※本記事は、株式会社大戸屋ホールディングスの有価証券報告書(第43期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 大戸屋ホールディングスってどんな会社?
国内外で「大戸屋ごはん処」を運営し、店内調理にこだわった定食や弁当を提供しています。
■(1) 会社概要
大戸屋ホールディングスは、1983年に和洋食の店舗展開を目的に設立されました。2001年に株式を店頭登録し、2004年にはタイ王国に子会社を設立して海外進出を果たしました。2011年に持株会社体制へ移行して現在の社名に変更し、2020年にはコロワイドの傘下に入り子会社化されています。
同社グループは、連結で738名、単体で47名の従業員を擁しています。筆頭株主は親会社であり飲食店の経営等を行うコロワイドで、第2位は食品卸売業の日本アクセス、第3位は調味料メーカーのブルドックソースです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| コロワイド | 46.68% |
| 日本アクセス | 0.69% |
| ブルドックソース | 0.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は蔵人賢樹氏が務めており、社外取締役の比率は約44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 蔵人 賢樹 | 代表取締役社長 | 2010年コロワイド入社。同社専務取締役やコロワイドMD代表取締役社長などを経て、2020年11月より現職。 |
| 橋澤 順 | 取締役経営管理本部長 | 2002年コロワイド入社。コロワイドMD商品マーケティング本部統括部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 日下 好広 | 取締役 | 2000年コロワイド入社。コロワイドCWカンパニー営業部長やダイニングクリエイションレストラン事業部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 三森 智仁 | 取締役 | 2011年三菱UFJ信託銀行入社。2013年大戸屋入社。同社常務取締役などを経て、2020年11月より現職。 |
| 下村 治 | 取締役(監査等委員) | 1981年東京海上火災保険入社。同社内部監査部主任内部監査役や大戸屋HD常勤監査役などを経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、小濵直人(オフィス小浜代表取締役)、山田奈央子(シルキースタイル創業代表取締役)、田村吉央(弁護士法人ノーサイド法律事務所代表弁護士)、大場睦子(スターチス税理士法人代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内直営事業」「国内フランチャイズ事業」「海外直営事業」「海外フランチャイズ事業」および「その他」事業を展開しています。
■国内直営事業
主に日本国内において、一般消費者向けに定食や弁当を販売する直営店舗を展開しています。イートイン型定食店「大戸屋ごはん処」などを中心に、店内調理による出来立ての商品を提供しています。
収益源は、直営店舗での飲食代金およびテイクアウト・デリバリーによる販売代金です。運営は親会社の子会社である大戸屋が行っています。
■国内フランチャイズ事業
日本国内において、「大戸屋ごはん処」などの飲食店舗をフランチャイズ展開しています。加盟店に対してブランドやノウハウを提供し、店舗網の拡大を図っています。
収益源は、フランチャイズ加盟店からの加盟金やロイヤルティ収入、および店舗運営に必要な食材等の販売代金です。運営は国内直営事業と同じく大戸屋が行っています。
■海外直営事業
アメリカ、香港、タイ、シンガポールなどの海外地域において、直営方式で飲食店舗を展開しています。各国のニーズに合わせつつ、日本の定食文化を提供しています。
収益源は、海外の直営店舗における一般消費者への飲食代金です。運営は香港大戸屋有限公司やAMERICA OOTOYA INC.など、現地の各子会社が行っています。
■海外フランチャイズ事業
台湾やインドネシア、フィリピン、カンボジアなどにおいて、現地のパートナー企業と協力し、フランチャイズ方式で飲食店舗を展開しています。
収益源は、海外のフランチャイズ加盟店からの加盟金およびロイヤルティ収入などです。運営は同社と現地の事業パートナーが連携して行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、タイ王国におけるプライベートブランド商品の輸入および販売事業を行っています。
収益源は、輸入したプライベートブランド商品の販売代金です。運営は現地子会社のTHREE FOREST (THAILAND) CO., LTD.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は継続して拡大傾向にあり、順調な成長を遂げています。利益面においても、数期前に赤字を計上して以降は黒字転換を果たし、その後も増益基調を維持するなど、着実な収益性の改善と事業の成長がうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 188億円 | 238億円 | 279億円 | 314億円 | 370億円 |
| 経常利益 | -5億円 | 4億円 | 17億円 | 17億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | -2.8% | 1.5% | 6.1% | 5.5% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 3億円 | 14億円 | 12億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。利益率も堅調に推移しており、着実な成長と収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 314億円 | 370億円 |
| 売上総利益 | 183億円 | 206億円 |
| 売上総利益率(%) | 58.2% | 55.7% |
| 営業利益 | 17億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 5.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が83億円(構成比45%)、地代家賃が23億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力となる国内直営事業および国内フランチャイズ事業が大きく伸長し、全体の売上増を牽引しています。海外事業やその他事業も含め、多くのセグメントで前年を上回る売上を計上しており、全社的に事業規模の拡大が進んでいます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内直営事業 | 191億円 | 229億円 |
| 国内フランチャイズ事業 | 84億円 | 101億円 |
| 海外直営事業 | 31億円 | 30億円 |
| 海外フランチャイズ事業 | 3億円 | 3億円 |
| その他 | 6億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 314億円 | 370億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に該当します。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 21億円 | 31億円 |
| 投資CF | -15億円 | -16億円 |
| 財務CF | -11億円 | -22億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は28.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「人々の心と体の健康を促進し、フードサービス業を通じ人類の生成発展に貢献する。」という経営理念を掲げています。食のインフラの担い手として、安心・安全な食材の安定的かつ継続的な調達を可能とする環境の維持や、世界中の人々の健やかさに資することで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「からだにうまい。」というブランドメッセージのもと、“おいしさ”を起点に顧客の心と体を満たすことを重視しています。手作りにこだわり、店内調理による「出来立て」の商品を提供することで、顧客により一層の「満足感」と「特別感」をお届けするという価値観を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期経営計画(2025年3月期-2027年3月期)」において、「健康」をキーワードに食を通じた総合カンパニーを目指し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を企図しています。具体的な数値目標として、以下を掲げています。
* 2027年3月期の売上高:380億円
* 2027年3月期の営業利益:22億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、既存事業の改善と更なる発展、出店地域・立地の明確化、新業態の創出、中食事業の強化などを重点施策として推進しています。SNSやアプリを活用して顧客との接点を拡充し来店を促進するほか、重点立地への出店やフランチャイズ出店支援の強化、サステナビリティ経営や健康経営を通じた人材基盤の強化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、経営戦略の実現に向けて「人材基盤の強化」を掲げ、従業員が自律的に成長できる機会を提供しています。店舗運営の要となる店長・マネジメント人材の計画的な育成を進めるとともに、多様な就業形態の提供や柔軟な人事制度の導入を通じ、あらゆるライフステージにおいて働きがいを感じられる環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.3歳 | 11.9年 | 6,912,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 17.8% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 125.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 82.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 82.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | - |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定企業への配送依存
同社グループは、各店舗で使用する食材の配送を特定の企業に全面的に委託しています。当該企業の配送センターでの事故や不測の事態により配送機能が停止した場合、必要な食材が欠品し、店舗の営業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 出店条件と店舗展開
同社グループは、駅周辺やショッピングセンターなどの集客力がある施設を中心に出店しています。採算性を重視して出店先の選定を行っていますが、条件に合致する物件が計画数に満たない場合、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 店舗運営人材の確保・育成
同社は店内調理による高品質な商品提供を強みとしており、調理技術と店舗運営の管理能力を備えた店主の育成が不可欠です。人材の確保や育成が順調に進まない場合、サービスの質や店舗展開に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 外食産業における競争激化
同社が属する外食産業市場は成熟しており、同業者だけでなくコンビニエンスストアなど他業態との競争も激化しています。競合先の動向や市場規模の縮小により、商品価格の変更や来客数の減少が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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