豊トラスティ証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

豊トラスティ証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する豊トラスティ証券は、商品デリバティブ取引業や金融商品取引業を主要事業として展開しています。直近の業績トレンドとしては、商品デリバティブ取引および取引所株価指数証拠金取引等の受入手数料が大幅に増加したことで、前期比で増収および大幅な増益を達成し好調に推移しています。


※本記事は、豊トラスティ証券株式会社の有価証券報告書(第70期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 豊トラスティ証券ってどんな会社?


商品デリバティブ取引や金融商品取引の受託および自己売買業務を主要事業として展開する企業です。

(1) 会社概要


1957年に福岡市で商品先物取引業として設立されました。1995年の株式公開を経て、2004年にジャスダック(現スタンダード市場)へ上場しました。2007年に金融商品取引業を登録し、2010年には取引所株価指数証拠金取引を開始するなど事業を拡大し、2020年に現在の豊トラスティ証券へ商号変更しています。

従業員数は連結で358名、単体で356名体制で事業を運営しています。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社とみられる多々良マネジメントで、第2位および第3位には個人株主が名を連ねており、創業者一族等による安定した資本構成となっています。

氏名 持株比率
多々良マネジメント 16.52%
多々良 義成 6.73%
椛田 法義 6.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性0名の計15名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安成政文氏が務め、社外取締役比率は約8.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
多々良 實夫 代表取締役会長 1960年同社入社。常務、専務等を経て、1990年代表取締役社長に就任。2007年よりユタカエステート代表取締役社長および同社代表取締役会長に就任し現職。
安成 政文 代表取締役社長 1976年同社入社。大阪営業本部長、専務等を経て、2008年ユタカ・アセット・トレーディング代表取締役社長に就任。2014年より同社代表取締役社長兼営業統括本部長を務め、2015年より現職。
多々良 孝之 専務取締役管理本部長 1980年同社入社。デリバティブス・IT事業本部長等を歴任。2013年常務取締役管理本部長兼コンプライアンス部長等を経て、2016年より専務取締役管理本部長として現職。
安達 芳則 専務取締役営業統括本部長兼証券統括部長 1975年同社入社。各営業本部長を歴任。2014年取締役大阪営業本部長を経て、2015年常務取締役営業統括本部長に就任。2022年より現職。
日下 伸一 取締役名古屋営業本部長兼名古屋支店長 1986年エース交易入社。2000年同社入社後、各営業本部長を歴任。取締役東京第三営業本部長等を経て、2025年より取締役名古屋営業本部長兼名古屋支店長として現職。
瀧田 照久 取締役コンプライアンス部長 1986年同社入社。各営業本部長を歴任。2014年取締役東京第三営業本部長等を経て、2019年より取締役コンプライアンス部長として現職。
鷹啄 浩 取締役法人営業部長 1982年関東砂糖入社。2008年同社入社後、法人部長や法人営業部長を歴任し、2013年執行役員法人営業部長に就任。2015年より取締役法人営業部長として現職。
大橋 正直 取締役東京第三営業本部長兼横浜支店長 1986年エース交易入社、2015年同社取締役等。2017年同社入社後、第七営業本部長等を務め、2025年より取締役東京第三営業本部長兼横浜支店長として現職。
松本 一明 取締役総務部長兼人事部長 1988年時事通信社入社。2020年同社入社後、総務部法務担当部長等を歴任。2023年より執行役員総務部長兼人事部長を務め、同年より現職。
寺田 達史 取締役経営企画・リスク管理部長 1984年大蔵省入省。金融庁市場課長等を歴任後、2021年同社入社。経営企画室長を経て、2024年より執行役員経営企画・リスク管理部長を務め、同年より現職。
嶋埜 勝己 取締役福岡営業本部長兼福岡支店長 2003年同社入社。東京第一営業本部本店長や営業部長を歴任。2021年福岡営業本部長に就任後、2024年に執行役員を務め、2025年より現職。


社外取締役は、長尾和彦(元金融庁証券取引等監視委員会事務局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「商品デリバティブ取引業等」の単一セグメント内で複数の事業を展開しています。

(1) 商品デリバティブ取引業等


金融商品取引法および商品先物取引法に基づき、金や原油、電力等の上場商品デリバティブ取引、ならびに取引所株価指数証拠金取引(ゆたかCFD)や為替証拠金取引(Yutaka24)の受託および自己売買業務を提供しています。顧客はリスクヘッジを行う法人や資産運用目的の個人投資家です。

収益源は、顧客の取引約定時に発生する受入手数料と、自己計算による取引で得られるトレーディング損益です。運営は同社のほか、子会社のユタカ・アセット・トレーディングが自己売買業務を行っています。

(2) 不動産管理業


同社グループが保有する研修施設等の不動産物件の管理事業を行っています。グループ内の事業活動を支えるためのインフラ整備や資産の有効活用を目的として、施設の維持管理や運営サポートを担っています。

収益は主にグループ内での施設利用や管理に伴う手数料等から発生する構造となっています。この事業の運営は、同社の完全子会社であるユタカエステートが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は一貫して増加傾向にあります。特に直近の事業年度では、デリバティブ市場における相場変動を背景とした取引の増加などにより、利益水準が過去の期間と比較して飛躍的に拡大しており、大幅な増益を記録しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 15億円 16億円 21億円 22億円 64億円
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 10億円 14億円 17億円 44億円

(2) 損益計算書


直近2期間において営業利益は大幅に増加しており、前期の約3倍の水準に達しています。これは活発な市場環境による受入手数料等の増収が大きく寄与し、販売費および一般管理費の増加を吸収したことによるものです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 21億円 63億円


販売費及び一般管理費のうち、人件費が45億円(構成比67%)、取引関係費が8億円(同11%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


改善型(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 18億円 30億円
投資CF -8億円 7億円
財務CF -4億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は6.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様第一主義」を企業理念として掲げています。商品市場や証券市場、為替市場等において、公正な価格決定機能等を有する市場機構の一構成員としての経済的・社会的役割を認識し、顧客の資産形成や価格変動リスクの管理に貢献する最適な商品およびサービスを提供することを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、市場参加者および投資家からの信頼と期待に応える誠実な事業運営を重視する文化を持っています。顧客本位の業務運営を徹底するとともに、コンプライアンスやリスク管理、情報セキュリティの強化を継続し、社会から信頼される企業集団として持続的に企業価値を向上させることを行動の軸としています。

(3) 経営計画・目標


同社は新たに策定した中期ビジョンに基づき、10年後の目指す企業像として「顧客のリスク・リターン選好に最適なサービスを提供し、最も選ばれる会社」を掲げています。持続的な成長と企業価値向上を目標とし、営業収益や経常利益、顧客の預り資産、新規口座数、および自己資本規制比率等を重要指標として設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期ビジョンの実現に向け、東京証券取引所の取引資格取得による取扱商品の拡充や、デリバティブ市場そのものの活性化を重点施策として推進しています。法人顧客のヘッジニーズ対応を強化するほか、幅広い顧客層のリスク選好に応じた金融サービスを提供し、安定的な収益基盤の確保と顧客基盤の拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本を重要な経営基盤と位置付け、専門知識や提案力を備えた人材の採用・育成に取り組んでいます。人事や教育研修を一元管理して従業員を継続的に支援し、資格取得の奨励やワークライフバランスの充実、女性活躍推進、適材適所の配置を行うことで、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.6歳 12.3年 8,866,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 46.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 商品デリバティブ市場の変動と受託取引リスク


同社が主要事業とする商品デリバティブ取引や金融商品取引は、金や原油などの相場環境や国際的な経済動向によって価格が大きく変動する性質があります。そのため、市場の流動性低下や投資家の取引動向の変化が、同社の受入手数料や自己売買業務(ディーリング)の損益に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金融商品取引業等の法的規制および行政処分リスク


同社の事業は、金融商品取引法や商品先物取引法などの厳格な法的規制を受けています。業務運営において関連法令や自主規制規則に抵触する事態が発生した場合、登録や許可の取り消し、あるいは業務停止命令などの行政処分を受ける可能性があり、その結果として同社の業績や社会的信用に影響を及ぼすリスクが存在します。

(3) 自己資本規制比率および純資産額規制比率の維持リスク


金融商品取引業者および商品先物取引業者として、同社は法令で定められた自己資本規制比率と純資産額規制比率を一定水準以上に維持する義務があります。相場の急変動などによりこれらの比率が基準を下回った場合、監督当局から業務停止や許可取り消し等の処分を受ける可能性があり、事業継続に影響を及ぼすリスクとなります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。