りそなホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 りそなホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

りそなホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、りそな銀行などのグループ銀行を傘下に持つ金融サービスグループです。銀行や信託業務を中心に幅広く展開しています。直近の業績では、貸出金の伸長や利回りの上昇などを背景に、経常収益・当期純利益ともに順調な増収増益を達成しています。


※本記事は、りそなホールディングスの有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. りそなホールディングスってどんな会社?


リテール分野に強みを持ち、銀行や信託業務を中心に多様な金融ソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は2001年に大和銀行、近畿大阪銀行、奈良銀行の株式移転により、大和銀ホールディングスとして設立され上場しました。翌2002年に現在の社名へと変更し、2003年には大和銀行とあさひ銀行が再編され、りそな銀行と埼玉りそな銀行が誕生しました。2018年には関西みらいフィナンシャルグループが関西アーバン銀行とみなと銀行を傘下に収め、2024年に同社がこれを吸収合併しています。

現在の従業員数はグループ全体で20,813名、単体では2,105名体制で事業を運営しています。同社の筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位も資産管理業務等を担う日本カストディ銀行(信託口)、第3位はSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001と、機関投資家が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.11%
日本カストディ銀行(信託口) 5.39%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 4.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性28名、女性3名の計31名で構成され、女性役員比率は9.6%です。取締役兼代表執行役社長兼グループCEOは南昌宏氏が務めており、取締役10名のうち7名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
南昌宏 取締役兼代表執行役社長兼グループCEO 1989年同グループ入社。りそな銀行取締役や同社取締役兼代表執行役社長等を経て、2023年より現職。
伊佐真一郎 取締役兼代表執行役副社長兼グループCFO兼グループCDO財務部担当兼データ戦略部担当兼グループ戦略部(業務プロセス改革)担当兼グループ戦略部(事業開発)担当兼グループ戦略部ワークスタイル変革室担当 1996年同グループ入社。りそな銀行常務執行役員経営企画部長等を経て、2026年より現職。
岩舘伸樹 取締役兼代表執行役副社長兼グループCSO兼グループCSuO兼グループCHROグループ戦略部担当兼人財サービス部担当統括兼コーポレートガバナンス事務局担当 1995年同グループ入社。りそな銀行常務執行役員経営企画部担当等を経て、2026年より現職。
石田茂樹 取締役 1990年同グループ入社。りそな銀行専務執行役員融資企画部担当や同社執行役副社長等を経て、2026年より現職。
村尾幸信 取締役監査委員会委員 1993年同グループ入社。埼玉りそな銀行執行役員やりそな銀行常務執行役員等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、岩田喜美枝(元労働省入省・指名委員長)、野原佐和子(イプシ・マーケティング研究所代表取締役社長・報酬委員長)、山内雅喜(元ヤマトホールディングス社長)、田中克幸(弁護士・監査委員長)、瀬口二郎(元メリルリンチ日本証券社長)、ランドバーグ史枝(元グーグルディレクター)、樋口泰行(元パナソニックコネクト社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、報告セグメントである「個人部門」「法人部門」「市場部門」および「その他」の事業を展開しています。

個人部門


個人部門では、個人のお客さまを対象として、住宅ローンなどの個人向けローンや、投資信託などの資産運用、資産承継に係るコンサルティングを中心とした事業活動を展開しています。

収益源としては、各種ローンの貸出金利息や、金融商品の販売に伴う各種手数料などが挙げられます。運営は主にりそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、みなと銀行のグループ各銀行が行っています。

法人部門


法人部門では、法人のお客さまを対象として、企業向けの貸出、信託機能を活用した資産運用、不動産業務、企業年金、事業承継など、顧客企業の事業成長をサポートする事業活動を展開しています。

事業の収益は、企業向け貸出に伴う金利収入や、信託報酬、不動産やM&Aなどの各種アドバイザリー手数料から得ています。運営は個人部門と同様に、主にりそな銀行などのグループ銀行各社が行っています。

市場部門


市場部門では、資金、為替、債券、デリバティブなどの金融市場を通じた資金の調達および運用活動を行っています。金融市場における相場変動を利用した利益の獲得も目指しています。

収益モデルとしては、有価証券の利息配当金や売却益などの資金運用収益のほか、デリバティブ取引などによる特定取引収益が中心です。本セグメントの運営も、主にグループの各銀行が担っています。

その他


その他部門では、上記の報告セグメントに該当しない事業を展開しています。主に、グループ全体の経営管理や、システム開発、事務の受託、ベンチャーキャピタル事業などが含まれます。

収益は、グループ会社からの受取配当金や各種受入手数料などで構成されています。運営は、持株会社である同社や、りそなテクノロジーズ、りそなビジネスサービスなどの関連子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高にあたる経常収益は安定的な拡大傾向が続いており、経常利益も成長基調にあります。当期は金融環境の変化による貸出金利回りの上昇などが寄与し、大幅な増収増益を記録しています。利益率も高い水準を維持し、力強い収益基盤を確立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 8447億円 8680億円 9417億円 11175億円 13572億円
経常利益 1588億円 2277億円 2230億円 2922億円 3909億円
利益率(%) 18.8% 26.2% 23.7% 26.1% 28.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 1100億円 1604億円 1589億円 2133億円 2587億円

(2) 損益計算書


売上高(経常収益)は前期から2397億円増加し、それに伴い営業利益(単体)も拡大しています。銀行業という性質上、売上高に対する営業利益の割合は約10%前後で推移しており、堅実な事業運営がうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 11175億円 13572億円
営業利益 1097億円 1424億円
営業利益率(%) 9.8% 10.5%


販売費及び一般管理費(単体)のうち、給料・手当が80億円(構成比62.3%)、賞与引当金繰入額が12億円(同9.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての主要部門で増収を達成しています。特に個人部門と法人部門は、貸出金残高の増加や利回り上昇、各種手数料ビジネスの好調により、売上(業務粗利益)・利益ともに堅調に推移しました。市場部門は市場環境の変動等の影響によりマイナスとなっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
個人部門 3562億円 4106億円 1284億円 1716億円 41.8%
法人部門 4579億円 4855億円 2314億円 2469億円 50.9%
市場部門 -1147億円 -828億円 -1194億円 -880億円 -
その他 -73億円 34億円 -36億円 -386億円 -
連結(合計) 6921億円 8166億円 2368億円 2919億円 35.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的状態に見えますが、なお、同社は金融関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません(事業拡大に伴う資産増加)。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -2934億円 -47376億円
投資CF -10455億円 -9839億円
財務CF -890億円 -1279億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均をわずかに下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も3.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「お客さまの喜びがりそなの喜び」という基本姿勢を貫き、顧客や地域社会から最も支持され、共に未来へ歩み続ける「リテールNo.1」のソリューショングループを目指しています。また、パーパスとして「金融+で、未来をプラスに。」を掲げ、社会価値と企業価値の最大化に努めています。

(2) 企業文化


「創造性に富んだ金融サービス企業を目指し、お客さまの信頼に応え、変革に挑戦し、透明な経営に努め、地域社会とともに発展する」という経営理念を根幹に据えています。金融の枠にとどまらない発想で、社会の変化に柔軟に対応し、挑戦と変革を継続する文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2026年度からスタートする新中期経営計画「Shift to the Next Stage ―新たなカタチをつくる3年間―」において、企業価値の最大化に向けた資本循環を加速させています。株主還元については、総還元性向目標を50%以上とし、安定的かつ持続的な増配を目指しています。

* 2029年度のDOE(純資産配当率):3.5%程度

(4) 成長戦略と重点施策


コア事業の成長、次世代成長ドライバーの創出、経営基盤の構造改革の3本柱を推進しています。リテール特化で培った質の高いバランスシートを活かし、金利ある世界においても顧客への持続的な資金供給を行います。また、デジタルプラットフォームやパートナー連携を強化し、収益構造の多様化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「価値創造」と「Well-being」の持続的な好循環の実現に向け、「共創」「プロフェッショナル」「エンゲージメント」を強化する3つの柱に設定しています。従業員一人ひとりの主体性や挑戦志向を高めるため、多様なリーダー育成や越境プログラムの提供、専門性向上に向けたリスキリングを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.1歳 14.4年 9,069,000円


※平均年間給与は、時間外手当などを含んだ合計額を基に算出しています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 35.2%
男性育児休業取得率 99.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.4%
男女賃金差異(正規雇用) 68.6%
男女賃金差異(パート・有期) 56.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、高度専門人財(1,563人)、キャリア採用管理職比率(14.4%)、行動変容・成長スコア(52.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争環境の激化リスク

金融業界における規制緩和やデジタル化による異業種参入、サステナビリティへの対応加速などにより、事業環境の競争が激しさを増しています。十分な競争力を確保できない場合、貸出金利鞘の確保や預金調達力の低下、各種手数料収入の伸び悩みが生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 信用リスクと与信費用の増加

同社の与信ポートフォリオは、中堅・中小企業向けや個人向け住宅ローンが高い割合を占めています。急激な景気悪化や自然災害、特定業種の業績不振などが生じた場合、貸出先の信用状態が悪化し、想定を超える貸倒引当金の計上や与信費用の増加を余儀なくされるリスクがあります。

(3) システム障害とサイバー攻撃のリスク

金融サービスを提供する上で、各種システムやITインフラに大きく依存しています。システム障害の発生や高度化するサイバー攻撃によって顧客情報の漏えいや不正送金などが起きた場合、業務の停止、被害補償、システム復旧費用の発生に加え、社会的信用の失墜を招く可能性があります。

(4) サステナビリティ経営の対応リスク

気候変動や生物多様性などのサステナビリティ課題に対し、取引先のサポートや情報開示が不十分とみなされた場合、成長機会を逃すだけでなく、座礁資産化のリスクが顕在化し、結果として同社グループの企業価値が大きく毀損する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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