トリドールホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トリドールホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、讃岐うどん専門店「丸亀製麺」を主力とする外食事業をグローバルに展開しています。当連結会計年度の業績は、国内外での出店拡大等により売上収益は過去最高となり増収を達成しましたが、減損損失の計上等により営業利益および当期利益は減益となりました。


#記事タイトル:トリドールホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社トリドールホールディングスの有価証券報告書(第35期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

1. トリドールホールディングスってどんな会社?


主力ブランド「丸亀製麺」をはじめとする多種多様な飲食業態を世界各国で展開するグローバルフードカンパニーです。

(1) 会社概要


1985年に創業者の粟田貴也氏が焼鳥屋「トリドール三番館」を開店し、1995年に株式会社トリドールを設立しました。2000年にセルフうどん業態「丸亀製麺」の1号店を出店し、2006年に東証マザーズへ上場しました。2011年にはハワイに海外1号店を出店し、2016年に持株会社体制へ移行して現商号に変更しました。

同社グループは連結従業員数7,830人、単体従業員数322人の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業者の粟田貴也氏で、第2位は資産管理業務を行う有限会社ティーアンドティーです。第3位には信託銀行が名を連ねており、創業家が主要な株式を保有するオーナー系企業の特徴を持っています。

氏名 持株比率
粟田 貴也 31.48%
有限会社ティーアンドティー 11.81%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 5.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は粟田貴也氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
粟田 貴也 代表取締役社長 1985年トリドール三番館創業。1995年株式会社トリドール代表取締役社長に就任し、現在に至る。
杉山 孝史 取締役副社長海外事業本部長 元デロイトトーマツコンサルティング合同会社執行役員パートナー。2019年同社入社、2022年より現職。
山口 聡 取締役ファイナンス本部長財務部長 株式会社ジャパンディスプレイ等を経て2020年同社入社。2023年より現職。Tam Jai International Co. Limited取締役を兼任。
田中 憲一 取締役ハピネス・ヒューマンサポート本部長 サントリーホールディングス株式会社ヒューマンリソース本部副本部長等を経て2024年同社入社。2024年より現職。


社外取締役は、松風里栄子(サッポロHD専務取締役)、梅木利泰(日野総合会計事務所所長)、梅田浩章(梅田浩章公認会計士事務所所長)、片岡牧(堂島法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「丸亀製麺」「国内その他」「海外事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 丸亀製麺


本格讃岐うどん専門店「丸亀製麺」を国内で展開しています。全店に製麺機を設置して粉から製麺し、顧客の目の前で調理することで、「打ち立て」「茹でたて」「できたて」「手づくり」のうどん、天ぷら、おむすび等を提供しています。

収益は主に一般顧客からの飲食代金です。運営は主に株式会社丸亀製麺が行っており、ロードサイド店舗やショッピングセンター内のフードコート、ビルイン店舗など多様な立地に出店しています。

(2) 国内その他


「コナズ珈琲」「ずんどう屋」「晩杯屋」「肉のヤマ牛」など、うどん以外の多様な業態を国内で展開しています。カフェ、ラーメン、居酒屋、焼肉丼など、それぞれの専門性を活かしたブランドポートフォリオを構築しています。

収益は一般顧客からの飲食代金です。運営は、株式会社KONA’S(コナズ珈琲)、株式会社ZUND(ずんどう屋)、株式会社アクティブソース(晩杯屋)、株式会社肉のヤマ牛などがそれぞれの業態を担当しています。

(3) 海外事業


「Tam Jai」(米線スープヌードル)、「MARUGAME UDON」、「FRANCO MANCA」(ピザ)、「WOK TO WALK」(アジアン・ファストフード)などの飲食ブランドを世界各国で展開しています。

収益は直営店での飲食代金およびフランチャイズ加盟企業からのロイヤリティ収入等です。運営は、香港のTam Jai International Co. Limited、米国のMARUGAME UDON USA, LLC、英国のThe Fulham Shore Limitedなど、各国の現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は継続的に増加しており、特に直近では過去最高を更新するなど力強い成長トレンドにあります。利益面では、税引前利益や当期利益が年度によって変動しており、直近の期では減損損失の計上などにより利益水準が低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,348億円 1,534億円 1,883億円 2,320億円 2,682億円
税引前利益 -91億円 139億円 77億円 106億円 53億円
利益率(%) -6.8% 9.1% 4.1% 4.5% 2.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -55億円 90億円 38億円 55億円 19億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加し、事業規模が拡大しています。一方で、営業利益率は低下しており、収益性の面では課題が見られます。売上総利益率は向上しており、本業の収益力そのものは維持・改善されていますが、販管費やその他の費用の増加が利益を圧迫している構造です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 2,320億円 2,682億円
売上総利益 1,762億円 2,039億円
売上総利益率(%) 76.0% 76.0%
営業利益 114億円 87億円
営業利益率(%) 4.9% 3.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が869億円(構成比47%)、その他費用が400億円(同22%)を占めています。売上原価においては、材料費などが含まれると考えられますが、具体的な内訳比率は注記情報からは読み取れません。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで売上収益が増加しました。「丸亀製麺」は増収増益となり、過去最高の事業利益を達成しています。「国内その他」も増収を確保しましたが、出店費用増などにより利益は横ばいです。「海外事業」は大幅な増収となったものの、一部地域の市況悪化などの影響で減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
丸亀製麺 1,149億円 1,281億円 184億円 209億円 16.3%
国内その他 285億円 354億円 45億円 44億円 12.6%
海外事業 886億円 1,047億円 27億円 25億円 2.4%
調整額 - - -112億円 -97億円 -
連結(合計) 2,320億円 2,682億円 143億円 182億円 6.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動では、商品の仕入や製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用が運転資金需要の主なものです。投資活動では、設備投資や子会社株式の取得等による資金需要があります。財務活動では、短期運転資金は自己資金や短期借入、設備投資や長期運転資金は長期借入等を基本として、資金調達余力の向上を図っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 428億円 377億円
投資CF -268億円 -128億円
財務CF -165億円 -132億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「食の感動で、この星を満たせ。」をコーポレートスローガンに掲げています。ミッションとして「本能が歓ぶ食の感動体験を探求し世界中をワクワクさせ続ける」、ビジョンとして「予測不能な進化で未来を拓くグローバルフードカンパニー」を定めており、世界中の人々に圧倒的な食の感動体験を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は自らを「KANDO Creators」と定義し、成長哲学として「トリドール3頂」を掲げています。これは「KANDOの頂へ(独自の感動体験で唯一無二のポジション獲得)」「二律両立の頂へ(効率と手作りなど相反する要素の両立)」「称賛共助の頂へ(互いに認め合い助け合う組織風土)」の3つの頂を目指す行動指針です。

(3) 経営計画・目標


同社は「2023-2028年3月期 中長期経営計画」を策定し、世界的なグローバルフードカンパニーへの成長を目指しています。2028年3月期の数値目標として以下を掲げています。

* 売上収益:3,330億円
* 事業利益率:8.3%
* 店舗数:2,600店舗
* ROE:9%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中長期経営計画において「KANDOトレードオン戦略」を掲げ、「食の感動体験」を起点とした成長を目指しています。具体的には以下の4つの重点テーマに取り組んでいます。

1. 感動体験の追求:テイクアウトや他国業態などの新たなシーンでの感動体験創出や、人材育成・店舗DXによるサービス向上。
2. 事業ポートフォリオの量・質拡充:M&Aによる新業態獲得や、「勝ち筋」の定まった業態への集中投資。
3. ローカルバディ布陣の確立:各地域のパートナー(ローカルバディ)との連携による海外出店の加速。
4. N×N展開を支える基盤構築:グローバルなブランド連携や本社機能の強化。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「TORIDOLLハピネスモデル」を掲げ、従業員の「安心感」「つながり感」「貢献実感」「誇り」を高めることを重視しています。従来のチェーンストア理論に基づく「飲食業」から、従業員の内発的動機により感動を生み出す「感動創造業」への転換を目指しています。人材の採用・定着・育成を経営戦略と連動させ、メンター制度や店長教育プログラムなどを通じて現場支援を強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 6.3年 8,122,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.0%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.9%
男女賃金差異(正規雇用) 78.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 328.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外食業界の動向および競合激化


外食業界は競合が多く、テイクアウトやデリバリー等の需要変化、消費者の嗜好の変化が激しい環境です。市場の変化への対応遅れや競争優位性の低下が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は「食の感動体験」による差別化やDX推進等により競争力の維持に努めています。

(2) 原材料調達リスク


小麦、野菜、食肉等の原材料を使用しており、異常気象や世界情勢による価格高騰、調達困難のリスクがあります。これらが顕在化した場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は複数産地・ベンダーからの購買によるリスク分散や価格適正化に取り組んでいます。

(3) 店舗展開に関するリスク


店舗数の増加は成長の重要要素ですが、適切な出店候補地の不足や許認可・工事の遅延等により計画通りに出店できない可能性があります。また、出店後の周辺環境変化や、ショッピングセンターの契約解除、敷金等の返還遅延などが業績に影響を及ぼす可能性があります。専門部署による厳格な候補地選定や審査を行っています。

(4) 人材の確保と育成


「感動」を生み出すビジネスモデルにおいて、人材の確保・育成は重要課題です。計画通りに進まない場合、業績や出店計画に支障をきたす可能性があります。また、労務管理や安全衛生管理の不備は社会的信用の失墜につながるリスクがあります。同社は採用ブランディング強化や人事制度改定、相談窓口の設置等で対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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