名古屋銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

名古屋銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア上場。愛知県を地盤とする地域金融機関として、銀行業務を中心にリース、カード業務などを展開しています。2025年3月期の連結業績は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加等により、経常収益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益がいずれも増加する増収増益となりました。


※本記事は、株式会社 名古屋銀行 の有価証券報告書(第107期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 名古屋銀行ってどんな会社?


愛知県内最大の第二地方銀行として、「未来創造業」を掲げ、銀行・リース・カード等の総合金融サービスを提供しています。

(1) 会社概要


1949年に協同組織金融機関として設立され、1951年に相互銀行の免許を取得して株式会社名古屋相互銀行となりました。1961年に名古屋証券取引所に上場し、1989年に普通銀行へ転換して現在の行名に変更しました。2021年には信託業務を開始し、2022年の市場区分見直しにより東証プライム市場へ移行しています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は1,924名(単体1,687名)です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位は生命保険会社となっています。地域社会の繁栄に奉仕することを社是とし、銀行業務を中心にグループ一体となって金融サービスを展開しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.45%
日本生命保険相互会社 4.43%
明治安田生命保険相互会社 3.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役頭取は藤原一朗氏が務めています。取締役会における社外取締役の比率は約38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
藤原 一朗 取締役頭取(代表取締役)内部監査部担当 1987年日本興業銀行入行。2003年同行入行。本店営業部長、取締役副頭取等を経て2017年6月より現職。
南出 政雄 専務取締役(代表取締役)経営企画部・人材開発部事業支援部・東京事務所担当 1988年同行入行。一宮西支店長、経営企画部長、常務取締役等を経て2024年6月より現職。
水野 秀樹 常務取締役業務部・内部統制部担当 1990年同行入行。鴻仏目支店長、事務システム部長、取締役経営企画部長等を経て2023年6月より現職。
近藤 和 常務取締役金融投資部担当 1990年同行入行。浜松支店長、金融投資部長、取締役経営企画部長等を経て2024年6月より現職。
吉冨 文秀 常務取締役営業本部長 1990年同行入行。小田井支店長、法人営業部長、取締役営業企画部長等を経て2024年6月より現職。
清水 貞晴 取締役事業支援部長 1989年同行入行。豊橋支店長、執行役員上前津エリア長兼上前津支店長等を経て2023年6月より現職。
舘 征彦 取締役本店営業部長 1989年同行入行。法人営業部長、執行役員営業企画部長等を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、宗方比佐子(金城学院大学名誉教授)、絹川幸恵(元みずほビジネスパートナー社長)、小川悦雄(元愛知県副知事)、渡邉穣(元中部電力取締役専務執行役員)、森美穂(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業務」「リース業務」「カード業務」および「その他」事業を展開しています。

銀行業務

本店および支店等において、預金、貸出、内国為替、外国為替、有価証券投資、商品有価証券売買、社債受託および登録業務等を行っています。顧客の多様な資金ニーズや資産運用ニーズに応える金融サービスを提供しています。
収益は、顧客からの貸出金利息、有価証券の利息配当金、各種手数料などから構成されています。運営は主に名古屋銀行が行っており、地域の主要な金融インフラとしての役割を担っています。

リース業務

各種機械設備や情報関連機器などの総合ファイナンスリース業務を行っています。企業の設備投資ニーズに対応し、物件の賃貸借を通じた金融サービスを提供しています。
収益は、リース契約に基づく顧客からのリース料収入等です。運営は連結子会社の名古屋リースが行っています。

カード業務

クレジットカード業務および信用保証業務を行っています。キャッシュレス決済手段の提供や、銀行の個人向けローンの保証などを行っています。
収益は、カード会員からの年会費、加盟店からの手数料、ローン利用者に対する保証料などです。運営は連結子会社の名古屋カードおよび名古屋エム・シーカードが行っています。

その他

現金の整理・精査業務、投資事業有限責任組合の組成・管理業務、医療システム事業、ICT支援事業などを行っています。
収益は、現金整理業務の手数料、ファンド管理報酬、システム利用料やコンサルティング料などです。運営は連結子会社の名古屋ビジネスサービス、名古屋キャピタルパートナーズ、ナイスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。経常収益は、前連結会計年度と比較して15億円増加し1,028億円となりました。これは、主に資金運用収益の増加によるものです。一方、経常費用は前連結会計年度と比較して49億円減少し819億円となりました。これは、主に債券売却損の減少によるものです。これらの結果、経常利益は前連結会計年度から64億円増加し209億円、親会社株主に帰属する当期純利益は47億円増加し147億円となりました。過去5期で見ると、経常収益は増加傾向にあり、経常利益および当期純利益も変動しながらも増加傾向を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 691 778 798 1,013 1,028
経常利益(億円) 99 157 115 145 209
当期純利益(億円) 107 116 84 100 147

(2) 損益計算書

当期の経常収益は1,028億円となり、前期比で15億円増加しました。これは、主に資金運用収益の増加によるものです。経常費用は819億円となり、前期比で49億円減少しました。これは、主に債券売却損の減少によるものです。結果として、経常利益は209億円となり、前期比で64億円増加しました。当期純利益も147億円となり、前期比で47億円増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 1,013 1,028
経常費用 868 819
経常利益 145 209
当期純利益 100 147

(3) 役務取引等収益の内訳

同行の役務取引等収益は、前期比で4億円増加し105億円となりました。これは、主に預金・貸出業務および証券関連業務の収益増加によるものです。役務取引等収益合計では105億円となり、前期比で4億円増加しました。内訳を見ると、預金・貸出業務が最も大きく、次いで証券関連業務となっています。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 101 105
預金・貸出業務 45 47
為替業務 11 11
証券関連業務 23 24
代理業務 11 11

(4) キャッシュ・フローと財務指標

名古屋銀行は、営業活動によるキャッシュ・フローが譲渡性預金及び預金の増加等により大幅に増加しました。投資活動では、有価証券の取得による支出が増加し、財務活動では劣後特約付社債の償還による支出が増加しました。これらの結果、現金及び現金同等物の残高は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 85 219
投資活動によるキャッシュ・フロー 25 △50
財務活動によるキャッシュ・フロー △5 △16

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「未来創造業」をパーパス(存在意義)と位置づけています。法人顧客とともに会社の発展につながる未来を創り、個人顧客とともに家族の幸せにつながる未来を創ることで、地域社会に新たな価値を提供することを目指しています。顧客と自身の未来のために一生懸命に仕事をすることを誓っています。

(2) 企業文化


創業以来不変の社是として「地域社会の繁栄に奉仕する。これが銀行の発展と行員の幸福を併せもたらすものである。」を掲げています。また、行訓として「よいサービス(誠意があふれ、行き届いた、スピーディなサービス)」「よい人(人を高め、人を厚くし、明るい職場をつくる)」「よい経営(健全で、創意に富んだ、全員参加の経営)」を定めています。

(3) 経営計画・目標


2023年4月から8年間の第22次経営計画「未来創造業の真価の発揮」を策定し、「お客さまとともに成長する地域No.1金融グループ」という2030年ビジョンの実現を目指しています。2027年度の中間目標として以下の数値を掲げています。

* 当期純利益(連結):150億円
* ROE(連結):5%超
* コアOHR:50%台
* 預貸和:10兆円
* 上場政策株式縮減額(取得原価ベース):124億円

(4) 成長戦略と重点施策


第22次経営計画において、「サステナビリティ」「人的資本戦略」「DX戦略」の3つを重点項目としています。サステナビリティではESG投融資の推進や脱炭素支援、人的資本戦略では健康経営や多様な人材の活躍推進、DX戦略ではデータ活用による営業力強化や非対面チャネルの活用拡大に取り組み、地域社会の課題解決と持続的な成長を目指します。

* ESG投融資額(2030年度までの10年間累積実行額):5,000億円
* CO2排出量(2013年度対比):70%削減(2030年度)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「未来創造業」の真価を発揮するため、「将来にわたり活躍し続ける人財の育成」を重要課題としています。多様な人材が自律的にキャリアを形成できる環境整備や働きがい改革を推進しています。また、健康経営やダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を通じて、心理的安全性の確保や多様性を尊重する風土の醸成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.2歳 17.2年 6,353,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.5%
男性育児休業取得率 103.4%
男女賃金差異(全労働者) 54.6%
男女賃金差異(正規雇用) 66.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 66.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性配置率(90%)、クロスキャリア比率(61.8%)、キャリア採用者数(38名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク

国内外の景気や地域経済の動向、取引先の経営状況悪化、不動産価格の下落等により、不良債権や与信関係費用が増加する可能性があります。また、担保価値の下落や貸出先の債務不履行等により、貸倒引当金の積み増しが必要となり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 市場リスク

金利、株価、為替の変動により、保有する金融資産の価値が変動するリスクがあります。特に、予期せぬ金利変動や保有有価証券の価格下落は、減損や評価損の発生を通じて業績に悪影響を与える可能性があります。同社はALM委員会等でリスクを管理していますが、想定を超える変動が生じた場合、損失が発生する可能性があります。

(3) システムリスク

基幹系システム等の停止、誤作動、サイバー攻撃、不正アクセス等により、業務遂行に支障をきたす可能性があります。これにより、社会的信用の失墜や損害賠償等が発生し、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。同社はセキュリティ対策の強化に努めていますが、障害の規模によっては重大な影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。