明和地所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

明和地所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、「クリオ」ブランドのマンション開発・分譲を主力とする不動産会社です。当期の連結売上高は799億円(前期比12.1%増)と増収を達成しましたが、用地費の上昇等により経常利益は38億円(前期比5.5%減)の減益となりました。


※本記事は、明和地所株式会社 の有価証券報告書(第39期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 明和地所ってどんな会社?


「クリオ」ブランドの新築分譲マンション開発を中核に、不動産流通や管理事業も展開する総合不動産デベロッパーです。

(1) 会社概要


1986年に設立され、主力のマンション事業を開始しました。1996年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1998年には市場第一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しましたが、2023年10月にスタンダード市場へ移行しています。近年では、買取再販やリノベーション事業等の不動産流通事業を強化しています。

連結従業員数は612名、単体では406名体制です。筆頭株主は創業家資産管理会社と思われる英興発で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
英興発 37.32%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.59%
髙杉仁 2.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性0名の計15名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は原田英明氏が務めています。社外取締役比率は13.3%です。

氏名 役職 主な経歴
原田英明 代表取締役社長 佐藤工業を経て1999年入社。マンション事業部長等を経て2005年より現職。
柿﨑宏治 常務取締役執行役員 1994年入社。開発事業本部長、名古屋支店長等を歴任。タケイチバリュアブル不動産代表取締役を兼務し、2022年より現職。
鈴木真 取締役執行役員 1998年入社。営業本部長、営業推進本部長等を歴任。2023年11月より流通事業本部担当兼流通事業本部長。
三平慎也 取締役執行役員 1998年入社。マンション事業建設一部長等を歴任。2025年4月より流通事業本部担当兼流通事業本部長。
福眞吉葉 取締役執行役員 2000年入社。マンション事業建設二部長等を歴任。2023年11月より開発事業本部長(マンション事業部・都市開発事業部担当)。
川田幸司 取締役執行役員 2001年入社。札幌支店長、営業統括部長等を歴任。2021年1月より営業本部、支店担当。
太田明 取締役執行役員 リクルートコスモス(現コスモスイニシア)等を経て2011年入社。2025年4月より開発事業本部長。
太田裕 取締役執行役員 1997年入社。営業推進本部長等を経て、2023年11月よりマーケティング推進本部担当兼マーケティング推進本部長。
島津基実 取締役執行役員 1996年入社。経営企画本部長、管理本部長等を歴任。2024年5月より社長室長、関係会社担当。
義澤俊介 取締役執行役員 日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)を経て2007年入社。経理財務本部長等を歴任し2025年6月より現職。


社外取締役は、小林大祐(ワコー電子代表取締役)、中山正行(元野村不動産ソリューションズ代表取締役専務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「分譲事業」「流通事業」「管理事業」「賃貸事業」の4つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

**(1) 分譲事業**
「クリオ」ブランドの新築分譲マンション等の開発・分譲を行っています。用地の仕入れから企画・開発、販売までを一貫して手掛け、一般消費者を主な顧客としています。
収益は、顧客へのマンション販売代金として計上されます。運営は主に明和地所が行っています。

**(2) 流通事業**
中古不動産の売買仲介、買取再販、リノベーション、および投資用不動産の開発・販売(ウェルスソリューション事業)を行っています。
収益は、仲介手数料や買取再販物件・投資用不動産の販売代金から得ています。運営は主に明和地所が行っています。

**(3) 管理事業**
同社が分譲したマンション等の総合管理、リフォーム、管理員・清掃業務を行っています。
収益は、管理組合からの管理委託料やリフォーム工事代金等から得ています。運営は、明和地所コミュニティおよび明和地所ライフサポートが行っています。

**(4) 賃貸事業**
マンション等の賃貸および賃貸管理業務を行っています。
収益は、入居者からの賃料やオーナーからの賃貸管理料から得ています。運営は、明和地所および明和地所コミュニティが行っています。

**(5) その他**
マンション購入者へのインテリア用品・住設機器の販売、広告代理業務、住宅ローン融資等を行っています。
収益は、商品の販売代金、広告手数料、貸付金の利息等から得ています。運営は、明和地所コミュニティや明和地所ファイナンス等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は501億円から799億円へと順調に拡大傾向にあります。利益面では、2023年3月期に経常利益49.9億円と高い水準を記録しましたが、直近2期は30億円台後半から40億円弱で推移しています。当期は増収ながらも、用地費上昇等の影響で経常利益は微減となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 501億円 572億円 623億円 713億円 799億円
経常利益 30億円 32億円 50億円 40億円 38億円
利益率(%) 6.0% 5.5% 8.0% 5.6% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 27億円 27億円 43億円 27億円 28億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約87億円増加し、過去最高を更新しました。売上総利益も増加しましたが、売上原価の増加率がやや高く、売上総利益率は微減しています。営業利益は増益を確保しましたが、営業外費用の増加等により経常利益は減益となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 713億円 799億円
売上総利益 155億円 166億円
売上総利益率(%) 21.8% 20.7%
営業利益 50億円 52億円
営業利益率(%) 7.0% 6.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が31億円(構成比27%)、広告宣伝費が15億円(同13%)を占めています。売上原価は633億円で、用地費や建築費の高騰が影響しています。

(3) セグメント収益


主力の分譲事業は増収ながらも利益は減少しました。一方、流通事業は売上高・利益ともに大幅に伸長し、買取再販や投資用不動産販売が好調でした。管理事業は安定的に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
分譲事業 494億円 534億円 43億円 39億円 7.3%
流通事業 152億円 197億円 5億円 13億円 6.8%
管理事業 57億円 60億円 5億円 5億円 8.5%
賃貸事業 7億円 7億円 3億円 2億円 33.8%
その他 2億円 1億円 1億円 1億円 61.8%
調整額 -35億円 -30億円 -7億円 -8億円 -
連結(合計) 713億円 799億円 50億円 52億円 6.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -18億円 -334億円
投資CF 24億円 -58億円
財務CF 1億円 268億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「想いをかなえ、時をかなでる。」という企業理念を掲げています。「クリオ」ブランドの新築分譲マンションを中心に、住まいのあらゆるシーンに対応した事業を展開し、顧客視点に立った住まいづくりを通じて、グループ全体の持続的成長と企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


創業以来変わらない「お客様視点に立った住まいづくり」の姿勢を貫くとともに、社会の変化に対応し、住まいを通じた新しい価値を創造することを重視しています。また、アクションポリシー「40 years NEW!」を掲げ、社員一人ひとりが自ら考え行動できる企業風土の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


2025年3月期から2027年3月期までを期間とする「中期経営計画2027」を策定し、一層の成長を目指しています。計画初年度である2025年3月期は計画を達成しており、引き続き次期以降も計画達成を目指します。

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2027」に基づき、上質な住まいづくりの追求、資本回転を意識した事業運営、分譲事業における安定した案件パイプラインの整備に注力しています。特に分譲事業では高付加価値の商品開発を、流通事業では中古市場の取り込みと収益拡大を推進し、ROIC向上を図るためアセットライト化を進める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「信頼」「共創」「共感」に基づき、ステークホルダーとの対話と協働を通じて持続可能な社会の実現を目指しています。健康経営の推進と人材価値の最大化を重点課題とし、アクションポリシーをベースに社員の主体性や能力向上を図る研修を充実させています。多様な人材が活躍できる環境整備と公正な評価制度も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.9歳 6.9年 7,067,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 58.6%
男女賃金差異(正規雇用) 69.7%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男女賃金差異(非正規雇用)は該当者なし等のため記載省略(HTML原文より確認)。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員女性比率(19.5%)、中核人材に占める女性比率(9.5%)、正規雇用労働者の中途採用比率(19.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済・金融環境の変化


分譲および流通事業で扱う商品は高額かつ投資性が高いため、景気動向や金利水準の影響を強く受けます。景気後退や金利上昇、融資姿勢の厳格化が生じた場合、顧客の購買意欲減退や資金調達コストの増加により、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自然災害や突発的事象発生


地震、風水害、感染症の流行等の自然災害や突発的事象が発生した場合、業務の中断や建設中の物件への損害が生じる可能性があります。工期延長による引渡しの遅れや、保険でカバーしきれない修復コストが発生し、事業計画や業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) 事業用地の仕入と建築コスト


不動産市況により用地価格が変動し、計画通りの仕入が困難になる可能性があります。また、建築資材価格や人件費の高騰は収益性の悪化を招きます。さらに、土壌汚染等の瑕疵発見や近隣住民の反対等は、追加費用やプロジェクトの遅延・中止につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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