※本記事は、株式会社北洋銀行の有価証券報告書(第168期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 北洋銀行ってどんな会社?
北海道最大の第二地方銀行出身の銀行です。道内の広範なネットワークを活かし、銀行、リース、証券等の総合金融サービスを提供しています。
■(1) 会社概要
1917年に北海道無尽として設立され、1989年に普通銀行へ転換し北洋銀行へ商号変更しました。1998年に経営破綻した北海道拓殖銀行から道内営業を譲り受け規模を拡大。2001年に札幌銀行と持株会社を設立し、2008年に札幌銀行と合併しました。2018年には上光証券(現北洋証券)を完全子会社化し、証券業務を強化しています。
2024年3月31日時点の連結従業員数は2,799名(単体2,371名)です。株主構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位、第3位は生命保険会社です。地域経済への貢献を重視しつつ、安定株主としての機関投資家が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.47% |
| 日本生命保険相互会社 | 8.01% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 8.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役頭取兼CEO兼CHROは津山博恒氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安田 光春 | 取締役会長 | 1983年入行。融資第一部長、経営企画部長などを経て、2018年代表取締役頭取に就任。2024年4月より現職。 |
| 津山 博恒 | 取締役頭取兼CEO兼CHRO(代表取締役) | 1991年北海道拓殖銀行入行、1998年当行入行。経営企画部長、本店営業部副本店長、帯広中央支店長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 増田 仁志 | 取締役副頭取兼CBPO(代表取締役) | 1987年入行。ローン推進部副部長、苫小牧中央支店長、帯広中央支店長、本店営業部本店長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 山田 明 | 常務取締役兼CRO | 1990年北海道拓殖銀行入行、1998年当行入行。融資第一部担当部長、法人営業部長、法人推進部長兼ソリューション部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 米田 和志 | 常務取締役兼CFO兼CSO兼CIO | 1989年北海道拓殖銀行入行、1998年当行入行。ソリューション部長、法人推進部長、営業店サポート部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 押野 均 | 取締役監査等委員(常勤) | 1985年北海道拓殖銀行入行、1998年当行入行。法務コンプライアンス部長、監査部長、常勤監査役を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、神戸俊昭(弁護士)、西田直樹(元財務省北陸財務局長)、谷口雅子(公認会計士・税理士)、田原咲世(社会保険労務士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業
北洋銀行が中心となり、北海道内を主要な基盤として、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務、有価証券業務、クレジットカード業務等を営んでいます。地域経済の活性化に貢献すべく、多様な金融商品・サービスを地域の法人や個人顧客に提供しています。
収益は、貸出金の利息、有価証券の運用益、各種手数料(為替、投資信託販売等)などから構成されます。運営は主に株式会社北洋銀行が行っています。
■(2) リース業
顧客に対して、機械設備や情報通信機器などの動産賃貸(リース)サービスを提供しています。企業の設備投資ニーズに対応し、物件の購入代金を同社グループが負担して顧客に賃貸するファイナンス・リースなどが中心です。
収益は、顧客から受け取るリース料収入です。運営は株式会社札幌北洋リースが行っています。
■(3) その他
クレジットカード業務、信用保証業務、銀行事務代行業務、証券業務、コンサルティング業務などを展開しています。銀行業を補完し、顧客の多様なニーズに応える金融周辺サービスを提供しています。
収益は、クレジットカードの加盟店手数料や年会費、信用保証料、証券取引の手数料、コンサルティング報酬などです。運営は、株式会社札幌北洋カード、北洋ビジネスサービス株式会社、ノースパシフィック株式会社、北洋証券株式会社、株式会社北海道共創パートナーズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は増収増益となりました。経常収益は、主に資金運用収益の増加を主因として前年比で増加しました。一方、経常費用も増加しましたが、収益の増加がそれを上回ったため、経常利益は大幅に増加しました。当期純利益も同様に増加しました。過去5年間の推移を見ると、経常収益は緩やかな増加傾向にあり、経常利益および当期純利益も変動しながらも増加傾向を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 1283 | 1245 | 1267 | 1331 | 1506 |
| 経常利益(億円) | 158 | 192 | 173 | 186 | 281 |
| 当期純利益(億円) | 94 | 118 | 96 | 128 | 206 |
■(2) 損益計算書
当期は、主に資金運用収益の増加を主因として経常収益が増加しました。経常費用も増加しましたが、収益の増加がそれを上回ったため、経常利益は大幅な増益となりました。当期純利益も同様に増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 1331 | 1506 |
| 経常費用 | 1145 | 1226 |
| 経常利益 | 186 | 281 |
| 当期純利益 | 128 | 206 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
当行の役務取引等収益は、前期比で大幅に増加しました。中でも「預金・貸出業務」が最も大きな割合を占めており、次いで「代理業務」が続きました。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 1 | 10 |
| 預金・貸出業務 | 92 | 147 |
| 代理業務 | 6 | 1 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
北洋銀行の当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度に比べ減少しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、貸出金の増加等により支出となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得等により支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 988 | △67 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △7030 | △3285 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △192 | △91 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、厳しさを増す経営環境下で職員一人ひとりが果たすべき役割と北海道の未来への貢献を使命とするため、統一した経営理念を掲げています。顧客の信頼のもと、多様化するニーズや課題に最善の提案で応え、北海道の持続可能な未来のために困難に立ち向かうことを目指しています。
■(2) 企業文化
経営理念の実現に向け、4つの行動規範を定めています。顧客本位・従業員本位の実践をベースに、「成長」と「環境・社会」をキーワードとしています。職員が自律的にキャリアを形成し、多様性や創造性を追求すること、そして職員のエンゲージメント向上を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2023年度より中期経営計画「新たな成長へのチャレンジ」をスタートさせています。2025年度(2026年3月期)の経営指標として以下の目標を掲げています。
* 親会社株主に帰属する当期純利益:170億円
* 自己資本比率(連結):14%程度(バーゼルⅢ最終化ベース)
* ROE(連結):4%程度
* コアOHR(連結):70%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
北海道とお客さまのサステナビリティ向上サポート、お客さまの成長を支える人財の育成、店舗機能再構築・事務効率化による生産性の向上の3つを全体戦略としています。具体的には、再生可能エネルギーなどのGX(グリーントランスフォーメーション)や次世代半導体製造企業の進出など、北海道の産業構造変革の機会を捉え、サステナブル経営の支援やデジタル化への対応を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「地域社会のサステナビリティを支える人財の創出」を掲げ、専門性の高い人財育成、自律性・多様性・創造性の追求、職員エンゲージメントの向上の相乗効果を狙っています。コンサルティング力やデジタル分野などの専門知識強化のための研修、公募によるトレーニー制度、リスキリング支援などを行い、職員が安心してやりがいを持って働ける環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 43.0歳 | 19.2年 | 6,724,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 23.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 102.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 51.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 62.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 49.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員に占める女性比率(41.8%)、男性と女性の平均雇用年数の差(2.2年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自己資本比率が低下するリスク
同社は自己資本比率規制の国内基準行であり、4%以上の水準確保が求められています。有価証券ポートフォリオの価値低下、与信関係費用の増加、繰延税金資産の取崩し等により自己資本が減少した場合、業務停止命令等の措置を受ける可能性があります。
■(2) 業務に伴うリスク
市場リスク(金利・為替・株価変動)、流動性リスク(資金調達困難)、事務リスク(人為的ミス)、システムリスク(システム障害・サイバー攻撃)、法務リスク、災害リスク、風評リスク、情報漏洩リスクなど、銀行業務遂行に伴う多様なリスクが存在し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 金融環境等に係るリスク
金融緩和継続による競争激化、法規制の変更、北海道経済の動向(人口減少、産業構造変化)などの外部環境の変化が、同社の収益基盤や信用リスクに影響を与え、業績や財務内容に悪影響を及ぼす可能性があります。特に地域経済の悪化は貸出金の回収に影響する恐れがあります。



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