ヤマノホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマノホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。美容、和装宝飾、教育、DSM(訪問販売)等の事業を展開。直近の決算では、不採算店舗の閉鎖や拠点統廃合の影響があったものの、教育事業の伸長等により売上高は微増収となり、各利益段階で大幅な増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ヤマノホールディングス の有価証券報告書(第39期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマノホールディングスってどんな会社?

美容室や和装宝飾品の販売、訪問販売、学習塾経営など、生活に関連する多角的な事業を展開する企業グループです。

(1) 会社概要

1987年にかねもり株式会社として設立され、1990年に合併を経て現在の法人格となりました。2001年に持株会社体制へ移行し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しています。2006年に現社名へ変更しました。近年ではM&Aを積極的に推進し、学習塾やリユース事業など新たな領域へ事業を拡大しています。

連結従業員数は545名、単体では222名です。筆頭株主はグループ中核企業のヤマノネットワークであり、第2位は同社代表取締役社長の山野義友氏、第3位は化粧品製造販売を行うヤマノビューティーメイトグループとなっています。創業家および関連企業が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
ヤマノネットワーク 13.70%
山野義友 10.90%
ヤマノビューティーメイトグループ 9.70%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長CEOは山野義友氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山野義友 代表取締役社長CEO 2002年ヤマノリテーリングス社長。2010年同社社長就任。グループ各社の会長・社長を歴任し、2025年より薬師スタジオ社長等を兼務。
岡田充弘 取締役専務執行役員管理本部長 1983年入社。連結管理部長、執行役員管理副本部長などを経て、2019年より現職。グループ各社の取締役を兼務。
山野功子 取締役社主 1971年ヤマノビューティメイト設立に参加。1995年同社代表取締役社主。2017年より現職。ヤマノエステティック総合学院学長等を兼務。


社外取締役は、松尾茂(元日本電産CFO戦略室長)、公文裕子(元株式会社エックスワン取締役副社長)、成島由美(元株式会社ベネッセコーポレーション取締役常務執行役員)です。

2. 事業内容

同社グループは、「美容事業」「和装宝飾事業」「DSM事業」「教育事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 美容事業

美容室およびネイルサロンの運営を行っており、ヘアカットやネイルケアなどのサービスを提供しています。

サービスの対価として顧客から施術料等を受け取っています。運営は主に連結子会社のヤマノプラスが行っています。

(2) 和装宝飾事業

呉服や和装小物、宝飾品、時計、毛皮などを扱う専門店を全国にチェーン展開し、販売を行っています。

商品の販売代金が主な収益源です。運営は同社の和装関連部門、宝飾関連部門および連結子会社のすずのきが行っています。

(3) DSM事業

家電製品、洋装品、宝飾品、健康関連商品などを取り扱う訪問販売および催事販売を行っています。

商品の販売代金が主な収益源です。運営は同社の訪問販売・催事販売関連部門が行っています。

(4) 教育事業

個別指導塾などの学習塾経営を行っています。

生徒からの授業料などが主な収益源です。運営は連結子会社のマンツーマンアカデミー、東京ガイダンス、および灯学舎が行っています。

(5) その他の事業

前払式特定取引業、古着の買取・販売(リユース事業)、着物の着付に関する普及・検定などを行っています。

手数料収入や商品販売代金などが収益源です。運営はヤマノセイビング、OLD FLIP、一般社団法人日本技術技能教育協会などが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は127億円から140億円の間で推移しており、緩やかな増加傾向にあります。経常利益は黒字を維持していますが、当期利益は変動が見られます。直近の2025年3月期は、既存事業の収益安定化策などが機能し、売上高、経常利益ともに増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 127億円 132億円 139億円 138億円 140億円
経常利益 3.3億円 2.7億円 2.9億円 1.0億円 2.4億円
利益率(%) 2.6% 2.0% 2.1% 0.7% 1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -4.0億円 1.1億円 2.1億円 0.6億円 -1.4億円

(2) 損益計算書

直近2期間の傾向を見ると、売上高は微増しており、売上原価率も同程度で推移しています。販管費の抑制等により営業利益率は改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 138億円 140億円
売上総利益 70億円 71億円
売上総利益率(%) 50.8% 50.6%
営業利益 1.0億円 2.6億円
営業利益率(%) 0.7% 1.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が27億円(構成比39%)、賃借料が7億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益

各セグメントの状況を見ると、和装宝飾事業が売上の大半を占めており、安定した収益基盤となっています。教育事業は増収基調で成長しており、M&Aによる拡大が寄与しています。一方、DSM事業は減収傾向にありますが、コスト管理の強化等により効率化を進めています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
美容 19億円 18億円
和装宝飾 96億円 96億円
DSM 9億円 8億円
教育 12億円 15億円
その他 3億円 3億円
調整額 0.0億円 0.0億円
連結(合計) 138億円 140億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資や借入返済に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.1億円 3.8億円
投資CF 0.1億円 -1.3億円
財務CF -8.1億円 -5.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も16.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「美道五原則 髪・顔・装い・精神美・健康美」に基づく事業の拡大を図るとともに、事業を通じて社会課題の解決へ向けた貢献を目指しています。また、ミッションを「豊かさと彩りあるライフスタイルを創造し続けます」、ビジョンを「従業員が投資したくなる会社へ」と定めています。

(2) 企業文化

同社グループは、企業理念である美道に基づき、対象企業と従業員全員を受け入れる友好的な「Win-WinのM&A」を数多く成功させてきた実績を持ちます。創業以来培ってきた顧客ネットワークと豊富なノウハウを活かし、事業承継型M&Aを通じて地域経済を支える中小企業との共創パートナーシップを推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標

同社は「中期経営計画~Tsunageru2027~」を発表し、2030年をゴールとしたビジョンの実現を目指しています。2025年3月期からの3年間を経営基盤のさらなる充実を図る期間と位置づけ、既存事業の収益安定化や最終利益の黒字化などを目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策

事業ポートフォリオの最適化を掲げ、事業を成長牽引領域の「ニューバリューセグメント」(教育・リユース・フォト等)と安定収益領域の「コアバリューセグメント」(和装宝飾・美容等)に再編します。また、「事業承継型M&A」を推進し、地域経済を支える中小企業とのパートナーシップを通じて事業の戦略的拡充を図ります。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

多様な社員が能力を発揮できる「人的資本経営方針」を掲げ、公平な機会提供と評価を行う「人財育成方針」、個性が活躍できる「社内環境整備方針」を定めています。これらに基づき、次世代マネジメント人財の育成や、従業員のモチベーションを高める制度・環境の整備に注力し、人的資本の最大活用を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 51.3歳 12.6年 3,719,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.1%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 61.7%
男女賃金差異(正規雇用) 65.9%
男女賃金差異(非正規) 63.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、店長職比率(19.3%)、副店長職比率(70.8%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業績変動のリスク

同社グループの事業は成熟産業に属しており、特に和装品や宝飾品は高額品のため、景気後退や消費性向の変化による需要縮小の影響を受けやすい特性があります。また、気象状況や災害等により売上が見込める時期の業績が伸び悩む可能性があります。

(2) 法的規制への対応

和装品、宝飾品、健康関連商品等の訪問販売を行っており、「特定商取引に関する法律」の規制を受けています。将来、訪問販売に関する規制が強化されるような法改正が行われた場合、現在の販売体制の効率性を維持できなくなり、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 顧客情報の管理

商品・サービスの販売過程で多くの顧客情報を取り扱っています。社内教育やIT統制により管理を徹底していますが、万が一情報の流出等の問題が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。