クオールホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クオールホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クオールホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、保険薬局の経営を中核とする薬局事業やBPO事業、製薬事業を展開する企業です。直近の業績では、製薬事業における新製品の販売好調等により、売上高が2,908億円と増収となり、経常利益も149億円と増収増益を達成して過去最高の業績を記録しています。


※本記事は、クオールホールディングス株式会社の有価証券報告書(第34期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クオールホールディングスってどんな会社?


保険薬局の運営を行う薬局事業を中核とし、BPO事業や製薬事業を展開して医療を支える企業です。

(1) 会社概要


同社は1992年に医薬品の調剤及び販売を目的として設立されました。2006年に大阪証券取引所ヘラクレスに上場後、2012年に東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されています。2018年に持株会社体制へ移行し、現在の社名となりました。2019年には製薬事業を開始し、近年もM&Aにより事業を拡大しています。

現在の従業員数はグループ全体で6,247名、単体で41名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は事業会社であるメディパルホールディングスで、第2位および第3位は資産管理業務を行う金融機関や信託銀行となっています。

氏名 持株比率
メディパルホールディングス 20.17%
MSIP CLIENT SECURITIES(常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券) 10.06%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は中村敬氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
中村敬 代表取締役社長 1992年4月第一製薬入社、2001年10月同社入社。開発本部長や代表取締役副社長等を経て、2016年6月より現職。
石井孝芳 代表取締役専務 1985年4月塩野義製薬入社、2014年6月同社入社。経営企画本部長や社長室長等を経て、2023年4月より現職。
福滿清伸 代表取締役常務 1991年4月第一勧業銀行入行、2002年9月同社入社。経営戦略本部長や管理本部長等を経て、2020年10月より現職。
柄澤忍 常務取締役 1999年3月同社入社。東日本支社関東第一薬局事業本部長やクオール代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。
富樫豊 取締役 1994年4月近畿日本ツーリスト入社、2000年8月同社入社。管理本部長等を経て、2020年7月より現職。
今井圭 取締役 2002年4月同社入社。北海道東北薬局事業本部北海道事業部長や経営企画部長等を経て、2024年6月より現職。
鈴木裕司 取締役 1998年4月福聚入社。関東第一薬局事業本部長やクオール在宅推進本部長等を経て、2025年6月より現職。
石井和夫 取締役(監査等委員) 1988年4月川崎重工業入社、2012年10月メディプロ入社。内部監査部長等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、窪木登志子(窪木法律事務所所長)、山本行治(山本会計事務所所長)、森康利(麹町税理士法人社員)、宮﨑源征(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、薬局事業、BPO事業、製薬事業の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 薬局事業


同事業は、医療機関の発行する処方箋に基づき薬剤師が調剤する医療用医薬品の提供や、処方箋が不要な一般用医薬品の販売、保険薬局の経営を行っています。地域医療の安定化に寄与する体制構築や在宅・施設調剤にも注力し、患者の利便性や安心の提供を目指しています。

収益は、調剤した薬剤料や調剤技術料、一般薬等の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主にクオールや共栄堂などの連結子会社が行っており、協業を通じたクラウド型電子薬歴システムの活用等により生産性の向上に取り組んでいます。

(2) BPO事業


同事業は、医療関連ビジネスとしてCSO事業(MR派遣)、CRO事業(治験・臨床研究支援)、紹介派遣事業、出版関連事業等を展開しています。製薬企業や医療機関等の顧客に対し、専門人材の派遣や医薬品開発の支援サービス等を提供しています。

収益は、MRの派遣や医薬品開発業務の受託、人材紹介、資材制作等のサービス提供に対する対価として顧客企業から受け取ります。運営はアポプラスステーションやアポプラスキャリア、メディカルクオール、クリンクラウドなどの連結子会社が行っています。

(3) 製薬事業


同事業は、グループシナジーを活用した医薬品の研究開発及び製造販売を行っています。患者や医療関係者目線の開発を強化し、後発医薬品を中心にラインナップを拡充するとともに、後発医薬品以外の領域拡大にも取り組んでいます。

収益は、製造した医薬品の販売代金として卸売業者などの顧客から受け取ります。運営は第一三共エスファや藤永製薬などの連結子会社が行っており、薬局事業の知見を活かした情報提供を行いながら市場シェアの拡大を目指しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な成長を続けており、特に直近2期間で大きく拡大しています。経常利益も売上高の拡大に伴い増加傾向にあり、利益率も概ね5%台から6%台で安定して推移し、堅調な収益基盤を維持していることが読み取れます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,662億円 1,700億円 1,801億円 2,640億円 2,908億円
経常利益 101億円 101億円 93億円 138億円 149億円
利益率(%) 6.1% 5.9% 5.1% 5.2% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 55億円 57億円 49億円 52億円 74億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も堅調に拡大しています。売上総利益率は約14%台、営業利益率は約5.1%を維持しており、事業規模が拡大する中でも安定した収益構造を保っていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,640億円 2,908億円
売上総利益 391億円 409億円
売上総利益率(%) 14.8% 14.1%
営業利益 135億円 148億円
営業利益率(%) 5.1% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が58億円(構成比22%)、のれん償却額が42億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の薬局事業は処方期間の長期化や人件費の増加等により営業減益となりましたが、BPO事業ではMR派遣需要の増加や経営効率の改善等により増収増益となりました。製薬事業は新製品の販売が大きく寄与し、全体の業績を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
薬局事業 1,716億円 1,775億円 100億円 97億円 5.5%
BPO事業 136億円 143億円 17億円 19億円 13.3%
製薬事業 787億円 990億円 53億円 70億円 7.0%
調整額 -億円 -億円 -35億円 -38億円 -%
連結(合計) 2,640億円 2,908億円 135億円 148億円 5.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー・パターンとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 126億円 187億円
投資CF -204億円 -91億円
財務CF 72億円 -150億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.3%であり、いずれも非製造業の市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「わたしたちは、すべての人の、クオリティ オブ ライフに向きあいます。いつでも、どこでも、あなたに。」を企業理念に掲げています。また、「あなたの、いちばん近くにある安心」をスローガンとし、患者のQOL向上に役立つ医療サービスを提供することを基本方針として事業活動を行っています。

(2) 企業文化


同社グループでは、全役職員がコンプライアンスの精神に則り、各種法令や規則等を遵守することを重視しています。「クオールグループ企業行動憲章」や「役職員倫理規程」を定め、社員一人ひとりが自律的に何が倫理的に正しい行為かを考え、その価値判断に基づいて行動する誠実な企業文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


2030年のありたい姿として「すべての人に、医療の安心を届ける存在へ」を掲げ、事業の発展と成長を目指しています。2031年3月期の長期目標として以下の数値を設定し、資本効率を重視した経営管理を行っています。

・売上高:5,000億円
・営業利益:350億円
・ROE:15%

(4) 成長戦略と重点施策


「深化と進化」を基本方針とし、薬局事業、BPO事業、製薬事業の3本柱で成長を目指しています。薬局事業では機能分化への対応とDX推進による生産性向上を図ります。BPO事業ではMR派遣需要の獲得等により規模を拡大し、製薬事業ではグループシナジーを活用した研究開発と製品ラインナップの拡充に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは「クオールグループ生涯教育宣言」を掲げ、医療と健康に携わる真のプロフェッショナルを育成することを基本方針としています。各階層別に人間力・判断力・実行力の養成を行うとともに、実践的な教育により専門性を高め、多様な人材が活躍できる環境や成長を後押しする人事制度の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.8歳 4.2年 7,241,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

提出会社は公表義務の対象ではないため有報には本項の記載がありませんが、主要子会社であるクオールでの実績は以下の通りです。

項目 数値
女性管理職比率 24.2%
男性育児休業取得率 67.9%
男女賃金差異(全労働者) 74.0%
男女賃金差異(正規雇用) 70.9%
男女賃金差異(パート・有期) 102.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制や調剤報酬・薬価改定の影響


薬局事業や製薬事業は多岐にわたる法令の規制を受けており、認可の取得や法令改正による影響を受ける可能性があります。また、国民医療費抑制のための調剤報酬や薬価の改定が行われた場合、同社グループの収益や業績に直接的な影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 事業拡大に向けた投資リスク


同社グループは新規出店やM&A、医薬品の販売権獲得等により事業規模を拡大しています。しかし、計画通りに収益を確保できない場合や、条件に合致する案件を獲得できない場合には、のれんや固定資産等の減損損失が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 薬剤師や専門人材の確保


薬局事業における店舗運営には法定の薬剤師配置が義務付けられています。採用競争の激化や退職者の増加により、必要十分な人数の薬剤師やMR等の専門人材を安定的に確保できない場合、事業展開やサービス提供に支障をきたすリスクがあります。

(4) 医薬品の品質・副作用やサプライチェーンに関するリスク


予期せぬ副作用の発生や品質不良による製品回収等が生じた場合、社会的信用の低下や業績悪化につながる可能性があります。また、外部委託先との契約変更等により、原材料の仕入れや製造が遅延・停止し、製品供給に影響を及ぼすリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

クオールホールディングスの転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

クオールホールディングスの2026年3月期3Q決算は、売上高が創業以来の最高を更新。第一三共エスファの連結強化による製薬事業の急拡大や、薬局DXの推進が加速しています。「なぜ今クオールホールディングスなのか?」「転職者が製薬・BPO・薬局のどの事業で、どんな役割を担えるのか」を整理します。