※本記事は、スルガ銀行株式会社の有価証券報告書(第215期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スルガ銀行ってどんな会社?
同社は銀行業務を中心に、多様な金融サービスを提供する地方銀行です。
■(1) 会社概要
1895年に根方銀行として改組し、1912年に駿河銀行へ名称を変更しました。その後、周辺の銀行を合併し規模を拡大、1965年には東京証券取引所市場第一部に株式を上場しました。2004年に現在のスルガ銀行へと商号を変更し、クレジットカードや貸金などの金融関連会社を子会社化して事業の幅を広げています。
従業員数は連結で1,383名、単体で1,169名です。筆頭株主は資本業務提携を結んでいるクレディセゾンで、第2位および第3位には資産管理や保険業務を行う金融機関が名を連ねており、多様な金融関連企業との強固な協力体制のもとで安定的な事業基盤を構築して価値提供に取り組んでいます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| クレディセゾン | 17.19% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.95% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 4.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は加藤広亮氏が務めています。社外取締役の比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤広亮 | 代表取締役社長 | ボストン・コンサルティング・グループのシニア・パートナー等を経て、ソニー生命保険代表取締役社長を歴任。2020年より同社代表取締役副社長に就任し、2023年より現職。 |
| 戸谷友樹 | 代表取締役専務執行役員コミュニティバンク本部長 | 1989年同社入社。秦野支店長、人事部長、営業本部長などを経て2020年に取締役に就任。2023年に取締役常務執行役員を務め、2024年より現職。 |
| 堤智亮 | 取締役常務執行役員 | 1990年同社入社。伊東支店長、審査部長、審査本部長などを経て2019年に取締役に就任。常務取締役CCOなどを歴任し、2026年より現職。 |
| 佐藤富士夫 | 取締役常務執行役員総合企画本部長兼CCO | 1994年同社入社。富士鷹岡支店長、コンプライアンス統括部長などを歴任。2025年に取締役常務執行役員総合企画本部長に就任し、2026年より現職。 |
| 髙橋直樹 | 取締役 | 富士銀行(現みずほ銀行)に入行し常務執行役員等を経験。クレディセゾンにて代表取締役副社長等を歴任し、2023年より同社社外取締役、2024年より現職。 |
社外取締役は、草木頼幸(大和証券元専務取締役)、山本幸央(三井生命保険元代表取締役社長)、岩木川雅司(SMBC日興証券元代表取締役)、行方洋一(行方国際法律事務所代表弁護士)、鈴木素子(鈴木素子税理士事務所代表)、澤由紀子(芝浦メカトロニクス社外取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行」および「その他」事業を展開しています。
■銀行
同社の本店および支店等において、預金、貸出、内国為替、証券や投資信託、保険の窓口販売などの金融サービスを顧客に提供しています。中心業務として位置づけており、個人や中小企業向けを中心とした小口分散化されたポートフォリオを構築しています。
収益は、顧客に対する貸出金利息や各種手数料によって構成されています。運営は親会社である同社が行っており、顧客の多様な金融ニーズに応えるための取引増進に積極的に取り組んでいます。
■その他
貸金業務、リース業務、保証業務、事務処理代行業務、システム開発業務、人材派遣業務、印刷業務およびクレジットカード業務など、銀行業務を補完する多様な周辺サービスを提供しています。
収益は、リース取引の利用料やクレジットカードの決済手数料、貸出金に対する保証料などから得られます。ダイレクトワンが貸金やリースを、スルガビジネスソリューションが事務代行やシステム開発を担当するなど、各子会社が専門性を活かして運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、経常利益および親会社所有者帰属の当期利益は一貫して増加傾向にあります。事業基盤の再構築と効率的な運営が実を結び、着実な増益トレンドを維持して収益力を高めています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 106億円 | 133億円 | 206億円 | 262億円 | 355億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 79億円 | 95億円 | 150億円 | 198億円 | 340億円 |
■(3) セグメント収益
銀行セグメントが収益の大部分を占めており、前期から大きく成長しています。その他事業も着実に収益を伸ばしており、全体として好調な推移を示しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行 | 830億円 | 1009億円 |
| その他 | 84億円 | 91億円 |
| 調整額 | -4億円 | -0.3億円 |
| 連結(合計) | 911億円 | 1099億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
キャッシュ・フローの状況を見ると、営業CF、投資CF、財務CFのすべてがマイナスとなる「末期型(事業拡大に伴う資産増加)」の傾向を示しています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は9.1%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2085億円 | -1481億円 |
| 投資CF | -564億円 | -817億円 |
| 財務CF | -159億円 | -241億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「あってよかった、出会えてよかった、と思われる存在でありたい。」という企業理念を掲げています。この理念には、顧客本位の姿勢を貫き、同社ならではの付加価値を提供したいという想いが込められています。また、顧客だけでなく社員やその家族も大切にし、社会全体に価値を提供できる企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、役職員の全ての行動や判断の基準となる「コンプライアンス憲章」を制定しています。誠実かつ公正で透明性の高い企業活動を実践し、法令やルールだけでなく社会規範や銀行の公共性に配慮した倫理的な事業活動を重んじています。健全な組織風土・企業文化を築くことを重視し、ステークホルダーとの適切な協働を通じて成長を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2026年度~2028年度)において、「最もワクワクする銀行」を目指すとともに、最終年度である2028年度の具体的な目標を定めています。質の向上と独自の価値提供を通じて、長期的なありたい姿の実現を目指して経営を進めています。
* 連結ROE(自己資本利益率):11.0%以上
* 自己資本比率(バーゼルⅢ最終化ベース):実質10%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
同社の強みである多様な事業領域を活用した「八ヶ岳モデル」を深化させ、柔軟な目線で新たな価値を創り出す「Pivot(転軸)」に取り組みます。また、クレディセゾンとの協業を深める「アライアンス戦略」を成長領域として位置づけ、さらに全社員でAIを活用する「AX(AIトランスフォーメーション)推進」によって業務効率を約30%向上させる施策を展開しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業理念や中期経営計画の達成に向けて、高い倫理観と顧客本位の業務運営ができる人材の育成に注力しています。研修や自己啓発による専門スキルの習得に加え、全社員に向けたリスキリング支援を推進しています。また、育児や介護と仕事の両立支援、女性リーダーの育成、ベテラン社員の活躍機会の提供など、多様な人材がやりがいを持って働ける環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.2歳 | 20.9年 | 7,974,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 48.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 62.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 40.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員へのエンゲージメント調査の総合満足度(64.9%)、役職者に占める女性社員比率(32.8%)、新規人的資本投資額の3年間累計(2.8億円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不良債権・与信関連費用の増加
日本経済の低迷や特定業種の業績悪化、不動産価格の下落などにより、企業や個人の倒産・破綻が増加した場合、与信関連費用や不良債権処理額が増加するリスクがあります。とくに投資用不動産融資において、不動産市況の悪化が債務者の返済能力に影響を与える可能性があります。
■(2) コンプライアンスの不徹底や内部統制の不備
コンプライアンスの不徹底に起因して多額の損害賠償請求訴訟等が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、リスク管理や内部監査体制が適切に機能せず、リスクの予兆を見逃すことで間接的に損失が発生するリスクを認識しています。
■(3) システム障害やサイバー攻撃の発生
災害や機器の故障、プログラムの不備によりコンピューターシステムが停止・誤作動した場合や、サイバー攻撃等による情報の破壊・流出が発生した場合、決済機能やサービスが停止し、社会的信用が失墜することで業績に重大な影響を与える可能性があります。
■(4) 規制・制度変更への対応
現行の法律、規則、政策、実務慣行などに従って業務を行っていますが、将来における規制や制度の変更が業務遂行に影響を及ぼすリスクがあります。年金制度の変更や税制の見直し、自己資本比率規制の変更などが財務状況や経営に影響を与える可能性があります。



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