京阪神ビルディング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京阪神ビルディング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の同社は、関西圏を中心にオフィス、データセンター、ウインズビル(場外馬券売場)等の土地建物賃貸事業を展開しています。直近の業績は、新規物件の取得や既存物件の稼働が堅調に推移し、売上高は増収となりました。利益面では修繕費等の増加で営業減益となりましたが、投資有価証券売却益等により最終増益を確保しています。


※本記事は、京阪神ビルディング株式会社 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京阪神ビルディングってどんな会社?


データセンタービルやウインズビルなど特徴的な資産を持つ、関西基盤の総合不動産会社です。

(1) 会社概要


同社は1948年に京阪神競馬株式会社として設立され、1949年に場外馬券発売所の賃貸を開始し大阪証券取引所に上場しました。その後、オフィスビル等の賃貸へ事業領域を拡大し、2003年には東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2011年に現社名へ変更し、近年では2024年に米国現地法人を設立するなど海外展開も進めています。

同グループは連結従業員64名、単体64名の体制で事業運営を行っています。筆頭株主は不動産賃貸業等を営む事業会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は海外の投資ファンド等が含まれる信託名義となっています。

氏名 持株比率
銀泉 13.26%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.92%
INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN) LIMITED SOLEL Y IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 6.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名、計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長社長執行役員は若林常夫氏です。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
若林常夫 代表取締役社長社長執行役員 1983年阪急電鉄入社。阪急阪神不動産代表取締役社長、同社相談役などを経て、2022年6月より現職。
多田順一 代表取締役専務執行役員執行統括兼新規投資推進部担当 1986年住友銀行入行。三井住友銀行理事、同社常務執行役員などを経て、2025年6月より現職。
浅草嘉一 取締役執行役員建築技術部長 1987年鹿島建設入社。同社関西支店建築工事部長、同社執行役員などを経て、2024年6月より現職。
西田滋 取締役監査等委員(常勤) 1984年住友銀行入行。三井住友銀行企業審査部長、同社常勤監査役などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、野村雅男(元岩谷産業代表取締役社長)、竹田千穂(弁護士)、宮野谷篤(元日本銀行理事)、上條英之(元積水ハウス常務執行役員)、長澤秀治(元三洋電機取締役)、小田切智美(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土地建物賃貸事業」の単一セグメントで事業を展開していますが、保有物件の種類により4つの事業部門に分類されます。

(1) オフィスビル事業


大阪・東京のビジネス地区を中心にオフィスビルを保有・賃貸しています。最新の物件ではデータセンタービルの運営ノウハウを活かした高度なBCP機能を有しているほか、築年数が経過したビルでも計画的な設備更新やメンテナンスを行い、安全で快適な事業空間を提供しています。

収益は主に入居テナントからの賃貸料収入です。運営は主に同社が行っています。

(2) データセンタービル事業


大阪都心部にデータセンタービルを保有・賃貸しています。24時間365日稼働する施設として、免震構造による高い防災性能や大型非常用発電機による安定的な電力供給、高度なセキュリティシステムを備え、高い信頼性を確保しています。

収益は主に入居するIT企業や通信事業者等からの賃貸料収入です。運営は主に同社が行っています。

(3) ウインズビル事業


日本中央競馬会(JRA)が主催するレースの投票券を場外で発売する施設(ウインズビル)を、京都・大阪・神戸の都心部に保有・賃貸しています。創業時からの事業であり、長年にわたり安定的な収益を生み出す中核事業の一つです。

収益は日本中央競馬会等からの賃貸料収入であり、固定賃料での契約が主となっています。運営は主に同社が行っています。

(4) 商業施設・物流倉庫等事業


首都圏・関西圏を中心に、ターミナル駅周辺の商業施設や幹線道路近くの物流倉庫等を保有・賃貸しています。2025年3月には愛知県小牧市に新たな物流倉庫を取得するなど、アセットタイプの多様化とエリアの拡大を進めています。

収益は商業施設や物流倉庫のテナントからの賃貸料収入です。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は190億円前後で安定的に推移しており、直近では緩やかな増加傾向にあります。経常利益率は25%前後と高い水準を維持しており、安定した収益基盤を有しています。第102期は売上高が増加し、当期純利益も過去5期間で比較的高水準となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 153億円 178億円 189億円 193億円 196億円
経常利益 51億円 49億円 50億円 48億円 48億円
利益率(%) 33.1% 27.4% 26.7% 25.1% 24.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 83億円 51億円 42億円 38億円 44億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高は増加し、売上総利益も微増となりました。一方、営業利益はわずかに減少しています。売上総利益率は35%台を維持しており、高い収益性を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 193億円 196億円
売上総利益 69億円 69億円
売上総利益率(%) 35.6% 35.3%
営業利益 51億円 50億円
営業利益率(%) 26.3% 25.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が6.9億円(構成比36%)、業務委託費が2.8億円(同15%)、租税公課が2.0億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての事業部門において売上高が開示されています。データセンタービル事業が売上の過半を占め、増収の主因となりました。オフィスビル事業や商業施設・物流倉庫等事業も堅調に推移しましたが、ウインズビル事業は減収となりました。なお、単一セグメントのため利益情報の開示はありません。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
オフィスビル事業 44億円 45億円
データセンタービル事業 101億円 105億円
ウインズビル事業 35億円 34億円
商業施設・物流倉庫等事業 12億円 13億円
連結(合計) 193億円 196億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

京阪神ビルディングのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、営業活動により安定的に資金を得ており、当連結会計年度は7,294百万円の収入となりました。一方、投資活動では、物流倉庫の取得や国内外へのエクイティ出資などにより、8,219百万円の支出がありました。財務活動では、長期借入れや社債の発行により資金調達を進め、6,258百万円の収入となりました。これらの結果、現金及び現金同等物は前期末比で5,391百万円増加し、期末残高は14,060百万円となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 82億円 73億円
投資CF -113億円 -82億円
財務CF 64億円 63億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「価値ある事業空間を提供しお客様と共に発展することにより、社会に貢献します」という理念を掲げています。また、信用と質を重視した経営によりステークホルダーの信頼に応えること、革新と効率を尊び活力ある企業風土を築くことを経営の基本としています。

(2) 企業文化


同社は「お客様本位の徹底」「コンプライアンスの実践」「社会発展への貢献」「公正な情報開示」「環境問題への取り組み」「個性を尊重する企業風土」を企業行動指針として掲げています。特に、法令順守や高い倫理観に基づいた行動、安全で働きやすい職場環境の確保、社員の人格・個性の尊重を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


創立100周年(2048年)を見据え、2024年3月期から10カ年の長期経営計画を推進しています。フェーズI(~2028年3月期)とフェーズII(~2033年3月期)に分け、成長基盤の確立とサステナブル経営を目指しています。

* 事業利益(2028年3月期):80億円
* 償却前事業利益(2028年3月期):120億円
* ROE(2028年3月期):7.0%以上
* ROA(2028年3月期):4.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「次なる成長へ向けた新規事業投資戦略」と「ESGを意識したサステナビリティ戦略」を重点課題としています。首都圏での物件取得やデータセンター開発用地の確保、海外投資やアセットタイプの多様化を進めると同時に、気候変動対応や人的資本経営の強化に取り組みます。

* 新規投資額(2024年3月期~2033年3月期累計):2,500億円
* 不動産投資(収益物件取得):1,800億円
* 海外投資:250億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「会社の成長は従業員一人一人の成長の総和」と考え、多様な人材の確保と育成に注力しています。新卒・経験者採用やシニア世代の活用を進めるとともに、個々の人格や価値観に応じた育成を行っています。また、多様な働き方を可能にする制度整備や健康経営の推進により、社員が能力を最大限発揮できる職場環境づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.8歳 9.4年 10,847,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 63.0%
男女賃金差異(正規雇用) 58.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 97.5%


※男性育児休業取得率は、育児休業の対象となる男性労働者がいないため「-」となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用の女性比率(5年平均)(60.0%)、有給休暇消化率(85.7%)、人材育成に係る投資額(113千円/人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害、人的災害等


同社グループは不動産賃貸事業を主力としているため、大規模な地震や風水害等の自然災害、または火災やテロ等の人的災害が発生した場合、保有する建物や設備が毀損・劣化する可能性があります。これにより、事業運営に支障が生じ、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 大阪地区における事業展開について


同社グループの賃貸物件および売上高は大阪府、特に大阪市を中心とした関西圏に集中しています。そのため、当該地域において大規模な災害が発生した場合や、地域経済・不動産市況が悪化した場合には、業績に重大な影響が生じる可能性があります。これに対し、首都圏や他地域への投資を進め、地域分散を図っています。

(3) 特定の取引先への依存度について


同社グループの売上高の約47%は、エクイニクス・ジャパン、日本中央競馬会、ソフトバンクの主要3社によるものです。これらの主要取引先との契約変更や解約、または取引先の業績悪化等が生じた場合、同社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

(4) 有利子負債への依存度


同社グループは物件取得等の資金を金融機関借入や社債で調達しており、有利子負債への依存度が比較的高い水準にあります。金利情勢の変化により調達コストが上昇した場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、長期固定金利での調達や財務規律の維持に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。