松井証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松井証券 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松井証券は東京証券取引所プライム市場に上場し、個人投資家を対象としたオンライン証券取引サービスを展開しています。日本株ブローキング事業を主軸に、投資信託やFXなどのサービスを提供しています。直近の業績は、株式市場の好況を背景に委託手数料などが拡大し、大幅な増収増益(経常利益238億円)を達成しました。


※本記事は、松井証券株式会社 の有価証券報告書(第110期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松井証券ってどんな会社?


個人投資家向けに特化したオンライン証券取引サービスを展開し、日本株ブローキング事業を主軸としています。

(1) 会社概要


1918年に創業した松井房吉商店を前身とし、1998年には国内初となる本格的なインターネット取引サービスを開始しました。2001年に東京証券取引所市場第一部への上場を果たしています。近年では、2022年に米国株式サービスの提供を始めたほか、2023年には銀行サービスも開始するなど事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は単体で227名体制となっています。筆頭株主は丸六で、第2位も同じく法人の松興社が続いており、第3位には資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)が名を連ねています。

氏名 持株比率
丸六 37.54%
松興社 13.87%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長執行役員は和里田聰氏が務めています。社外取締役は5名で、取締役全体の過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
和里田聰 代表取締役社長執行役員 1994年P&Gファー・イースト・インク入社。リーマン・ブラザーズ証券等を経て2006年同社入社。常務取締役、専務取締役などを歴任し、2020年より代表取締役社長。2025年より現職。
鵜澤慎一 取締役専務執行役員コーポレート部門担当 1996年新王子製紙入社。2001年同社入社。2004年財務部長に就任後、取締役財務部長、常務取締役、専務取締役コーポレート部門担当役員などを経て、2025年より現職。
松井道太郎 取締役 2013年QUICK入社。2018年同社入社。コンプライアンス部、社長直轄プロジェクト担当を経て、2020年取締役に就任。戦略部門担当役員兼戦略企画部長などを歴任し、2023年より現職。
高橋武文 取締役(常勤監査等委員) 2000年同社入社。2006年コンプライアンス室担当課長に就任。2019年には内部監査室長を務め、その後2023年に取締役(監査等委員)に就任。2023年より現職。


社外取締役は、小貫聡(元興和不動産社長)、堀俊明(元QUICK副社長)、川西拓人(のぞみ総合法律事務所パートナー)、小駒望(公認会計士)、塩見めぐみ(マーサージャパン取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、オンライン証券取引サービスの単一セグメントで事業を展開しています。

(1) オンライン証券取引サービス


個人投資家を対象とした株式ブローキング事業を主軸に、利便性の高いオンライン証券取引サービスを展開しています。株式の委託売買や信用取引に加え、投資信託、FX(外国為替証拠金取引)、先物・オプション取引、米国株取引など多様な金融商品を提供し、顧客の資産形成を支援しています。

収益源は主に、株式等委託売買代金に応じた顧客からの委託手数料や、信用取引顧客への資金・有価証券の貸付け等に伴う金利・貸株料収入です。また、FX取引に伴うトレーディング損益や投資信託の販売関連収益も含まれます。これらの事業運営は松井証券が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の単体業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、経常利益は一時的な足踏みがあったものの、直近では力強い成長軌道を描いています。特に当期は、活況な株式市場を背景に委託手数料や金融収益が大きく伸び、経常利益は238億円、当期純利益は155億円と過去最高水準を達成し、高い収益力を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 - - - - -
経常利益 128億円 113億円 151億円 153億円 238億円
利益率(%) - - - - -
当期純利益 114億円 78億円 98億円 105億円 155億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益動向を見ると、本業の儲けを示す営業利益が大きく拡大しています。市況の好転による取引増加が収益を牽引し、広告宣伝費や事務委託費などの費用の増加を吸収して大幅な増益を達成しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 156億円 235億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費等を含む取引関係費が84億円(構成比33%)、事務委託費などの事務費が64億円(同25%)、人件費が49億円(同19%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金と借入等の財務活動で調達した資金を元に、積極的な投資を行っている「積極型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -434億円 35億円
投資CF -44億円 -63億円
財務CF 532億円 29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は6.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様の豊かな人生をサポートする。」を企業理念(MISSION)とし、「個人投資家にとって価値のある金融商品・サービスを提供する。」ことを企業目標(VISION)としています。「投資をまじめに、おもしろく。」というコーポレートスローガンを掲げ、顧客からの信頼に応える安心感と、投資についての多様なアイデアの提供を目指しています。

(2) 企業文化


役職員の行動指針として「お客様起点」「進化」「こだわり」「チームワーク」「事実に基づく判断」「社会への貢献」を定めており、ステークホルダーとの協働を実現する基盤としています。「社員一人一人が当事者意識を持ち、自律的に学習・成長する組織になる」という組織目標を掲げ、お互いの多様な考え方を認め合いながら成長を追求する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


株主資本コスト(現状8%)を上回るROEの達成を経営目標として掲げています。また、中長期的な資本効率の向上と株主価値の向上を目指し、株主利益還元策として配当性向70%以上を基準とする方針を打ち出しています。付加価値の高いサービスを提供し、経営資源を有効活用することで、持続的な利益成長を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


コアのターゲット顧客を効率的に獲得し、独自のポジショニングを確立することを成長戦略としています。具体的には、大手オンライン証券としての強いブランド構築、商品ラインアップの充実や特色あるサービスの提供、サービスクオリティの向上に取り組んでいます。また、中長期的な成長機会の創出に向け、新規事業領域の探索や事業の多角化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営戦略の一つとして「多様性のある自律的な組織の実現」を掲げ、性別や年代、職歴を問わず多様な人材の活躍を推進しています。新卒・中途採用を通じた人材確保に加え、ジョブローテーション制度や専門性を高めるプロフェッショナル職の導入によりキャリア形成を支援しています。全社横断の研修制度により、長期的な活躍を見据えた人材育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.3歳 9.7年 11,548,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.3%
男女賃金差異(正規雇用) 83.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 87.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の割合(35.2%)、新卒入社比率(53.8%)、有給休暇取得率(82.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用取引等に伴う市場・信用リスク


信用取引やFX、先物取引において、顧客への信用供与が発生するため、市況の変動によって顧客の信用リスクが顕在化する可能性があります。顧客が損失を被り担保価値が下落した場合、十分な回収ができず業績に影響を及ぼす恐れがあります。また、信用取引残高の増加は自己資本規制比率を引き下げる要因となるため、適切な資金調達やリスク管理が求められます。

(2) 大規模なシステム障害やサイバー攻撃のリスク


オンライン証券取引業務において、システムの安定稼働は極めて重要です。アクセス数の突発的な増加やシステム不具合、サイバー攻撃による被害が発生した場合、顧客からの注文処理が滞り、重大な影響を及ぼす可能性があります。同社はシステムの二重化などの対策を講じていますが、機能不全に陥った際は顧客の信頼低下や業績悪化に直結するリスクがあります。

(3) 顧客口座への不正アクセス・不正取引のリスク


悪意ある第三者によるフィッシング詐欺やマルウェア等を通じた認証情報の不正取得により、顧客口座への不正アクセスや不正取引が行われるリスクが存在します。同社は多要素認証の必須化などセキュリティ対策の強化に努めていますが、被害が発生した場合は補償費用の発生やシステムに対する信用の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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