極東証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

極東証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する証券会社。対面営業を重視する「Face to Face」のビジネスモデルを特徴とし、富裕層向けコンサルティング営業に強みを持ちます。2025年3月期は、投資信託販売の好調により受入手数料が増加し、売上にあたる営業収益は増収、親会社株主に帰属する当期純利益は増益となりました。


※本記事は、極東証券株式会社 の有価証券報告書(第82期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 極東証券ってどんな会社?


対面営業を重視する証券会社として、富裕層向けに「特色ある旬の商品」を提供する独自戦略を展開しています。

(1) 会社概要


1947年に設立され、1949年に現在の商号へ変更しました。1990年には金地金の売買業務の承認を受け、業容を拡大しています。2005年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌2006年には同市場第一部へ指定されました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はプライム市場に移行しています。

同社グループの従業員数は連結で236名、単体で225名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は有限会社みつる、第3位は株式会社七十七銀行です。有限会社みつるは同社創業家に関連する法人と推測され、七十七銀行とは業務上の取引関係を有しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.73%
有限会社みつる 8.28%
株式会社七十七銀行 5.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長は菊池廣之氏、代表取締役社長は菊池一広氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
菊池 廣之 取締役会長(代表取締役) 1964年野村證券入社。1972年同社入社、同年代表取締役副社長。1979年代表取締役社長を経て、2012年4月より現職。
菊池 一広 取締役社長(代表取締役) 1990年野村證券入社。1999年同社入社、同年代表取締役副社長を経て、2012年4月より現職。
後藤 昌弘 取締役専務執行役員営業本部長 1985年同社入社。大阪支店長、本店資産管理第二部長、営業統括部長等を歴任し、2016年6月より現職。
茅沼 俊三 取締役専務執行役員企画管理本部長 1980年東京証券取引所入所。日本取引所グループ国際担当企画統括役等を経て、2013年同社入社。2017年6月より現職。


社外取締役は、堀川健次郎(元日本経済新聞社常務)、吉野貞雄(元東京証券取引所代表取締役専務)、菅谷貴子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「投資・金融サービス業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 金融商品取引業


同社および子会社の株式会社FEインベストが担う中核事業です。国内外の株式、債券、投資信託などの有価証券の売買、引受け、募集・売出しの取扱いを行っています。特に対面営業によるコンサルティングを重視し、富裕層顧客に対してきめ細かな資産運用提案を行うビジネスモデルを構築しています。

収益は主に、顧客からの株式・債券等の売買委託手数料、投資信託の販売手数料および信託報酬、引受手数料などから構成されます。また、同社自身の自己資金によるトレーディング収益も重要な収益源となっています。運営は主に極東証券および株式会社FEインベストが行っています。

(2) 投資・不動産・調査研究業


金融商品取引業を補完する事業として、投資業、不動産業、調査・研究業を展開しています。投資業では自己資金を用いた長期投資を行い、不動産業ではグループ保有不動産の賃貸管理を行っています。また、調査・研究業では経済や金融市場の調査を行っています。

収益は、投資業からの配当・売却益、不動産賃貸収入、調査業務の受託料などから得ています。運営は、投資業を株式会社FEインベスト、不動産業を極東プロパティ株式会社、調査・研究業を株式会社極東証券経済研究所がそれぞれ行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高(営業収益)は相場環境により変動がありますが、直近では80億円規模まで回復しています。経常利益は2023年3月期に大きく落ち込みましたが、その後は30億円台の水準まで回復しています。当期純利益も同様の傾向を示し、直近では40億円を超える水準となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 89億円 65億円 43億円 77億円 80億円
経常利益 44億円 19億円 5億円 37億円 35億円
利益率(%) 49.1% 29.0% 11.4% 48.0% 43.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 31億円 21億円 12億円 43億円 44億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、営業収益は77億円から80億円へと増加しました。これは投資信託の販売が好調に推移したことによる受入手数料の増加が寄与しています。一方、営業利益は27億円となり、前期の30億円から若干減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 77億円 80億円
売上総利益 77億円 79億円
売上総利益率(%) 99.3% 99.0%
営業利益 30億円 27億円
営業利益率(%) 38.2% 33.7%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が31億円(構成比58%)、取引関係費が6億円(同12%)を占めています。売上原価(金融費用)は1億円(構成比1%)です。

(3) セグメント収益


同社グループは「投資・金融サービス業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの比較情報は記載を省略します。なお、全体の営業収益は前期比で増収となりましたが、営業利益は販管費の増加等により減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
連結(合計) 77億円 80億円 30億円 27億円 33.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

極東証券は、自己資本を充実させ、効率的に運用することで企業価値向上を目指しています。

当期は、トレーディング商品の取得や法人税等の支払いにより、営業活動によるキャッシュ・フローは使用となりました。投資活動では、投資有価証券の売買や定期預金の払い戻し等により、キャッシュ・フローは獲得となりました。財務活動では、短期・長期借入金の増加があったものの、配当金の支払い等により、キャッシュ・フローは使用となりました。これらの結果、現金及び現金同等物は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -0.3億円 -41億円
投資CF -40億円 47億円
財務CF -30億円 -22億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創立以来、「信は萬事の基と為す」を経営の基本理念としています。信頼を原点とした「Face to Face(お客さまとの対面での直接対話型)」のビジネスモデルと、健全経営による安定的成長確保を経営の基本方針として掲げています。

(2) 企業文化


「Face to Face」のビジネスモデルを堅持し、顧客との直接対話を重視する文化があります。また、「誠実・公正」に向き合い金融サービスを提供することを重視し、役職員全員が高い倫理観に基づいて業務を遂行できる環境整備を継続的に実施しています。

(3) 経営計画・目標


中期事業計画(2024年度~2026年度)において、独自のビジネスモデルを強化し収益力の向上に取り組んでいます。
* ROE:8%

(4) 成長戦略と重点施策


中期事業計画では「収益基盤の拡大」「人的資本の充実」「コンプライアンスの徹底」を対処すべき課題として設定しています。対面営業スタイルを堅持しつつ、多様な商品を取り揃え、マーケットの変化を捉えた機動的な運用提案を行うことで、新たな顧客層の開拓と預り資産の拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「お客さまからの信頼」というブランドと「特色ある旬の商品の提供」というノウハウを活用し、収益力を向上させるために人的資本の充実を重視しています。独自の金融サービスを提供するために不可欠な高度な能力を備えた中核人材の育成を目指し、人材育成プランを策定・実行しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.7歳 17.1年 8,646,583円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.8%
男性育児休業取得率 88.8%
男女賃金差異(全労働者) -%
男女賃金差異(正規雇用) -%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※労働者の男女の賃金の差異については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、営業員のFP取得率(98.9%)、中途採用者管理職比率(49.6%)、ストレスチェックスコア(94.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 単一事業を営んでいることのリスク


同社グループは金融商品取引業という単一領域で事業を行っているため、業績は金融資本市場の変動や環境変化による影響を大きく受けます。市場縮小等により収益が減少した場合、それを補完する他事業を持たないため、経営成績や財政状態が急激に悪化する可能性があります。

(2) テクノロジーを活用しないことのリスク


Face to Faceのビジネスモデルに基づき対面営業を行っているため、オンライン取引等のシステムは構築していません。将来的にフィンテック分野のサービス提供が求められた際、インフラ構築の遅れにより収益機会を逸失したり、業務効率性の問題から市場競争力が低下する可能性があります。

(3) 市場の縮小に伴うリスク


経済情勢の悪化等により株式・債券市場が低迷・縮小し、投資者の意欲減退や売買注文の減少が起きた場合、委託手数料等の各種手数料収入が減少する可能性があります。また、新規上場の減少等により引受手数料等が減少することも考えられます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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