岡三証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岡三証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する岡三証券グループは、金融商品取引業を中核事業として展開し、有価証券の売買や引受けなどの投資・金融サービスを提供しています。直近の業績では、市況の影響やリテールビジネス改革の推進等もあり、減収減益のトレンドとなっています。


※本記事は、岡三証券グループの有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2026年4月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 岡三証券グループってどんな会社?


岡三証券グループは、有価証券の売買や引受けを主力とする投資・金融サービス業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1923年創業の岡三商店を改組し、1944年に岡三証券を設立したのが始まりです。1973年に上場を果たし、2003年には証券業を会社分割して持株会社体制へ移行し、現在の岡三証券グループへと商号変更しました。近年は証券プラットフォーム事業の開始や新会社の発足など、新たなビジネスモデルへの変革を推進しています。

現在の従業員数は連結で3,343名、単体で50名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行となっており、第2位および第3位にはそれぞれ日本生命保険相互会社や農林中央金庫といった国内の有力な金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.92%
日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) 4.83%
農林中央金庫 4.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長は新芝宏之氏です。社外取締役は3名です。

氏名 役職 主な経歴
新芝宏之 取締役社長(代表取締役) 1981年同社入社。2001年取締役就任。専務取締役などを経て2014年より社長に就任。2020年より岡三証券代表取締役会長を兼務し現職。
池田嘉宏 取締役(代表取締役) 1986年同社入社。岡三証券常務執行役員などを経て2020年同社取締役。2022年より副社長執行役員および岡三証券代表取締役社長となり現職。
今村薫 取締役(監査等委員) 1997年同社入社。岡三証券の支店長や執行役員を歴任。2022年同社執行役員監査等委員会室担当を経て、2023年より監査等委員として現職。


社外取締役は、比護正史氏(弁護士)、宇治原潔氏(元ニッセイアセットマネジメント社長)、吉田慎一氏(元テレビ朝日取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「投資・金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 証券ビジネス


顧客である個人や法人に対し、株式や債券などの有価証券の売買、引受け、募集・売出しの取り扱いといった幅広い金融商品取引サービスを提供しています。
主に顧客からの委託手数料や引受け・募集の取扱手数料、トレーディング収益を収益源としています。中核事業会社である岡三証券をはじめ、岡三にいがた証券、証券ジャパンなどの各社が事業を運営しています。

(2) 関連事業


証券ビジネスを支援・補完するため、投資事業組合財産の管理・運用、情報処理サービス、事務代行、不動産管理などの周辺事業を展開しています。
各種システムの開発・運用保守によるシステム関連収益や、不動産の賃貸収入などを収益源としています。これらの事業は、岡三キャピタルパートナーズや岡三ビジネス&テクノロジー、岡三興業などのグループ各社が運営を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高(営業収益)は600億円台から800億円台で推移しており、経常利益も年度によって大きく変動しています。2024年3月期には営業収益が大きく伸長しましたが、2025年3月期はやや減収減益となりました。証券市場の動向等により収益が変動しやすい構造が見て取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 673億円 739億円 666億円 845億円 819億円
経常利益 74億円 69億円 4億円 181億円 156億円
利益率(%) 11.0% 9.3% 0.6% 21.4% 19.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 61億円 242億円 3億円 101億円

(2) 損益計算書


直近2年間の営業収益と営業利益の推移を見ると、当期は前期に比べて減収減益となっています。証券市場の環境変化などが影響し、営業利益率も前期の19.1%から当期は15.7%へと低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 845億円 819億円
営業利益 161億円 128億円
営業利益率(%) 19.1% 15.7%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が335億円(構成比50%)、取引関係費が107億円(同16%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


同社は本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況(事業検討型)のキャッシュ・フローとなっています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主にトレーディング商品の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -48億円 -207億円
投資CF 24億円 62億円
財務CF -44億円 -185億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は15.1%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「金融のプロフェッショナルとして「お客さまの人生」に貢献する」ことを存在意義(Purpose)として掲げています。また、「真心のこもったサービスでお客さま一人ひとりのニーズに応えつづけるベスト・パートナー」となることを目指す姿(Vision)とし、社会課題の解決と中長期的な企業価値の向上に努めています。

(2) 企業文化


同社グループは、新たにバリュー(価値観)として「矜持(Uphold Integrity)」「情熱(Ignite Passion)」「共創(Forge Synergy)」の3つを設定しています。これらの価値観を含む経営理念の社内浸透を図り、グループが一丸となって成長戦略を遂行することで、企業価値の持続的な向上を目指す文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2023年度を初年度とする5カ年の中期経営計画において、以下の主な経営指標目標を掲げています。

* 預り資産 10兆円
* ROE 8%
* 総還元性向 50%

(4) 成長戦略と重点施策


次の100年も成長し続ける経営基盤を確立するため、「One to One マーケティングの強化」「プラットフォームの高度化」「コーポレートブランディングの進化」を基本方針に据えています。具体的には、銀行サービスやファンドラップを通じたトータルコンサルティングの推進、独自のネットワークを活かした証券プラットフォーム事業の展開、および全領域でのデジタル化を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、多様性を受容し、あらゆる人材が個性と能力を発揮できる環境づくりを推進しています。金融のプロフェッショナルとしての高度な専門性と高い倫理観を育成するため、階層別の基盤研修や資格取得を推奨する自律的能力開発研修を提供しています。また、AIを活用した育成支援システムの導入や、柔軟な働き方を可能にする制度の拡充にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.3歳 16.5年 12,102,818円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.4%
男性育児休業取得率 102.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 60.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 75.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金融市場変動に伴う収益リスク


同社の主要事業である金融商品取引業は、国内外の経済動向や市況により投資需要が変化し、委託手数料やトレーディング損益が大幅に変動しやすい特性があります。競合環境の激化や法規制の強化とあわせて、市況の悪化が同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新たなビジネスモデルへの転換リスク


中期経営計画に基づき、One to Oneマーケティングの強化やプラットフォームの高度化、デジタル化の推進を通じた経営基盤の強化に取り組んでいます。しかし、これらの戦略的な施策が計画通りに進行しなかった場合、同社グループの期待する成長や企業価値の向上が実現できず、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 資金調達における流動性リスク


金融商品取引業という事業の性質上、業務執行に必要となる大量の資金を機動的かつ安定的に調達する必要があります。財政状態の悪化や信用格付の低下などにより、短期金融市場や資本市場からの資金調達が困難になる、あるいは調達コストが上昇する不測の事態が生じた場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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