※本記事は、株式会社レオパレス21の有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. レオパレス21ってどんな会社?
同社は単身者向けアパートの建築から一括借上による賃貸・管理までを総合的に手掛ける不動産企業です。
■(1) 会社概要
1973年に不動産仲介業として設立され、1985年に都市型アパート「レオパレス21」の販売を開始しました。1989年の店頭登録および現社名への変更を経て、2004年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。現在は賃貸事業を中心に、シルバー事業やリゾート施設の運営なども多角的に展開しています。
現在の従業員数は連結で4,150名、単体で2,952名です。筆頭株主はUH Partners 2投資事業有限責任組合であり、第2位の千鳥合同会社はフォートレス・インベストメント・グループの関連事業体として同社と資本関係を結んでいます。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| UH Partners 2投資事業有限責任組合(無限責任組合員 UH Partners 2) | 15.47% |
| 千鳥合同会社 | 15.45% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長社長執行役員開発事業本部長は宮尾文也氏が務めています。取締役10名のうち4名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮尾 文也 | 代表取締役社長社長執行役員開発事業本部長 | 中道リースを経て1990年に同社入社。経営企画部長、執行役員などを歴任し、2019年に代表取締役社長に就任。現在は開発事業本部長も兼務。 |
| 早島 真由美 | 取締役常務執行役員賃貸事業本部長 | 1996年同社入社。コーポレート業務推進統括部長などを経て2019年に取締役執行役員に就任。管理本部長などを歴任し、2026年より現職。 |
| 持田 直道 | 取締役常務執行役員特命担当 | 三井銀行(現三井住友銀行)を経て2007年入社。取締役経営企画本部長、レオパレス・リーシング社長などを歴任し、2026年より現職。 |
| 竹倉 慎二 | 取締役執行役員経営管理本部長開発事業本部 副本部長 | 1996年同社入社。請負営業部長や経営企画部長を経て、2022年に取締役執行役員に就任。現在は経営管理本部長および開発事業本部副本部長を務める。 |
| 山下 明男 | 取締役 | 日本開発銀行、モルガン・スタンレー証券等を経て、2008年フォートレス・インベストメント・グループ・ジャパン合同会社に入社。2021年より同社取締役に就任。 |
| 劉 勁 | 取締役 | モルガン・スタンレーMUFG証券等を経て、フォートレス・インベストメント・グループ・ジャパン合同会社マネージングディレクター。2021年より同社取締役に就任。 |
社外取締役は、渡邊顯(弁護士)、中村裕(元パナソニックホームズ上席主幹)、柴田拓美(元野村アセットマネジメント社長)、石井歓(元福岡地所社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「賃貸事業」「シルバー事業」「その他事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 賃貸事業
アパートなどの賃貸および管理を中心に、建築請負したアパートの一括借上による賃貸・管理、営繕工事などを展開しています。さらに、入居者向けのブロードバンドサービス、賃料債務保証事業、家財保険の販売など、賃貸住宅での生活をサポートする各種サービスを単身者や法人顧客に向けて幅広く提供しています。
家賃収入や管理手数料、建築請負工事による収益を主な収益源としています。自社および建築請負物件の賃貸・管理は同社が行い、レオパレス・リーシングが不動産仲介、プラザ賃貸管理保証が賃料保証、あすか少額短期保険が家財保険の販売を担うなど、グループ各社が連携して事業を運営しています。
■(2) シルバー事業
関東および中部エリアを中心に、介護施設「あずみ苑」の運営を展開しています。高齢化が進行する社会において、デイサービスやショートステイ、有料老人ホームなどの多様な介護サービスを提供し、地域に密着した施設運営を通じて利用者の安心で快適な生活を支援しています。
介護保険制度に基づく介護報酬や、施設利用者からの利用料などを主な収益源としています。事業の運営は同社および子会社のアズ・ライフケアが担ってきましたが、2026年4月からは会社分割により子会社であるアズ・レジデンスへと運営体制が承継されています。
■(3) その他事業
海外におけるリゾート施設の運営や、グループ内向けの事務代行事業、ファイナンス事業などを行っています。グアム島ではゴルフ場やホテルなどを備えた「レオパレスリゾートグアム」を展開し、観光客やスポーツ合宿の利用者などに向けたリゾートサービスを提供しています。
リゾート施設における宿泊料やゴルフ場の利用料、事務代行に対する手数料などを収益源としています。リゾート事業の運営は海外子会社のLeopalace Guam Corporationが担当し、グループ各社の事務代行事業はレオパレス・スマイルが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が堅調に推移しており、継続的な増収傾向にあります。経常損益については、過去に損失を計上した時期もありましたが、その後は黒字に転換し、直近では利益率も7.8%まで上昇するなど収益性が着実に改善しています。入居率の向上や家賃単価の上昇が利益に大きく貢献しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,984億円 | 4,064億円 | 4,227億円 | 4,318億円 | 4,448億円 |
| 経常利益 | -22億円 | 65億円 | 195億円 | 269億円 | 348億円 |
| 利益率(%) | -0.5% | 1.6% | 4.6% | 6.2% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 143億円 | 227億円 | 446億円 | 213億円 | 151億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増収となっており、売上総利益も改善しています。売上総利益率は17.9%から20.1%へと上昇し、それに伴い営業利益率も6.8%から8.1%へと向上しています。物件メンテナンス費用の増加や人的投資によるコスト増はあったものの、増収効果と原価抑制がそれを上回り、収益力が底上げされています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,318億円 | 4,448億円 |
| 売上総利益 | 773億円 | 892億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.9% | 20.1% |
| 営業利益 | 292億円 | 360億円 |
| 営業利益率(%) | 6.8% | 8.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が151億円(構成比28.3%)、支払手数料が74億円(同14.0%)を占めています。売上原価については、借上賃料が2,512億円(構成比73.8%)、管理物件維持・管理費が399億円(同11.7%)を占めており、一括借上モデルの特性が表れています。
■(3) セグメント収益
主力である賃貸事業は、法人契約の好調や入居率および家賃単価の上昇により増収増益となり、全社の利益を牽引しています。一方、シルバー事業は各種営業施策を進めたものの減収減益となり、その他事業もグアムリゾートの稼働率改善は見られたものの、人件費やメンテナンス費用の増加により赤字が継続しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 賃貸事業 | 4,169億円 | 4,296億円 | 381億円 | 443億円 | 10.3% |
| シルバー事業 | 137億円 | 137億円 | -8億円 | -11億円 | -7.8% |
| その他事業 | 12億円 | 15億円 | -26億円 | -27億円 | -173.4% |
| 調整額 | - | - | -54億円 | -46億円 | - |
| 連結(合計) | 4,318億円 | 4,448億円 | 292億円 | 360億円 | 8.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっています。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 259億円 | 385億円 |
| 投資CF | -6億円 | -8億円 |
| 財務CF | -64億円 | -688億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は23.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「新しい価値の創造」という企業理念のもと、賃貸住宅を中心とする住まいの領域においてイノベーティブで持続可能なサービスを提供し、社会に必要とされる企業であり続けることをミッションとして掲げています。経済価値と社会価値の両立を目指し、長期的な企業価値の向上を追求しています。
■(2) 企業文化
同社は「社員が主役の会社」という人的資本経営ビジョンを掲げ、従業員一人ひとりの熱意と自律的な行動を重視する組織文化を醸成しています。新たな企業理念体系として策定された「クレド(行動指針)」のもと、主体性と責任感を持って創意工夫を行い、困難に打ち克って成長を追い求める姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年3月期から2028年3月期までの3カ年を対象とする中期経営計画「New Growth 2028」を策定しており、賃貸事業と開発事業を主軸とする事業基盤の強化を目標としています。2028年3月期の主な数値目標は以下の通りです。
* 売上高:4,778億円
* 営業利益:431億円
* 経常利益:427億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:250億円
■(4) 成長戦略と重点施策
基盤戦略としてエリア支社制による営業力強化を進め、法人顧客や外国籍人材の獲得により入居率と稼働家賃単価の向上を図ります。さらに、成長戦略として開発事業を本格的に再開し、老朽化物件の建替えや法人市場の開拓などを通じて管理物件のポートフォリオ最適化を進めます。また、ZEH物件の供給など環境配慮への取り組みも強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「社員が主役の会社」というHRポリシーのもと、従業員の自律的なキャリア形成と挑戦を支援しています。ジョブポスティング制度等による成長領域への人員配置や、年代別キャリア研修などの人材育成施策を推進しています。また、健康経営優良法人に認定されるなど、多様な人材が活躍できるウェルビーイングな環境整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.2歳 | 13.2年 | 6,501,618円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 66.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 66.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 45.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(31.8%)、エンゲージメントスコア[eNPS](-54)、年次有給休暇取得率(81.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原価高騰および事業環境の変化によるリスク
国内外の経済情勢や物価動向の変化、サプライチェーンの混乱などにより、建築資材や備品の調達コスト、人件費等が高騰するリスクがあります。工期の遅延や代替調達によるコスト上昇が生じた場合、原価構造の悪化を通じて同社グループの収益性や事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 自然災害・気候変動によるリスク
地震や台風、水害などの大規模な自然災害により、同社が管理・運営するアパートや施設、および従業員が直接的な被害を受けるリスクがあります。特に首都直下地震が発生した場合には本社機能やシステムが停止する恐れがあり、事業の中断や物件の修繕費用の発生などが業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) ITシステムおよび情報セキュリティに関するリスク
AIの利活用やモバイルPC業務の拡大に伴い、サイバー攻撃やランサムウェア被害、サプライチェーン攻撃の標的となるリスクが高まっています。意図的なシステム停止や個人情報の漏洩、知的財産権の侵害などが発生した場合、損害賠償責任の発生や社会的信用の低下により、経営成績や財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。



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