#記事タイトル:北日本銀行転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社北日本銀行の有価証券報告書(第121期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 北日本銀行ってどんな会社?
岩手県を中心に東北地方で地域密着型の金融サービスを提供する地方銀行です。銀行業に加え、リースやカード業務も展開しています。
■(1) 会社概要
1942年に岩手無尽と盛岡無尽の合併により岩手興産無尽として設立されました。1951年に相互銀行へ転換、1989年には普通銀行へ転換し、現在の商号となりました。1982年に東証二部、1984年に東証一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。2025年には投資専門子会社の設立を決議しました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は781名、単体従業員数は769名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は大手生命保険会社の明治安田生命保険、第3位は日本カストディ銀行となっており、機関投資家や金融機関が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.16% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 4.46% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 4.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役頭取は石塚恭路氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石塚 恭路 | 取締役頭取代表取締役 | 1984年入行。営業企画部長、仙台支店長などを経て、2009年常務、2015年専務を歴任。2020年2月より現職。 |
| 下村 弘 | 常務取締役 | 1990年入行。秘書室長、水沢支店長、経営企画部長、営業統括部長などを歴任。2020年10月常務取締役営業統括部長を経て、2023年4月より現職。 |
| 浜平 忠 | 常務取締役 | 1983年入行。南大通支店長、本町支店長、審査部長などを歴任。2019年取締役審査部長、2021年4月取締役頭取付を経て、2021年6月より現職。 |
| 石川 公喜 | 常務取締役 | 1981年入行。久慈支店長、塩釜支店長、審査部長、監査部長などを歴任。2020年常勤監査役、2021年取締役常勤監査等委員を経て、2024年6月より現職。 |
| 小寺 雄太 | 取締役事務システム部長 | 1991年日本長期信用銀行入行。住友信託銀行等を経て2020年入行。経営企画部長、東京支店長兼東京事務所長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 高橋 学 | 取締役経営企画部長 | 1989年入行。秘書室長、人事部長、東京支店長兼東京事務所長などを歴任。2022年経営企画部長、2023年取締役就任。2025年4月より現職。 |
| 昆 哲弘 | 取締役本店営業部長兼上田支店長 | 1991年入行。本宮支店長、郡山支店長、北上支店長、青森支店長などを歴任。2023年4月本店営業部長兼上田支店長となり、同年6月より現職。 |
| 野村 俊之 | 取締役監査等委員 | 1987年入行。南青森支店長、千厩支店長、材木町支店長、監査部長などを歴任。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、古村昌人(元明治安田生命保険専務)、谷藤雅俊(元有限責任監査法人トーマツ執行役)、小笠原弘治(マルイチ代表取締役会長)、津田晃(元野村證券専務)、柴田千春(第一商事代表取締役社長)、金田一弘雄(岡三証券常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」「クレジットカード業・信用保証業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 銀行業
本店および支店において、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、内国・外国為替業務などを行っています。地域の中小企業や個人顧客を対象とした金融サービスが中心です。
収益源は、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益、および為替手数料や投資信託販売手数料などの役務取引等収益です。運営は主に北日本銀行が行っています。
■(2) リース業
リース業務、計算受託業務、コンピュータソフトウェアの開発・販売業務を行っています。地域の企業の設備投資ニーズなどに対応しています。
収益源は、顧客からのリース料収入や計算受託手数料などです。運営は連結子会社のきたぎんリース・システムが行っています。
■(3) クレジットカード業・信用保証業
クレジットカード業務および信用保証業務を行っています。キャッシュレス決済の提供や、銀行融資に対する保証業務などを担っています。
収益源は、クレジットカード会員からの年会費や加盟店手数料、および銀行ローンの保証料などです。運営は連結子会社のきたぎんユーシーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、経常収益は増加傾向にありましたが、直近では減少に転じています。一方、利益面では経常利益、当期純利益ともに着実な成長を続けており、特に直近の2025年3月期は大幅な増益を達成しました。利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 224億円 | 231億円 | 236億円 | 290億円 | 264億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 28億円 | 35億円 | 41億円 | 56億円 |
| 利益率(%) | 12.5% | 12.0% | 14.8% | 14.1% | 21.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 21億円 | 27億円 | 31億円 | 40億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、経常収益は減少しましたが、経常費用が大きく減少したことで経常利益は増加しました。これは国債等債券売却損や貸倒引当金繰入額の減少が寄与しています。資金運用収益は増加しており、本業の収益力は向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 290億円 | 264億円 |
| 経常利益 | 41億円 | 56億円 |
| 経常利益率(%) | 14.1% | 21.1% |
経常費用のうち、営業経費が130億円(構成比62%)、資金調達費用が10億円(同5%)を占めています。営業経費の中では給料・手当が62億円と大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
銀行業は資金運用収益が増加したものの、株式等売却益の減少により経常収益は減少しました。リース業はリース関連収入の減少により減収となりました。クレジットカード業・信用保証業は概ね横ばいでした。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業 | 243億円 | 229億円 |
| リース業 | 46億円 | 35億円 |
| クレジットカード業・信用保証業 | 1.5億円 | 1.5億円 |
| 調整額 | -億円 | -2億円 |
| 連結(合計) | 290億円 | 264億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**末期型(事業拡大に伴う資産増加)**
営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスとなっていますが、金融機関特有の資金運用や貸出金の増加、配当金の支払などが影響しています。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -274億円 | -171億円 |
| 投資CF | 718億円 | -50億円 |
| 財務CF | -5億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.7%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「地域密着」「健全経営」「人間尊重」を経営理念として掲げています。地域に密着し、顧客の繁栄と地域の豊かな発展に貢献すること、健全経営を堅持して顧客と株主の信頼を得ること、そして行員とその家族の幸せを守り、夢と誇りを分かち合える集団を目指すことを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は行是として「明・正・堅」(明るく、正しく、堅実に。)を掲げています。また、10年ビジョンにおける「ユニークバンク」の具現化に向け、新たなコーポレートスローガン「さあ、ユニークバンクへ。」を制定しました。従来の銀行の発想にとらわれない課題解決の実践を通じて、魅力ある企業となることを目指す風土があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「BRANDING THE KITAGIN QUALITY 2027」では、2027年3月期(2026年度)を最終年度とする数値目標を掲げています。経営環境の変化を踏まえ、2025年5月に目標値を上方修正しました。
* 経常利益:60億円以上
* 当期純利益:40億円以上
* 修正OHR:75%未満
* 自己資本比率:9.5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「サステナブルな未来をともにつくる、課題解決の金融事業会社」を目指し、収益力の向上に取り組んでいます。具体的には、プロジェクトファイナンス関連業務の集約や地域企業の経営力向上サポート体制の強化を進めています。また、投資専門子会社の設立を通じ、地域の事業承継を支援するファンドの設立なども予定しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続可能な社会にふさわしい多様性を前提に、「個人」が主役となり能力を最大限発揮できる環境整備を進めています。自律型人財の育成に向け、キャリアデザインやEQ(心の知能指数)に着目した能力開発を展開しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な人財が活躍する風土の醸成や女性の経営参画に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.3歳 | 17.3年 | 5,725,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 67.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 65.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、多様性人財数(66人)、エンゲージメント指数(6.37)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
地域経済の動向や不動産価格の変動により、与信先の信用状態が悪化したり担保価値が下落したりする可能性があります。これにより不良債権や与信関係費用が増加し、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。特に物価上昇や金利引き上げによる企業への影響が懸念されます。
■(2) 市場リスク
金利の上昇や株価の急落、為替変動などの市場の混乱により、保有する有価証券等の資産価値が減少したり、調達コストが上昇したりする可能性があります。運用商品の収益変動や、予期せぬリスクの顕在化が収益に悪影響を与える可能性があります。
■(3) システムリスク
銀行業務に不可欠なコンピューターシステムにおいて、重大な障害や誤作動、サイバー攻撃、役職員による不正使用などが発生した場合、業務運営に支障をきたし、信用失墜や損害賠償などにより業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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