京阪神ビルディング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京阪神ビルディング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京阪神ビルディングは東証プライム市場に上場し、データセンタービルやオフィス、ウインズビルなどの土地建物賃貸事業を展開しています。直近の業績は、新規投資物件の寄与や一部テナントの本契約移行により、増収増益の堅調なトレンドを維持しています。


※本記事は、京阪神ビルディング株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京阪神ビルディングってどんな会社?


大阪を中心とした京阪神エリアや首都圏でデータセンタービル、オフィス等の賃貸を行う不動産会社です。

(1) 会社概要


1948年に京阪神競馬として設立され、1949年に場外馬券発売所を竣工・賃貸開始するとともに東証・大証に上場しました。1956年に京阪神不動産、2011年に現在の京阪神ビルディングへ社名変更しています。近年はデータセンタービルの賃貸を拡大し、2024年には米国に子会社を設立するなど新たなアセットタイプへの投資を推進しています。

従業員数は連結66名、単体66名です。大株主については、筆頭株主は事業会社の銀泉で、第2位および第3位は資産管理業務等を行う信託銀行・信託会社となっています。

氏名 持株比率
銀泉 13.50%
INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN) LIMITED SOLEL Y IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 10.33%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長社長執行役員は若林常夫氏が務めています。社外取締役の比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
若林常夫 代表取締役社長社長執行役員 1983年阪急電鉄入社。阪急阪神不動産代表取締役社長等を経て、2022年より現職。
多田順一 代表取締役専務執行役員執行統括兼海外事業部担当 1986年住友銀行入行。三井住友銀行理事を経て2018年同社顧問に就任し、2026年より現職。
浅草嘉一 取締役執行役員建築技術部長 1987年鹿島建設入社。同社関西支店建築部建築工事部長等を経て2024年より現職。
西田滋 取締役監査等委員(常勤) 1984年住友銀行入行。2018年同社取締役執行役員総務部長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、野村雅男(元岩谷産業社長)、竹田千穂(三宅法律事務所パートナー)、宮野谷篤(元日本銀行理事)、上條英之(上條英之税理士事務所所長)、長澤秀治(元三洋電機取締役)、小田切智美(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土地建物賃貸」事業の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) データセンタービル


大阪都心部に8棟のデータセンタービルを保有・賃貸しています。免震構造の採用や大型非常用発電機を備え、24時間365日絶えず稼働する高い防災性能とセキュリティシステムにより、テナントに信頼性の高い事業空間を提供しています。

エクイニクス・ジャパンやソフトバンクなどの大手通信・IT企業から、長期の賃貸借契約に基づき賃貸料を受け取る収益モデルです。当該事業の運営は同社が直接行っています。

(2) ウインズビル


日本中央競馬会(JRA)が主催するレースの勝馬投票券を場外で発売する施設「ウインズビル」を、京都・大阪・神戸の都心部に5棟保有し賃貸しています。創業時からの歴史ある中核的な事業です。

日本中央競馬会から固定賃料を受け取る安定的な収益モデルであり、原則として3年毎に契約条件の見直しが行われます。当該事業の運営は同社が直接行っています。

(3) オフィスビル


大阪や東京のビジネス地区を中心に計8棟のオフィスビルを保有・賃貸しています。高度なBCP機能を有する最新物件だけでなく、既存のビルも計画的な設備更新によって快適な空間を維持しています。

入居する様々な一般事業法人のテナントから賃貸料や共益費を受け取る収益モデルです。当該事業の運営は同社が直接行っています。

(4) 商業施設・物流倉庫等


首都圏・関西圏を中心に全国で商業施設や物流倉庫等を保有・賃貸しています。ターミナル駅や幹線道路近くなど、交通利便性の高い立地をターゲットとしています。

商業テナントや物流企業等から賃貸料を受け取る収益モデルです。資産回転型事業の一環として物件の売却や新規取得によるポートフォリオの入れ替えも行っており、運営は同社が直接行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は毎期安定して増加を続けており、2026年3月期には203億円に達しました。経常利益も概ね48億円から56億円のレンジで堅調に推移し、利益率も20%台後半の高い水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 178億円 189億円 193億円 196億円 203億円
経常利益 49億円 50億円 48億円 48億円 56億円
利益率(%) 27.4% 26.7% 25.1% 24.7% 27.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 51億円 42億円 38億円 49億円 48億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、売上総利益率は37%台へと改善しました。営業利益率も約28%と高い水準を示しており、安定した収益力の高さが窺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 196億円 203億円
売上総利益 69億円 76億円
売上総利益率(%) 35.3% 37.6%
営業利益 50億円 56億円
営業利益率(%) 25.4% 27.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が7.1億円(構成比36%)、業務委託費が2.6億円(同13%)を占めています。売上原価においては、動力光熱費が38億円(構成比30%)、減価償却費が37億円(同30%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、アセットタイプ別の売上高を見ると、データセンタービルが一部テナントの本契約移行により増収を牽引しました。オフィスビルも稼働率改善により堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
オフィスビル 45億円 47億円
データセンタービル 105億円 110億円
ウインズビル 34億円 34億円
商業施設・物流倉庫等 13億円 12億円
連結(合計) 196億円 203億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態である「健全型」に分類されます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 73億円 77億円
投資CF -82億円 -21億円
財務CF 63億円 -27億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.8%で市場平均(非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「価値ある事業空間を提供しお客様と共に発展することにより、社会に貢献します」等を経営理念に掲げています。信用と質を重視した堅実な経営を堅持し、顧客・株主・社員の信頼に応えることで、持続可能な社会の実現と企業としての持続的な成長を目指しています。

(2) 企業文化


「革新と効率を尊び、活力ある企業風土を築きます」という理念のもと、お客様本位の徹底やコンプライアンスの実践を企業行動指針としています。また、ゆとりと豊かさを実現し、安全で働きやすい職場環境を確保するとともに、社員の人格・個性を尊重する企業風土を重んじています。

(3) 経営計画・目標


創立100周年を見据えた長期経営計画(フェーズⅠ:2024〜2028年3月期、フェーズⅡ:2029〜2033年3月期)を推進し、以下の数値目標を掲げています。

* 事業利益:80億円(2028年3月期)、140億円(2033年3月期)
* 自己資本比率:30%以上
* ROA:フェーズⅠ 4.0%以上、フェーズⅡ 5.0%以上
* ROE:フェーズⅠ 7.0%以上、フェーズⅡ 8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「次なる成長へ向けた新規事業投資戦略」として、データ通信量の増加に応える新データセンタービル開発用地の取得や、物流倉庫・都市型商業ビルの取得を進めます。また、フロー事業や海外投資等による投資手法の多様化を図るとともに、「ESGを意識したサステナビリティ戦略」も重点的に推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「会社の成長は従業員一人一人の成長の総和」という考えのもと、多様な人材の確保と個人の価値観に応じた育成に注力しています。長期経営計画と連動し、高度な専門性と変革を牽引するリーダーシップを備えた人材の育成を目指すとともに、フレックスタイム制の導入等で多様で柔軟な働き方を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.0歳 9.2年 11,079,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.8%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.5%
男女賃金差異(正規雇用) 63.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 96.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用の女性比率(60.0%)、有給休暇消化率(82.8%)、人材育成に係る投資額(148千円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 土地建物賃貸事業の市況変動リスク


同社グループの主たる事業である貸ビル等の賃貸事業は、景気動向や需給動向の影響を受けやすい傾向があります。周辺の不動産賃貸市況によっては賃貸料の低下や空室率の上昇が生じるリスクがありますが、多様なアセットタイプの物件を賃貸することで影響の低減に努めています。

(2) 大阪地区における事業集中リスク


同社グループの賃貸物件による売上高の約80%は大阪府を中心とした京阪神地区に集中しています。そのため、同地区における大規模な自然災害の発生や貸ビルの需給動向の悪化が、業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、首都圏や海外への投資による分散を図っています。

(3) 特定取引先への売上依存リスク


売上高のうち、エクイニクス・ジャパン、日本中央競馬会、ソフトバンクの3社に対する販売依存度がそれぞれ10%を超えています。これらの取引先が退去した場合や契約条件の改定が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。既存・新規ビルの開発によるテナント多様化でリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。