MS&ADインシュアランスグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MS&ADインシュアランスグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム及び名証プレミア市場に上場するMS&ADインシュアランスグループホールディングスは、国内の損害保険・生命保険事業や海外事業を展開する大手保険・金融グループです。直近の業績では、国内外での保険料増収や自然災害による発生保険金の減少等を背景に、大幅な増益を達成して成長を続けています。


※本記事は、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社の有価証券報告書(第18期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. MS&ADインシュアランスグループホールディングスってどんな会社?


同社は国内損害保険、国内生命保険、海外事業などを展開する大手保険・金融グループです。

(1) 会社概要


2008年4月、三井住友海上火災保険の単独株式移転により設立・上場しました。2010年4月にあいおい損害保険等と経営統合し、現在の社名へ変更しました。2016年のAmlin plc子会社化など海外事業を拡大し、2025年6月に監査等委員会設置会社へ移行するなど、グループ経営体制を強化しています。

従業員数は連結で46,856名、単体で478名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は事業会社の日本生命保険、第3位は信託業務を行う日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.59%
日本生命保険相互会社 7.49%
日本カストディ銀行(信託口) 5.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。
代表者は取締役社長社長執行役員の舩曵真一郎氏などです。社外取締役は7名で、比率は53.8%です。

氏名 役職 主な経歴
舩曵 真一郎 取締役社長社長執行役員(代表取締役) 1983年住友海上火災保険入社。2021年三井住友海上火災保険取締役社長等を経て、2024年6月より現職。
原 典之 取締役会長会長執行役員 1978年大正海上火災保険入社。2016年三井住友海上火災保険取締役社長等を経て、2024年6月より現職。
金杉 恭三 取締役副会長副会長執行役員(代表取締役) 1979年大東京火災海上保険入社。2016年あいおいニッセイ同和損害保険取締役社長等を経て、2020年6月より現職。
工藤 成生 取締役副社長執行役員(代表取締役) 1987年大正海上火災保険入社。2023年三井住友海上火災保険取締役専務執行役員等を経て、2025年6月より現職。
新納 啓介 取締役執行役員 1988年大東京火災海上保険入社。2022年あいおいニッセイ同和損害保険取締役社長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、ロッシェル・カップ氏(Japan Intercultural Consulting社長)、石渡明美氏(花王特命フェロー)、鈴木純氏(帝人シニア・アドバイザー)、岡島敦子氏(公立大学法人埼玉県立大学理事)、瀬口二郎氏(産業革新投資機構社長)、國井泰成氏(國井泰成公認会計士事務所公認会計士)、村山由香里氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、国内損害保険事業や海外事業などの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 国内損害保険事業


国内において損害保険事業を営んでおり、自動車保険や火災保険をはじめとする各種損害保険商品を提供しています。個人および法人顧客に対し、多様なリスクに対する補償を提供しています。

収益は顧客から支払われる保険料が主な源泉です。運営は主に三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、三井ダイレクト損害保険が担っています。

(2) 国内生命保険事業


国内において生命保険事業を営み、保障性商品や資産形成型の商品・サービスを提供しています。少子高齢化や金利変動といった環境変化に対応し、個人顧客の長期的な安心をサポートしています。

収益は顧客から支払われる保険料などを源泉としています。運営は主に三井住友海上あいおい生命保険と三井住友海上プライマリー生命保険が行っています。

(3) 海外事業


諸外国において損害保険・生命保険などの海外事業を展開しています。米州、欧州、アジアなどグローバルに拠点を持ち、各国の現地顧客や進出企業に対して保険商品・サービスを提供しています。

収益は海外の保険契約者からの保険料等により構成されます。運営は海外現地法人や国内損害保険子会社の海外部門・海外支店がそれぞれ担っています。

(4) 金融サービス・デジタルリスク関連サービス事業(その他)


保険事業以外の領域として、アセットマネジメント、金融保証、確定拠出年金、ベンチャーキャピタルやリスクマネジメント事業などを展開しています。

サービス利用料や運用手数料などを収益源としています。運営は三井住友DSアセットマネジメントやMS&ADインターリスク総研などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間の業績は、税引前利益および当期利益ともに大幅な増益傾向にあります。国内外での保険引受や資産運用が好調に推移し、自然災害による発生保険金の減少等も寄与したことで、グループ全体の収益力が向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
税引前利益 4,585億円 7,035億円
当期利益(親会社所有者帰属) 3,002億円 5,106億円

(2) 損益計算書


直近2期間の税引前利益は安定的に推移しており、堅調な利益基盤を維持しています。

販売費及び一般管理費の主な内訳として、業務委託費が45億円、給与が51億円、税金が24億円となっています(2026年3月期)。

(3) セグメント収益


各セグメントにおいて、国内損害保険事業や海外事業が堅調な保険料増収と自然災害ロスの減少により利益を大きく伸ばしました。一方で国内生命保険事業の一部は金利変動等の影響により減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
国内損害保険事業(三井住友海上) 1兆8,479億円 1兆9,347億円 1,086億円 1,830億円 9.5%
国内損害保険事業(あいおいニッセイ同和損保) 1兆3,886億円 1兆4,452億円 676億円 1,190億円 8.2%
国内損害保険事業(三井ダイレクト損保) 359億円 403億円 -15億円 -22億円 -5.6%
国内生命保険事業(三井住友海上あいおい生命) 2,525億円 2,563億円 223億円 -603億円 -23.5%
国内生命保険事業(三井住友海上プライマリー生命) 1,080億円 1,067億円 510億円 1,274億円 119.3%
海外事業(海外子会社・関連会社) 2兆1,270億円 2兆4,681億円 1,774億円 2,345億円 9.5%
その他 211億円 202億円 136億円 153億円 75.7%
調整額 1,684億円 1,646億円 -1,388億円 -1,059億円 -
連結(合計) 5兆9,495億円 6兆4,360億円 3,002億円 5,106億円 7.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。本業からの営業キャッシュ・フローによって投資活動と有利子負債等の返済を賄っている安定した資金繰り状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7,074億円 9,540億円
投資CF -5,559億円 -7,195億円
財務CF -6,804億円 -1,388億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も16.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


グローバルな保険・金融サービス事業を通じて、安心と安全を提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支えます。また、経営ビジョンとして「持続的成長と企業価値向上を追い続ける世界トップ水準の保険・金融グループを創造します」と掲げており、社会のインフラとしての役割を果たすことを使命としています。

(2) 企業文化


行動指針(バリュー)として「お客さま第一」「誠実」「チームワーク」「革新」「プロフェッショナリズム」の5つを定めています。これらを通じ、常に顧客の安心と満足のために行動し、あらゆる人に誠実かつ公平に接するとともに、お互いの個性を尊重し、絶えず自分の仕事を見直しながら高い品質のサービスを提供する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「グループの2030年度目指す姿」および2026年度グループ経営計画に基づき、持続的に利益を創出する収益構造の実現を目指しています。また、資本アロケーションの最適化や事業構造の変革を進め、確実な成長と規律を両立させる数値目標を掲げています。

* 修正利益(除く政策株式売却損益):5,300億円(2026年度目標)
* EPS成長率:4%(年率・2026年度目標)
* 修正ROE(除く政策株式売却損益):10%(2026年度目標)
* ESR:180%以上(2026年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策


「リスクに挑み、世界をリードする」存在となるべく、事業基盤の強化と事業構造の最適化を推進しています。国内保険事業の合併・再編を通じたビジネスモデルの変革や、海外事業への経営資源投入、資産運用領域の収益力向上に加え、人的資本経営やAI・DXの活用にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自律的に行動し、変革にチャレンジし、新たな価値を創造する人財」の輩出を目指し、「スキル発揮とキャリア形成による社員の成長」「経営戦略と連動した人財ポートフォリオの構築」「Well-beingの向上」の3本柱を推進しています。多様性を活かすインクルーシブな組織運営や、外部人財の積極的な登用、柔軟な働き方の拡充など、社員がいきいきと活躍できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.2歳 21.7年 12,376,260円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.8%
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金差異(全労働者) 67.0%
労働者の男女の賃金差異(正規雇用労働者) 66.4%
労働者の男女の賃金差異(パート・有期労働者) 71.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性ライン長比率(21.7%)、管理職に占める経験者採用比率(25.6%)、運動習慣者比率(30.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大規模自然災害の発生


気候変動の影響による台風、豪雨、洪水、森林火災など、国内外での大規模な自然災害が発生した場合、想定を超える多額の保険金支払いが生じるリスクがあります。また、これに伴う再保険料の高騰や引受キャパシティの減少が、同社の収益や資本余力に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金融マーケットの大幅な変動


世界的な景気停滞や各国の金融政策の変更、地政学リスクの顕在化により、金利や為替、株式等の市場が大きく変動するリスクがあります。これにより、同社グループが保有する有価証券等の資産価値が下落し、運用収益の悪化や資本余力の低下につながる可能性があります。

(3) サイバー攻撃とシステム障害


デジタライゼーションの進展に伴い、巧妙化するサイバー攻撃によるシステム障害や情報漏えいのリスクが高まっています。大規模なシステム障害が発生した場合、業務の停滞や顧客対応の遅延が生じ、同社の社会的信用の失墜やブランド力の低下を招くおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。