※本記事は、ウェルス・マネジメント株式会社の有価証券報告書(第27期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ウェルス・マネジメントってどんな会社?
不動産ファンドの運用やラグジュアリーホテルの開発、運営受託を主力とする独立系不動産金融グループです。
■(1) 会社概要
1999年に金融情報提供会社として設立し、2005年に東証マザーズへ上場しました。2013年に現行のアセットマネジメント事業を展開する会社を子会社化し、2014年に現社名へ変更しました。2015年にホテル運営事業を開始し、2025年には第一ライフグループと資本業務提携を締結しています。
同社グループの従業員数は連結で403名、単体で32名です。筆頭株主は資本業務提携先である第一ライフグループで、第2位は赤坂社中有限責任事業組合、第3位には創業メンバーで代表取締役社長執行役員の千野和俊氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 第一ライフグループ | 28.47% |
| 赤坂社中有限責任事業組合 | 17.50% |
| 千野 和俊 | 8.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は千野和俊氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 千野 和俊 | 代表取締役社長執行役員 | 三菱地所投資顧問を経て2006年に現リシェス・マネジメントを設立。2013年に同社社長に就任し現職。 |
| 矢治 健一郎 | 取締役専務執行役員 | 三菱地所住宅販売に入社し執行役員等を歴任。2023年に同社専務執行役員に就任し現職。 |
| 三原 大介 | 取締役専務執行役員 | 谷澤総合鑑定所等を経て2011年に現リシェス・マネジメント入社。2026年より同社専務執行役員として現職。 |
| 門田 守人 | 取締役執行役員 | 三和銀行に入社し各支店長等を歴任。2018年に同社へ入社し、2025年より執行役員社長室室長として現職。 |
| 近持 淳 | 取締役常勤監査等委員 | 三和銀行やイオン銀行等を経て2016年に同社入社。経営企画部長等を歴任し2024年より現職。 |
社外取締役は、山田庸男(弁護士)、太田将(公認会計士・アセントパートナーズ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アセットマネジメント事業」「不動産事業」「ホテル運営事業」を展開しています。
■(1) アセットマネジメント事業
不動産および不動産関連金融商品への投資に関するアセットマネジメント業務を行っています。投資案件の発掘からデューディリジェンス、取得、売却までのトータルアドバイスや、不動産投資の入口から出口までをサポートするプラットフォームを提供しています。
収益源は、受託資産に係る管理報酬や、仲介手数料・成功報酬等からなるリアルエステートアドバイザリー収益です。主な事業運営は、子会社であるリシェス・マネジメントおよびウェルス・リアルティ・マネジメントが行っています。
■(2) 不動産事業
不動産等の取得、開発、保有、売却および賃貸などを行っています。主にホテル開発用不動産の信託受益権を取得・保有し、将来的な売却を通じたキャピタルゲインの獲得や、マスターリース契約による安定的な収益確保を目指しています。
収益源は、開発した不動産や信託受益権の売却収入、外部投資家等との共同投資ファンドからの匿名組合分配益、不動産賃料などです。運営は匿名組合高瀬川、匿名組合強羅開発などの各ファンドや、丸菱エネシスが行っています。
■(3) ホテル運営事業
レベニューマネジメント、ホテルの現場管理、開業・運営に係るコンサルティングなど、ホテル運営に関する様々なサービスを提供しています。バジェットからラグジュアリータイプまで多様なホテルを展開し、グローバルブランドとの協業も行っています。
収益源は、ホテルに宿泊する一般顧客からの宿泊・飲食施設の利用料や、ホテル所有者からの運営受託に伴うマネジメントフィーです。運営は主にワールド・ブランズ・コレクションホテルズ&リゾーツ、美松、南二条ホテルオペレーションズなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の売上高は大型不動産の売却タイミングにより大きく変動しています。直近では開発物件の売却期ずれや建築コスト高騰等の影響を受け、減収および経常赤字に転じており、より安定的な収益基盤の構築が課題となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 290億円 | 148億円 | 286億円 | 183億円 | 151億円 |
| 経常利益 | 53億円 | 39億円 | 26億円 | 10億円 | -21億円 |
| 利益率(%) | 18.3% | 26.5% | 9.2% | 5.7% | -13.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 30億円 | 14億円 | 5億円 | 11億円 | -12億円 |
■(2) 損益計算書
ホテル運営事業の売上が好調に推移したものの、利益率の高い不動産売却が減少したことで売上総利益率は大きく低下しています。これに伴い、営業損益も赤字に転落する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 183億円 | 151億円 |
| 売上総利益 | 58億円 | 30億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.9% | 20.0% |
| 営業利益 | 25億円 | -1億円 |
| 営業利益率(%) | 13.8% | -0.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与諸手当・賞与が7億円(構成比22%)、役員報酬が3億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
インバウンド需要の回復によりホテル運営事業は大幅な増収増益を達成しました。一方で、アセットマネジメント事業と不動産事業は大型物件の売却が減少したことや開発コストの上昇が響き、減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アセットマネジメント事業 | 20億円 | 9億円 | 12億円 | 3億円 | 33.0% |
| 不動産事業 | 84億円 | 38億円 | 13億円 | -15億円 | -38.5% |
| ホテル運営事業 | 79億円 | 104億円 | 10億円 | 24億円 | 22.7% |
| 連結(合計) | 183億円 | 151億円 | 25億円 | -1億円 | -0.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは「勝負型」の傾向を示しています。本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続しています。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -31億円 | -252億円 |
| 投資CF | -39億円 | -55億円 |
| 財務CF | 19億円 | 259億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も19.8%となっており、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「快適な時間と空間づくりを通して日本の魅力と精神性を『体験価値』として提供し、あらゆるお客様に感動と安定的な繁栄をお届けすることで、豊かな社会の発展に貢献します」という企業理念を掲げています。日本の観光事業を世界に向けた輸出産業と位置づけ、日本各所の観光地を持続可能で魅力あふれる場所にすることを目指しています。
■(2) 企業文化
「日本の『資産』を未来の力に」というグループスローガンを掲げています。従業員一人ひとりが大切にすべき信条として「共助」「矜持」「誠実」「研鑽」を定め、これらを体現する人材の育成に注力しています。若年期から裁量権の大きい役割を与え、実践を通じた主体的な能力開発を推進し、個々の「研鑽」と「矜持」を育む環境を整備しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは事業の成長、収益性を重視した経営を行うべく、「売上高」「経常利益」を重要な経営指標として位置づけています。また、アセットマネジメント事業や不動産事業ではグループで取り扱う不動産の評価額の増加に努め、ホテル運営事業においてはADR(客室平均単価)、OCC(稼働率)、RevPAR(販売可能な客室1室当たりの収益)を注視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
資産循環型ビジネスモデルの進化と持続的成長の実現に向け、ラグジュアリーホテルの開発と運営力の強化を進めています。第一ライフグループとの協業による事業機会の創出や、ソーシング機能の集約による意思決定の迅速化を図ります。また、大規模開発に加え、リブランドやコンバージョン等の多様な手法を活用した小・中規模案件も推進し、より安定的な収益基盤の構築を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
専門性の高い多様な人材の確保と社員のモチベーション向上が極めて重要と認識し、「働き甲斐があり、働きやすい職場」と「成果に報いる人事制度」の構築を掲げています。労働市場を注視した継続的な給与水準の引き上げや、各種研修の充実、福利厚生制度の充実に向けた取り組みを進め、バランスの良い就業環境の実現と次世代人材の育成を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 36.8歳 | 2.3年 | 7,032,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 62.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 64.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 145.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金融および不動産市場の変動リスク
金利動向や地価、需給バランスなどの不動産市況の影響を強く受けます。景気の悪化や大幅な金利上昇、建築コストの高騰が起きた場合、不動産への投資意欲の低下や空室率の上昇、資金調達コストの増加を招き、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 不動産取引・マスターリースに関する収益悪化リスク
同社グループの収益は、特定の不動産取引や一時的な売却収入への依存度が高い傾向にあります。また、共同投資するホテルにおいてマスターリース契約を結んでいる場合、ホテルの稼働が悪化すると賃貸借契約による賃料が固定賃料を下回る「逆鞘」状態となり、損失が生じるリスクがあります。
■(3) 開発および運営コストの増加リスク
物価上昇、円安、実質金利の引き上げを背景に、物件取得費用や建築工事費、ホテルの運営費用などが急激に増加しています。物件の売却価格や宿泊料金への転嫁、徹底したコスト管理に努めていますが、コストの増加分を吸収しきれない場合、収益を圧迫する可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。