岡三証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岡三証券グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア上場。金融商品取引業を中核とし、対面営業やオンライン取引等を通じて資産運用サービスを提供する。2025年3月期の連結業績は、営業収益819億円(前期比3.0%減)、経常利益156億円(同13.8%減)の減収減益となった。(128文字)


※本記事は、株式会社岡三証券グループ の有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 岡三証券グループってどんな会社?

証券ビジネスを中核とする投資・金融サービス企業。対面やオンラインなど多様なチャネルで顧客の資産運用を支援します。

(1) 会社概要

1944年に岡三証券を設立し、1973年に東京・大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。2003年に持株会社体制へ移行し、現社名に変更しています。2022年の市場区分見直しで東証プライム・名証プレミアへ移行しました。2025年には子会社の三晃証券ウェルスマネジメントが営業を開始しています。

連結従業員数は3,343名、単体では50名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行である日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は大手生命保険会社の日本生命保険相互会社、第3位は系統金融機関である農林中央金庫です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.92%
日本生命保険相互会社 4.83%
農林中央金庫 4.81%

(2) 経営陣

同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表者は取締役社長の新芝 宏之氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
新芝 宏之 取締役社長(代表取締役) 1981年入社。企画部門・人事企画部担当専務取締役等を経て2014年より現職。岡三証券会長を兼務。
池田 嘉宏 取締役(代表取締役) 1986年入社。グループ企業支援部管掌兼戦略部門担当等を経て2022年より現職。岡三証券社長を兼務。
今村 薫 取締役(監査等委員) 1997年入社。岡三証券広域法人部門担当執行役員、同社執行役員監査等委員会室担当を経て2023年より現職。


社外取締役は、比護正史(元財務省官房審議官・弁護士)、宇治原潔(元日本生命保険取締役)、吉田慎一(元テレビ朝日HD社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「投資・金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 証券ビジネス

岡三証券をはじめとする証券子会社が、国内外の株式、債券、投資信託等の有価証券の売買媒介、引受け、募集取扱い等を行っています。個人顧客向けの対面コンサルティング営業や、インターネット取引、IFA(金融商品仲介業者)を通じたサービスなど、多様なチャネルで投資家ニーズに対応しています。

収益は主に、顧客からの株式等の委託手数料、投資信託の販売手数料や信託報酬、引受手数料、およびトレーディング業務による損益から構成されています。運営は、中核となる岡三証券のほか、岡三にいがた証券、三晃証券、三縁証券、証券ジャパンなどのグループ各社が行っています。

(2) 関連事業

証券ビジネスを支える機能として、投資事業組合財産の管理・運用、情報システムの開発・運用、事務代行、不動産管理などのサービスを提供しています。グループ内のリソースを集約し、業務効率化や専門性の向上を図っています。

グループ会社からのシステム利用料、事務代行手数料、投資事業組合の管理報酬などが収益源となります。運営は、システム・事務機能を統合した岡三ビジネス&テクノロジーや、ベンチャーキャピタル業務を行う岡三キャピタルパートナーズ、不動産管理を行う岡三興業などが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

2024年3月期に大幅な増収増益を達成した後、直近の2025年3月期は減収減益となりましたが、一定の利益水準を確保しています。金融市場の動向による業績変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 673億円 739億円 666億円 845億円 819億円
経常利益 74億円 69億円 4億円 181億円 156億円
利益率(%) 11.0% 9.3% 0.6% 21.4% 19.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 60億円 101億円 5億円 132億円 117億円

(2) 損益計算書

営業収益は前期比で減少しました。利益面では、販売費・一般管理費が増加したこともあり、営業利益率は低下しましたが、依然として10%台後半を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 845億円 819億円
売上総利益 826億円 798億円
売上総利益率(%) 97.7% 97.5%
営業利益 161億円 128億円
営業利益率(%) 19.1% 15.7%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が335億円(構成比50%)、取引関係費が107億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益

単一セグメントのため、連結数値を記載します。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
連結(合計) 845億円 819億円 161億円 128億円 15.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主にトレーディング商品の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -48億円 -207億円
投資CF 24億円 62億円
財務CF -44億円 -185億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は15.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、Purpose(存在意義)として「金融のプロフェッショナルとして『お客さまの人生』に貢献する」を掲げています。また、Vision(目指す姿)として「真心のこもったサービスでお客さま一人ひとりのニーズに応えつづけるベスト・パートナー」を掲げ、持続的な企業価値の向上に努めています。

(2) 企業文化

同社は、新たにバリューとして「矜持(Uphold Integrity)」「情熱(Ignite Passion)」「共創(Forge Synergy)」を設定しました。これら3つの価値観を含む経営理念の社内浸透を図り、グループ一丸となって成長戦略を遂行する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標

2023年度を初年度とする5カ年の中期経営計画を策定し、ビジネスモデルの変革に取り組んでいます。2028年3月期に向けた主な数値目標は以下の通りです。
* 預り資産 10兆円
* ROE 8%
* 総還元性向 50%

(4) 成長戦略と重点施策

「One to One マーケティングの強化」「プラットフォームの高度化」「コーポレートブランディングの進化」を基本方針としています。銀行サービス「岡三BANK」等の導入によるトータルコンサルティングの推進や、他証券会社のIFA転換を支援するプラットフォーム事業を展開しています。また、システム子会社の統合やデジタル技術の活用により、サービス向上と効率化を図っています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「一人ひとりが能力を最大限発揮できる会社」「多様な人材から選ばれる会社」を目指し、2025年4月より新人事制度を導入しました。育成面では、共通能力研修に加え、資格取得支援やAIを活用した学習システムによる自律的なキャリア形成を支援しています。また、WLB制度の拡充やシニア人材の活用、アルムナイネットワークの運営など、多様な働き方を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.3歳 16.5年 12,102,818円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.4%
男性育児休業取得率 102.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.2%
男女賃金差異(正規雇用) 60.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 75.0%


※数値は提出会社が公表義務の対象ではないため、主要な連結子会社である岡三証券株式会社のデータを記載しています。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金融商品取引業の収益変動

同社グループの主要事業である金融商品取引業は、市況動向や経済情勢の影響を強く受けます。市場環境の変化により投資需要が減退したり、相場が急変したりした場合、受入手数料やトレーディング損益が大幅に変動し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合環境の激化

証券業界では、同業他社に加え、銀行等の金融機関、異業種からの参入、フィンテック企業の台頭などにより競争が激化しています。手数料競争やサービスの差別化において優位性を維持できない場合、顧客基盤の縮小や収益性の低下を招き、経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) システムリスク

業務遂行においてコンピュータ・システムは不可欠ですが、システム障害、通信回線のトラブル、外部からのサイバー攻撃等が発生するリスクがあります。これにより、取引の停止や誤発注、情報漏洩等が生じた場合、社会的信用の失墜や損害賠償責任が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法規制への対応

国内外の広範な法令・規制の適用を受けており、これらに違反した場合は行政処分の対象となります。また、将来的な規制強化や新たな法規制の導入により、コンプライアンスコストの増加や事業活動の制約が生じ、経営成績や事業展開に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。