東京海上ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京海上ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する東京海上ホールディングスは、国内損害保険や生命保険、海外保険などの事業をグローバルに展開する保険グループです。直近の業績は、海外保険事業や国内損害保険事業における増収や良好な保険引受成績などにより、前期比で増収増益となり順調に成長を続けています。


※本記事は、東京海上ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

東京海上ホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. 東京海上ホールディングスってどんな会社?


国内損害保険事業を中心に、生命保険や海外保険、各種ソリューション事業を幅広く手がける保険グループです。

(1) 会社概要


2001年12月に東京海上火災保険と日動火災海上保険の臨時株主総会において同社設立が承認され、2002年4月に設立されるとともに上場を果たしました。2004年に東京海上日動火災保険などへ商号変更や合併が行われ、2008年7月に現在の東京海上ホールディングスに商号変更しました。近年はソリューション事業への本格参入など積極的な展開を続けています。

同社グループの従業員数は連結で67,526名、単体で1,339名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。国内外に多数のグループ会社を抱え、多様な事業を展開しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行信託口 17.09%
日本カストディ銀行信託口 7.59%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 3.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性5名の計18名で構成され、女性役員比率は27.8%です。代表者は取締役社長の小池昌洋氏です。社外取締役は7名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
小池昌洋 取締役社長(代表取締役)グループCEO、グループカルチャー総括 1994年東京海上火災保険入社。経営企画部長や常務執行役員を経て、2025年6月より現職。
岡田健司 取締役副社長(代表取締役) 1986年東京海上火災保険入社。監査部長や専務取締役等を経て、2025年4月より現職。
山本吉一郎 取締役副社長(代表取締役)海外事業総括、Co-Head of International Business 1985年東京海上火災保険入社。シンガポール首席駐在員や専務取締役等を経て、2025年4月より現職。
小宮暁 取締役会長 1983年東京海上火災保険入社。日新火災海上保険の取締役等を経て、2025年6月より現職。
藤田桂子 常務取締役 1990年東京海上火災保険入社。東京海上日動火災保険の執行役員上海部長等を経て、2024年6月より現職。
城田宏明 取締役執行役員国内事業総括 1992年東京海上火災保険入社。東京海上日動火災保険の取締役社長を経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、御立尚資(元ボストンコンサルティンググループ日本代表)、遠藤信博(元日本電気社長)、片野坂真哉(元全日本空輸社長)、大薗恵美(一橋大学大学院教授)、進藤孝生(元日本製鉄社長)、ロバート・フェルドマン(元モルガン・スタンレーMUFG証券チーフエコノミスト)、松山遙(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内損害保険事業」「国内生命保険事業」「海外保険事業」および「ソリューション・その他事業」を展開しています。

(1) 国内損害保険事業


自動車保険や火災保険、新種保険などの日本国内における損害保険引受業務および資産運用業務等を提供しています。個人から法人まで幅広い顧客を対象に、様々なリスクに対する補償やサービスを展開しています。

収益は主に保険契約者から支払われる保険料等から得ています。事業の運営は東京海上日動火災保険や日新火災海上保険、ダイレクト損害保険事業を担う東京海上ダイレクト損害保険などが中心となって行っています。

(2) 国内生命保険事業


終身保険、定期保険、医療保険などの日本国内における生命保険引受業務および資産運用業務等を提供しています。中堅・中小企業、シニア層、就労世代など、それぞれの顧客ニーズに対応した商品やサービスを展開しています。

収益は保険契約者から支払われる生命保険料等から得ています。強みである生損一体のビジネスモデルを活かし、事業の運営は主に東京海上日動あんしん生命保険が行っています。

(3) 海外保険事業


超過額労働者災害補償保険やメディカルストップロス保険などのスペシャルティ分野をはじめとする、海外の損害保険・生命保険引受業務および資産運用業務等を提供しています。北米をはじめとするグローバル市場で事業を展開しています。

収益は海外の保険契約者からの保険料等から得ています。事業の運営は、北米のPhiladelphia Consolidated Holding Corp.やDelphi Financial Group, Inc.、HCC Insurance Holdings, Inc.などの各海外子会社が行っています。

(4) ソリューション・その他事業


コンサルティング業、投資顧問業、投資信託委託業、人材派遣業、不動産管理業、介護事業を中心に、多様なリスクや損害を減らすソリューションを顧客や社会に提供しています。

収益はコンサルティング報酬や投資信託の運用等による手数料から得ています。事業の運営はID&Eホールディングスや東京海上アセットマネジメントなどが担い、社会の強靱化や企業の課題解決を支援しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の連結業績は、国内外での保険引受拡大により増収傾向にあります。特に北米を中心とした海外保険事業の好調や、国内の自然災害減少による保険金支払いの低下が寄与し、税引前利益や当期利益も前年を大きく上回って推移しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
保険収益 7兆3962億円 7兆6936億円
税引前利益 5963億円 7507億円
利益率(%) 8.1% 9.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 4504億円 5313億円

(2) 損益計算書


損益構造を見ると、保険収益の増加に伴い、本業の儲けを示す保険サービス損益も拡大しています。良好な保険引受成績の維持とコストの適切なコントロールにより、収益性は着実に改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益(保険収益) 7兆3962億円 7兆6936億円
売上総利益(保険サービス損益) 9627億円 1兆1497億円
売上総利益率(%) 13.0% 14.9%


単体の販売費及び一般管理費のうち、給与が139億円(構成比31%)、業務委託費が120億円(同27%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの業績を見ると、海外保険事業がグループ最大の収益源として成長を牽引しています。国内損害保険事業も自然災害の減少などにより大幅な増益を達成しましたが、国内生命保険事業は債券売却損の影響などで損失を計上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
国内損害保険事業 2兆9351億円 3兆407億円 1336億円 2375億円 7.8%
国内生命保険事業 2669億円 2654億円 -810億円 -2049億円 -77.2%
海外保険事業 4兆2491億円 4兆4483億円 3906億円 5028億円 11.3%
ソリューション・その他事業 1782億円 3276億円 118億円 145億円 4.4%
連結(合計) 7兆3962億円 7兆6936億円 4504億円 5313億円 6.9%


※ソリューション・その他事業の売上は「その他の収益」、連結の売上は「保険収益」の数値を記載しています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2兆139億円 1兆3906億円
投資CF -1807億円 -4027億円
財務CF -1兆2239億円 -6421億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も17.0%で市場平均を下回っています。これは、本業で安定的なキャッシュを生み出し、投資を自己資金で賄いつつ借入の返済を進める健全型のキャッシュ・フロー状況であることを示しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「お客様の信頼をあらゆる活動の原点におき、企業価値を永続的に高めていきます」と掲げています。お客様に最高品質の商品・サービスを提供して安心と安全を広げ、株主の負託に応えながら収益性や成長性を備えた事業をグローバルに展開することをめざしています。

(2) 企業文化


社員一人ひとりが創造性を発揮できる「自由闊達な企業風土」を築くことを重視しています。良き企業市民として公正な経営を貫き、広く社会の発展に貢献するとともに、多様な人材がそれぞれの持てる力を最大限に発揮できるような環境づくりとカルチャーの浸透を推し進めています。

(3) 経営計画・目標


「東京海上グループ中期経営計画2026」において、グループ全体の業績を示す経営指標として「修正純利益」および「修正ROE」を掲げています。

* 2026年度目標:修正純利益 9,500億円
* 2026年度目標:修正ROE 13.0%

(4) 成長戦略と重点施策


成長の3本柱として「価値提供領域の飛躍的な拡大」「ディストリビューションの多様化・複線化」「生産性の徹底的な向上」を掲げています。防災・減災等のソリューション事業の拡大や、AI・データを活用した保険引受の高度化を進め、持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでいく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を最も重要な資産と位置づけ、グループ一体経営を支える人材の安定的な輩出と企業文化の浸透に取り組んでいます。成長領域への積極的な配置やイノベーションを生む環境創出、デジタル対応力の向上を図り、多様な人材がポテンシャルを最大限に発揮できるような育成と環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。基本給は担う役割の大きさや専門性に応じて決定され、賞与は会社業績や個人業績に連動して変動する実力主義の仕組みを採用しています。また、経営を担う人材には中長期的な企業価値向上を促すための長期インセンティブも付与されます。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.4歳 14.8年 14,871,103円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 89.0%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 32.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性取締役比率(27.8%)、人的資本ROI(1.64倍)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 巨大地震や自然災害のリスク


首都直下地震や南海トラフ巨大地震、巨大台風などの自然災害が発生した場合、人的・物的被害が甚大となり、社会経済活動が停滞するとともに多額の保険金支払いが生じることで、グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経済・金融危機に伴うリスク


世界金融危機や地政学リスクの顕在化などにより金融・資本市場が混乱した場合、保有する株式や債券などの資産価値が下落し、グループの財務の健全性や収益性が損なわれるリスクがあります。

(3) サイバーリスクおよびシステム障害


顧客のサプライチェーンがサイバー攻撃を受けて多額の保険金支払いが発生するリスクや、グループ内のシステムが攻撃・障害を受けることで事業活動が停止し、情報漏えいやレピュテーションの毀損につながるリスクが懸念されます。

(4) ビジネスモデル変革に伴うリスク


AI等の技術革新やモビリティ産業の構造転換が進むなか、デジタルトランスフォーメーションなどの変革が遅れた場合、競争優位性が失われて収入保険料や利益が大きく減少するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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