※本記事は、アコム株式会社の有価証券報告書(第49期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アコムってどんな会社?
同社は消費者金融事業を起点に、クレジットカードや信用保証、アジアでの海外金融へと事業領域を拡大している金融サービス企業です。
■(1) 会社概要
1978年に消費者金融事業のアコムとして設立されました。1993年に業界初の自動契約機「むじんくん」を設置し、1996年にはタイで合弁会社を設立して海外進出を果たしました。2008年に三菱UFJフィナンシャル・グループの連結子会社となり、2022年にはエンベデッド・ファイナンスを推進する子会社を設立しています。
現在、同社グループの従業員数は連結で5,626名、単体で2,125名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は事業会社の三菱UFJフィナンシャル・グループで、第2位は丸糸殖産、第3位はマルイトとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 37.57% |
| 丸糸殖産 | 17.45% |
| マルイト | 8.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は木下政孝氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木下政孝 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 2003年アビームコンサルティング入社。2005年同社入社後、営業企画部長や常務執行役員営業本部長を歴任。2017年代表取締役副社長を経て、2021年より現職。 |
| 木下盛好 | 代表取締役会長 | 1973年丸紅入社。1980年同社入社後、取締役経理部長や代表取締役専務などを歴任。2000年代表取締役社長、2010年代表取締役社長兼会長を経て、2021年より現職。 |
| 成瀬浩史 | 代表取締役副会長監査部担当 | 1981年三菱信託銀行入社。同社専務や三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役専務、日本マスタートラスト信託銀行代表取締役社長を歴任。2021年より現職。 |
| 桐渕高志 | 取締役副社長兼副社長執行役員システム本部長 | 1982年同社入社。広報部長や財務第二部長、経営企画部長を歴任。2020年常務執行役員システム統轄部長、2021年専務取締役を経て、2023年より現職。 |
| 吉羽優志 | 専務取締役兼専務執行役員 | 1987年同社入社。西日本営業部長やコンプライアンス統括部長、業務統括部長を歴任。2021年常務執行役員、2024年専務執行役員を経て、2025年より現職。 |
| 山本忠司 | 取締役 | 1992年東京銀行入行。三菱UFJ銀行常務執行役員CSOやデジタルサービス部門長を歴任。三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役専務を経て、2023年より現職。 |
| 清岡哲弘 | 取締役常勤監査等委員 | 1990年全国共済農業協同組合連合会入会。2006年同社入社後、財務第一部長やアイ・アール債権回収代表取締役社長などを歴任。2024年より現職。 |
社外取締役は、タン ミッシェル(インタセクトグローバルソリューションズ取締役)、浅野 紀久男(明治安田システム・テクノロジー代表取締役会長)、秋山 卓司(公認会計士秋山卓司事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ローン・クレジットカード事業」「信用保証事業」「海外金融事業」「債権管理回収事業」および「その他」事業を展開しています。
■ローン・クレジットカード事業
無担保ローンおよび有担保ローンの貸付や、クレジットカードの発行を通じたショッピング信用供与を行っています。個人のお客さまの資金ニーズに応え、安全で利便性の高い金融サービスを提供しています。
お客さまから受け取る貸付金利息やクレジットカードの加盟店手数料などが主な収益源です。事業の運営は親会社であるアコムと、エンベデッド・ファイナンスを推進する子会社のGeNiEが担当しています。
■信用保証事業
カードローンなどのニーズを持つお客さまにサービスを提供する事業会社や提携金融機関に対し、信用保証を行う事業です。同社のノウハウを活用し、適正な審査とサービス機能の強化に注力しています。
提携金融機関などから受け取る保証料が主な収益源となります。事業の運営は親会社のアコムと、子会社であるエム・ユー信用保証の2社が担っています。
■海外金融事業
タイ、フィリピン、マレーシアなどのアジア地域において、無担保ローンやインストールメントローン(個別信用購入あっせん)を展開しています。各国の経済状況に合わせ、市場シェアの拡大と健全な債権維持に取り組んでいます。
現地の顧客から受け取る貸付金利息や手数料が主な収益源です。タイのEASY BUY Public Company Limited、フィリピンのACOM CONSUMER FINANCE CORPORATION、マレーシアのACOM (M) SDN. BHD.が運営しています。
■債権管理回収事業
金融機関等から買い取った債権の管理・回収や、サービサー業務(債権管理回収の受託)を行っています。既存取引先との関係を深めつつ、リテール債権を中心とした回収手法の高度化を推進しています。
買い取った債権からの回収益や、管理回収の受託に伴う手数料が主な収益源です。事業の運営は、子会社であるアイ・アール債権回収が担当しています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、コンタクトセンター業務の請負や人材派遣業務などを展開しています。
受託業務に伴う請負報酬や人材派遣料が主な収益源です。持分法適用関連会社であるエム・ユー・コミュニケーションズが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
営業収益は直近5年間で継続的な増加傾向にあります。経常利益は期によって変動が見られるものの、当期は前期比で大幅な増益を達成し、高い利益率を維持しています。事業の安定性と収益力の高さが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 2,622億円 | 2,738億円 | 2,947億円 | 3,177億円 | 3,377億円 |
| 経常利益 | 354億円 | 875億円 | 867億円 | 589億円 | 1,005億円 |
| 利益率(%) | 13.5% | 32.0% | 29.4% | 18.5% | 29.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 481億円 | 490億円 | 463億円 | 259億円 | 705億円 |
■(2) 損益計算書
営業収益は前期から当期にかけて約200億円増加しています。これに伴い営業利益も大幅に伸長し、営業利益率も18.4%から29.7%へと大きく改善しました。本業における稼ぐ力が強化されていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,177億円 | 3,377億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 586億円 | 1,004億円 |
| 営業利益率(%) | 18.4% | 29.7% |
■(3) セグメント収益
全ての報告セグメントにおいて前期比で増収を達成しています。特に主力のローン・クレジットカード事業が牽引しており、信用保証事業や海外金融事業も順調に事業規模を拡大させています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ローン・クレジットカード事業 | 1,695億円 | 1,819億円 |
| 信用保証事業 | 763億円 | 810億円 |
| 海外金融事業 | 654億円 | 675億円 |
| 債権管理回収事業 | 65億円 | 72億円 |
| その他 | 0億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 3,177億円 | 3,377億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは積極型です。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 121億円 |
| 投資CF | -65億円 | -49億円 |
| 財務CF | -64億円 | 131億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業の精神である「信頼の輪」と、企業理念である「人間尊重の精神とお客さま第一義に基づき、創造と革新の経営を通じて、楽しく豊かなパーソナルライフの実現と生活文化の向上に貢献する」を普遍的な価値観として掲げています。これらを具体化した「全てのステークホルダーの期待に応えつづける」というビジョンのもと活動しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業理念に掲げる「人間尊重の精神」「お客さま第一義」「創造と革新の経営」を基盤とし、社員一人ひとりが主体的に成長し続ける組織風土を重視しています。「自ら成長する風土」の醸成や多様性の尊重に加え、グループ横断のビジネスコンテストなどを通じて、役職を問わず挑戦を称える文化の形成を図っています。
■(3) 経営計画・目標
「ビジョン達成に向け、成長サイクルのスピードを上げる」を中期方針として定めています。株主価値の向上と安定した経営を持続するため、ROE、ROA、1株当たり当期純利益などを目標とする経営指標として重視しています。
* 国内ローン・クレジットカード事業残高:1兆3,149億円
* 国内信用保証事業残高:1兆6,960億円
* EASY BUY(タイ)ローン事業残高:531億タイバーツ
* ACOM CONSUMER FINANCE CORPORATION(フィリピン)ローン事業残高:21億フィリピンペソ
* ACOM (M) SDN. BHD.(マレーシア)ローン事業残高:1億マレーシアリンギ
■(4) 成長戦略と重点施策
各事業領域の拡大に向けて、急速に変化するデジタル環境を捉えた取り組みを推進しています。国内では既存顧客との取引拡大やブランド力向上による新規集客の強化に注力します。海外ではタイでの市場シェア拡大に加え、フィリピンやマレーシアを新たな収益の柱とすべく育成し、新規進出の調査も推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業推進には「企業理念を体現する人材」を基盤とした人的資本経営が不可欠であると認識し、「採用・育成・定着」を軸に人材基盤の強化を図っています。多様な価値観を持つ人材の確保、デジタル人材の育成、次世代リーダーの早期育成を推進するとともに、健康経営やダイバーシティを推進し、社員が働きがいを感じられる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.7歳 | 14.7年 | 7,215,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.0% |
| 男性育児休業取得率 | 86.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 76.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、デジタル関連の資格保持者延べ人数(452名)、新卒採用人数(104名)、中途採用人数(91名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主力事業の収益低下リスク
ローン・クレジットカード事業や信用保証事業などの中核事業は、司法判断や法的枠組みの変更、競合他社との競争激化、個人消費の減退などの外的要因により収益が低下するリスクがあります。これに対し、新規集客の増加やサービス機能の向上、提携先との連携強化などを通じて収益基盤の維持・拡大に取り組んでいます。
■(2) コンダクトリスクの顕在化
役職員の不適切な行為や社会規範から逸脱した行為が発生した場合、同社グループへの信頼が毀損し、顧客離れや行政処分につながるリスクがあります。「アコムグループ倫理綱領・行動基準」の制定や研修を通じたコンプライアンス・カルチャーの醸成に加え、消費者保護や金融犯罪対策などの施策を推進しています。
■(3) サイバー攻撃とITリスク
大規模なコンピュータシステムを保有し個人情報を扱うため、システム障害やサイバー攻撃による情報漏洩やサービス停止が発生した場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。システムの安定稼働に向けたモニタリングや不測の事態に備えた体制整備、定期的なセキュリティ訓練などを通じてリスクの抑制を図っています。



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