※本記事は、株式会社岩手銀行 の有価証券報告書(第143期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 岩手銀行ってどんな会社?
岩手県を地盤とする地方銀行です。銀行業務を中心に、リースやクレジットカード業務などを含む総合金融サービスを地域に提供しています。
■(1) 会社概要
1932年5月に岩手殖産銀行として設立され、1960年1月に現在の岩手銀行へ行名を変更しました。1973年4月に東京証券取引所市場第2部へ上場し、翌1974年2月に同市場第1部へ指定されました。近年では、2023年7月に投資専門子会社であるいわぎん未来投資を設立するなど、グループ体制の強化を進めています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は1,357人、単体では1,268人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっており、上位は機関投資家が占めています。第3位にはQRファンド投資事業有限責任組合が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 9.54% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 4.92% |
| QRファンド投資事業有限責任組合 | 3.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表者は取締役頭取の岩山 徹氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩 山 徹 | 取締役頭取(代表取締役) | 1988年入行。市場金融部長、東京営業部長、総合企画部長などを歴任。2021年取締役常務執行役員を経て、2022年6月より現職。 |
| 石 川 健 正 | 取締役専務執行役員 | 1984年入行。市場金融部長、東京営業部長などを歴任。2019年常務取締役、2021年取締役常務執行役員を経て、2023年6月より現職。 |
| 岸 真 英 | 取締役常務執行役員 | 1987年入行。審査部長、執行役員本店営業部長などを歴任。2022年取締役常務執行役員となり、2024年4月より現職。 |
| 菊 地 文 彦 | 取締役常務執行役員 | 1989年入行。平舘支店長、総合企画部付部長などを歴任。2020年manordaいわて代表取締役を経て、2022年6月より現職。 |
| 菅 原 和 宏 | 取締役常務執行役員 | 1989年入行。人事部長、執行役員人事部長などを歴任。2023年取締役常務執行役員となり、2024年4月より現職。 |
| 松 本 真 一 | 取締役監査等委員 | 1989年入行。リスク統括部長、市場金融部長、執行役員東京営業部長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、宮野谷 篤(元日本銀行理事)、髙 橋 豊(みちのくクボタ取締役会長)、阿 部 俊 徳(元東北電力副社長)、菅 原 悦 子(岩手大学理事・副学長)、渡 辺 正 和(弁護士)、前 田 千香子(焙茶工房しゃおしゃん代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」「クレジットカード業・信用保証業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業
岩手県を中心に本支店および出張所110カ店を展開し、預金、貸出、内国為替、外国為替、有価証券投資、信託などの銀行業務全般を行っています。グループの中核事業として、地域社会への資金供給や決済機能の提供を担っています。
収益は、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益、および各種手数料収入などから構成されています。運営は主に岩手銀行が行っています。
■(2) リース業
地域のお客さまに対して、各種物件のリース業務を提供しています。企業の設備投資ニーズに対応し、多様なファイナンス手段を提供することで事業活動を支援しています。
収益は、リース契約に基づくリース料収入が主な源泉です。運営は連結子会社のいわぎんリースが行っています。
■(3) クレジットカード業・信用保証業
クレジットカード業務および信用保証業務を行っています。クレジットカードの発行や加盟店業務、個人ローン等の信用保証を通じて、決済の利便性向上や円滑な資金調達をサポートしています。
収益は、クレジットカード利用者からの手数料や年会費、信用保証業務における保証料収入などです。運営は連結子会社のいわぎんディーシーカードおよびいわぎんクレジットサービスが行っています。
■(4) その他
銀行業等の周辺業務として、コンサルティング業務、地域商社業務、投資業務などを行っています。地域の課題解決や新事業創出に向けた支援を展開しています。
収益は、コンサルティング手数料、商品売買益、投資収益などです。運営は、いわぎんリサーチ&コンサルティング、manordaいわて、いわぎん未来投資、いわぎん事業創造キャピタルなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は増収増益となりました。経常収益は、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益が増加したことにより、前期比で増加しました。一方、経常費用は、預金利息などの資金調達費用が増加したことにより、前期比で増加しました。この結果、経常利益は前期比で増加しました。過去5年間で見ると、経常収益は増減を繰り返しながらも、当期は大きく伸長しました。経常利益および当期純利益も、当期に顕著な増加を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 453 | 443 | 476 | 439 | 492 |
| 経常利益(億円) | 62 | 78 | 65 | 70 | 98 |
| 当期純利益(億円) | 29 | 41 | 54 | 42 | 70 |
■(2) 損益計算書
当期は、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益が増加したことにより、経常収益が増加しました。一方で、預金利息などの資金調達費用が増加したことにより、経常費用も増加しました。これらの結果、経常利益および当期純利益は前期と比較して増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 439 | 492 |
| 経常費用 | 369 | 394 |
| 経常利益 | 70 | 98 |
| 当期純利益 | 42 | 70 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
同行の非金利収益である役務取引等収益は、当期において前期比で増加しました。最も規模の大きい「預金・貸出業務」は、前期比で増加しました。次に大きい「代理業務」も、前期比で増加しました。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | - | - |
| 預金・貸出業務 | - | - |
| 為替業務 | - | - |
| 証券関連業務 | - | - |
| 代理業務 | - | - |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、預金を主な源泉とし、地域の中小企業等への融資や有価証券運用を通じて、円滑な決済に必要な水準の流動性を確保しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、貸出金の増加などにより、当年度はマイナスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得支出が売却・償還収入を上回ったことなどにより、当年度はマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いなどにより、当年度はマイナスとなりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | △339 | △1,524 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △470 | △908 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △23 | △16 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は創業以来、「地域社会の発展に貢献する」ならびに「健全経営に徹する」の2つを経営理念として堅持しています。また、長期ビジョンとして「お客さまの課題解決と地域社会の持続的成長を牽引する価値共創カンパニー」を掲げ、10年先のありたい姿として地域社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「人事ポリシー」において「人こそが最も重要な財産であり、あらゆる価値の源泉」であるとし、「職員一人ひとりと銀行がともに成長し続ける」ことを重視しています。この考えのもと、「自律と挑戦」「人材総活躍」「多様な個性・価値観の尊重」を促進し、「チャレンジ性にあふれた企業風土への変革」に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は「第21次中期経営計画~地域価値共創プラン~」に取り組み、高い水準にある自己資本の有効活用と事業ポートフォリオの変革を通じて利益成長軌道をつくりだすことを目指しています。長期目標達成に向けた第1フェーズとして、以下の主要計数目標を設定しています。
* 連結当期純利益:70億円(2025年度計画)
* 連結ROE(株主資本ベース):4%以上(2025年度計画)
* 連結自己資本比率:10%程度(2025年度計画)
* OHR(単体):60%台(2025年度計画)
* 顧客向けサービス業務利益:10億円以上(2025年度計画)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、ソーシャルソリューションビジネスの高度化、盤石な経営基盤の確立、多様な人材が活躍する組織づくりの3つの基本方針を掲げています。具体的には、コンサルティング機能の強化やDX支援、環境ビジネスの推進に加え、アセットアロケーションの変革や店舗運営体制の見直しを進めています。
* デジタル専用店舗「ソラ支店」の新設やアプリ機能の拡充による非対面サービスの強化
* 大和証券との包括的業務提携による資産形成サービスの提供
* 事業承継ファンドの設立準備など、地域企業の事業承継問題への対応強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「多様な人材が働きがいを持ち続ける組織づくり」を掲げ、地域課題を解決できるプロフェッショナル人材の育成や、チャレンジ性にあふれた企業風土への変革に取り組んでいます。また、年功的な考え方から「仕事基準」への転換を図る新人事制度を導入し、多様な個性や価値観を尊重した柔軟な働き方の実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.3歳 | 18.1年 | 6,934,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 7.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 106.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 44.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 59.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 59.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役席者の新規登用女性割合(40.9%)、健康診断等の結果を踏まえた再検査受診率(91.5%)、習慣的な運動実施率(21.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
貸出金等の与信対象先の財政状態が悪化し、債務不履行が生じるリスクです。同社グループでは、景気動向や融資先の経営状況の悪化等により、予想以上に不良債権が増加し、貸倒引当金の積み増しが必要となる可能性があります。これにより、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
■(2) 市場リスク
金利、有価証券価格、為替の変動により、保有する資産の価値が減少したり、収益が低下したりするリスクです。資産と負債の金利・期間のミスマッチがある中で金利が変動することや、保有する債券・株式等の価格下落、外貨建資産・負債の為替変動により損失を被る可能性があり、経営成績等に影響を与える可能性があります。
■(3) 地域経済動向に影響を受けるリスク
同社は岩手県を中心とする地域を主たる営業基盤としています。この地域は人口減少率が高く、人口減少や地域経済の縮小が進行した場合、資金需要の減少や人材確保の困難化、取引先の経営悪化による信用リスクの増加などを招き、経営基盤が不安定となる可能性があります。これらは財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 気候変動に係るリスク
気候変動への対応に伴う移行リスク(炭素税導入や規制強化など)や、自然災害の激甚化による物理的リスク(担保物件の毀損や取引先の事業停止など)があります。これらが想定を超えて顕在化した場合、与信コストの増加や保有資産の価値毀損などにより、同社の財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。