※本記事は、東京海上ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京海上ホールディングスってどんな会社?
国内最大級の損害保険グループを持株会社として統括し、国内外で保険事業や金融事業を展開するグローバル企業です。
■(1) 会社概要
2002年、東京海上火災保険と日動火災海上保険が持株会社を設立し、経営統合しました。2004年には傘下の損害保険会社が合併し、東京海上日動火災保険が発足。2008年に現在の社名へ変更しました。2025年にはID&Eホールディングスを子会社化し、ソリューション事業の強化を進めています。
同社グループの連結従業員数は51,436名、単体では1,232名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行信託口で、第2位も同様に資産管理を行う日本カストディ銀行信託口です。第3位は外国法人のSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANYです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行信託口 | 17.11% |
| 日本カストディ銀行信託口 | 7.79% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 2.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性5名の計20名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表者は取締役社長(代表取締役)の小宮 暁氏です。社外取締役比率は35.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小宮 暁 | 取締役社長(代表取締役)グループCEO、グループカルチャー総括 | 1983年東京海上火災保険入社。経営企画部長、東京海上日動火災保険取締役会長などを歴任し、2019年6月より現職。 |
| 永野 毅 | 取締役会長 | 1975年東京海上火災保険入社。東京海上日動火災保険取締役社長、同社取締役社長などを歴任し、2019年6月より現職。 |
| 岡田 健司 | 取締役副社長(代表取締役)グループ資本政策総括 | 1986年東京海上火災保険入社。同社執行役員監査部長、専務取締役などを経て、2025年4月より現職。東京海上日動火災保険取締役副社長を兼務。 |
| 山本 吉一郎 | 取締役副社長(代表取締役)海外事業総括、Co-Head of International Business | 1985年東京海上火災保険入社。同社執行役員経営企画部長、専務取締役などを経て、2025年4月より現職。東京海上日動火災保険取締役副社長を兼務。 |
| 森脇 陽一 | 専務取締役ソリューション事業総括 | 1988年東京海上火災保険入社。同社執行役員経理部長、常務取締役などを経て、2022年4月より現職。 |
| 和田 清 | 専務取締役国内事業総括 | 1990年東京海上火災保険入社。東京海上日動火災保険執行役員米国担当部長、同社常務取締役などを経て、2025年4月より現職。 |
| 藤田 桂子 | 常務取締役 | 1990年東京海上火災保険入社。東京海上日動火災保険執行役員上海部長、同社常務執行役員などを経て、2024年4月より現職。 |
| 城田 宏明 | 取締役執行役員国内保険事業シナジー総括 | 1992年東京海上火災保険入社。東京海上日動火災保険執行役員営業企画部長を経て、同社取締役社長を務める。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、御立尚資(元ボストンコンサルティンググループ日本代表)、遠藤信博(日本電気特別顧問)、片野坂真哉(ANAホールディングス代表取締役会長)、大薗恵美(一橋大学大学院教授)、進藤孝生(日本製鉄相談役)、ロバート・フェルドマン(モルガン・スタンレーMUFG証券シニアアドバイザー)、松山遙(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内損害保険事業」「国内生命保険事業」「海外保険事業」および「金融・その他」事業を展開しています。
■(1) 国内損害保険事業
東京海上日動火災保険、日新火災海上保険、イーデザイン損害保険などが、損害保険の引受や資産運用を行っています。自動車保険、火災保険、海上保険、傷害保険など幅広い商品を提供しています。
保険契約者から受け取る保険料を主な収益源としています。また、資産運用による収益も含まれます。運営は主に東京海上日動火災保険、日新火災海上保険、イーデザイン損害保険などが行っています。
■(2) 国内生命保険事業
東京海上日動あんしん生命保険が、生命保険の引受や資産運用を行っています。医療保険、がん保険、死亡保険などの商品を通じて、顧客の安心をサポートしています。
保険契約者から受け取る保険料を主な収益源としています。資産運用による収益も重要な構成要素です。運営は主に東京海上日動あんしん生命保険が行っています。
■(3) 海外保険事業
Tokio Marine North America、HCC Insurance Holdings、Tokio Marine Kiln Groupなどが、海外における保険引受や資産運用を行っています。北米、欧州、アジアなどグローバルに展開しています。
海外の保険契約者から受け取る保険料および現地の資産運用収益を主な収益源としています。運営はTokio Marine North America, Inc.やTokio Marine Kiln Group Limitedなどの海外子会社が行っています。
■(4) 金融・その他事業
投資顧問業、投資信託委託業、人材派遣業、不動産管理業、介護事業などを展開しています。また、2025年より建設コンサルティング事業等も加わりました。
各サービスの利用者からの手数料や利用料を収益源としています。運営は東京海上アセットマネジメント、ID&Eホールディングスなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、経常収益は毎期順調に増加しており、規模の拡大が続いています。経常利益と当期利益についても、2024年3月期以降大きく伸長しており、収益性が向上しています。特に直近の2025年3月期は大幅な増益を達成しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 54,612億円 | 58,638億円 | 66,100億円 | 74,247億円 | 84,401億円 |
| 経常利益 | 2,667億円 | 5,674億円 | 4,942億円 | 8,426億円 | 14,600億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 9.7% | 7.5% | 11.3% | 17.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,618億円 | 4,205億円 | 3,746億円 | 6,958億円 | 10,553億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、経常収益は約1兆円増加し、経常利益は大幅に伸長しました。保険引受収益や資産運用収益が増加したことが寄与しています。利益率も大きく改善しており、収益構造の強化が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 74,247億円 | 84,401億円 |
| 経常利益 | 8,426億円 | 14,600億円 |
| 経常利益率(%) | 11.3% | 17.3% |
販売費及び一般管理費を含む事業費のうち、代理店手数料等が7,539億円(構成比31%)、給与が4,591億円(同19%)を占めています(構成比は事業費合計に対する比率)。
■(3) セグメント収益
国内損害保険事業と海外保険事業が収益の柱となっており、特に国内損害保険事業は大幅な増益となりました。海外保険事業も増収増益を維持しています。国内生命保険事業は経常収益が減少したものの、利益は確保しています。
| 区分 | 経常収益(2024年3月期) | 経常収益(2025年3月期) | セグメント利益(2024年3月期) | セグメント利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内損害保険事業 | 32,502億円 | 38,679億円 | 3,235億円 | 8,933億円 | 23.1% |
| 国内生命保険事業 | 6,406億円 | 6,391億円 | 572億円 | 702億円 | 11.0% |
| 海外保険事業 | 36,468億円 | 43,054億円 | 4,528億円 | 4,885億円 | 11.3% |
| 金融・その他事業 | 804億円 | 819億円 | 91億円 | 80億円 | 9.8% |
| 調整額 | -1,934億円 | -4,542億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 74,247億円 | 84,401億円 | 8,426億円 | 14,600億円 | 17.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスであることから、本業で得た現金と資産の売却等による収入で借入返済や株主還元を進めている「改善型」の傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10,721億円 | 13,451億円 |
| 投資CF | -6,276億円 | 1,646億円 |
| 財務CF | -4,062億円 | -11,884億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は16.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客様の信頼をあらゆる活動の原点におき、企業価値を永続的に高めていきます。」という経営理念を掲げています。具体的には、最高品質の商品・サービスの提供による安心と安全の拡大、収益性・成長性・健全性を備えた事業のグローバル展開、自由闊達な企業風土の構築、そして良き企業市民としての社会貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
社員一人ひとりが創造性を発揮できる「自由闊達な企業風土」を築くことを重視しています。また、良き企業市民として「公正な経営」を貫くことを行動指針としています。お客様や社会の「いざ」をお守りすることをパーパスとし、イノベーティブなソリューションを届け続けるパートナーとなることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2026」において、2035年に目指す姿として「イノベーティブなソリューションを届け続けるパートナー」を掲げています。
* 修正EPS成長率(CAGR):+8%以上(政策株式売却益含む場合は+16%以上)
* 修正ROE:14%以上(政策株式売却益含む場合は20%以上)
■(4) 成長戦略と重点施策
グローバルなリスク分散とグループ一体経営を基本戦略とし、価値提供領域の拡大、ディストリビューションの多様化、生産性の向上を成長の柱としています。同時に、内部統制・ガバナンスの強化や事業ポートフォリオ・資本管理の高度化にも取り組みます。特に国内損害保険事業では「Re-New」をコンセプトに業務プロセスの見直しを進め、海外ではM&A等を通じた成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を資本と捉える「人的資本経営」に注力しています。「People's Business」である保険事業において、人材の価値を最大化することが企業価値向上につながると考えています。社員一人ひとりが適材適所で活躍できるよう支援し、多様な人材が能力を発揮できる公正な環境を整備しています。また、将来に向けた人材投資を行い、人材基盤の強化に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.7歳 | 16.2年 | 15,356,700円 |
※平均年間給与には、賞与および基準外賃金が含まれています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.7% |
| 男性育児休業取得率 | 93.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 44.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済・金融危機
リーマンショック級の金融危機や地政学リスク等による市場の混乱、日本国債の暴落等により、保有資産の価値が下落する可能性があります。これに対し、ストレステストによる資本十分性の確認や、エクスポージャーのコントロール等の対策を講じています。
■(2) 巨大地震
首都直下地震や南海トラフ巨大地震、海外での大規模地震が発生した場合、甚大な被害により事業活動が停滞し、多額の保険金支払いが発生する可能性があります。リスク分散や再保険の手配、事業継続計画(BCP)の整備等により備えています。
■(3) 重要情報の漏えい
サイバー攻撃や不適切なアクセス設定、従業員による不正持ち出し等により、重要情報が漏えいした場合、多額の損失やレピュテーションの毀損が生じる可能性があります。情報セキュリティ態勢の整備やモニタリング、従業員教育等を通じて対策を強化しています。



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