東邦銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東邦銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する福島県地盤の地方銀行です。銀行業を中心に、証券、リース、信用保証などの金融サービス事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加等により経常収益・経常利益ともに増加し、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社東邦銀行 の有価証券報告書(第122期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東邦銀行ってどんな会社?


福島県を地盤とする地方銀行として、預金・貸出等の銀行業務のほか、証券、リース等の金融サービスを提供しています。

(1) 会社概要


1941年に郡山商業銀行、会津銀行、白河瀬谷銀行の3行が合併し設立されました。1973年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌1974年に同第一部へ指定替えとなりました。1985年に東邦リース、東邦信用保証、東邦カードを設立するなどグループ会社を拡充。2015年にはとうほう証券を設立し、金融サービスの多角化を進めています。

連結従業員数は2,018名、単体では1,797名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に株式会社日本カストディ銀行(信託口)です。第3位には明治安田生命保険相互会社が名を連ねており、機関投資家や金融機関が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.21%
日本カストディ銀行(信託口) 4.31%
明治安田生命保険相互会社 3.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役頭取は佐藤稔氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤 稔 (代表取締役)取締役頭取 1983年入行。市場金融部長、取締役総合企画部長兼経営戦略調整室長、本店営業部長、専務取締役事務本部長などを経て、2020年6月より現職。
遠藤 勝利 (代表取締役)専務取締役営業本部長 1988年入行。仙台支店長、執行役員営業本部副本部長、常務執行役員本店営業部長などを経て、2025年3月より現職。
七海 重 貴 常務取締役 1984年入行。白河支店長、上席執行役員東京支店長、常務取締役郡山営業部長、常務取締役人事部長などを経て、2023年9月より現職。
添田 俊 樹 常務取締役 1986年入行。法人営業部長、執行役員営業本部副本部長、常務執行役員会津支店長、常務執行役員営業本部長などを経て、2025年3月より現職。
佐藤 卓 夫 取締役(監査等委員) 1985年入行。総務部長、執行役員業務支援部長、執行役員東京支店長、監査等委員会付役員を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小西雅子(気象予報士・特命教授)、髙島英也(元サッポロビール社長)、河野一郎(元財務省中国財務局長)、久田高正(元預金保険機構理事)、小田徹(元金融財政事情研究会理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「証券業」「リース業」「信用保証業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


福島県内を中心とした本支店および出張所において、預金業務、貸出業務、為替業務およびこれらに付随する業務を行っています。地域に密着した営業活動を展開し、同社グループの中核事業と位置付けられています。

収益は主に、顧客への貸出金利息や有価証券運用による利息配当金、各種手数料などから構成されます。運営は主に東邦銀行が行っています。

(2) 証券業


株式、債券、投資信託などの金融商品取引業務を行っています。顧客の資産運用ニーズに対応した証券サービスを提供しています。

収益は主に、株式や投資信託などの販売手数料や委託手数料などから得ています。運営はとうほう証券が担っています。

(3) リース業


事務機器、産業機械、自動車などの動産を中心としたリース業務および割賦販売業務を行っています。企業の設備投資ニーズに対応しています。

収益は主に、リース契約に基づくリース料収入などから構成されます。運営は東邦リースが行っています。

(4) 信用保証業


住宅ローンなどを利用する顧客の債務保証業務を行っています。金融関連業務として、銀行業務を補完する役割を担っています。

収益は主に、保証委託契約に基づく保証料収入です。運営は東邦信用保証が行っています。

(5) その他


事業承継・M&Aの相談業務、クレジットカード業務、システム開発・運用、印刷・製本業務など、多岐にわたる金融関連サービスを提供しています。

収益は、コンサルティング手数料、クレジットカードの手数料、システム開発受託料などから得ています。運営は、東邦コンサルティングパートナーズ、東邦カード、東邦クレジットサービス、東邦情報システム、とうほうスマイルなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移です。経常収益は2021年3月期から2023年3月期にかけて横ばい傾向でしたが、直近の2025年3月期には大きく増加しました。経常利益と当期純利益も、2021年3月期は赤字でしたが翌期以降は黒字化し、2025年3月期にはさらに利益を伸ばしています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 583億円 602億円 587億円 590億円 704億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 -41億円 102億円 67億円 83億円 112億円
利益率(%) -7.0% 16.9% 11.4% 14.1% 15.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -47億円 68億円 45億円 53億円 74億円

(2) 損益計算書


2024年3月期と2025年3月期の比較です。経常収益は約114億円増加し、経常利益も約29億円増加しています。これは、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加が主な要因です。利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 590億円 704億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 83億円 112億円
営業利益率(%) 14.1% 15.9%


経常費用のうち、営業経費が360億円(構成比61%)、その他業務費用が105億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


銀行業が全体の収益の大半を占めており、当期は貸出金利息等の増加により増収となりました。リース業も堅調に推移し増収となっています。その他のセグメントも概ね安定的に推移しており、グループ全体として収益基盤の強化が進んでいます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
銀行業 490億円 590億円
証券業 9億円 9億円
リース業 69億円 81億円
信用保証業 8億円 9億円
その他 13億円 15億円
調整額 -0億円 -0億円
連結(合計) 590億円 704億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な「末期型(事業拡大に伴う資産増加)」です。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,143億円 -2,072億円
投資CF -3,028億円 -3,503億円
財務CF -17億円 -28億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は3.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、パーパス(存在意義)として「すべてを地域のために」を掲げています。また、将来のありたい姿を示すビジョンとして「地域社会に貢献する会社へ~金融サービスの枠を超えて~」を設定し、福島県を地盤とする地域金融機関として地域社会の持続的成長に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「地域・お客さまとの価値共創」と「当行グループの成長戦略」を基本方針とし、サステナビリティの推進やDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進、多様な人材の活躍推進(DE&I)を重視しています。また、法令遵守やリスク管理の徹底を図りつつ、地域社会とともに歩む「良き企業市民」としての文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2024年4月から2030年3月までの長期経営計画「TX PLAN 2030」を推進しています。「お客さま1社1社の事業価値向上」と「お客さま一人ひとりのゆたかな暮らしづくり」をゴールに掲げています。

* 2026年度計画:コア業務純益190億円、当期純利益105億円、ROE 5.0%
* 2029年度計画:コア業務純益275億円、当期純利益170億円、ROE 7.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「地域・お客さまとの価値共創」に向け、10TARGETS(人材不足対応、脱炭素支援、金融コンサルティング等)を展開します。また、グループの成長戦略として、事業性融資やコンサルティングなどの3つの成長ドライバを加速させます。人材不足解消に向けた新会社設立や、デジタル化による生産性向上にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自律的なキャリア形成」と「コンサルティング営業力強化」を掲げ、従業員が主体的にキャリアをデザインできる環境を整備しています。DE&Iを推進し、多様な人材が活躍できる組織づくりを目指すとともに、人的資本への投資を企業価値向上の柱の一つと位置付け、賃上げや研修の充実を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.4歳 18.0年 6,671,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 137.5%
男女賃金差異(全労働者) 50.9%
男女賃金差異(正規) 55.3%
男女賃金差異(非正規) 72.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役席者比率(26.3%)、女性総合職の平均勤続年数(15.3年)、障がい者雇用率(2.72%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 世界・日本経済の低迷


世界的な景気後退や日本経済の低迷により企業業績が悪化し、貸出需要の低迷や与信費用の増加が生じることで、同社の収益や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、リスク管理の高度化やストレス時の対応力強化を図っています。

(2) 人口減少、少子高齢化


主要営業基盤である福島県の人口減少や少子高齢化の進行により、地域経済の規模が縮小し、同社の収益力が低下するリスクがあります。また、労働力不足による人材確保の困難化も懸念されます。これに対し、人材関連ビジネスの強化や金融コンサルティングによる地域活性化に取り組んでいます。

(3) 気候変動リスク


気候変動に伴う自然災害の激甚化により、同社店舗の被災や取引先の業績悪化、担保価値の毀損等が発生する物理的リスクがあります。また、脱炭素社会への移行に伴う産業構造の変化が取引先に影響を与える移行リスクもあります。これに対し、取引先の脱炭素化支援やサステナブルファイナンスの推進を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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