ぴあ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ぴあ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ぴあは東京証券取引所プライム市場に上場し、音楽やスポーツ等のチケット販売を中心とするレジャー・エンタテインメント関連事業を単一セグメントで展開しています。当期は大規模公演等のチケット販売が好調に推移した結果、取扱高ベースでの売上は過去最高水準となり、各利益項目においても過去最高益を更新し増収増益となりました。


※本記事は、ぴあ株式会社 の有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ぴあってどんな会社?


日本初のコンピュータネットワークによるチケット販売システムを確立したエンタメ企業です。

(1) 会社概要


同社は1972年、大学生であった創業メンバーによる情報誌「ぴあ」の創刊から始まりました。1974年に設立され、1984年には日本初のコンピュータオンラインネットワークによるチケット販売サービス「チケットぴあ」を開始しました。2002年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌年には同第一部へ指定替えを果たしています。

現在の従業員数は連結で621名、単体で437名です。筆頭株主は創業者であり現代表取締役社長の矢内廣氏が務めています。第2位株主には業務・資本提携を結ぶセブン&アイ・ホールディングス、第3位株主にはTOPPANが名を連ねており、事業会社と強固な協力関係を築きながらエンタテインメント事業を展開しています。

氏名 持株比率
矢内廣 19.59%
セブン&アイ・ホールディングス 9.02%
TOPPAN 6.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長は矢内廣氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
矢内廣 代表取締役社長 1974年の同社設立と同代表取締役社長に就任。以来同社の成長を牽引し、2003年より代表取締役会長兼社長、2006年より現職。
木本敬巳 取締役副社長 1987年同社入社。電子チケット事業本部長やライブ・エンタテインメント本部長等を歴任し、2019年に専務取締役、2022年より現職。
吉澤保幸 専務取締役 1978年日本銀行入行後、2001年に同社入社。コーポレート本部長等を歴任し、現在はコーポレート担当CCO兼CISO等として現職。
村上元春 常務取締役 1988年同社入社。ライブ・エンタテインメント統括局長やCSR推進室長等を歴任。現在はヴェニュー事業開発担当等を務め現職。
小林覚 取締役 1989年同社入社。ぴあMOOKSシリーズ編集長や広報室長を歴任。現在は社長室長兼CSR担当として現職。
東出隆幸 取締役 1989年同社入社。ライブ・エンタテインメント局長等を歴任し、現在はライブ・エンタテインメント担当兼ライブ・クリエイティブ担当等として現職。
川端俊宏 取締役 1997年同社入社。システム局長や次世代システム局長を歴任し、現在はシステム戦略担当兼DX推進担当兼グローバル事業担当等として現職。


社外取締役は、宮本暢子(学校法人施設長)、一條和生(一橋大学大学院教授)、村井満(元日本プロサッカーリーグチェアマン)、佐藤則之(元事業会社社長)、寺田美穂(セブン&アイ・ホールディングス執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「レジャー・エンタテインメント関連事業」の単一セグメントを展開しています。

(1) チケッティング関連ビジネス


同ビジネスは、音楽・スポーツ・演劇・映画・各種イベント等のチケット販売を中核としており、日本最大級の取扱規模を誇るシステム「チケットぴあ」を通じて各種エンタメの作り手と受け手をつなぐサービスを提供しています。大手興行主催者からスポーツ団体、全国の劇場など幅広い顧客を対象としています。

収益モデルは、興行主催者より委託されたチケットの購入者からの決済が完了した時点で販売手数料等を収益として認識する形です。運営は主に同社が担っており、地域によっては関連会社のチケットぴあ名古屋や子会社のチケットぴあ九州などを通じて直接チケットの仕入れと販売を行っています。

(2) メディア・プロモーション関連ビジネス


同ビジネスは、エンタテインメント・レジャー領域を中心とした話題の情報を満載した出版物の刊行を行っています。お出かけ情報やグルメ情報の各種ムック、エンタテインメント雑誌などの出版に加え、ウェブサイトやスマートフォンアプリを用いたデジタルメディアによるクロスメディア型事業も推進しています。

収益モデルは、顧客との取引契約に基づき出版物の引き渡しが完了した時点で収益を受け取る形や、広告収益などを得ています。運営は主に同社が手掛けており、デジタルメディア・データマーケティング事業においては、朝日新聞社が資本参画して設立した関連会社のぴあ朝日ネクストスコープと連携して事業を拡大しています。

(3) ヴェニューネットワーク等その他の事業


本領域では、これまでのチケット流通やイベント企画で培ったノウハウを活かし、アリーナ・ホール運営という新たな事業をスタートさせています。1万人規模の音楽専用ホール「ぴあアリーナMM」や各種ライブハウス等を運営し、音楽業界のニーズに応える最適な環境を観客とアーティストの双方に提供しています。

収益は、会場の貸出料や付帯する飲食施設など各種ホスピタリティサービスの提供により獲得しています。運営主体は同社をはじめ、三菱地所との合弁会社である子会社のMECぴあクリエイティブなどが企画立案や実施を担い、チケット販売に留まらない感動体験を一気通貫で届ける収益構造を構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


コロナ禍の影響で一時的に最終赤字を計上した時期もありましたが、その後はライブ・エンタメ市場の回復とともに業績は急拡大しています。特に直近は大規模公演やグローバルイベントの受託が寄与し、大幅な増収と利益率の改善を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 258億円 328億円 396億円 454億円 553億円
経常利益 -8.5億円 6.0億円 9.2億円 23.8億円 43.5億円
利益率(%) -3.3% 1.8% 2.3% 5.2% 7.9%
当期利益 -12.0億円 13.3億円 7.5億円 13.5億円 28.7億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も順調に増加しています。チケットぴあサービス利用料によるコスト構造の改善効果等もあり、各種投資を吸収して営業利益率は上昇傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 454億円 553億円
売上総利益 169億円 217億円
売上総利益率(%) 37.3% 39.2%
営業利益 26.4億円 43.1億円
営業利益率(%) 5.8% 7.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が59.6億円(構成比34.2%)、業務委託費が33.2億円(同19.1%)を占めています。売上原価については、外注費が65億円(売上原価の19.3%)、複写印刷費が27.3億円(同8.2%)となっています。

(3) セグメント収益


同社はレジャー・エンタテインメント関連事業の単一セグメントであるため、全社業績と連動した推移を示しています。各種イベントの開催集中による取扱高の拡大が主な成長要因です。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
レジャー・エンタテインメント関連事業 454億円 553億円
連結(合計) 454億円 553億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 153億円 131億円
投資CF -19億円 -29億円
財務CF -10億円 -18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は36.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は9.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ひとりひとりが生き生きと」を企業理念に掲げています。ITを最大限活用し、レジャー・エンタテインメント領域を楽しむために必要な情報・サービスを提供することで、人々の心の豊かさをサポートする「感動のライフライン」を構築し、21世紀のひとりひとりの生活を支えることを使命としています。

(2) 企業文化


エンタテインメントによる感動を生活に不可欠な酸素のような存在と捉え、「若くて新しいチャレンジをしている人たちを応援する」という価値観を創業時から大切にしています。社会的役割としてサステナビリティ活動を展開しながら、ステークホルダーと共にエンタメ産業全体の発展を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2032年の創業60周年を見据えた長期ビジョンに基づく新たな中期経営計画(2026年度〜2028年度)を策定しており、収益力の大幅アップと持続的成長基盤の確立を目指しています。
・2028年度:売上高500億円
・2028年度:営業利益32億円
・2032年度:営業利益60億円超

(4) 成長戦略と重点施策


コンテンツの創出からチケッティング、会場運営までを一気通貫に結ぶ「感動のライフライン事業」の実現を成長戦略の軸としています。次なる飛躍に向けた重点的な投資期間と位置づけ、事業インフラの高度化と基盤整備に向けた「次世代プラットフォーム」への移行や全社的なAI活用による進化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「個の成長」が「企業の成長」に繋がるとの考えのもと、従業員ひとりひとりが人間としての成長と同時に組織のコミュニティとして成熟するための教育体系を整備しています。中途入社社員へのオンボーディングや新卒社員へのメンター制など、多様な人材が早期に活躍できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.6歳 8.5年 8,805,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 35.4%
男性育休取得率 28.5%
男女賃金差異(全労働者) 56.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 58.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 52.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(2.5%)、教育研修参加率(63.7%)、部長職に占める女性労働者の割合(22.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 感染症等の発生によるイベント制限


世界的な感染拡大や新たな感染症が発生した場合、国内のレジャー・エンタテインメント市場においてイベントの中止や延期が相次ぐおそれがあります。これにより、同社グループの事業活動が制限され、チケット販売等の業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報通信システムのトラブル


同社はオンラインネットワークを用いたシステムに依存しており、自然災害やアクセス集中による負荷増加、あるいは外部からのサイバー攻撃等によりシステムが停止するリスクがあります。これらの障害が発生した場合、営業活動が困難となり業績に影響を与えるおそれがあります。

(3) 個人情報の管理と漏洩リスク


チケット販売や会員組織の運営等により多数の顧客情報を扱っており、不当なアクセスや漏洩が発生した場合、同社グループの信用やブランド価値が毀損されるリスクがあります。個人情報保護に向けたセキュリティ対策を強化していますが、万が一の流出は財務状況に悪影響を及ぼします。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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