八十二長野銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

八十二長野銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、銀行業務を中心にリース業務などの金融サービスを展開。2025年3月期の連結業績は、資金運用収益や株式等関係損益の増加等により、経常収益は前期比増収、経常利益も増益となりました。長野県を地盤とするリーディングカンパニーとして、地域経済の発展に貢献しています。


※本記事は、株式会社八十二銀行 の有価証券報告書(第142期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

なお、八十二銀行は2026年1月1日より長野銀行と合併し、商号を「株式会社八十二長野銀行」に変更しています。

1. 八十二銀行ってどんな会社?


長野県を地盤とする地方銀行のリーディングカンパニーです。銀行業務を中心に、リースや証券などの金融サービスを総合的に展開しています。

(1) 会社概要


1931年、第十九銀行と六十三銀行が合併し、八十二銀行として設立されました。1971年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌年第一部へ指定替えとなりました。1983年には八十二信用保証、1984年には八十二キャピタルを設立するなどグループ会社を拡充。2023年には長野銀行を完全子会社化し、経営統合を行いました。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は4,121名(単体3,482名)です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には日本生命保険相互会社が名を連ねています。安定した株主構成のもと、長野県の経済を支える地域金融機関として確固たる地位を築いています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.21%
日本カストディ銀行(信託口) 6.70%
日本生命保険相互会社 2.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役には、取締役頭取の松下正樹氏と取締役副頭取の樋代章平氏が就任しています。社外取締役は4名選任されており、取締役全体の約28.6%を占めています。

氏名 役職 主な経歴
松下 正樹 取締役頭取(代表取締役)頭取執行役員経営会議議長 1982年入行。企画部長、執行役員諏訪エリア諏訪支店長、常務執行役員東京営業部長・本店営業部長、常務取締役、取締役副頭取を経て、2022年6月より現職。
浅井 隆彦 取締役会長会長執行役員取締役会議長 1987年入行。リスク統括部長、融資部長、執行役員融資部長、常務執行役員本店営業部長、常務取締役、取締役副頭取等を経て、2023年6月より現職。長野銀行取締役も兼任。
樋代 章平 取締役副頭取(代表取締役)副頭取執行役員 1988年入行。企画部長、執行役員企画部長、常務執行役員本店営業部長、常務取締役、専務取締役専務執行役員を経て、2023年6月より現職。
中村 誠 取締役常務執行役員 1990年入行。金融市場部長、執行役員金融市場部長・業務統括部長、常務執行役員本店営業部長を経て、2023年6月より現職。
西澤 仁志 取締役 1985年日本興業銀行入行。2014年長野銀行入行後、取締役証券国際部長、常務取締役を経て2019年同行取締役頭取に就任。2023年6月より現職。


社外取締役は、田下佳代(弁護士)、濱野京(元日本貿易振興機構理事)、神澤鋭二(キッセイコムテック代表取締役会長)、金井孝行(元西本Wismettacホールディングス社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


八十二銀行および長野銀行の本店ほか支店において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務等を行っています。また、クレジットカード業務、信用保証業務、債権管理回収業務なども展開しており、グループの中核事業として地域社会に金融サービスを提供しています。

収益は主に、顧客からの貸出金利息や手数料収入等によって得ています。運営は、同社および株式会社長野銀行が行っているほか、クレジットカード業務は株式会社八十二カードおよび長野カード株式会社、信用保証業務は八十二信用保証株式会社、債権回収業務はやまびこ債権回収株式会社がそれぞれ担当しています。

(2) リース業


リース業務を行っています。企業の設備投資ニーズに対応し、多様な物件のリースを通じて事業活動を支援しています。

収益は、顧客からのリース料収入等によって得ています。運営は、八十二リース株式会社、株式会社ながぎんリースおよび八十二オートリース株式会社が行っています。

その他


証券業務、投資業務、投資運用業、地域商社事業および電力(発電)事業などを行っています。

収益は、有価証券の売買益や手数料、投資収益等によって得ています。運営は、八十二証券株式会社、八十二キャピタル株式会社、八十二インベストメント株式会社、八十二アセットマネジメント株式会社、八十二Link Nagano株式会社などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。経常収益は、資金運用収益の増加を主因として前期比約420億円増加し、2,542億円となりました。一方、経常費用は、資金調達費用の増加などを主因として前期比約134億円増加し、1,904億円となりました。この結果、経常利益は前期比約286億円増加し、638億円となりました。過去5年間で見ても、当期は経常収益、経常利益ともに大きく伸長しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 1,520 1,482 1,980 2,122 2,542
経常利益(億円) 321 380 349 352 638
当期純利益(億円) 224 267 241 371 480

(2) 損益計算書

当期は、資金運用収益の増加などを主因として経常収益が増加しました。経常費用も増加しましたが、収益の伸びがこれを上回ったため、経常利益は前期比で大幅に増加しました。当期純利益も、経常利益の増加と特別利益の計上などにより、前期を上回る結果となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 2,122 2,542
経常費用 1,770 1,904
経常利益 352 638
当期純利益 371 480

(3) 役務取引等収益の内訳

同行の役務取引等収益は、当期において前期比で増加しました。このうち、預金・貸出業務が最も大きな割合を占めており、次いで為替業務が続きます。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 187 193
預金・貸出業務 93 100
為替業務 51 54
証券関連業務 21 20

(4) キャッシュ・フローと財務指標

銀行業では貸出金の増加に伴い営業キャッシュ・フローがマイナスとなることが通例であり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。当期は、営業活動によるキャッシュ・フローが前期の流入から流出に転じました。投資活動によるキャッシュ・フローは前期に比べて流出額が大幅に減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、前期比で流出額が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 4,550 △6,395
投資活動によるキャッシュ・フロー △3,353 △75
財務活動によるキャッシュ・フロー △196 △334

当期は、ROEが前期の3.7%から4.6%へと改善しており、収益効率の向上が見られます。純資産は、前期の1兆1,183億円から当期は9,677億円へと減少しました。

なお、近年の純資産は減少傾向にあり、財務状況の動向を注視する必要があります。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、経営理念として「健全経営を堅持し、もって地域社会の発展に寄与する」を掲げています。この理念に基づき、地域社会の発展を支え続けるため、企業価値向上を目指して中期経営ビジョン2021「『金融×非金融×リレーション』でお客さまと地域を支援する」に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、お客さまニーズや社会環境の変化にあわせてビジネスモデルを変革していく姿勢を持っています。「経営の根幹としてのサステナビリティ」「ライフサポートビジネスの深化」「総合金融サービス・機能の提供」「業務・組織のデジタル改革」「成長とやりがいを支える人事改革」の5つのテーマを掲げ、幅広い活動を展開しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営ビジョン2021」において、以下の指標を「中期経営目標」として掲げています。特に脱炭素化への対応を強化し、温室効果ガス排出量削減目標を上方修正しました。

* 年間配当目標額:2023年度から2025年度まで毎年度1株当たり20円以上
* 温室効果ガス排出量(Scope1, 2):八十二グループで2025年度ネットゼロ、2030年度に2019年度比80%削減
* 融資先の温室効果ガス排出量算定促進:2025年度排出量把握先450社
* 再生可能エネルギー創出(2024年度から2030年度):事業用再エネファイナンス累計実行額900億円、ZEH水準等住宅ローン累計10,000件

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営ビジョン2021」の最終年度として、これまでの取組みの総括と集大成を図ります。特に「脱炭素化への対応」を重点課題とし、自社グループの排出量削減に加え、地域やお客さまの脱炭素化支援に注力します。また、長野銀行との合併を見据え、「価値創造プロセス」に基づき、地域経済・社会の活性化と質的豊かさの実現を目指します。

具体的には、静岡銀行・山梨中央銀行との包括業務提携「富士山・アルプス アライアンス」を通じて、各行の顧客基盤やブランドを活用し、社会課題解決に向けたメニュー拡充やレベルアップを図ります。また、2026年1月の長野銀行との合併に向け、両行のノウハウ、リレーション、人材を掛け合わせ、地域の発展に貢献する体制を構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


職員一人ひとりが成長とやりがいを実感できる組織を目指し、自律的なキャリア形成支援や働きやすい職場環境整備を進めています。特に経営人材候補の育成に注力し、外部研修への派遣拡大や「次世代女性リーダー育成プログラム」による女性の登用を推進しています。また、仕事と育児・介護等の両立支援に取り組み、多様な職員が能力を最大限発揮できる環境づくりを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 14.5年 8,191,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 47.3%
男女賃金差異(正規雇用) 56.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 49.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、指導的地位に占める女性比率(21.1%)、有給休暇 年間取得日数(平均)(15.9日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク


国内外および県内の景気動向により取引先の経営状況が悪化した場合、不良債権や与信関係費用が増加し、業績や自己資本に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は長野県内向け貸出比率が高く、地域経済の動向による影響を受けやすい構造にあります。担保価値の下落等により、貸倒引当金の積み増しが必要になるリスクもあります。

(2) 市場リスク


金利、有価証券価格、為替等の市場変動により、保有資産の価値が変動し損失を被るリスクがあります。特に国債等の債券保有に伴う金利上昇時の評価損や、株式保有に伴う株価下落時の減損リスクがあります。同社は市場リスク管理方針を定め、リスク量や損失限度額を設定して管理を行っていますが、大幅な変動時には業績に影響が出る可能性があります。

(3) 流動性リスク


運用と調達の期間ミスマッチや予期せぬ資金流出により、資金確保が困難になる、または著しく高い金利での調達を余儀なくされるリスクがあります。特に外貨資金において市場調達依存度が高いため、金融市場の混乱や同社の格付低下等が起きた場合、調達コストの上昇や調達困難が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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