力工場へ委託するSPA(製造小売)に近い形態をとっています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上規模(営業総収入)の拡大が続いています。物価高や為替の影響を受けつつも、PB商品の拡充や新業態の展開により増収基調を維持しています。利益面でも、経常利益は240億円前後で安定的に推移しており、高い利益率を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業総収入 | 1,058億円 | 1,163億円 | 1,283億円 | 1,327億円 | 1,369億円 |
| 経常利益 | 254億円 | 274億円 | 247億円 | 237億円 | 249億円 |
| 利益率(%) | 24.0% | 23.6% | 19.2% | 17.8% | 18.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 170億円 | 183億円 | 167億円 | 160億円 | 169億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。営業総収入は増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。営業利益も増益となりましたが、出店やシステム投資に伴う販管費の増加も見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業総収入 | 1,327億円 | 1,369億円 |
| 売上総利益 | 472億円 | 512億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.6% | 37.4% |
| 営業利益 | 231億円 | 244億円 |
| 営業利益率(%) | 17.4% | 17.8% |
販売費及び一般管理費のうち、地代家賃が70億円(構成比26%)、業務委託費が44億円(同16%)、減価償却費が30億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は小売事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略されていますが、全体の傾向としては、PB商品の拡充と新業態店舗の出店効果により、チェーン全店売上高および営業総収入ともに増加しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 小売事業(全体) | 1,327億円 | 1,369億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 152億円 | 248億円 |
| 投資CF | -90億円 | -299億円 |
| 財務CF | -57億円 | -57億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「声のする方に、進化する。」を経営理念とし、常にお客様の立場に立った商品・サービスの提供を目指しています。「Dream(めざす姿)」として「お客様の声を経営に活かします」、「Purpose(存在意義)」として「機能と価格に新基準を実現し、生活者の『可処分所得』を増やします」を掲げています。
■(2) 企業文化
「Belief(価値観、行動指針)」として、「ローコスト経営、データ経営、標準化」を柱に掲げています。これらを通じて100年の競争優位を築き、全てのステークホルダーとの長期的な優良関係を目指すことを重視しています。「共存共栄」の精神で、加盟店や取引先と共に発展することを目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
フランチャイズ経営を基本とする収益基盤において、加盟店の業績向上とフランチャイズ・ストア化の推進を最重要課題としています。具体的な経営指標としては、以下の数値を重視し、目標として掲げています。
* 既存店売上高の伸び率:当期実績 1.1%増
* フランチャイズ比率:当期実績 92.7%
■(4) 成長戦略と重点施策
客層拡大と顧客満足度向上による持続的成長を目指し、店舗展開、商品政策、販売政策、加盟店支援策、物流政策の5つを柱としています。特に、ワークマンカラーズ等の新業態出店や既存店改装による一般客層の取り込み、PB商品の拡大と「エブリデー・ロー・プライス」戦略の推進に注力しています。
* データ経営による需要予測と在庫適正化
* 物流インフラへの継続投資によるコスト抑制
* アンバサダーマーケティングの推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「データ経営」を支えるため、社員のデータ活用力の底上げに注力しています。全社員を対象とした基礎的なデータ分析教育に加え、統計学やAI等の専門教育も実施し、社内マイスター認定者制度を設けるなど、自律的に学び実践できる環境整備を進めています。エンゲージメントを高め、自然体で成果を生む組織構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.0歳 | 11.5年 | 7,706,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 1.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 57.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 49.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 76.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 53.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者比率(15.1%)、加盟店再契約率(95.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 商品の仕入体制について
PB商品を含む多くの商品を中国やASEAN諸国で生産・輸入しています。特定の国への依存度が高いため、地政学的リスクや感染症等により輸入に支障が生じた場合、代替調達に時間を要し、販売機会の損失等により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 異常気象による影響
取り扱い商品には季節性の高い衣料品や雨具類が含まれるため、冷夏や暖冬、空梅雨などの異常気象が発生した場合、需要が低下し、売上の減少や過剰在庫の発生を招く可能性があります。これにより経営成績に悪影響が生じるリスクがあります。
■(3) 流行の変化による影響
アウトドア・スポーツ及びカジュアル商品は一般消費者が主要ターゲットであり、プロ向け商品に比べて流行や嗜好の変化が早いです。これらの変化に対応できない場合、在庫の増加や値下げ販売の増加を招き、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) 仕入価格の変動リスク
売上の約7割を占めるPB商品は概ね海外からの直接仕入であり、為替変動の影響を受けます。為替予約等の対策は講じていますが、想定以上の円安進行や原材料価格、海上輸送費の高騰が生じた場合、仕入コストの上昇を吸収しきれず、業績に影響が出る可能性があります。



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