#記事タイトル:スルガ銀行転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、スルガ銀行株式会社 の有価証券報告書(第214期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スルガ銀行ってどんな会社?
静岡県・神奈川県を主地盤とする地方銀行です。個人ローンに強みを持ち、他業種との提携戦略を推進しています。
■(1) 会社概要
1895年に株式会社根方銀行として設立され、1912年に株式会社駿河銀行へ改称しました。1965年には東京証券取引所市場第一部へ上場を果たし、2004年に現在のスルガ銀行株式会社へ商号変更しています。2012年には貸金業務を営むダイレクトワンを子会社化するなど、グループ体制を強化してきました。
連結従業員数は1,405名、単体では1,172名です。筆頭株主は資本業務提携先である株式会社クレディセゾン(19.08%)で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(9.31%)、第3位は生命保険事業を展開する明治安田生命保険相互会社(3.99%)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| クレディセゾン | 19.08% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.31% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 3.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は加藤広亮氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤 広亮 | 代表取締役社長 | 日本生命保険、ボストン・コンサルティング・グループを経て、アフラック生命保険常務執行役員、ソニー生命保険社長等を歴任。2020年同社代表取締役副社長、2023年6月より現職。 |
| 戸谷 友樹 | 代表取締役専務執行役員コミュニティバンク本部長 | 1989年同社入社。秦野支店長、執行役員営業本部長、神奈川コミュニティ・バンク長、取締役常務執行役員コミュニティバンク長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 堤 智亮 | 取締役専務執行役員コンプライアンス・リスク管理本部長兼CCO | 1990年同社入社。経営管理部統合リスク部長、執行役員審査部長、取締役上席執行役員審査本部長、常務取締役CCO等を経て、2025年4月より現職。 |
| 宮島 健 | 取締役常務執行役員 | 1989年同社入社。横浜日吉支店長、執行役員経営企画部長、上席執行役員経営管理本部長、取締役常務執行役員IT・オペレーション本部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 髙橋 直樹 | 取締役 | 富士銀行(現みずほ銀行)入行、みずほコーポレート銀行常務執行役員を経て、クレディセゾン代表取締役兼副社長執行役員CHO。2024年6月より現職。 |
| 秋田 達也 | 取締役監査等委員 | 1985年同社入社。経営企画部統合リスク管理部長、執行役員経営管理部長、上席執行役員総合企画本部長等を経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、草木頼幸(元大和総研社長)、山本幸央(元三井生命保険社長)、野下えみ(弁護士・元検察官)、行方洋一(弁護士・元金融庁)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行
本店および支店等において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、証券・投資信託・保険の窓口販売等を行っています。これらの業務の取引増進に積極的に取り組み、同社グループの中心業務と位置づけています。
収益は主に、貸出金利息、有価証券利息配当金などの資金運用収益や、各種手数料などの役務取引等収益から構成されます。運営は主にスルガ銀行が行っています。
■(2) その他
銀行業務以外の金融サービスおよび関連業務を行っています。具体的には、人材派遣業務、貸金・リース・保証業務、印刷業務、クレジットカード業務、投資業務、事務処理代行・システム開発業務などが含まれます。
収益は、貸金利息、リース料、保証料、クレジットカード手数料、業務委託料などから得ています。運営は、スルガスタッフサービス(人材派遣)、ダイレクトワン(貸金等)、エイ・ピー・アイ(印刷)、スルガカード(クレカ)、スルガ・キャピタル(投資)、スルガコンピューターサービス(事務代行等)が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は、経常収益が前期比で微減となったものの、経常費用の減少が寄与し、経常利益は大幅に増加しました。これは、主に国債等債券償還損の減少が経常費用を押し下げたことによるものです。親会社株主に帰属する当期純利益も、同様に増加しました。過去5年間の業績を見ると、当期は経常利益・当期純利益ともに回復傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 1,000 | 921 | 924 | 914 | 911 |
| 経常利益(億円) | 231 | 106 | 133 | 206 | 262 |
| 当期純利益(億円) | 214 | 80 | 106 | 154 | 202 |
■(2) 損益計算書
当期の経常収益は前期比で減少しましたが、経常費用が大幅に減少したことにより、経常利益は前期比で増加しました。これは、主に国債等債券償還損の減少が経常費用を押し下げたことによるものです。親会社株主に帰属する当期純利益も、前期比で増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 914 | 911 |
| 経常費用 | 708 | 649 |
| 経常利益 | 206 | 262 |
| 当期純利益 | 154 | 202 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
同行の非金利収益である役務取引等収益は、当期において前期比で増加しました。これは、主に預金・貸出業務の収益増加が牽引した結果です。預金・貸出業務に次いで、代理業務が収益に貢献しています。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 75 | 87 |
| 預金・貸出業務 | 42 | 54 |
| 為替業務 | 12 | 12 |
| 代理業務 | 14 | 14 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
スルガ銀行は、貸出金の増加を主因として営業活動によるキャッシュ・フローは支出超過となりました。有価証券の取得等により、投資活動によるキャッシュ・フローも支出超過となっています。また、自己株式の取得等により、財務活動によるキャッシュ・フローも支出超過となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | △931 | △2,085 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | 451 | △564 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △83 | △159 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「あってよかった、出会えてよかった、と思われる存在でありたい。」という企業理念を掲げています。これは若手・中堅社員による「ジュニアボード」が中心となりボトムアップで策定されたもので、お客さま本位の企業でありたい、同社ならではの付加価値を提供したい、社員も大切にする企業でありたいという想いが込められています。
■(2) 企業文化
同社は、グループ社員のすべての行動・判断の基準となる「コンプライアンス憲章」を策定しています。また、企業理念の刷新にあたっては、ハラスメントの撲滅や、社員やその家族を大切にするという声を反映させるなど、ボトムアップの活動を推進する風土があります。お客さまだけでなく社員も大切にする企業文化の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画“Re:Start 2025”において、コンプライアンスの徹底とリスク・リターンの適正なコントロールを行う態勢を構築し、持続可能な新たなビジネスモデルを展開することを目指しています。
* 経常利益(単体):170億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:135億円
* 自己資本比率(単体)(バーゼルⅢ最終化ベース):実質10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画“Re:Start 2025 Phase 2”において、「リテール・ソリューション事業の進化」「持続可能な収益構造の構築」「リスクテイクとリスク分散」を経営戦略として掲げています。
* コミュニティバンク、ダイレクトバンク、首都圏・広域バンク、市場ファイナンス本部の4つのプロフィットセンターへの再編
* クレディセゾンとの資本業務提携による不動産ファイナンス、住宅ローン、クレジットカード領域での協業拡大
* ITプラットフォームやDXへの積極的な投資
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高い倫理観とお客さま本位の業務運営ができる人材の育成を目指し、OJT、Off-JT、自己啓発支援を組み合わせています。特にリスキリング支援や専門領域の人材育成に注力しています。また、女性経営幹部の育成、仕事と育児の両立支援、ベテラン社員の活躍支援など、ダイバーシティ推進や自律的なキャリア形成支援を通じて、社員がいきいきと働ける環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.3歳 | 21.0年 | 7,673,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.1% |
| 男性育児休業取得率 | 108.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 47.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 62.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 41.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役職者に占める女性社員比率(32.3%)、全社員へのエンゲージメント調査の総合満足度(60.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
日本経済の低迷による企業倒産や個人破綻の増加、特定業種の業績低迷、不動産価値の下落などが、与信関連費用や不良債権額を増加させる可能性があります。特に同社の貸出金は不動産担保融資が多く、また投資用不動産融資の比率が高いため、不動産市況や入居率の悪化が業績に影響を与える可能性があります。
■(2) コンプライアンス・リスク
コンプライアンスの不徹底により、多額の損害賠償請求訴訟等が提起された場合、同社グループの業務運営や業績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、リスク管理・内部監査体制が適切に機能しないことによるリスクの見落とし等も懸念されます。
■(3) 金利ある世界
金利上昇局面において、変動金利比率が高い同社の貸出金ポートフォリオには一定の優位性が期待できる一方、インフレや需要、賃金等への複合的な影響により変化が予想されます。預金市場での金利競争激化など、複合的な変化への対応が求められます。
■(4) オペレーショナル・リスク
事務処理の不備や事故、システム障害やサイバー攻撃による情報漏えい、顧客情報の管理不備、風評被害などが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償費用の発生により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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