※本記事は、豊トラスティ証券株式会社 の有価証券報告書(第69期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 豊トラスティ証券ってどんな会社?
商品先物取引やFX、CFDなどを扱う老舗の金融商品取引業者です。対面営業を強みに顧客資産の拡大を図っています。
■(1) 会社概要
同社は1957年に福岡市で豊商事として設立され、1995年に株式を店頭登録、2004年にJASDAQ市場へ上場しました。2010年には「くりっく株365」の取扱いを開始し、商品先物から金融商品全般へ事業領域を拡大しています。2020年に現商号である豊トラスティ証券へ変更し、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。
同グループの従業員数は連結で348名、単体で346名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社と思われる株式会社多々良マネジメントで、第2位、第3位も個人大株主となっており、オーナー色の残る株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社多々良マネジメント | 16.64% |
| 多々良 義成 | 6.78% |
| 椛田 法義 | 6.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性16名、女性0名の計16名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安成政文氏が務めています。社外取締役比率は約7.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安成 政文 | 代表取締役社長 | 1976年同社入社。大阪営業本部長、西部営業統括本部長などを歴任し、2015年4月より現職。 |
| 多々良 實夫 | 代表取締役会長 | 1960年同社入社。1990年代表取締役社長に就任。2007年6月より現職。 |
| 多々良 孝之 | 専務取締役管理本部長 | 1980年同社入社。デリバティブス・IT事業部長などを経て、2016年4月より現職。 |
| 安達 芳則 | 専務取締役営業統括本部長兼証券統括部長 | 1975年同社入社。東京第三営業本部長などを経て、2022年1月より現職。 |
| 日下 伸一 | 取締役名古屋営業本部長兼名古屋支店長 | 2000年同社入社。東京第三営業本部長、大阪営業本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 瀧田 照久 | 取締役コンプライアンス部長 | 1986年同社入社。東京第一営業本部長などを経て、2019年10月より現職。 |
| 鷹啄 浩 | 取締役法人営業部長 | 2008年同社入社。法人部長などを経て、2015年6月より現職。 |
| 宮下 芳範 | 取締役東京第二営業本部長兼新宿支店長 | 1991年同社入社。東京第一営業本部長などを経て、2024年10月より現職。 |
| 大橋 正直 | 取締役東京第三営業本部長兼横浜支店長 | 2017年同社入社。第七営業本部長、名古屋営業本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 松本 一明 | 取締役総務部長兼人事部長 | 2020年同社入社。総務部法務担当部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 寺田 達史 | 取締役経営企画・リスク管理部長 | 元東海財務局長。2021年同社入社(顧問)。経営企画部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 嶋埜 勝己 | 取締役福岡営業本部長兼福岡支店長 | 2003年同社入社。東京第一営業本部営業部長兼本店長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、長尾和彦(元金融庁証券取引等監視委員会事務局長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「商品デリバティブ取引業等」および「不動産管理業」事業を展開しています。
■(1) 商品デリバティブ取引業等
商品先物取引法に基づく商品デリバティブ取引(金、白金、原油、農産物など)や、金融商品取引法に基づく取引所株価指数証拠金取引「くりっく株365」、取引所為替証拠金取引「くりっく365」、日経225先物取引などの受託および自己売買を行っています。顧客は個人投資家や法人委託者(当業者)が中心です。
収益源は、顧客からの注文執行に伴う受入手数料および自社の計算で行うトレーディング損益です。運営は主に豊トラスティ証券が行っており、子会社のユタカ・アセット・トレーディング株式会社は自己売買業務を行っています。
■(2) 不動産管理業
同社グループが保有する研修施設等の不動産管理を行っています。
収益源は、研修施設等の管理業務に伴う対価などです。運営は子会社のユタカエステート株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、売上収益(営業収益)は増加傾向にあります。経常利益も2021年3月期の約7億円から2025年3月期には約22億円へと順調に拡大しています。当期純利益も同様に増加基調を維持しており、全体として業績は右肩上がりで推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 59億円 | 67億円 | 69億円 | 74億円 | 77億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 15億円 | 16億円 | 21億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | 11.9% | 21.8% | 23.4% | 28.3% | 28.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 10億円 | 9億円 | 14億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、営業収益が増加し、それに伴い営業利益も増加しています。営業利益率は27%前後で推移しており、高い収益性を維持しています。売上総利益に相当する純営業収益も増加傾向にあり、本業の儲けがしっかりと確保されています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 74億円 | 77億円 |
| 純営業収益 | 74億円 | 76億円 |
| 純営業収益率(%) | 99.8% | 99.8% |
| 営業利益 | 20億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 26.9% | 27.1% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が36億円(構成比64%)、取引関係費が8億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは単一セグメントですが、主要な収益源である手数料収入の内訳を見ると、商品デリバティブ取引の手数料が増加した一方で、金融商品取引の手数料は減少しました。特に貴金属市場の活況が商品デリバティブ取引の収益増に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 商品デリバティブ取引 | 57億円 | 60億円 |
| 金融商品取引 | 16億円 | 15億円 |
| その他 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 74億円 | 77億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
豊トラスティ証券は、営業活動により資金を取得し、投資活動では有価証券の取得等で資金を使用しました。また、財務活動では主に配当金の支払いにより資金を使用しています。これらの活動の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 20億円 | 18億円 |
| 投資CF | 0.2億円 | -8億円 |
| 財務CF | -3億円 | -4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は公正な価格決定機能等を有する商品市場機構の一構成員として、経済的・社会的役割を認識し、市場参加者の信頼と期待に応える事業運営を推進しています。「お客様第一主義」を企業理念に掲げ、良質な情報の提供、多様なニーズに応じた商品の提供、総合的な提案ができる社員の育成を通じて、「お客様重視の営業」を継続する方針です。
■(2) 企業文化
同社は、良質で鮮度のある情報を迅速かつ的確に提供することを重視しています。大手商社から入手した情報を分析し、動画コンテンツやセミナーだけでなく、社員が顧客一人ひとりと顔を合わせ、膝と膝を突き合わせた対面営業を通じて情報提供を行うことを大切にする文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2023年度から2025年度までの中期経営計画において、「お客様第一主義の経営理念の下、顧客の求める金融商品ニーズに幅広く対応し、資産形成に資するとともに、成長を持続し、社会的責任を果たす」ことを目標としています。具体的な数値目標として、安定的な配当の継続や自己資本規制比率の充実などを掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、早期に東京証券取引所の総合取引参加者資格取得を目指し、株式・投信等のフルラインの商品提供を可能にすることを目指しています。また、動画コンテンツ「ゆたかTV」を活用した集客や、会場型セミナーの開催を通じて新規顧客の獲得と預り資産の拡大を図ります。
* 取引所株価指数証拠金取引「ゆたかCFD」および取引所為替証拠金取引「Yutaka24」の預り資産拡大
* 東京証券取引所の総合取引参加者資格取得に向けた体制整備
* 人材育成基本方針に基づく人材の獲得・育成・配置
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、これまでに培った「デリバティブ市場」での経験に加え、現物株式や投資信託等の販売を通じて顧客の資産形成に貢献することを目指しています。そのために、デリバティブのスキル向上と新商品の知識習得に向けた社員教育、経験豊富な人材の採用、コンプライアンス体制の強化を進めています。また、資格取得支援やキャリア採用を積極的に行い、多様な人材が活躍できる環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.8歳 | 12.6年 | 7,243,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.7% |
| 男性育児休業取得率 | 25.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 74.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 商品デリバティブ取引業等の動向
同社の主要事業である商品デリバティブ取引業は、市場での売買高が減少傾向にあり、厳しい事業環境にあります。また、市場の自由化や国際化の進展により、異業種や外資系企業の参入が拡大する可能性があり、競争激化が経営環境に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 受託業務と自己売買業務のリスク
受託業務は市況による委託取引の多寡が業績に影響を与えます。自己売買業務(自己ディーリング)は、独自相場観に基づいて行われますが、相場変動により損失を被るリスクがあり、トレーディング損益の状況が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法的規制及びコンプライアンスリスク
同社は金融商品取引法や商品先物取引法などの規制を受けており、これらに抵触した場合、行政処分を受ける可能性があります。また、自己資本規制比率や純資産額規制比率が法定基準を下回った場合、業務停止等の命令を受ける可能性があり、業績や財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。



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