※本記事は、野村ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第122期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は US GAAP です。
1. 野村ホールディングスってどんな会社?
証券業を中核事業とし、グローバル市場で幅広い投資・金融サービスを提供する企業グループです。
■(1) 会社概要
1925年に大阪野村銀行の証券部を分離して設立され、1926年に公社債専門業者として営業を開始しました。1961年に東京・大阪・名古屋の各証券取引所に上場し、2001年に持株会社体制へ移行して現在の社名となりました。2025年にはマッコーリー・グループの資産運用事業を買収し、グローバル展開を加速しています。
従業員数は連結で28,677名、単体で204名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位はSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001となっており、主に信託銀行等が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.62% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.34% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行) | 3.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性3名の計18名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表執行役社長グループCEOは奥田健太郎氏が務めています。社外取締役比率は58.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 奥田健太郎 | 取締役代表執行役社長グループCEO | 1987年同社入社。野村證券の常務等を経て、2020年4月に代表執行役社長グループCEOに就任。2021年6月より現職。 |
| 中島豊 | 取締役代表執行役副社長 | 1988年同社入社。野村證券の取締役等を経て、2023年4月に代表執行役副社長に就任。2023年6月より現職。 |
| 永井浩二 | 取締役会長 | 1981年同社入社。2012年8月に代表執行役グループCEOに就任し、2017年4月に代表執行役社長グループCEO。2020年4月より現職。 |
| 小川祥司 | 取締役 | 1987年同社入社。野村證券の取締役会室長や執行役員等を経て、2021年4月に同社顧問に就任。2021年6月より現職。 |
社外取締役は、Victor Chu(第一東方投資集団チェアマン兼CEO)、J. Christopher Giancarlo(元米商品先物取引委員会委員長)、Patricia Mosser(コロンビア大SIPAディレクター)、高原豪久(ユニ・チャーム社長)、石黒美幸(長島・大野・常松法律事務所パートナー)、石塚雅博(元監査法人トーマツパートナー・監査委員長)、大島卓(NGK会長・指名/報酬委員長)、Nellie Liang(ブルッキングス研究所シニア・フェロー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ウェルス・マネジメント部門」「インベストメント・マネジメント部門」「ホールセール部門」「バンキング部門」および「その他」事業を展開しています。
■ウェルス・マネジメント部門
国内の個人投資家等に対し、対面やデジタル接点を通じて包括的な資産管理サービスを提供しています。株式や投資信託のほか、多様な資産管理ニーズに応えるソリューションを展開し、顧客の資産形成を長期的かつ総合的にサポートしています。
収益源は、顧客からの株式等の委託手数料や投資信託の募集手数料、および預かり資産に対する運用管理費用(ストック収入)です。運営は主に野村證券が行っており、持株会や企業型DCなどの職域向けサービスも展開しています。
■インベストメント・マネジメント部門
国内外の投資家向けに、投資信託の設定・運用や投資一任サービス、機関投資家向けファンドの運用・管理など、伝統的資産からオルタナティブ資産まで幅広い投資ソリューションを提供しています。
収益源は、ファンドや投資事業から得られるアセットマネジメントフィーや事務手数料などの運用管理報酬です。運営は主に野村アセットマネジメントのほか、買収したマッコーリー・グループの資産運用事業に関わる子会社などが担っています。
■ホールセール部門
グローバルな機関投資家や事業法人等を対象に、債券や株式、為替などのセールス・トレーディング業務(グローバル・マーケッツ)や、資金調達、M&Aアドバイザリーなどの投資銀行業務(インベストメント・バンキング)を提供しています。
収益源は、有価証券の引受・売出手数料、M&Aアドバイザリーフィー、およびトレーディングから得られる損益です。運営は主に野村證券やノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル等の海外グループ会社が担っています。
■バンキング部門
顧客の資産形成や円滑な資産承継などのニーズに応えるため、プライベートおよびオーダーメイドの特長を活かした銀行・信託機能による多様かつ質の高い金融サービスをグループ各社と連携して提供しています。
収益源は、預金や資金調達を基にした貸出や有価証券投資による利息収入、および投資信託などの顧客資産管理を通じた信託報酬・手数料です。運営は主に野村信託銀行やノムラ・バンク・ルクセンブルクが担っています。
■その他
事業別セグメントに含まれない経済的ヘッジ取引に関連する損益、営業目的で保有する投資持分証券の実現損益、関連会社損益の持分額、および本社勘定による財務調整などが含まれます。
主に野村ホールディングスがグループ全体の経営管理を担い、関連会社の野村総合研究所や野村不動産ホールディングスからの持分法による投資利益や配当金などが収益として計上されています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は市場環境の変動を受けつつも拡大傾向にあり、特に直近では大幅な成長を遂げています。利益面では一時的な落ち込みがあったものの、その後は着実に回復し、足元では収益力の強化により過去最高益水準に達するなど、力強い成長トレンドを描いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 15,940億円 | 24,867億円 | 41,573億円 | 47,367億円 | 47,585億円 |
| 税引前利益 | 2,266億円 | 1,495億円 | 2,739億円 | 4,720億円 | 5,398億円 |
| 利益率(%) | 14.2% | 6.0% | 6.6% | 10.0% | 11.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,430億円 | 928億円 | 1,659億円 | 3,407億円 | 3,621億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上収益は底堅い成長を維持しています。利益面でも収益性の改善が進んでおり、利益水準とその比率ともに上昇傾向にあります。事業基盤の拡大と効果的なコストコントロールが業績向上に寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 47,367億円 | 47,585億円 |
| 営業利益 | 1,270億円 | 1,595億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | 3.4% |
金融費用以外の費用のうち、人件費が8,295億円(構成比51.0%)、情報・通信関連費用が2,484億円(同15.3%)、支払手数料が2,219億円(同13.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの業績を見ると、ウェルス・マネジメント部門やホールセール部門が増収増益となり、全体の業績を牽引しています。インベストメント・マネジメント部門も運用資産の拡大により大幅な増収を達成しており、各事業が連携して安定した収益基盤を構築しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ウェルス・マネジメント部門 | 4,336億円 | 4,879億円 | 1,662億円 | 2,040億円 | 41.8% |
| インベストメント・マネジメント部門 | 1,925億円 | 2,585億円 | 896億円 | 883億円 | 34.2% |
| ホールセール部門 | 10,579億円 | 11,622億円 | 1,663億円 | 2,006億円 | 17.3% |
| バンキング部門 | 472億円 | 539億円 | 164億円 | 140億円 | 26.0% |
| その他 | 1,629億円 | 1,969億円 | 351億円 | 246億円 | 12.5% |
| 連結(合計) | 18,940億円 | 21,594億円 | 4,735億円 | 5,316億円 | 24.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業は赤字だが将来成長のため借入で投資を継続する「勝負型」の傾向を示しています。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主にトレーディング資産およびプライベートエクイティ・デット投資の増加(事業拡大に伴う資産増加)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -6,786億円 | -8,430億円 |
| 投資CF | -8,486億円 | -14,989億円 |
| 財務CF | 16,797億円 | 20,959億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「金融資本市場の力で、世界と共に挑戦し、豊かな社会を実現する」というパーパスを掲げています。金融資本市場の発展に寄与し、付加価値の高いソリューションの提供を通じて、経済の成長や社会の発展に貢献することを目指しており、多様なステークホルダーとともに持続可能な豊かな社会の実現に向けて挑戦を続けています。
■(2) 企業文化
「野村グループ行動規範」を定め、法令・諸規則の遵守と適正な企業行動を重視しています。「挑戦」「協働」「誠実」という価値観に賛同し、リスクを正しく認識・評価・管理するリスク・カルチャーの醸成に努めています。日々の業務において高い倫理観を持ち、社会から真に信頼されるプロフェッショナル集団としての文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度に向けた経営ビジョン「Reaching for Sustainable Growth」を定め、中長期の持続的成長の実現を追求しています。この経営定量目標として、以下の数値を掲げています。
* ROE(自己資本利益率):10~12%+
* 税引前当期純利益:7,500億円超
■(4) 成長戦略と重点施策
既存ビジネスの拡大とともに、パブリック市場に加えプライベート領域への拡大・強化を打ち出しています。資産管理ビジネスの推進や、インベストメント・マネジメント部門、バンキング部門の強化を進め、デジタルアセットやサステナブル・ファイナンスなどの新領域も開拓しています。また、全社的なコスト・コントロールやガバナンス体制の強化も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「新たな付加価値の創造に挑み続けるプロフェッショナル集団」を目指す姿とし、専門性とリーダーシップを持つ人材の育成を重視しています。採用・育成・評価・配置のマネジメントサイクルを最適化し、社員の自律的なキャリア形成や部門を超えた社内公募制度の活用を促進するとともに、誰もが活躍できるインクルーシブな職場環境づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.1歳 | 4.3年 | 14,208,790円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.2% |
| 男性育児休業取得率 | 94.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 57.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 68.1% |
※数値は主要な子会社である野村證券のものです。
また、同社は「従業員の状況」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(58.6%)、退職率(6.3%)、有給休暇取得率(73.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金融市場や経済情勢の変動リスク
同社のビジネスは、日本および世界経済の情勢や金融市場の動向により重大な影響を受ける可能性があります。各国の金融政策の変更や、市場低迷の長期化に伴う流動性の低下により、自己の保有資産の売却やヘッジが困難になり、大きな損失が生じるリスクがあります。
■(2) 金融サービスにおける競争激化
独立系証券会社や大手金融グループ、さらにはフィンテック企業などとの間で、セールス・トレーディングや投資銀行業務等の分野で激しい競争に晒されています。デジタル技術の進展や金融グループの再編による競争環境の変化に適切に対応できない場合、市場シェアの維持拡大に悪影響が及ぶ可能性があります。
■(3) リスク管理機能の限界と想定外の損失
市場リスクや信用リスクを管理するための方針や手続きを整備していますが、過去のデータに基づくリスク管理方法が将来の市場環境で十分に機能しない場合があります。リスクを適切に評価できない場合やヘッジ戦略が有効に機能しない場合、予期せぬ多額の損失を被るリスクがあります。
■(4) 規制対応とリーガル・リスク
グローバルな金融機関として各国の広範な法令や規制の適用を受けており、これらに抵触した場合には行政処分や罰金、業務制限等を課される可能性があります。また、不正行為やサイバー攻撃への対応が不十分な場合、レピュテーションの悪化や訴訟による多額の損害賠償負担が生じるリスクがあります。



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