岩手銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岩手銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する岩手銀行は、岩手県を地盤として銀行業務を中心に、リース業務やクレジットカード業務などの金融サービスを幅広く展開しています。直近の業績では、資金運用収益や株式等売却益の増加を背景に、経常収益および経常利益ともに前年度から大幅な増収増益を達成し、堅調な推移を見せています。


※本記事は、岩手銀行の有価証券報告書(第144期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 岩手銀行ってどんな会社?


同社は岩手県を中心とした地域社会の発展に貢献し、多様な金融サービスを展開する地方銀行です。

(1) 会社概要


1932年に岩手殖産銀行として設立され、1960年に現在の岩手銀行へと行名を改称しました。1974年に東京証券取引所市場第一部に指定され、その後も証券投資信託や損害保険の窓口販売業務など取扱業務を順次拡大しています。2022年には東証の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

従業員数は連結で1,365名、単体で1,264名です。大株主については、筆頭株主が資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっています。第3位にはQRファンド投資事業有限責任組合が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.25%
日本カストディ銀行(信託口) 4.23%
QRファンド投資事業有限責任組合 3.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役頭取は岩山徹氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
岩山徹 取締役頭取(代表取締役) 1988年4月同行入行。市場金融部長、東京営業部長などを歴任。常務執行役員総合企画部長を経て、2022年6月より現職。
石川健正 取締役専務執行役員 1984年4月同行入行。一戸支店長、市場金融部長、東京営業部長などを歴任。常務取締役を経て、2023年6月より現職。
岸真英 取締役常務執行役員 1987年4月同行入行。審査部長、本店営業部長などを経て、2022年6月に取締役常務執行役員に就任。2024年4月より現職。
菊地文彦 取締役常務執行役員 1989年4月同行入行。平舘支店長や総合企画部付部長などを歴任し、manordaいわて代表取締役を経て、2022年6月より現職。
菅原和宏 取締役常務執行役員 1989年4月同行入行。紫波支店長、二戸支店長、人事部長などを歴任し、執行役員人事部長を経て、2024年4月より現職。
松本真一 取締役監査等委員 1989年4月同行入行。リスク統括部長、市場金融部長などを経て、執行役員東京営業部長を務め、2023年6月より現職。


社外取締役は、宮野谷篤(元日本銀行理事)、髙橋豊(高源電機代表取締役社長)、阿部俊徳(元東北電力取締役副社長副社長執行役員)、菅原悦子(元岩手大学理事・副学長)、渡辺正和(渡辺正和法律事務所開設)、前田千香子(焙茶工房しゃおしゃん開業)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」「クレジットカード業・信用保証業」および「その他」事業を展開しています。

銀行業

同社グループの中心的な事業として、本店および支店などの各営業拠点を通じて、預金業務や貸出業務をはじめ、内国為替、外国為替、商品有価証券の売買、信託業務などの多様な金融サービスを提供しています。地域の顧客に対する資金調達や資産形成の支援を担っています。

収益は、主に貸出金に対する利息や有価証券の利息配当金、為替手数料や各種代理業務にかかる手数料などから得ています。事業の運営は同社が主体となって行い、地域経済を支える中核的な役割を果たしています。

リース業

リース業務等を展開しており、企業などの顧客が必要とする機械や設備などの資産を代わりに調達し、長期間にわたって賃貸するサービスを提供しています。顧客の設備投資負担を軽減し、効率的な資金運用を幅広く支援しています。

収益は、顧客から定期的に受け取るリース料収入などによって構成されています。この事業の運営は、同社の連結子会社であるいわぎんリースが担っています。

クレジットカード業・信用保証業

クレジットカードの迅速な発行や利用促進を図るクレジットカード業務に加え、個人や企業が融資を受ける際の信用を補完する信用保証業務などを展開しています。顧客の消費活動の活性化や円滑な資金調達を支援しています。

収益は、クレジットカードの利用に伴う加盟店からの手数料や、信用保証の対価として受け取る保証料などから得ています。運営は連結子会社であるいわぎんディーシーカードおよびいわぎんクレジットサービスが行っています。

その他

金融事業の枠を超えた領域で、コンサルティング業務や地域商社業務、投資ファンドの運営を通じた投資業務などを多角的に展開しています。地域企業の抱える経営課題の解決や新たなビジネスの創出をワンストップで支援しています。

収益は、各種コンサルティングの提供に対する報酬や、再生可能エネルギー事業収入、投資ファンドの管理報酬収入などから得ています。運営はいわぎんリサーチ&コンサルティング、manordaいわて、いわぎん未来投資、いわぎん事業創造キャピタルの連結子会社4社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の連結業績を見ると、売上高にあたる経常収益のデータは一部記載がありませんが、経常利益は直近2期間で順調な増益を達成しています。親会社所有者帰属の当期利益に関しても着実な成長を続けており、資金運用収益などの拡大が業績を牽引していることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益(または売上高) - - - - -
経常利益 78億円 65億円 70億円 98億円 129億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 49億円 51億円 41億円 69億円 90億円

(2) 損益計算書


売上高や売上総利益のデータは提供されていませんが、経常利益は直近の期間において大きく増加しています。資金運用や資産形成ビジネスの拡大、さらには有価証券ポートフォリオの再構築などが利益水準の押し上げに寄与していると考えられます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
経常利益 97億円 128億円
経常利益率(%) - -

(3) セグメント収益


各セグメントの経常収益を見ると、主力である銀行業が資金運用収益の増加などを背景に大幅な増収となっています。リース業も堅調に推移し、その他事業も増収を果たしていますが、クレジットカード業・信用保証業は減収傾向にあります。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
銀行業 433億円 714億円
リース業 46億円 48億円
クレジットカード業・信用保証業 8億円 7億円
その他 6億円 7億円
調整額 -1億円 -0.4億円
連結(合計) 492億円 775億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動と投資活動の双方でキャッシュを創出し、その資金で借入金の返済や配当の支払いなどを進める改善型のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -1,524億円 226億円
投資CF -908億円 497億円
財務CF -16億円 -27億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も4.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「地域社会の発展に貢献する」「健全経営に徹する」という経営理念を掲げています。地域のリーディングカンパニーとして社会の発展に持続的に貢献するとともに、役職員一人ひとりが同社グループで働くことに誇りを持てる職場であり続けることを目指しています。

(2) 企業文化


環境変化の激しい時代においても失敗を恐れず挑戦し、いかなる環境下においても地域を支え続けることのできる強固な経営基盤の確立に取り組む文化があります。ステークホルダーおよび市場からの信頼をより確かなものにすべく、全機能やリソースを結集して課題解決に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2023年4月から2033年3月までの10年間における長期ビジョンとして、「お客さまの課題解決と地域社会の持続的成長を牽引する価値共創カンパニー」を掲げています。2032年度には連結当期純利益180億円以上、連結ROE7.5%以上へのアップデートを図り、持続的な企業価値向上に取り組んでいます。

・2032年度目標:連結当期純利益180億円以上
・2032年度目標:連結ROE7.5%以上
・2035年度目標:連結ROE9%以上

(4) 成長戦略と重点施策


インフレ時代に適応した経営へのシフトチェンジを基本に、「攻め」と「守り」の経営を両立させる「第22次中期経営計画」を策定しています。事業ポートフォリオの変革や地域の成長力引き上げ、組織の強靭化を基本方針とし、金利ビジネスを基軸に置いたリスクアセットの積み上げや地域共創ビジネスの創出に注力しています。

・2028年度目標:連結ROE(東証基準)6%以上
・2028年度目標:連結当期純利益130億円以上
・2028年度目標:単体OHR50%台半ば
・2028年度目標:ROA(コア業務純益ベース)0.5%以上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人こそが最も重要な財産であり、あらゆる価値の源泉である」との人事ポリシーのもと、多様な個性や価値観を尊重し、新たな発想を生み出す風土の醸成に取り組んでいます。自律的な挑戦の機会を提供するとともに、能力や専門性を発揮できる環境を整え、個人と組織がともに成長し続けることを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.5歳 18.1年 7,108,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 46.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 62.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 61.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役席者の新規登用女性割合(45.7%)、健康診断等の結果を踏まえた再検査受診率(92.2%)、習慣的な運動実施率(21.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サイバー攻撃に係るリスク

不正プログラム感染や情報セキュリティの脆弱性による業務停止、情報漏洩および信用の低下が懸念されます。AIを用いたサイバー攻撃の増加や高度化により、万が一システムダウン等が発生した場合には、損害賠償や行政処分等を通じて同社の財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 地域経済動向に影響を受けるリスク

同社は岩手県を中心とした周辺地域を主要な営業基盤としており、人口減少や地域経済の縮小による影響を受けやすい特性を持っています。相続預金の県外流出等による取引基盤の縮小や資金需要の減退が進んだ場合、信用リスクの増加を招き、経営基盤の不安定化につながるおそれがあります。

(3) 景気低迷と市場不安定化リスク

地政学リスクの高まりや急激な金利上昇などを背景としたスタグフレーション懸念により、金融市場が不安定化するリスクがあります。金利変動や有価証券の価格変動、為替変動によって資産価値が減少し、損失を被ることで、同社の財政状態やキャッシュ・フローに重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 大規模自然災害や感染症のリスク

地震や洪水といった大規模な自然災害、あるいは感染症の流行により、店舗の毀損や正常な業務運営に支障が生じる可能性があります。こうした事態が発生した場合、取引先の業況悪化による与信費用の増加や業務の停止を余儀なくされ、同社の業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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