岡三証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岡三証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岡三証券グループは東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、証券ビジネスをコアとする投資・金融サービス業を営んでいます。直近の連結業績は、受入手数料の増加等により増収増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高を記録するなど好調に推移しています。


※本記事は、株式会社岡三証券グループの有価証券報告書(第88期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 岡三証券グループってどんな会社?


同社グループは金融商品取引業を中核とし、資産運用サービスの提供を行う独立系の専業証券グループです。

(1) 会社概要


1944年に岡三商店を改組し設立され、1973年に東京・大阪両証券取引所市場第二部に上場しました。1975年に市場第一部へ指定され、2003年に持株会社体制へ移行しています。2022年に東京証券取引所プライム市場へ移行し、2025年にグループ会社の再編を実施してプラットフォーム事業を強化しています。

従業員数は連結で3,472名、単体で67名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位には事業展開において資本提携等の関係にある保険会社や金融機関が名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.85%
日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) 4.86%
農林中央金庫 4.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は新芝宏之氏が務めており、社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
新芝宏之 取締役社長(代表取締役) 1981年同社入社。2006年代表取締役専務を経て、2014年代表取締役社長に就任。岡三証券代表取締役・取締役会議長を兼務。
池田嘉宏 取締役(代表取締役) 1986年同社入社。2021年専務執行役員を経て、2022年代表取締役兼副社長執行役員に就任。岡三証券代表取締役社長兼社長執行役員を兼務。
宮林綾子 取締役(監査等委員) 2005年岡三証券入社。2023年同社監査等委員会室長を経て、2025年より現職。


社外取締役は、吉田慎一(元テレビ朝日社長)、木村芳文(元格付投資情報センター社長)、佐藤慎一(元財務事務次官)、岡野貞彦(元経済同友会事務局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「投資・金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。

投資・金融サービス業


主に金融商品取引業を中核とし、有価証券の売買やその委託媒介、引受け・売出しなどを手掛けています。個人および法人顧客に対して、国内外の株式、債券、投資信託などの多様な金融商品を提供し、資産形成を支援するトータルコンサルティングを行っています。

主な収益源は、顧客の株式売買に伴う委託手数料、投資信託の販売手数料および信託報酬、そして債券等の自己売買によるトレーディング損益です。事業の運営は、中核子会社である岡三証券を中心に、岡三にいがた証券や証券ジャパンなどのグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の連結業績は、金融市場の動向に影響を受けつつも概ね拡大傾向にあります。特に当期は株式委託手数料や投資信託の販売手数料が牽引し、営業収益が大きく伸長しました。経常利益率も20%台に達し、高い収益性を確保しながら過去最高の最終利益を記録しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 739億円 666億円 845億円 819億円 956億円
経常利益 69億円 4億円 181億円 156億円 229億円
利益率(%) 9.3% 0.6% 21.4% 19.0% 24.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 101億円 5億円 132億円 117億円 214億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構造を見ると、営業収益の増加に伴い営業利益も大幅に改善しています。純営業収益率は90%台後半を維持しており、販売費・一般管理費の増加を収益の伸びが上回ったことで、本業の儲けを示す営業利益率が向上しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 819億円 956億円
純営業収益 798億円 918億円
純営業収益率(%) 97.4% 96.0%
営業利益 128億円 187億円
営業利益率(%) 15.7% 19.6%


販売費および一般管理費のうち、人件費が372億円(構成比51%)、取引関係費が126億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは「投資・金融サービス業」の単一セグメントです。当期は株式市場の活況を背景に、委託手数料や投資信託関連の収益が大きく増加したことで、前期比で大幅な増収増益を達成しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
投資・金融サービス業 819億円 956億円 156億円 229億円 24.0%
連結(合計) 819億円 956億円 156億円 229億円 24.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる「改善型」の傾向を示しています。営業活動での資金獲得と投資有価証券の売却等による収入を原資として、借入金の返済や株主還元を積極的に進めていることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -207億円 628億円
投資CF 62億円 48億円
財務CF -185億円 -350億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は16.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、Purpose(存在意義)として「金融のプロフェッショナルとして『お客さまの人生』に貢献する」ことを掲げています。また、Vision(目指す姿)として、「真心のこもったサービスでお客さま一人ひとりのニーズに応えつづけるベスト・パートナー」となることを志向しています。

(2) 企業文化


「矜持(Uphold Integrity)」「情熱(Ignite Passion)」「共創(Forge Synergy)」という3つの価値観(Values)をグループ全体に浸透させています。また、創業以来の経営哲学である「人大事」の考えを軸に、人材を最も重要な経営資源の一つと位置づけて企業価値の向上に努めています。

(3) 経営計画・目標


2023年度を初年度とした5ヵ年の中期経営計画を策定し、次の100年も持続的な成長を実現するための経営基盤の確立に取り組んでいます。主な経営指標目標として以下の数値を掲げています。

* 預り資産 10兆円
* ROE 8%
* 総還元性向 50%

(4) 成長戦略と重点施策


「ビジネスモデルを変革し、次の100年も成長しつづける経営基盤を確立する」ことを基本方針とし、「One to One マーケティングの強化」「プラットフォームの高度化」「コーポレートブランディングの進化」を成長戦略の柱として推進しています。対面ビジネスにおいてAI等の活用によるデジタル化を推進し、付加価値の高いウェルスマネジメントの提供を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員がお客さまに高い付加価値を提供し続けるためには、高度な知識と専門性、高い倫理観が不可欠であるとの考えのもと、多彩な教育・研修プログラムを導入しています。個々の価値観や適性に応じて自律的にキャリア形成ができる環境を整備し、柔軟な働き方の推進や働きがいの向上に取り組むことで、多様な人材の確保と育成を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.0歳 14.9年 11,281,863円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.7%
男女賃金差異(正規雇用) 67.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(57.2%)、社員エンゲージメント(6.34pt)、営業社員数(1,523名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金融市場の変動に伴う収益減少


同社の主要事業である金融商品取引業は、国内外の市況動向や経済動向により投資需要が変化しやすく、受入手数料やトレーディング損益が大幅に変動する特性があります。市場環境の悪化や取引の低迷が生じた場合、業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 異業種参入等による競争激化


対面営業を主力として競争優位を築いていますが、同業他社に加えて銀行等の競合、異業種やフィンテック系スタートアップからの参入など、証券業界の競争環境は激化しています。独自の優位性を維持できない場合、経営成績に影響を与えるおそれがあります。

(3) システム障害と情報セキュリティ


インターネット取引や業務システムの利用が不可欠であり、品質不良やサイバー攻撃、災害などによるシステム障害のリスクがあります。また、不正アクセス等により個人情報や機密情報が漏洩した場合、損害賠償や社会的信用の失墜につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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