※本記事は、東和銀行の有価証券報告書(第121期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東和銀行ってどんな会社?
同社は、群馬県と埼玉県を主な営業基盤とし、預金や貸出などの総合金融サービスを提供する銀行です。
■(1) 会社概要
1917年に群馬貯蓄無尽として創立され、1951年に相互銀行業の免許を受け大生相互銀行へと商号変更しました。1989年に普通銀行へ転換し、現在の東和銀行へ商号を変更しています。1990年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌1991年には同市場第一部へ指定されました。
同社グループは、連結従業員数1,232名、単体従業員数1,207名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に信託業務を行う日本カストディ銀行です。第3位には自社の従業員持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.41% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.18% |
| 東和銀行従業員持株会 | 2.61% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役頭取執行役員は江原洋氏が務めています。取締役6名のうち2名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 江原洋 | 代表取締役頭取執行役員 | 1980年入行。川越支店長、高崎支店長などを経て、2014年取締役常務執行役員に就任。その後、専務や副頭取を歴任し、2020年より現職。 |
| 北爪功 | 代表取締役副頭取執行役員 | 1987年入行。篭原支店長や伊勢崎支店長などを経て、2019年取締役執行役員に就任。専務を経て、2025年より現職。 |
| 鈴木信一郎 | 取締役専務執行役員 | 1985年日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)入行。2017年同社に入行し国際部長に就任。常務を経て、2025年より現職。 |
| 岡部晋 | 取締役常務執行役員 | 1985年入行。総合企画部長などを経て、2022年常務執行役員総合企画部長兼東和銀行経済研究所長に就任。2024年より現職。 |
社外取締役は、水口剛(高崎経済大学学長)、齊藤三希子(エスエムオー代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」および「その他」のセグメントで事業を展開しています。
■(1) 銀行業
本店ほか支店や出張所において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務などの総合金融サービスを地域社会へ提供しています。地域の個人や法人顧客に対し、資金繰り支援や本業支援、資産形成支援などの多様なソリューションを提案しています。
収益は、主に顧客への貸出による金利収入のほか、各種手数料収入や有価証券の利息配当金などから得ています。これらの銀行業務全般の運営は、同社が主体となって行っています。
■(2) その他
リース業務やクレジットカード業務などの付随する金融サービスを提供しています。銀行業と連携しながら、地域顧客の多様な金融ニーズに応える事業を展開しています。
収益は、顧客からのリース料やクレジットカードの利用に伴う手数料などから得ています。運営は、東和銀リースがリース業務を、東和カードがクレジットカード業務をそれぞれ担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、経常収益は安定して推移し、直近では貸出金利息などの増加により増収傾向にあります。一方で、利益面は安定した黒字を維持していましたが、直近の2026年3月期は有価証券ポートフォリオの抜本的な見直しに伴う売却損により、大幅な経常赤字と当期純損失を計上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 369億円 | 335億円 | 341億円 | 378億円 | 435億円 |
| 経常利益 | 37億円 | 40億円 | 43億円 | 64億円 | -298億円 |
| 利益率(%) | 10.1% | 11.9% | 12.7% | 16.9% | -68.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 41億円 | 35億円 | 45億円 | -245億円 |
■(2) 損益計算書
貸出金利息などの増加により経常収益(売上高)は順調に拡大していますが、金利リスク低減を目的とした債券売却損の計上が税引前利益を大きく圧迫しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 378億円 | 435億円 |
| 税引前利益 | 61億円 | -285億円 |
| 税引前利益率(%) | 16.3% | -65.4% |
経常費用のうち、その他業務費用(主に国債等債券売却損)が371億円(構成比51%)と最も大きな割合を占めています。次いで営業経費が213億円(同29%)となっており、将来に向けたポートフォリオ見直しのコストが費用全体を大きく押し上げています。
■(3) セグメント収益
同社は「銀行業」の単一セグメントで事業を展開しているため、サービスごとの収益傾向を分析します。貸出業務や有価証券投資業務がいずれも増収となっており、資金運用収益の向上が全体の収益拡大に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 貸出業務 | 240億円 | 268億円 |
| 有価証券投資業務 | 45億円 | 69億円 |
| その他 | 93億円 | 98億円 |
| 連結(合計) | 378億円 | 435億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益や資産の売却で得た資金を用いて借入の返済を進める改善型の局面となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -159億円 | 14億円 |
| 投資CF | 62億円 | 1149億円 |
| 財務CF | -180億円 | -23億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-27.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は3.7%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「役に立つ銀行」「信頼される銀行」「発展する銀行」という経営理念を掲げています。また、「私たちは、地域のお客さまに寄り添い、ともに豊かな未来を創造します。」というパーパスを活動の基礎としており、地域社会や全てのステークホルダーの持続的な発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、地域のお客様に様々な価値を提供するビジネスモデル「TOWAお客様応援活動」を企業文化として深く定着させています。真の資金繰り支援や本業支援、経営改善・事業再生支援などを通じて、顧客の多様なニーズや課題に寄り添い、最適なソリューションを提供することを重視する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2024年4月からスタートした第1期中期経営計画「TOWA Future Plan I」において、長期ビジョンの達成と企業価値の向上を目指し、以下の財務KPIを掲げて経営を行っています。
* ROE(連結):1.80%
* コア業務純益:42億円
* 単体自己資本比率:8.54%
* 業務粗利益経費率(OHR):70.30%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、「TOWAお客様応援活動の強化・深化」「ビジネスモデルを支える態勢の強化」「ローコスト・オペレーションの確立」「責任ある経営体制の確立」の4つの基本戦略を掲げています。
具体的には、有価証券売却資金を貸出金の増加や再投資に振り向け資金利益を大きく向上させるほか、DXによる業務改革や店舗体制の見直しを通じて収益力の強化を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「人財づくり基本方針」および「環境整備に関する基本方針」を掲げています。顧客の多様化する課題に的確に対応できる人財の育成に注力し、高度資格の取得奨励やトレーニー制度を通じた専門性の向上を図っています。また、女性やシニア行員が活躍できる環境整備や、エンゲージメント向上によるウェルビーイングの実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.5歳 | 16.9年 | 6,317,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.7% |
| 男性育児休業取得率 | 120.0% |
| 労働者の男女の賃金差異(全労働者) | 54.6% |
| 労働者の男女の賃金差異(正規雇用労働者) | 65.7% |
| 労働者の男女の賃金差異(パート・有期労働者) | 57.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(76.8%)、定期健康診断受診率(100.0%)、ストレスチェック受診率(93.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスクと不良債権の増加
景気や地域経済の動向、不動産価格の変動などにより、予想以上に不良債権が増加する可能性があります。また、債務不履行が生じた貸出先への支援が奏功しない場合、与信関連費用が増加し、業績や財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 金利リスクおよび価格変動リスク
貸出や預金による資金運用と調達にはミスマッチが存在しており、金融政策の変更等で金利が変動した場合、収益に影響が及びます。また、保有する国債や株式などの有価証券の価格が大幅に下落した場合には、減損や評価損が発生するリスクがあります。
■(3) オペレーショナル・リスクおよびシステムリスク
銀行業務の運営において基幹系システムやネットワークを利用しているため、災害やサイバー攻撃等によるシステム障害が発生した場合、業務運営に支障をきたす恐れがあります。また、役職員のミス等による事務事故も損失を招く要因となります。
■(4) 自己資本比率に係わるリスク
同社は国内基準に基づく自己資本比率を4%以上に維持する必要があります。不良債権の増加による与信費用の増加や算定方法の変更などにより、この水準を下回った場合には、監督官庁から業務停止等の命令を受けるリスクが存在します。



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