※本記事は、株式会社アコム の有価証券報告書(第48期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アコムってどんな会社?
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の連結子会社として、消費者金融事業、信用保証事業、海外金融事業などを展開する総合金融サービス企業です。
■(1) 会社概要
1978年にアコムとして設立され、消費者金融事業を開始しました。1993年には業界初の自動契約機「むじんくん」を設置し、市場を牽引してきました。2008年に三菱UFJフィナンシャル・グループの連結子会社となり、経営基盤を強化しました。2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場へ移行しています。
2025年3月31日現在の連結従業員数は5,498名、単体では2,088名です。筆頭株主は親会社である株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループで37.57%を保有しています。第2位は丸糸殖産株式会社(17.45%)、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)(8.35%)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ | 37.57% |
| 丸糸殖産株式会社 | 17.45% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 8.35% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は木下政孝氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木下 政孝 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 2003年アビームコンサルティング入社。2005年同社入社。経営企画部長、営業企画部長、常務執行役員営業本部長などを経て2021年6月より現職。 |
| 木下 盛好 | 代表取締役会長 | 1973年丸紅入社。1980年同社入社。経理部長、営業推進本部長、代表取締役社長などを歴任。2021年6月より現職。 |
| 成瀬 浩史 | 代表取締役副会長監査部担当 | 1981年三菱信託銀行入社。三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役専務、日本マスタートラスト信託銀行社長などを経て2021年6月より現職。 |
| 桐渕 高志 | 取締役副社長兼副社長執行役員システム本部長経営企画部、システム開発部、システム運用部、システム企画室、システム管理室担当 | 1982年同社入社。広報部長、財務第二部長、専務執行役員システム本部長などを経て2023年6月より現職。 |
| 内田 智視 | 専務取締役兼専務執行役員総務部、債権管理部、債権管理コンプライアンス推進室担当 | 1982年同社入社。営業推進部長、常務執行役員審査本部長などを経て2024年4月より現職。 |
| 山本 忠司 | 取締役 | 1992年東京銀行入行。三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務などを経て、2023年6月より現職。 |
| 清岡 哲弘 | 取締役常勤監査等委員 | 2006年同社入社。アイ・アール債権回収社長、同社執行役員などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、タン ミッシェル(帝塚山大学法学部教授)、山下 敏彦(元明治安田アセットマネジメント会長)、秋山 卓司(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ローン・クレジットカード事業」「信用保証事業」「海外金融事業」「債権管理回収事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ローン・クレジットカード事業
国内において、個人顧客向けに現金を貸し付けるローン事業およびクレジットカード事業を行っています。また、エンベデッド・ファイナンス(組込型金融)サービスの提供も進めています。
収益は、顧客からの貸付金利息および加盟店手数料等です。運営は主にアコムが担い、エンベデッド・ファイナンス事業等は子会社のGeNiE株式会社が展開しています。
■(2) 信用保証事業
提携する金融機関の個人向けローン商品の保証業務を行っています。銀行等が個人向けに無担保ローンを販売する際、同社グループが審査・保証を担うビジネスモデルです。
収益は、提携金融機関から受け取る保証料です。運営は、アコムおよび連結子会社のエム・ユー信用保証株式会社が行っています。
■(3) 海外金融事業
アジア地域において、無担保ローン事業やインストールメントローン事業(個別信用購入あっせん事業)を展開しています。主要国はタイ王国、フィリピン共和国、マレーシアです。
収益は、現地の顧客からの貸付金利息等です。運営は、タイのEASY BUY Public Company Limited、フィリピンのACOM CONSUMER FINANCE CORPORATION、マレーシアのACOM (M) SDN. BHD.が行っています。
■(4) 債権管理回収事業
特定金銭債権の管理・回収を行うサービサー事業を展開しています。金融機関等から買い取った債権や、委託を受けた債権の管理回収を行います。
収益は、買い取った債権の回収益や管理回収手数料です。運営は、連結子会社のアイ・アール債権回収株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益(営業収益)は緩やかな増加傾向にあり、事業規模は拡大しています。一方で利益面では、2022年3月期以降、経常利益・当期利益ともに減少傾向が見られます。特に直近の2025年3月期は、売上収益が増加したものの、利益率が低下し減益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 2,663億円 | 2,622億円 | 2,738億円 | 2,947億円 | 3,177億円 |
| 経常利益 | 1,000億円 | 354億円 | 875億円 | 867億円 | 589億円 |
| 利益率(%) | 37.6% | 13.5% | 32.0% | 29.4% | 18.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 789億円 | 557億円 | 549億円 | 531億円 | 321億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高(営業収益)は前期比で増加しています。しかし、営業利益は前期の863億円から586億円へと減少しており、営業利益率も29.3%から18.4%へと大きく低下しました。コストの増加や引当金の計上などが利益を圧迫している状況が読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,947億円 | 3,177億円 |
| 売上総利益 | -億円 | -億円 |
| 売上総利益率(%) | -% | -% |
| 営業利益 | 863億円 | 586億円 |
| 営業利益率(%) | 29.3% | 18.4% |
その他の営業費用(一般企業の販管費および営業原価に相当)のうち、貸倒引当金繰入額が929億円(構成比37%)、利息返還損失引当金繰入額が400億円(同16%)、支払手数料が269億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全ての報告セグメントで増収を達成しましたが、利益面では明暗が分かれました。主力であるローン・クレジットカード事業は増収ながら大幅な減益となり、海外金融事業も減益でした。一方、信用保証事業と債権管理回収事業は増収増益となり、堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ローン・クレジットカード事業 | 1,560億円 | 1,695億円 | 418億円 | 140億円 | 8.3% |
| 信用保証事業 | 708億円 | 763億円 | 227億円 | 237億円 | 31.0% |
| 海外金融事業 | 619億円 | 654億円 | 224億円 | 194億円 | 29.6% |
| 債権管理回収事業 | 59億円 | 65億円 | 12億円 | 13億円 | 19.6% |
| その他 | 2億円 | 0億円 | 2億円 | 2億円 | 100000.0% |
| 調整額 | -1億円 | -2億円 | -19億円 | -0億円 | -% |
| 連結(合計) | 2,947億円 | 3,177億円 | 863億円 | 586億円 | 18.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業での収入(営業CF)があり、借入金の返済等(財務CF)を行いつつ、投資(投資CF)も実施している「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -368億円 | 9億円 |
| 投資CF | -62億円 | -65億円 |
| 財務CF | 572億円 | -64億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も44.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、創業の精神である「信頼の輪」および企業理念である「人間尊重の精神とお客さま第一義に基づき、創造と革新の経営を通じて、楽しく豊かなパーソナルライフの実現と生活文化の向上に貢献する」を普遍的な価値観・信念として掲げています。これらを具体化したビジョンに基づき、「全てのステークホルダーの期待に応えつづける」ことを目指して活動しています。
■(2) 企業文化
同社は「人間尊重の精神」「お客さま第一義」「創造と革新の経営」という企業理念を基盤とし、創業の精神である「信頼の輪」を大切にしています。これらを普遍的な価値観として共有し、ステークホルダーとの相互信頼を深めることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期を初年度とする3カ年の中期経営計画において、「ビジョン達成に向け、成長サイクルのスピードを上げる」ことを中期方針として定めています。事業と人への投資、継続的な利益拡大、顧客満足の向上を循環させる「成長サイクル」を加速させることを目指しています。
* 国内ローン・クレジットカード事業残高:1兆3,149億円
* 信用保証事業残高:1兆6,960億円
* 海外ローン事業残高:タイ531億バーツ、フィリピン21億ペソ、マレーシア1億リンギ
■(4) 成長戦略と重点施策
国内ローン・クレジットカード事業では、デジタル環境の変化に対応し、新規集客の強化や債権の健全性維持を推進します。信用保証事業では、新規提携の拡大や既存提携先との連携強化を図ります。海外金融事業では、タイでのシェア拡大に加え、フィリピンおよびマレーシアを新たな収益の柱とすべく注力し、その他アジア諸国への新規進出も目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ビジョンである「全てのステークホルダーの期待に応えつづける」を実現するため、会社と社員一人ひとりの持続的な成長が不可欠であると考え、「人材育成方針」「社内環境整備方針」に基づき人材戦略を推進しています。多様な人材の確保に向けた採用強化、デジタル人材や次世代リーダーの育成、男性育休取得促進などの働き方改革、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.2歳 | 15.2年 | 6,901,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.3% |
| 男性育児休業取得率 | 96.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 70.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 79.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用計画達成率(111%)、係長以上の役職に占める女性労働者の割合(23.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業収益の低下
主力であるローン・クレジットカード事業、信用保証事業、海外金融事業の収益低下リスクです。法的枠組みの変更、競争激化、個人消費の減退等の外的要因により、顧客口座数や残高、金利等が変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。特にローン・クレジットカード事業は営業収益の過半を占めるため、影響は大きいと認識されています。
■(2) 利息返還金の動向
過去のローン契約における利息制限法の上限金利超過分に関する返還請求リスクです。利息返還損失引当金を計上していますが、請求件数や返還単価の動向、司法判断の変化によっては、引当金の追加繰入れ等が発生し、業績に影響を与える可能性があります。返還請求は減少傾向にあるものの、引き続き注視が必要な事項とされています。
■(3) ITリスクおよびサイバー攻撃
大規模なシステムを保有していることによるリスクです。システム開発の遅延、障害、サイバー攻撃による停止や情報漏洩等が発生した場合、サービス提供に支障をきたし、信頼失墜や業績悪化につながる可能性があります。サイバー攻撃の高度化・巧妙化にも対応が必要とされています。
■(4) 資金調達環境の悪化
事業資金を金融機関借入や社債等で調達していることに伴うリスクです。市場金利の急上昇、同社の業績悪化や格付低下等により調達環境が悪化した場合、資金確保が困難になったり、調達コストが増加したりすることで、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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