※本記事は、ヒラキの有価証券報告書(第49期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ヒラキってどんな会社?
ヒラキは、自社企画開発の靴や履物を中心に、衣料や日用雑貨品の通信販売や店舗販売を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1961年に靴の部品製造として創業し、1978年に靴の小売業を目的としたヒラキ商事(現・ヒラキ)を設立しました。1987年に通信販売業務、1988年に卸販売事業を開始し事業を拡大しました。2006年には東京証券取引所市場第二部に上場し、近年は関西エリアを中心に靴専門店の出店を推進しています。
現在の従業員数は連結で234名、単体で230名です。筆頭株主は同社の創業・沿革に深く関わるマヤハで、第2位は取引金融機関である神戸信用金庫、第3位にはヒラキ従業員持株会が名を連ねています。金融機関や従業員持株会が上位株主となっており、安定的な事業運営を支える株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| マヤハ | 15.44% |
| 神戸信用金庫 | 5.16% |
| ヒラキ従業員持株会 | 4.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員最高執行責任者は梅木孝雄氏が務めています。社外取締役の比率は約22.2%(9名中2名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 梅木孝雄 | 代表取締役社長執行役員最高執行責任者 | 1992年同社入社。通信販売部長、専務執行役員、取締役、営業本部長等を経て、2025年より現職。 |
| 阿曽薫 | 取締役専務執行役員開発商品事業部・店舗販売事業部統括 | 1984年兵庫相互銀行入行。同社常務執行役員等を経て、2025年同社入社。専務執行役員を経て2026年より現職。 |
| 高下幸弘 | 取締役常務執行役員経営戦略室長兼現業支援本部長兼総務部長 | 2007年同社入社。現業支援本部副部長、経営戦略室長、執行役員等を経て、2026年より現職。 |
| 堀内秀樹 | 取締役執行役員生野事業所長兼品質管理部長 | 1999年同社入社。通信販売部長、開発商品事業部長、取締役、店舗販売事業部長等を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、朝家修(公認会計士・税理士朝家事務所代表)、船瀬紗代子(西須磨幼稚園副園長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「通信販売事業」「店舗販売事業」「卸販売事業」を展開しています。
■通信販売事業
自社で企画開発したオリジナル商品を中心に、靴・履物をはじめ、衣料品や日用雑貨品などを幅広く取り扱っています。全国の一般消費者を対象に、紙のカタログやインターネットを通じて商品の販売を行っており、低価格でありながら価値のある商品提供に注力しています。
収益源は、一般消費者に対する通信販売を通じた商品代金となります。運営主体はヒラキであり、商品の企画から販売まで一貫した体制を築いています。また、海外生産委託工場からの商品調達は子会社の上海平木福客商業有限公司が担い、グループ全体で低価格を実現する体制を構築しています。
■店舗販売事業
ディスカウント業態の総合店による靴・履物、食料品、衣料品、日用雑貨品などの販売に加え、靴専門店による靴・履物の販売を行っています。関西エリアを中心に地域に密着した店舗展開を進めており、幅広い層の顧客に対して「驚き」「楽しさ」「満足感」を提供する売場づくりを行っています。
収益源は、店舗を訪れる一般消費者からの商品代金や、店舗内テナントからの不動産賃貸収入となります。運営主体はヒラキであり、日本一の販売足数を目指す岩岡本店などの総合店や、近年出店を強化している小商圏都市型の靴専門店を通じて事業を展開しています。
■卸販売事業
OEM(相手先ブランドによる生産)やODM(相手先ブランドによる設計・生産)開発商品を中心として、大手小売店や量販店向けに靴や履物などの卸販売を行っています。他業態の靴売場をプロデュースすることで自社企画商品の販売強化を図り、靴のマーケットシェア拡大に取り組んでいます。
収益源は、主要な取引先である大手小売店や量販店に対する商品の卸売代金となります。運営主体はヒラキであり、自社の強みである商品開発力と生産背景を活かし、法人顧客のニーズに応える商品を供給することで、取引先との継続的な関係強化と新規開拓を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は減少傾向が続いており、直近の期では119億円まで落ち込んでいます。利益面においても経常利益は減少傾向にあり、直近2期は赤字に転落しました。利益率もマイナスとなっており、特にカタログ通販からECへのシフトの遅れや商品原価の上昇が響いているとみられ、収益基盤の再構築が急務の状況です。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 152億円 | 143億円 | 133億円 | 130億円 | 119億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 2億円 | 1000万円 | -39万円 | -3億円 |
| 利益率(%) | 4.6% | 1.3% | 0.0% | -0.0% | -2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 1億円 | -0.1億円 | -7.8億円 | -4.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の売上高は減少傾向にあり、それに伴い売上総利益も減少しています。売上総利益率は約44〜45%で推移していますが、営業赤字となっており、販管費の負担が重い状況が見て取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 130億円 | 119億円 |
| 売上総利益 | 59億円 | 53億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.2% | 44.4% |
| 営業利益 | -400万円 | -3億円 |
| 営業利益率(%) | -0.0% | -2.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が18億円(構成比32%)、広告宣伝費及び販売促進費が14億円(同25%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各事業とも売上高は前期から減少しています。特に主力の一つである通信販売事業の落ち込みが大きく、販売促進商品の不振や季節商品の伸び悩みが響きました。店舗販売事業も総合店や新規出店の靴専門店は堅調だったものの、季節商品の苦戦や競合店舗の影響により減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 通信販売事業 | 61億円 | 52億円 |
| 店舗販売事業 | 66億円 | 65億円 |
| 卸販売事業 | 2億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 130億円 | 119億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる「事業検討型」です。本業が低迷し、資産の取り崩し等で資金を捻出し借入金返済等に充てている、事業の見直しが迫られる状況です。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産の増加等に起因している部分もあり、必ずしも業績悪化のみを意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2億円 | -0.9億円 |
| 投資CF | -70万円 | 23億円 |
| 財務CF | -3億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.6%となっており、いずれもスタンダード市場の平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社訓「人の生命は限りがある。会社の生命を永遠のものにして、次の時代のための礎となろう。」に基づき、「お客様に支持され、社会に貢献し、世の中に必要とされ、そして従業員の拠り所となる会社であり続けること。」を経営の基本方針とし、持続的な成長を目指しています。また、「会社は100%世の中のためにある」という精神を磨き、全てのステークホルダーから必要とされる価値を生み続けることを使命としています。
■(2) 企業文化
企業行動原理として、「お客様志向に徹する」「誠実・公正な行動」「社会貢献と調和」「人間性尊重」を掲げています。常にお客様に誠心誠意、感謝の心をもって接し、真摯な姿勢でニーズに耳を傾けるとともに、「驚き」「楽しさ」「満足感」をお届けすることを重視しています。また、ゆとりと心の豊かさを大切にし、バイタリティ溢れる働き甲斐のある企業風土を築き上げることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、『2026中期経営計画(2024~2026年度)』を策定し、事業環境の変化に対応する収益モデルを作り上げ、強靭な企業体質を確立させる3か年と位置付けています。長期安定的な企業価値の向上と財務基盤の強化を目指し、以下の数値目標を掲げています。
* 自己資本利益率(ROE):5%以上
* 自己資本比率:47%
■(4) 成長戦略と重点施策
「ローコスト経営の徹底」および「未来への土台づくり」を基本戦略としています。固定費の削減や業務効率化を徹底し筋肉質な経営体質をつくるとともに、オリジナル商品の開発強化を第一義に据えています。機能性など付加価値のある商品開発やバリエーションの充実、開発体制の見直しによるリードタイムの短縮を図る方針です。さらに、ECを中心に消費者との接点を拡大し、カタログの最適化やデジタル領域への広告強化により収益向上に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「企業は人で決まる」との考えのもと、多様な価値観を持った人材が集い、活かすことができる環境づくりに取り組んでいます。中長期的な成長の鍵は人材にあるとし、多様な経験を持つ人材を積極的に採用し、性別や国籍等に関わりなく同一の基準で登用を行っています。また、仕事を通じて従業員の能力を開発する環境をつくり、ニューノーマル時代を見据えた働き方改革やデジタル技術を使った仕組みにより、明るく働きやすい職場を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.5歳 | 17.0年 | 4,850,000円 |
※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.1% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女の賃金の差異(全労働者) | 58.1% |
| 男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 72.7% |
| 男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 97.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、係長以上に占める女性の割合(24%)、年度採用者に占める新卒採用割合(50%)、社員の年次有給休暇平均取得日数増加率(26%増)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 生産国の経済情勢・カントリーリスク
同社グループが販売するオリジナル商品は「安さ」を実現するため海外の工場に生産を委託しており、特に中国への依存度が高くなっています。そのため、中国の政治情勢および経済環境、人民元相場などに著しい変化が生じた場合、商品調達に支障をきたし、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替相場・金利変動リスク
海外での生産委託による輸入取引は米ドル建て決済のため、急激な円安などの為替変動は仕入コストを押し上げる要因となります。また、事業拡大に伴う設備投資等を借入金で調達しているため、市場金利が大幅に上昇した場合には支払利息の増加を招き、財務状況や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 在庫の長期滞留・評価減リスク
靴や衣料等の季節商品を多数取り扱い、サイズやカラーなどの商品管理単位(SKU)が多いのが特徴です。そのため、販売予測の精度向上や適正な在庫水準の維持に努めていますが、季節要因や流行の変化により販売が低迷した場合は、商品の長期滞留や評価減が発生し、収益を圧迫するリスクがあります。
■(4) 顧客情報の漏洩リスク
通信販売や店舗販売等において多数の顧客情報を保有しています。プライバシーマークの取得やセキュリティ対策等、情報管理の徹底を図っていますが、不正アクセスやサイバー攻撃等により顧客情報が外部に漏洩した場合、損害賠償責任の発生や社会的信用の失墜により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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