※本記事は、八十二長野銀行 の有価証券報告書(第143期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 八十二長野銀行ってどんな会社?
八十二長野銀行は、銀行業務を中核としてリースや投資などの総合金融サービスを提供する地方銀行です。
■(1) 会社概要
1931年に第十九銀行と六十三銀行が合併して八十二銀行が設立されました。1972年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年にプライム市場へ移行しました。2023年に長野銀行を完全子会社化し、2026年1月に長野銀行を吸収合併して現在の八十二長野銀行に商号を変更しています。
同社グループの従業員数は連結で4,128名、単体で3,773名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に信託業務を行う日本カストディ銀行、第3位は事業会社である日本生命保険が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.87% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.88% |
| 日本生命保険相互会社 | 2.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役頭取の松下正樹氏らが経営を牽引しています。取締役14名のうち社外取締役は5名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松下正樹 | 取締役頭取(代表取締役)頭取執行役員経営会議議長取締役会議長 | 1982年に同社へ入行。長野南支店長、企画部長、東京営業部長、本店営業部長などを経て、2021年に取締役頭取に就任。2022年より現職。 |
| 樋代章平 | 取締役副頭取(代表取締役)副頭取執行役員 | 1988年に同社へ入行。東京事務所長、企画部長、本店営業部長などを経て、2021年に常務取締役に就任。2023年より現職。 |
| 西澤仁志 | 取締役副頭取執行役員 | 1985年に日本興業銀行(現みずほ銀行)へ入行。長野銀行の取締役頭取および代表取締役などを経て、2026年1月より現職。 |
| 中村誠 | 取締役専務執行役員 | 1990年に同社へ入行。香港支店長、大町支店長、金融市場部長、業務統括部長、本店営業部長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、田下佳代(弁護士)、濱野京(元日本貿易振興機構理事)、神澤鋭二(キッセイコムテック会長CEO)、金井孝行(元西本Wismettacホールディングス社長COO)、小野田麻衣子(マイカンパニー社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。
■銀行業
同社の本店や支店において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務などの金融サービスを提供しており、グループの中核となる事業です。地域社会や企業の持続的な成長を支えるための各種コンサルティング業務にも注力しています。
主な収益源は、企業や個人への貸出金利息や各種手数料などです。運営は同社が行っているほか、八十二カードや長野カードがクレジットカード業務を、八十二信用保証が信用保証業務を、やまびこ債権回収が債権管理回収業務をそれぞれ展開しています。
■リース業
地域企業を中心とした事業者向けに、各種設備や情報通信機器、自動車などのファイナンス・リースおよびオペレーティング・リース事業を提供しています。企業の設備投資ニーズに応え、事業拡大や経営効率化を金融面からサポートしています。
主な収益源は、顧客に貸与したリース資産から得られるリース料です。運営は子会社の八十二リース、ながぎんリース、八十二オートリースの3社がそれぞれ担っており、グループのネットワークを活かした営業活動を展開しています。
■その他事業
銀行業やリース業を補完・強化するための周辺金融サービスや、地域経済の活性化に貢献する非金融サービスを展開しています。有価証券の売買や投資運用、地域商社事業、電力事業など、多岐にわたるサービスを提供しています。
主な収益源は、各種サービスの手数料や運用益などです。八十二証券が有価証券売買業務を、八十二キャピタルと八十二インベストメントが投資業務を、八十二アセットマネジメントが投資運用業を、八十二Link Naganoが地域商社事業や電力事業を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、経常収益は安定的な成長を続けており、直近にかけて大きく拡大しています。経常利益についても一時的な足踏みはあったものの、直近2期間で大幅な増益を達成しており、利益率も20%台後半まで回復するなど、収益力の向上が明確に表れています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 1,482億円 | 1,980億円 | 2,122億円 | 2,542億円 | 3,054億円 |
| 経常利益 | 380億円 | 349億円 | 352億円 | 638億円 | 815億円 |
| 経常利益率 | 25.6% | 17.6% | 16.6% | 25.1% | 26.7% |
| 当期利益 | 224億円 | 216億円 | 272億円 | 460億円 | 665億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を見ると、経常収益は資金運用収益の増加などを背景に大幅な増収となっています。経常費用も調達コストの増加などで拡大しましたが、収益の伸びがこれを上回り、経常利益ベースでも大きな増益を記録して高い利益率を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 2,542億円 | 3,054億円 |
| 経常利益 | 638億円 | 815億円 |
| 経常利益率 | 25.1% | 26.7% |
営業経費(一般企業の販売費及び一般管理費に相当)のうち、給料・手当が329億円(構成比41%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の経常収益を見ると、中核である銀行業が国内外での貸出金残高の増加や有価証券利息配当金の伸びに牽引されて大幅な増収を達成しています。リース業についても底堅い需要を背景に経常収益を伸ばしており、グループ全体で順調に事業を拡大しています。
| 区分 | 経常収益(2025年3月期) | 経常収益(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業 | 2,151億円 | 2,633億円 |
| リース業 | 366億円 | 391億円 |
| その他 | 25億円 | 31億円 |
| 連結(合計) | 2,542億円 | 3,054億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -6,395億円 | -4,405億円 |
| 投資CF | -75億円 | 2,765億円 |
| 財務CF | -334億円 | -326億円 |
なお、同社は金融関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に借用金の減少および貸出金の増加によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も8.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「健全経営を堅持し、もって地域社会の発展に寄与する」を経営理念に掲げています。長野県を基盤とする地域活性化のリーディングカンパニーとして、地域の課題に真正面から向き合い、地域社会と世界をつなぐ架け橋となることを使命としています。適切なリスク管理に裏付けられた収益性の確立を通じて、あらゆるステークホルダーの幸福と繁栄に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社はサステナビリティを「経営の根幹」に位置付け、金融と非金融の両面から地域社会の課題解決に取り組む姿勢を重視しています。また、多様化する職員の価値観やライフスタイルを尊重し、自律的なキャリア形成の支援や働きやすい職場環境の整備を進めるなど、一人ひとりが成長とやりがいを実感できる組織づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2026年度から2028年度までの「第1次中期経営計画」において、10年後の長期ビジョン「魅力ある未来を地域と共に創る」の実現を目指しています。「総合コンサルティンググループへの飛躍」を戦略コンセプトに掲げ、以下の計数目標を設定しています。
* 連結ROE:8%以上
* 連結当期純利益:850億円以上
* 預金・NCD平均残高:10兆円
* 貸出金平均残高:7兆1,000億円
* 役務関連利益:210億円
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の達成に向け、「収益力の強化・拡大を通じた地域課題解決」をコアテーマに掲げています。専門的な知見を発揮する人材の育成と戦略的配置、AIなどの先端技術を活用した業務の高度化を通じて、地元企業の経営基盤強化や豊かな暮らしの実現に資する付加価値の高いサービスを提供します。また、企業価値向上を目指してビジネス領域の拡大にも挑戦していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資本を価値創造の源泉と位置付け、第1次中期経営計画において「変革を実現する人材の育成と採用」を掲げています。高度な専門性を有するコンサルティング人材や経営人材を育成するため、行外研修などの多様な経験機会を拡充しています。同時に、多様な特性を持つ職員が能力を発揮できるようダイバーシティを推進し、健康経営によるウェルビーイング向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.1歳 | 15.5年 | 8,082,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 50.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 58.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 53.8% |
また、同社は「人的資本・多様性への取組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇の平均取得日数(15.3日)、運動習慣者比率(23.4%)、自己都合退職率(2.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
地域経済の動向や景気変動によって取引先の業績が悪化した場合、不良債権や与信関係費用が増加し、業績や自己資本に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は取引先の実態把握を強化し、経済状況に対応した適切な貸倒引当金を計上する仕組みでリスクに備えています。
■(2) 市場リスク
保有する国債や株式などの有価証券において、金利の上昇や株価の下落などの市場変動が生じた場合、評価損が発生し業績や自己資本比率に影響を与えるリスクです。半期ごとに市場リスク管理方針を定め、リスクテイクを適正規模に調整して管理しています。
■(3) 流動性リスク
市場の混乱や格付低下などにより、通常より高い金利での資金調達を余儀なくされる、あるいは必要な資金確保が困難になるリスクです。市場調達への過度な依存を抑制するための管理指標を設定し、日次でモニタリングして資金繰りの安定を図っています。
■(4) オペレーショナル・リスク
事務ミスなどの人的要因や、サイバー攻撃などによるシステム障害によって決済機能やサービスが停止し、社会的信用が失墜するリスクです。リスクアセスメントの実施による未然防止や影響の極小化に努め、情報資産の適切な管理体制を整備しています。



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