※本記事は、株式会社トリドールホールディングスの有価証券報告書(第36期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. トリドールホールディングスってどんな会社?
本格讃岐うどん「丸亀製麺」をはじめ、国内外で多角的な外食事業を展開するグローバルフードカンパニーです。
■(1) 会社概要
1985年に創業し、2000年にセルフうどん業態「丸亀製麺」の1号店を開店しました。2006年に東証マザーズへ上場し、2008年に東証一部へ市場変更しています。2011年からは海外進出を開始し、2016年に持株会社体制へ移行して現在の社名となりました。近年は積極的なM&Aで海外事業を拡大しています。
同社グループは、連結で7,775名、単体で351名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の粟田貴也氏であり、第2位には有限会社ティーアンドティー、第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 粟田貴也 | 31.38% |
| 有限会社ティーアンドティー | 12.10% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性3名、女性3名の計6名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長は粟田貴也氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 粟田貴也 | 代表取締役社長 | 1985年にトリドール三番館を創業。1990年にトリドールコーポレーション代表取締役社長に就任し、1995年の組織変更に伴い代表取締役社長となり現在に至る。 |
| 山口聡 | 取締役ファイナンス本部長財務部長 | 日本リース、アセンテック等を経て2020年に同社へ入社。財務部長、執行役員等を経て、2023年より現職。海外子会社の取締役も兼任。 |
| 田中憲一 | 取締役ハピネス・ヒューマンサポート本部長 | 富士通、バーバリー・ジャパン、サントリーホールディングス等で人事部門の要職を歴任。2024年に同社へ入社し、執行役員を経て現職。 |
社外取締役は、松風里栄子(センシングアジア代表取締役)、片岡牧(堂島法律事務所弁護士)、宮田裕子(人事コンサルタント)です。
2. 事業内容
同社グループは、「丸亀製麺」「国内その他」「海外事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 丸亀製麺
本格讃岐うどん専門店「丸亀製麺」を国内で展開しています。すべての店舗に製麺機を設置して粉から製麺を行い、顧客の目の前で調理することで「打ち立て・茹でたて・できたて・手づくり」のうどんや天ぷら、おむすびなどを提供しています。
店舗を利用する顧客からの飲食代金が主な収益源です。運営は事業子会社の丸亀製麺が行っています。
■(2) 国内その他
ハワイアンカフェ「コナズ珈琲」、豚骨ラーメン「ラー麺ずんどう屋」、立呑み酒場「晩杯屋」、焼肉丼「肉のヤマ牛」、天ぷら定食「天ぷらまきの」など、国内でバラエティ豊かな外食ブランドを多角的に展開しています。
各店舗を利用する顧客からの飲食代金が収益源です。運営は、KONA’S、ZUND、アクティブソース、肉のヤマ牛、トリドールジャパンなどの各事業子会社がそれぞれ担っています。
■(3) 海外事業
香港発の米線スープヌードル「Tam Jai」、海外版の「MARUGAME UDON」、英国発のピザ「FRANCO MANCA」などを、アジア、北米、欧州などで幅広く展開しています。
直営店を利用する顧客からの飲食代金のほか、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ等が収益源です。運営は、Tam Jai International Co. LimitedやThe Fulham Shore Limitedなどの各海外子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、国内外での積極的な店舗展開やM&A効果などにより、売上収益は右肩上がりで拡大を続けています。利益面では原材料価格の高騰や成長投資の影響で一時的な変動が見られますが、直近の期は既存店の成長や価格改定効果などにより増益を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,534億円 | 1,883億円 | 2,320億円 | 2,682億円 | 2,787億円 |
| 税引前利益 | 139億円 | 77億円 | 106億円 | 53億円 | 81億円 |
| 利益率(%) | 9.1% | 4.1% | 4.5% | 2.0% | 2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 90億円 | 38億円 | 55億円 | 19億円 | 23億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を見ると、増収に伴い売上総利益が拡大し、売上総利益率も改善しています。販管費は増加しているものの増収効果で吸収し、営業利益および営業利益率ともに堅調に推移しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 2,682億円 | 2,787億円 |
| 売上総利益 | 408億円 | 463億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.2% | 16.6% |
| 営業利益 | 87億円 | 106億円 |
| 営業利益率(%) | 3.2% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が901億円(構成比48%)、減価償却費及び償却費が305億円(同16%)を占めています。また、売上原価においては、原材料費が449億円(構成比66%)、地代家賃が128億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで売上を拡大していますが、特に「丸亀製麺」が増収効果で安定した事業基盤を維持しています。「国内その他」も店舗網の拡大で増収となった一方、「海外事業」もアジア事業の好調などにより堅調な売上成長を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 丸亀製麺 | 1,281億円 | 1,372億円 |
| 国内その他 | 354億円 | 396億円 |
| 海外事業 | 1,047億円 | 1,019億円 |
| 連結(合計) | 2,682億円 | 2,787億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ営業利益で借入金の返済を進めつつ、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 377億円 | 492億円 |
| 投資CF | -128億円 | -157億円 |
| 財務CF | -132億円 | -481億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も20.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「本能が歓ぶ食の感動体験を探求し世界中をワクワクさせ続ける」をミッションに掲げ、「予測不能な進化で未来を拓くグローバルフードカンパニー」となることをビジョンとしています。コーポレートスローガンには「食の感動で、この星を満たせ。」を据え、世界中の人々を幸せで満たすことを目指しています。
■(2) 企業文化
人的資本経営を深化させた独自の概念「心的資本経営(ハピネス感動経営)」を重視しています。「従業員の“心”の幸せ」と「お客様の“心”の感動」を共に重要な資本と捉え、それらを循環させる仕組みを育んでいます。また、「KANDO」「二律両立」「称賛共助」からなる普遍的成長哲学「トリドール3頂」を掲げています。
■(3) 経営計画・目標
2028年3月期を最終年度とする中長期経営計画において、真のグローバルフードカンパニーとなることを目指し、以下の数値目標を掲げています。
* 売上収益:3,050億円
* 事業利益:240億円
* 事業利益率:7.9%
* ROE:8%以上
* 店舗数:2,340店舗
■(4) 成長戦略と重点施策
非合理的な「手づくり・できたて」とグローバル展開を両立させる「二律両立」を強みとし、食の感動体験を世界中に拡大します。今後は「感動体験の追求」「事業ポートフォリオの量・質拡充」「ローカルバディ布陣の確立」「N×N展開を支える基盤構築」の4つを重点テーマとし、M&Aやブランドインキュベーションを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
食の感動の源泉は多様な従業員であるとし、「人材が最大の経営資源」との認識を持っています。KANDO Creators大学を中心とした育成プログラムやメンター制度により成長を支援し、計画的付与制度や健康相談窓口の設置など、従業員の生活基盤安定とハピネス(働きがい)向上を目指した環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.0歳 | 6.4年 | 8,326,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.2% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 181.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外食市場の競争激化と飲食スタイルの変化
多様なジャンルの外食チェーンや中食需要との競合が激化しています。消費者の行動や心理が目まぐるしく変化する中で、同社グループが提供する「食の感動体験」による差別化やテイクアウト・モバイルオーダー等の施策が優位性を発揮できず、想定以上に競争環境が悪化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の調達難と価格高騰
小麦、野菜、食肉、油脂などを主な原材料として使用しているため、異常気象による生産量減少や世界情勢に伴う原油・穀物市況の変動リスクがあります。十分な量の原材料の確保や適切な価格での調達が困難になったり、仕入価格が想定を超えて急騰したりする場合、同社グループの収益性が低下する可能性があります。
■(3) 主要ブランド「丸亀製麺」への収益依存
同社グループの連結売上収益において、「丸亀製麺」が約半分を占める主力事業となっています。そのため、顧客の嗜好の変化やブランド力の低下などにより、丸亀製麺が期待通りに成長しない場合、グループ全体の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。現在、カフェやラーメンなど新業態の育成に注力しリスク分散を図っています。
■(4) 出店計画の遅延と店舗の不採算化リスク
店舗数の増加は事業拡大の重要要素ですが、期待する立地や賃借条件を満たす候補地が不足したり、建設工事が遅延したりして計画通りに出店が進まないリスクがあります。また、出店後に周辺環境が変化し、店舗の収益性が著しく低下して減損損失や中途解約に伴う損失が発生した場合、同社の成長や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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