ユナイテッドアローズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユナイテッドアローズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユナイテッドアローズは東京証券取引所プライム市場に上場し、紳士服や婦人服など衣料品および関連商品の企画・販売を主力事業として展開しています。店舗とオンラインを融合した販売戦略や高付加価値な商品展開により、直近の業績は売上高および各利益項目において前年を上回る増収増益を達成し、堅調な成長を続けています。


※本記事は、株式会社ユナイテッドアローズの有価証券報告書(第37期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ユナイテッドアローズってどんな会社?


ユナイテッドアローズは、衣料品や関連商品の企画・販売を通じ、新しいライフスタイルを提案する企業です。

(1) 会社概要


1989年に設立され、翌1990年にユナイテッドアローズ第1号店をオープンしました。1999年にはグリーンレーベル リラクシングを展開開始し、同年に日本証券業協会へ店頭登録、その後2003年に東証一部へ上場しました。近年は海外展開を進め、2013年に台湾、2019年に中国へ子会社を設立したほか、直近の2026年にはTELMAを設立し、持株会社体制への移行に向けた準備を進めています。

同社グループの従業員数は連結で3,904名、単体で3,825名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は個人株主の重松理氏となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.01%
日本カストディ銀行(信託口) 11.87%
重松 理 8.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員 CEOは松崎善則氏が務めています。また、取締役の50.0%を社外取締役が占めています。

氏名 役職 主な経歴
松崎 善則 代表取締役社長執行役員 CEO 1998年同社入社。UA本部販売部長、第一事業統括本部BY本部長、取締役副社長執行役員などを歴任し、2021年4月より現職。
中澤 健夫 取締役専務執行役員 CFO 2004年同社入社。管理本部財務経理部長、執行役員CFO管理本部長、取締役常務執行役員CFOなどを歴任し、2026年4月より現職。
田中 和安 取締役専務執行役員 COO 2008年同社入社。UA本部長、営業統括本部長、取締役常務執行役員開発本部長などを歴任し、2026年4月より現職。


社外取締役は、西脇徹(元マツオカコーポレーション代表取締役副社長CSO)、倉橋雄作(倉橋法律事務所代表弁護士)、鷹野志穂(元ロクシタンジャポン代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、衣料品小売事業の単一セグメントで事業を展開しています。

トレンドマーケット向け事業

ユナイテッドアローズやビューティー&ユースなどのブランドを通じ、大人に向けたドレス軸のライフスタイルや、品位と清潔感に裏付けられた美しさを提案するセレクトショップを展開しています。高感度・高付加価値な商品を求める顧客層が主なターゲットです。
収益源は、実店舗およびオンラインストアにおける衣料品や身の回り品などの販売代金です。同事業の運営は主に同社が行っているほか、海外市場においては台湾聯合艾諾や悠艾(上海)商貿などの子会社が展開を担っています。

ミッド・トレンドマーケットおよびアウトレット事業

グリーンレーベル リラクシングやシテンなどのブランドを展開し、ほどよいトレンド感のあるビジネス・カジュアルウェアや生活雑貨を提供しています。また、同社グループのブランドが一堂に並ぶアウトレット店舗も運営し、幅広い顧客層へアプローチしています。
主な収益源は、来店客やオンラインユーザーからの商品販売代金です。同事業の運営は同社が主体となって進めているほか、台湾市場においては子会社である台湾聯合艾諾が展開を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は継続的な増加傾向にあり、堅調なトップラインの成長が確認できます。利益面でも、一時的な落ち込みから回復したのちは増益基調が続いており、経常利益率も5%台後半で安定的に推移しています。当期においては売上高・利益ともに過去数年で最も高い水準を記録しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,184億円 1,301億円 1,343億円 1,509億円 1,646億円
経常利益 28億円 69億円 75億円 85億円 93億円
利益率(%) 2.4% 5.3% 5.6% 5.7% 5.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -7億円 45億円 50億円 45億円 61億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益の双方が順調に増加しています。特に売上総利益率は改善傾向にあり、定価販売の強化や精緻な価格設定による原価率上昇の抑制が奏功し、収益性の向上が図られています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,509億円 1,646億円
売上総利益 786億円 862億円
売上総利益率(%) 52.1% 52.4%
営業利益 80億円 91億円
営業利益率(%) 5.3% 5.5%


販売費及び一般管理費のうち、賃借料が216億円(構成比28.1%)、給与及び手当が174億円(同22.5%)、業務委託費が72億円(同9.4%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金を元手に、借入等による資金調達も交えながら積極的な投資を行っている「積極型」の状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 71億円 56億円
投資CF -62億円 -96億円
財務CF -7億円 8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「日本の生活文化のスタンダードを創造することで社会に貢献する」という設立の志を経営理念として掲げています。また、「お客様価値」「従業員価値」「取引先様価値」「社会価値」「株主様価値」の5つの価値創造を包含しており、すべてのステークホルダーの価値を高め、社会の公器として生活文化の向上に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


「真心と美意識をこめてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける」ことを重視しています。従業員一人ひとりが理念実現に必要な人的資本(メンバー)として位置づけられ、自律的にGPDCAを回し続ける「創造的商人」を目指す文化が根付いています。多様な個性を持つメンバーが共通の志に向かい、透明性の高い評価と直接対話を通じて活気に溢れる社内環境を形成しています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン達成に向け、2029年3月期を最終年度とする中期経営計画2026-2028「日本が誇る世界に向けた高感度・高付加価値グループになる」を策定しています。中高価格帯マーケットにおける業容と顧客層の拡大を進め、連結業績の飛躍的な成長を目指しています。

・連結売上高 1,850億円~1,950億円
・連結営業利益 115億円~125億円
・ROE 14.3%~15.7%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、3つの戦略を推進しています。「高感度顧客満足No.1ブランドになる」をテーマに既存事業を中心とした国内アパレル市場でのシェア拡大を図るほか、「高感度顧客を世界に広げる」として中国や台湾等を中心とする海外出店の拡大を進めます。さらに「高感度顧客との新たな接点を築く」ため、M&Aも視野に入れたアパレル以外のライフスタイル領域の開拓に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は持続的な企業価値向上のため、従業員を最も重要な経営資本と位置づけています。エンゲージメント調査を定点観測し、経営との対話や教育機会への投資を重点的に行っています。人材への投資と企業価値向上が相互に循環する成長サイクルを構築し、自律的に学び挑戦し続ける「創造的商人」を育成・輩出していくことを人事戦略の中核に据えています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.7歳 10.2年 5,020,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 27.9%
男性育児休業取得率 71.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 80.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(eNPS)(-45.6)、従業員意識調査 肯定的回答率(73.8%)、行動規範同意書の取得率(77.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材獲得競争と人的資源の確保

新しいライフスタイルや購買行動のオンライン化が進む中、新規事業開発やデジタル領域に長けた優秀な人材の確保が重要となっています。労働需給の逼迫によって店舗人材の確保も難しくなっており、戦略に適合した人材採用や育成が計画通りに進まない場合、経営目標の達成に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外調達にともなう為替・カントリーリスク

世界各国から商品を調達しており、外貨建て取引における為替相場の変動(円安)により仕入価格が高騰するリスクがあります。また、中国やアセアン地域などの主要生産拠点における政治・経済情勢の悪化や地政学リスクの高まりが、サプライチェーンや事業継続に影響を与える懸念があります。

(3) 事業多角化とポートフォリオ構築の成否

国内アパレル市場の緩やかな縮小を見据え、M&Aやアライアンスを活用して非アパレル分野も含めた事業の多角化を進めています。しかし、関連領域における専門人材やノウハウの不足により新規事業開発が停滞し、期待するシナジー効果や理想的な事業ポートフォリオを構築できないリスクが存在します。

(4) OMO推進にともなう情報インフラの安定稼働

実店舗とオンラインを融合させたOMO戦略を推進し、会員プログラムに多数の個人情報を保有しています。サイバー攻撃やシステム障害により機密情報の漏洩が発生したり、ECサイトや物流ネットワークの継続的な運用が困難になったりした場合、ブランドイメージの低下や業績悪化につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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