ウェルス・マネジメント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウェルス・マネジメント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社はスタンダード市場に上場し、不動産金融とホテル運営を融合した事業を展開する企業です。ホテルや不動産への投資・開発を行うアセットマネジメント事業や、自社ブランド等によるホテル運営事業を手掛けます。2025年3月期は、不動産売却時期の期ズレ等により減収減益となりました。


※本記事は、ウェルス・マネジメント株式会社 の有価証券報告書(第26期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ウェルス・マネジメントってどんな会社?


同社は、不動産投資・開発を行うアセットマネジメント事業と、ラグジュアリーホテル等の運営事業を両輪とする企業です。

(1) 会社概要


1999年に金融情報配信を行うドリームバイザー・ドット・コムとして設立され、2005年にマザーズへ上場しました。2013年にリシェス・マネジメント(旧ウェルス・マネジメント)を完全子会社化し、不動産金融事業へ本格参入。2014年に現商号へ変更しました。2016年には東証二部へ市場変更し、現在はスタンダード市場に上場しています。近年はホテル開発・運営に注力し、事業拡大を進めています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は396名、単体従業員数は24名です。筆頭株主は不動産事業やホテル事業を展開するサムティで、第2位は投資事業組合の赤坂社中有限責任事業組合、第3位は同社代表取締役社長の千野和俊氏です。

氏名 持株比率
サムティ 28.47%
赤坂社中有限責任事業組合 17.50%
千野 和俊 8.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は千野和俊氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
千 野  和 俊 代表取締役社長執行役員 三菱地所投資顧問投資営業部長等を経て2006年旧ウェルス・マネジメント(現リシェス・マネジメント)設立。2013年同社社長就任。2024年より現職。
矢治 健一郎 取締役専務執行役員 三菱地所リアルエステートサービス常務執行役員等を経て2023年同社専務執行役員。2024年より現職。
三 原  大 介 取締役常務執行役員 谷澤総合鑑定所等を経て2011年旧ウェルス・マネジメント入社。2024年より現職。リシェス・マネジメント取締役専務執行役員を兼務。
門 田 守 人 取締役執行役員 三菱東京UFJ銀行虎ノ門支店長等を経て2018年同社入社。管理本部長兼人事部長等を経て2025年4月より社長室室長。
近 持    淳 取締役常勤監査等委員 イオン銀行執行役員、マルハン財務経理本部担当等を経て2016年同社入社。専務執行役員等を経て2024年より現職。


社外取締役は、山田庸男(元大阪弁護士会会長)、太田将(アセントパートナーズ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アセットマネジメント事業」「不動産事業」「ホテル運営事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) アセットマネジメント事業


投資案件の発掘からデューディリジェンス、取得、売却までのトータルアドバイスや、不動産投資の入口から出口までをワンストップでサポートするプラットフォームを提供しています。主な対象はホテルや不動産関連金融商品です。

収益は、受託資産(不動産)に係る管理報酬や、仲介手数料、成功報酬等から構成されます。運営は主にリシェス・マネジメント、ウェルス・リアルティ・マネジメントが行っています。

(2) 不動産事業


ホテル開発用不動産の信託受益権の取得、保有、賃貸、開発などを行っています。取得した資産をバリューアップし、同社が組成するリートへ組み込むサイクルなどの資産循環型ビジネスの中核を担います。

収益は、保有不動産の売却益や賃貸収入、匿名組合分配益などが主な源泉です。運営は、匿名組合高瀬川、匿名組合強羅開発などの特別目的会社(SPC)や株式会社丸菱エネシスが担っています。

(3) ホテル運営事業


ラグジュアリーホテルからミッドクラスのホテルまで、宿泊・飲料施設等の経営および受託運営を行っています。「シックスセンシズ 京都」や「バンヤンツリー・東山 京都」などの運営実績があります。

収益は、宿泊客や施設利用者からの利用料収入が中心です。運営は、ワールド・ブランズ・コレクションホテルズ&リゾーツ、美松、堂島ホテルオペレーションズなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移を見ると、売上高と利益は大きく変動しています。2022年3月期と2023年3月期は大幅な増収増益を達成しましたが、直近の2025年3月期は、不動産事業における物件売却の期ズレなどが影響し、前期比で減収減益となりました。利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 53億円 290億円 148億円 286億円 183億円
経常利益 -8億円 53億円 39億円 26億円 10億円
利益率(%) -15.6% 18.3% 26.5% 9.2% 5.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -4億円 35億円 14億円 5億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の減少に伴い売上総利益率は上昇しましたが、販管費の増加により営業利益率は低下しました。売上原価の減少幅に対し、販管費が増加していることから、利益率への圧迫要因となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 286億円 183億円
売上総利益 53億円 58億円
売上総利益率(%) 18.5% 31.9%
営業利益 30億円 25億円
営業利益率(%) 10.6% 13.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与諸手当・賞与が7.3億円(構成比22%)、支払報酬が2.8億円(同8%)を占めています。売上原価においては、物件売却原価等が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


アセットマネジメント事業は信託受益権譲渡報酬等により大幅な増収増益となりました。ホテル運営事業も新規開業効果等で増収となりましたが、開業費用の負担等で減益でした。一方、不動産事業は物件売却の期ズレにより大幅な減収減益となり、連結全体の業績を押し下げました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
アセットマネジメント事業 6億円 20億円 0.5億円 12億円 58.0%
不動産事業 219億円 84億円 25億円 13億円 16.0%
ホテル運営事業 62億円 79億円 14億円 10億円 12.2%
連結(合計) 286億円 183億円 30億円 25億円 13.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の営業CFがマイナスでありながら、借入金によって資金を調達し、将来の成長に向けた投資を継続している「勝負型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 70億円 -31億円
投資CF -5億円 -39億円
財務CF -12億円 19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も31.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、『快適な時間と空間づくりを通して、日本の魅力と文化を、「体験価値」として提供し、あらゆるお客様に感動と安定的な繁栄をお届けする』という企業理念を掲げています。この理念のもと、直接的・間接的に環境・社会課題の解決に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「やりがい」と「成長」という企業文化をクレドの一つに掲げています。従業員の経験や意欲に応じた適切な配置を行い、従業員満足度調査を反映した人事施策を展開することで、長期的に安心して就業できる環境整備に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、事業の成長と収益性を重視した経営を行うため、「売上高」および「経常利益」を重要な経営指標として位置づけています。また、アセットマネジメント事業および不動産事業では取扱不動産の評価額増加を、ホテル運営事業ではADR(客室平均単価)、OCC(稼働率)、RevPAR(販売可能な客室1室当たりの収益)を注視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


資産循環型ビジネスモデルの確立とホテルの事業力強化を基本戦略としています。バリューアップした物件をリートへ組み込み資金を循環させるほか、グローバルブランドのノウハウを活用した自社ホテル運営を強化します。これにより安定収益と資産循環による利益を積み上げ、プライム市場への上場を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


専門性の高い不動産金融業務や多様なホテル運営に対応するため、社員のモチベーション向上を重視しています。労働市場を注視した給与水準の引き上げや、各種研修・福利厚生の充実を進め、バランスの良い就業環境の実現を目指しています。また、成果に報いる人事制度の構築にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.6歳 2.5年 7,352,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 -
男性労働者の育児休業取得率 -
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 60.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 62.1%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 21.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) AM事業・不動産事業の収益構造


アセットマネジメント事業や不動産事業の収益は、成功報酬や不動産売却収入などの一時的な収益の割合が高くなっています。不動産市場の環境悪化等によりこれらの収益が著しく減少した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 金利上昇や市況変動の影響


不動産投資や開発資金の調達において借入を行っているため、大幅な金利上昇は調達コストの増加に直結します。また、景気悪化による不動産需要の低下や価格下落は、保有物件の評価損や売却益の減少を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 外注工事のコスト増と遅延


ホテル建設等の建築工事をゼネコンに外注していますが、建設業界の人手不足や資材価格高騰により、コスト増や工期の遅延が懸念されています。これらが発生した場合、資金調達や開業スケジュールの遅れにつながり、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。