※本記事は、極東証券株式会社の有価証券報告書(第83期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 極東証券ってどんな会社?
富裕層向け対面営業を軸とする金融商品取引業および投資業を展開し、独立系証券として独自のビジネスモデルを確立しています。
■(1) 会社概要
1947年に前身となる冨士証券が設立され、1949年に現在の極東証券に商号を変更しました。1989年に総合証券会社となり、全国の主要都市に支店網を拡大しています。2005年には東京証券取引所市場第二部への上場を果たし、翌2006年には同市場第一部への指定替えを実現して事業基盤を強固なものとしてきました。
従業員数は連結238名、単体227名です。筆頭株主は管理有価証券信託分などを保有する日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は資産管理業務を行うとみられる有限会社みつる、第3位には事業資金の安定的な供給で親密な取引関係を持つ七十七銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.50% |
| 有限会社みつる | 8.38% |
| 七十七銀行 | 5.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は菊池一広氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菊池一広 | 取締役社長(代表取締役) | 1990年野村證券入社。1999年同社に入社し、代表取締役副社長に就任。2012年より現職。 |
| 菊池廣之 | 取締役会長(代表取締役) | 1964年野村證券入社。1972年同社に入社し、1979年に代表取締役社長に就任。2012年より現職。 |
| 後藤昌弘 | 取締役専務執行役員営業本部長 | 1985年同社入社。大阪支店長、常務執行役員などを経て、2016年より現職。 |
| 茅沼俊三 | 取締役専務執行役員企画管理本部長 | 1980年東京証券取引所入所。日本取引所グループ国際担当企画統括役などを経て2013年同社入社。2017年より現職。 |
社外取締役は、堀川健次郎(元日本経済新聞社常務取締役)、吉野貞雄(元東京証券取引所代表取締役専務)、菅谷貴子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「投資・金融サービス業」の単一セグメントにおいて事業を展開しています。
■(1) 金融商品取引業
富裕層を中心とした顧客向けに、国内外の株式、債券、投資信託などの有価証券の売買や引受け、募集・売出しの取扱い等の金融サービスを提供しています。対面営業(Face to Face)を通じたきめ細やかな提案を強みとしています。
顧客からの有価証券の売買注文の取次ぎに伴う委託手数料や、投資信託の販売に伴う取扱手数料、信託報酬などの受入手数料を主な収益源としています。運営は主に極東証券が担っています。
■(2) 投資業・その他事業
自己資金を利用して、長期投資による安定的収益の確保を目的とした投資事業を展開するほか、本支店店舗等の不動産賃貸事業や、経済・金融市場の調査・研究業務を行っています。
トレーディング商品として保有する債券等からの利息収入や、投資有価証券の売却益、配当金などの金融収益を獲得しています。運営はFEインベスト、極東プロパティ、極東証券経済研究所がそれぞれ担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
経常利益は2023年3月期に一時的な落ち込みを見せましたが、その後は力強く回復し、直近の2026年3月期には40億円まで成長しています。当期利益も同様のトレンドを描き、堅調な推移を見せています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 19億円 | 5億円 | 37億円 | 35億円 | 40億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 10億円 | 41億円 | 40億円 | 44億円 |
■(2) 損益計算書
本業の経常的な収益力を示す営業利益は、前期の27億円から当期は30億円へと増加傾向にあり、堅固な事業基盤を維持していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 27億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
■(3) セグメント収益
同社は「投資・金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しているため、セグメント別の収益データは記載されていません。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 投資・金融サービス業 | - | - |
| 連結(合計) | - | - |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況となっています。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に信用取引貸付金などの増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -41億円 | -24億円 |
| 投資CF | 47億円 | 60億円 |
| 財務CF | -22億円 | -28億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.1%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「信は萬事の基と為す」を経営の基本理念として掲げています。信頼をすべての原点と位置づけ、顧客との直接的な対話を通じた対面営業(Face to Face)を重視する独自のビジネスモデルを確立しています。健全経営による持続的・安定的な成長を確保し、社会全体への付加価値の提供と国民経済の発展に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
顧客との対話を通じて厚い信頼を獲得する「親切・丁寧な対応」を企業文化の根幹としています。「お客さま本位の業務運営に関する方針」に基づき、全従業員が高い倫理観を持ち、「誠実・公正」に業務を遂行する環境を整備しています。また、従業員一人ひとりの対応力や提案力の向上を支援し、多様化するニーズに的確に応えられる専門性の高い人材の育成を重んじています。
■(3) 経営計画・目標
現在推進中の中期事業計画(2024年度〜2026年度)において、株主資本の効率的な運用と持続的な成長を実現するための指標として、自己資本利益率(ROE)を重要な経営目標に設定しています。
* ROE(自己資本利益率):8%の達成
■(4) 成長戦略と重点施策
独自のビジネスモデルを強化し、収益力の向上を図るため、「収益基盤の拡大・充実」「人的資本の充実」「コンプライアンスの徹底」を重点施策に掲げています。営業事務の効率化や顧客データの分析高度化により、付加価値の高い提案活動に専念できる環境を整備します。また、適切なリスク管理のもと、自己資本による有望な分野への積極的な投資を推進し、多様な収益源の確保を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社にとって人的資本の充実は最も重要な経営課題であり、「多様化・高度化するお客さまニーズに的確に対応できる人材」の育成に注力しています。顧客理解力や専門知識力の強化を柱とした人材育成プランを策定し、FPなどの資格取得支援や各種研修プログラムを充実させています。また、社員のモチベーション向上につながる評価・報酬制度の整備や、働きやすい職場環境の構築を通じて、定着率の向上とパフォーマンスの最大化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.3歳 | 17.1年 | 8,378,789円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.6% |
| 男性育児休業取得率 | 133.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異 | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、労働者の男女の賃金の差異についての記載はありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(54.7%)、月平均所定外労働時間(25.4時間)、営業員のFP取得率(98.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金融商品取引業における法的規制
証券ビジネスを営むうえで、金融商品取引法などの関連法令や自主規制機関のルールを遵守する必要があります。コンプライアンスの徹底を図っていますが、万が一重大な法令違反により業務停止処分や登録取消しを受けた場合、事業継続が困難となり、業績や財務状況に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 金融市場の変動と競争環境の激化
収益の多くを手数料収入に依存しているため、経済情勢の悪化などで株式市場や債券市場が低迷した場合、顧客の投資意欲の減退により収益が減少する恐れがあります。また、規制緩和や異業種からの参入、テクノロジーの進化による競争環境の激化に対して優位性を維持できない場合、顧客基盤を喪失するリスクがあります。
■(3) 自己勘定取引と保有資産の価格下落
同社は自己勘定による有価証券のトレーディングや中長期的な投資を行っています。ポジション管理やヘッジ取引により市場リスクの低減に努めていますが、予期せぬ市場価格の変動により多額の損失が発生する可能性があります。また、保有する不動産や投資有価証券の価値が下落し、減損処理を余儀なくされるリスクもあります。



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