ぴあ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ぴあ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。音楽・スポーツ等のチケット販売を行う「チケットぴあ」の運営を中心に、イベント主催やホール運営などレジャー・エンタテインメント関連事業を展開しています。当連結会計年度は、大型興行の増加やチケット単価の上昇等を背景に、過去最高の利益を達成し、増収増益となりました。


※本記事は、ぴあ株式会社 の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ぴあってどんな会社?


情報誌「ぴあ」の創刊から始まり、日本初のコンピュータオンラインチケット販売システムを構築したエンタテインメント企業です。

(1) 会社概要


1972年に情報誌「ぴあ」を創刊し、1974年に設立されました。1984年にはチケット販売サービス「チケットぴあ」を開始し、2002年に東京証券取引所市場第二部に上場、翌2003年に同市場第一部へ指定替えとなりました。2020年には横浜・みなとみらい地区に音楽専用アリーナ「ぴあアリーナMM」を開業するなど、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は517名、単体従業員数は404名です。大株主構成については、筆頭株主は創業者の矢内廣氏で、第2位は業務・資本提携先である株式会社セブン&アイ・ホールディングスです。第3位には凸版印刷株式会社(現TOPPAN株式会社)が名を連ねています。

氏名 持株比率
矢内廣 19.56%
セブン&アイ・ホールディングス 9.02%
TOPPAN 6.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は矢内廣氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
矢内 廣 代表取締役社長 1974年ぴあ設立、同社代表取締役社長。2003年代表取締役会長兼社長を経て、2006年より現職。チケットぴあ名古屋代表取締役会長を兼任。
木本 敬巳 取締役副社長 1987年入社。執行役員電子チケット事業本部長、上級執行役員ライブ・エンタテインメント本部長等を歴任。2019年専務取締役、2022年より現職。
吉澤 保幸 専務取締役 1978年日本銀行入行。2001年同社入社。取締役コーポレート本部長等を経て、2024年10月よりコーポレート担当CCO兼CISO兼全社経営改革推進担当兼リスクマネジメント委員会委員長として現職。
村上 元春 常務取締役 1988年入社。CSR推進室長、事業統括担当統括本部長等を歴任。2024年10月よりヴェニュー事業開発担当兼グループ事業推進担当兼中日本エリア担当兼全社経営改革推進担当として現職。
小林 覚 取締役 1989年入社。ぴあMOOKSシリーズ編集長、メディア流通事業本部副本部長等を経て、2011年執行役員社長室長兼広報室長。2023年4月より社長室長兼CSR担当として現職。
東出 隆幸 取締役 1989年入社。電子チケット事業本部ソリューション事業部長、ライブ・エンタテインメント本部長等を歴任。2023年4月よりライブ・エンタテインメント担当兼西日本エリア担当等として現職。
川端 俊宏 取締役 1997年入社。システム局長、グローバルイベント局長等を歴任。2023年4月よりライブ・エンタテインメント担当(システム・ソリューション担当)兼システム戦略担当等として現職。


社外取締役は、宮本暢子(元同社取締役)、一條和生(IMD教授)、石田宏樹(フリービット社長)、村井満(元Jリーグチェアマン)、佐藤則之(元三井物産)、寺田美穂(セブン&アイHLDGS執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「レジャー・エンタテインメント関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。以下に主要な事業領域を解説します。

(1) チケッティングビジネス


音楽、スポーツ、演劇、映画など様々なレジャー・エンタテインメントのチケットを販売しています。興行主催者やスポーツ団体、劇場等に対して「チケットぴあ」システムを提供し、チケッティング業務をサポートするほか、国際的なスポーツイベント等のチケッティング業務も受託しています。

主な収益は、チケット購入者からのシステム利用料や発券手数料、および興行主催者からの販売手数料等です。また、提携コンビニエンスストアやインターネットを通じた販売ネットワークを構築しています。運営は主にぴあが行っています。

(2) ソリューションビジネス


興行主催者(スポーツ団体や劇団等)、ホールやスタジアムなどの法人向けに、チケット販売システムの提供に加え、プロモーション、販売サービス、顧客管理戦略の立案などを支援しています。各業界のビジネスパートナーとして、収益拡大やマーケット活性化に向けた業務サポートを行っています。

収益は、システム提供や業務受託に対する対価として法人顧客から受け取ります。ぴあが主体となり、主催者や施設運営者に対してソリューションを提供しています。

(3) ホール・劇場ビジネス


1万人規模の音楽専用アリーナ「ぴあアリーナMM」や、「豊洲PIT」「仙台PIT」などのホール・劇場を運営しています。会場運営を通じて、エンタテインメントの送り手と受け手を結ぶ場を提供し、飲食施設やホスピタリティラウンジの運営も行っています。

収益源は、興行主催者からの会場利用料や、来場者からの飲食売上などです。ぴあが「ぴあアリーナMM」等を保有・運営し、一般社団法人チームスマイルから引き継いだPITの運営も行っています。

(4) メディア・プロモーション・コンテンツビジネス


レジャー・エンタテインメント情報の書籍・雑誌の刊行、ウェブサイト「ぴあ」やアプリの運営を行っています。また、音楽フェスやイベントの主催・企画・制作、映画への出資など、コンテンツの創出にも取り組んでいます。

収益は、書籍・ムックの販売代金、広告収入、イベントの入場料収入、グッズ販売収入などです。ぴあおよびグループ会社が連携して、メディア運営やコンテンツ開発を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は回復基調にあり、直近では過去最高の水準に達しています。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに大きく伸長しており、利益率も改善傾向にあります。コロナ禍の影響からの回復が顕著であり、増収増益のトレンドが続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 674億円 258億円 328億円 396億円 454億円
経常利益 -60億円 -8.5億円 6億円 9億円 24億円
利益率(%) -8.9% -3.3% 1.8% 2.3% 5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -66億円 -12億円 14億円 11億円 16億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率も改善しています。営業利益は前年から倍増以上となり、営業利益率も大幅に上昇しました。コストコントロールと収益性の高い事業の伸長により、収益構造が強化されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 396億円 454億円
売上総利益 137億円 169億円
売上総利益率(%) 34.6% 37.3%
営業利益 12億円 26億円
営業利益率(%) 3.1% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が53億円(構成比37%)、業務委託費が28億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは「レジャー・エンタテインメント関連事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の比較はありませんが、当該事業の売上高は前期比で増加しています。大型イベントの開催増やチケット取扱高の増加が主な要因です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
レジャー・エンタテインメント関連事業 396億円 454億円
連結(合計) 396億円 454億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の儲けを示す営業キャッシュ・フローがプラスで、投資活動と財務活動のキャッシュ・フローがマイナスであることから、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 124億円 153億円
投資CF -22億円 -19億円
財務CF -26億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は7.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、ITを最大限活用し、レジャー・エンタテインメント領域を楽しむために必要な情報・サービスを提供することで、心の豊かさをサポートする「感動のライフライン」を構築することをビジョンとしています。ひとりひとりの生き生きとした生活を支えることを使命とし、「21世紀の感動創造企業」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ひとりひとりが生き生きと」という企業理念を掲げ、「若くて新しいチャレンジをしている人たちを応援する」姿勢を重視しています。CSR活動としても「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」などを通じて新しい才能の発見と育成に取り組んでおり、文化・芸術の発展に寄与する活動を創業時より継続しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画の最終年度である2025年度(2026年3月期)において、以下の業績目標を掲げています。
* 売上高:470億円
* 営業利益:34億円
* 経常利益:32億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:23億円

また、コロナ禍で生じた累積損失の一掃と、復配の実現を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


基幹事業であるチケッティングビジネス等の周辺ビジネス拡大や収益モデルの改善に加え、新規事業として「大阪・関西万博」等の国際的イベントの業務受託完遂、ホスピタリティ事業の定着、デジタルメディア・データマーケティング事業の伸長に取り組みます。事業構造の変革と人的資本経営の拡充を進め、持続的成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「個の成長」が「企業の成長」であるとの考えに基づき、社員一人ひとりの成長と組織の自立を目指しています。中途入社者へのオンボーディングや新卒社員へのメンター制度、次世代リーダー育成、キャリア研修など、体系的な教育研修体制を整備しています。また、多様な人材を活かすダイバーシティの推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.4歳 9.7年 7,914,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.2%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 58.2%
男女賃金差異(正規) 60.0%
男女賃金差異(非正規) 59.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(6.5%)、教育研修参加率(60.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 感染症発生の影響


新たな感染症の拡大などが発生した場合、同社グループの事業基盤である国内レジャー・エンタテインメント市場においてイベントの中止や延期などが発生し、事業活動が制限されることで、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) キャッシュ・フローの状況の変動


今後もキャッシュ・フローの改善を目指しますが、金融資本市場の環境変化によっては資金調達条件等に影響が出る可能性があります。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は増加していますが、引き続き資金の効率的配分や財務基盤の強化が必要です。

(3) システムトラブルの影響


通信ネットワークの切断、アクセス集中によるシステム停止、不正アクセスによるデータ改ざんや漏洩などの障害が発生した場合、営業が不可能になったり、業績に悪影響を与えたりする可能性があります。これらに対し万全な対応・体制を敷いていますが、リスク要因として認識されています。

(4) 個人情報の管理


個人情報の漏洩や紛失などの事故が発生した場合、同社グループの信用やブランド価値が毀損され、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。セキュリティ管理体制の構築や対策強化を行っていますが、重要なリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。