※本記事は、クオールホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第33期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クオールホールディングスってどんな会社?
保険薬局「クオール薬局」の運営を中核に、CSOなどのBPO事業や製薬事業も展開する総合ヘルスケア企業です。
■(1) 会社概要
1992年に医薬品の調剤及び販売を目的としてクオールを設立しました。2006年にヘラクレス(現・東証グロース)へ上場し、2012年に東証一部へ指定替えとなりました。2018年には持株会社体制へ移行し、現商号に変更しました。2024年には第一三共エスファの株式を追加取得して連結子会社化し、製薬事業を拡大しています。
連結従業員数は6,254人、単体では48人です。筆頭株主は医薬品卸売業を行う関係会社のメディパルホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には従業員持株会が名を連ねており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| メディパルホールディングス | 20.11% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.32% |
| クオールグループ従業員持株会 | 4.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.1%です。代表取締役社長は中村敬氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 敬 | 代表取締役社長 | 1992年第一製薬(現・第一三共)入社。2001年同社入社。開発本部長、代表取締役副社長等を経て2016年6月より現職。 |
| 石井 孝芳 | 代表取締役専務 | 1985年塩野義製薬入社。2014年同社入社。経営戦略本部長、社長室長、代表取締役常務等を経て2023年4月より現職。 |
| 福滿 清伸 | 代表取締役常務 | 1991年第一勧業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)入行。2002年同社入社。経営戦略本部長、経営管理本部長等を経て2020年10月より現職。 |
| 恩地 ゆかり | 常務取締役 | 1988年東京掖済会病院入職。1993年同社入社。薬局支援本部長、教育推進部長等を経て2024年6月より現職。 |
| 富樫 豊 | 取締役 | 1994年近畿日本ツーリスト(現・KNT-CTホールディングス)入社。2000年同社入社。管理本部長、人事本部長等を経て2025年6月より人事企画部長。 |
| 今井 圭 | 取締役 | 2002年同社入社。北海道事業部長、ホスピタウン構想推進部長等を経て2020年9月より経営企画部長。 |
社外取締役は、窪木登志子(弁護士・窪木法律事務所所長)、山本行治(税理士・山本会計事務所所長)、森康利(税理士・麹町税理士法人社員)、宮﨑源征(公認会計士・元有限責任監査法人トーマツパートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「薬局事業」「BPO事業」「製薬事業」を展開しています。
■(1) 薬局事業
クオール株式会社を含む連結子会社21社が、保険薬局等の経営を行っています。「クオール薬局」ブランドを中心に全国展開し、処方箋に基づく調剤や一般用医薬品の販売などを通じて地域医療を支えています。また、KDDIと連携したオンライン専門薬局の開設や、在宅・施設調剤への取り組みも強化しています。
収益は主に、患者に対する調剤技術料や薬剤料、および一般用医薬品等の販売代金からなります。運営は主にクオール株式会社をはじめとする事業会社が行っています。
■(2) BPO事業
アポプラスステーション株式会社を含む連結子会社6社が、医療機関や製薬企業向けに様々なサービスを提供しています。具体的には、MR(医薬情報担当者)の派遣を行うCSO事業、医薬品・食品開発支援を行うCRO事業、医療従事者の紹介派遣事業、医療・医薬情報資材の制作を行う出版関連事業などがあります。
収益は、製薬企業や医療機関等の顧客から受け取る業務委託料や紹介手数料などが主な源泉です。運営は主にアポプラスステーション株式会社などが行っています。
■(3) 製薬事業
第一三共エスファ株式会社を含む連結子会社2社が、医薬品の製造販売を行っています。特にオーソライズドジェネリック(AG)製品のラインナップ拡充に注力しており、高品質な医薬品の安定供給に取り組んでいます。
収益は、医薬品卸売業者や医療機関等への医薬品販売による代金が主な源泉です。運営は主に第一三共エスファ株式会社などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に当期は前期比で大幅な増収となりました。経常利益も売上高の拡大に伴い増加基調にあります。当期純利益については、JSONデータ上は単体の数値(約65億円)が表示されていますが、連結ベースでは約52億円となっており、安定した利益水準を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,618億円 | 1,662億円 | 1,700億円 | 1,801億円 | 2,640億円 |
| 経常利益 | 74億円 | 101億円 | 101億円 | 93億円 | 138億円 |
| 利益率(%) | 4.6% | 6.1% | 5.9% | 5.1% | 5.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 55億円 | 54億円 | 66億円 | 67億円 | 65億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して、売上高、売上総利益、営業利益のいずれも大幅に増加しました。特に売上高は前述の通り約1.5倍の規模に拡大しています。売上総利益率は微増し、営業利益率も改善傾向にあります。事業規模の拡大に伴い、収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,801億円 | 2,640億円 |
| 売上総利益 | 232億円 | 391億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.9% | 14.8% |
| 営業利益 | 83億円 | 135億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が57億円(構成比22.3%)、のれん償却額が43億円(同16.9%)を占めています。売上原価については、商品仕入等のコストが大部分を占めています。
■(3) セグメント収益
薬局事業はM&Aや新規出店により増収となりましたが、運営コスト増により減益となりました。BPO事業は増収増益で堅調に推移しました。製薬事業は第一三共エスファの連結化により売上・利益ともに劇的に拡大し、グループ全体の業績を牽引しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 薬局事業 | 1,651億円 | 1,716億円 | 107億円 | 100億円 | 5.8% |
| BPO事業 | 133億円 | 136億円 | 15億円 | 17億円 | 12.5% |
| 製薬事業 | 16億円 | 787億円 | -4億円 | 53億円 | 6.7% |
| 調整額 | -5億円 | -14億円 | -35億円 | -35億円 | - |
| 連結(合計) | 1,801億円 | 2,640億円 | 83億円 | 135億円 | 5.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
クオールホールディングスグループは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に後発医薬品を中心とした研究開発活動や、第一三共エスファ株式会社の連結子会社化による事業拡大に貢献しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や長期運転資金の調達のために金融機関からの長期借入を基本としています。財務活動によるキャッシュ・フローは、多額の資金需要が発生した場合にエクイティファイナンス等の調達手段を検討し対応しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 135億円 | 126億円 |
| 投資CF | -132億円 | -204億円 |
| 財務CF | 80億円 | 72億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「わたしたちは、すべての人の、クオリティ オブ ライフに向きあいます。いつでも、どこでも、あなたに。」を企業理念として掲げています。この理念のもと、患者のQOL向上に役立つ医療サービスの提供を基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「あなたの、いちばん近くにある安心」をスローガンとして掲げています。また、全役職員がコンプライアンスの精神に則り、法令や規則の遵守はもちろん、自律的に何が倫理的に正しい行為かを考え、その価値判断に基づいて行動することを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、総合ヘルスケアカンパニーへの躍進を目指し、更なる成長に向けて以下の中期目標を掲げています。
* 連結売上高3,000億円
* 営業利益240億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「質の向上」「規模の拡大」「更なる成長」をキーワードに、全事業一体となって取り組みます。薬局事業では、地域医療への貢献や在宅・施設調剤の強化、DXによる利便性向上を推進します。BPO事業ではMR派遣の拡大や新規領域の開拓、製薬事業ではAGラインナップの拡充とグループシナジーによる市場シェア拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長に向けて「組織力」と「収益力」の強化を人材育成の軸としています。階層別研修による人間力等の養成や専門知識の実践的な教育を行うとともに、挑戦意欲に応える人事制度や多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。また、薬局事業と紹介派遣事業のシナジーを活かした採用や、社員の健康経営にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.8歳 | 3.7年 | 7,194,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は提出会社単体での従業員数が少ないため、有報には本項の記載がありません(公表義務の対象外)。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制等について
同社グループの事業は「薬機法」や「健康保険法」など多岐にわたる法令規制を受けています。許認可の取り消しや法令違反、法改正があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、「薬剤師法」に基づき薬局には薬剤師の配置が義務付けられているため、薬剤師の採用難や退職増により必要人数を確保できない場合もリスク要因となります。
■(2) 医療業界の事業環境について
国の政策である医薬分業の動向変化や、調剤報酬・薬価の改定は業績に直結する重要な要素です。報酬単価の引き下げや薬価改定による医薬品価格の下落は収益に影響します。また、消費税率が改定された際、その影響が薬価等に適切に反映されなかった場合、消費税の最終負担者となる薬局事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 資金調達について
事業資金の一部を金融機関からの借入で調達しているため、金利上昇や金融市場の悪化、自社の信用力低下などにより、希望する条件での資金調達が困難になる可能性があります。資金調達が円滑に進まない場合、事業運営や成長投資に支障をきたす恐れがあります。
■(4) 事業拡大に向けた投資について
店舗数の拡大やM&A、医薬品販売権の獲得は成長の柱ですが、条件に合う案件の確保や計画通りの権利獲得ができないリスクがあります。また、投資案件が計画通りの収益を上げられない場合、固定資産やのれん、営業権の減損損失が発生し、経営成績に悪影響を与える可能性があります。



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