※本記事は、野村不動産ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 野村不動産ホールディングスってどんな会社?
マンション分譲や都市開発事業を中核に、不動産仲介や資産運用など多角的に展開する総合不動産グループです。
■(1) 会社概要
同社は1957年に野村證券の店舗や社宅等の賃貸・管理を目的に野村不動産として設立されました。2004年に純粋持株会社である野村不動産ホールディングスを設立し、2006年に東京証券取引所の市場第一部(現プライム市場)に上場しました。その後も東芝不動産の連結子会社化や、仲介事業の統合・商号変更などを経て事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で9,043名、単体で427名規模の体制です。筆頭株主は事業会社である野村ホールディングスで、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野村ホールディングス | 37.08% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.07% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長兼社長執行役員グループCEOは新井聡が務めています。社外取締役は12名中5名が独立社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新井聡 | 代表取締役社長兼社長執行役員グループCEO | 1988年野村證券入社。同社執行役兼専務執行役員、野村ホールディングス執行役員コーポレート統括等を経て2023年より現職。野村不動産代表取締役会長を兼任。 |
| 松尾大作 | 代表取締役副社長兼副社長執行役員グループCOO | 1988年野村不動産入社。同社常務執行役員等を経て2018年野村不動産ホールディングス執行役員に就任。2021年より現職。野村不動産代表取締役社長を兼任。 |
| 芳賀真 | 代表取締役副社長兼副社長執行役員コーポレート統括 | 1989年野村不動産入社。野村不動産投資顧問取締役、野村不動産取締役兼専務執行役員等を経て2023年より現職。野村不動産代表取締役副社長兼副社長執行役員を兼任。 |
| 沓掛英二 | 取締役会長 | 1984年野村證券入社。野村證券代表執行役副社長等を経て2015年野村不動産ホールディングス代表取締役社長兼社長執行役員。2023年より現職。 |
| 黒川洋 | 取締役兼執行役員海外部門長 | 1990年野村不動産入社。野村不動産投資顧問代表取締役兼専務執行役員、野村不動産専務執行役員等を経て2021年より現職。野村不動産取締役兼専務執行役員を兼任。 |
| 市原幸雄 | 取締役(監査等委員) | 1988年野村不動産入社。野村不動産ホールディングス執行役員、野村不動産常務執行役員等を経て2025年より現職。グループ各社の監査役を兼任。 |
| 池田隆行 | 取締役(監査等委員) | 1991年野村證券入社。野村バブコックアンドブラウン取締役、野村アセットマネジメント取締役兼執行役員等を経て2025年より現職。グループ各社の監査役を兼任。 |
社外取締役は、髙倉千春(元ロート製薬取締役チーフヒューマンリソースオフィサー)、山下良則(現リコー取締役会長)、高橋鉄(元霞が関パートナーズ法律事務所代表パートナー)、野上宰門(元日本精工取締役代表執行役副社長CFO)、宮川明子(元有限責任監査法人トーマツパートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「住宅事業」「都市開発事業」「海外事業」「資産運用事業」「仲介・CRE事業」「運営管理事業」および「その他の事業」を展開しています。
■住宅事業
分譲マンションや戸建住宅の開発・販売に加え、賃貸住宅やシニア向け住宅、ホテルの開発・運営など、住まいと暮らしに関わる幅広いサービスを提供しています。
マンション等の分譲代金や不動産売却代金、賃貸収入およびホテル等の運営収入を主な収益源としています。開発・分譲は野村不動産が担い、シニア向け住宅運営は野村不動産ウェルネス、ホテル運営はUDSや野村不動産ホテルズが運営しています。
■都市開発事業
オフィスビルや商業施設、物流施設などの開発、賃貸、売却事業を展開しています。また、フィットネスクラブの企画・運営など、都市の多様なニーズに応える事業も手掛けています。
開発施設の売却代金や賃貸収入、運営受託にかかる手数料等を収益源としています。野村不動産が開発・賃貸等を担い、商業施設の運営受託は野村不動産コマース、フィットネスは野村不動産ライフ&スポーツが運営しています。
■海外事業
ベトナムやタイなどの東南アジアを中心とした海外において、マンションや戸建住宅の開発・分譲・賃貸事業、およびオフィスビル等の開発・賃貸事業を展開しています。
海外事業における物件の販売代金や賃貸収入を主な収益源としています。事業の推進は主に野村不動産が主導し、ベトナムでのオフィスビル賃貸事業などは現地子会社のZEN PLAZA CO., LTDが運営しています。
■資産運用事業
REIT(不動産投資信託)や私募ファンド、不動産証券化商品などを対象とした資産運用サービスを、機関投資家や個人投資家向けに幅広く提供しています。
ファンドの運用・管理業務に伴う運用受託手数料等を主な収益源としています。本事業は、主に野村不動産投資顧問が専門的に運営を担っています。
■仲介・CRE事業
個人向けの不動産売買仲介業から、法人向けの不動産戦略コンサルティング(CRE戦略支援)、保険代理店事業や銀行代理業まで、不動産取引を総合的にサポートしています。
不動産の売買契約成立時に受け取る仲介手数料を主な収益源としています。個人から法人まで幅広い顧客に対する仲介およびコンサルティング業務は、野村不動産ソリューションズが運営しています。
■運営管理事業
マンションやオフィスビル、データセンター等の運営・管理サービスを提供しています。また、施設管理に付随する修繕工事やテナント工事、リフォーム工事なども手掛けています。
顧客からの不動産管理委託料や、各種修繕工事等の工事請負代金を主な収益源としています。管理・修繕業務は野村不動産パートナーズが担い、一部地域での熱供給事業は野村不動産熱供給が運営しています。
■その他の事業
上記の各報告セグメントに含まれない事業として、土地や建物の売買・賃貸に関する事業等を行っています。
不動産の売買代金や賃貸収入を収益源としています。本事業は、主に中核事業会社である野村不動産が運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は6,450億円から9,425億円へと継続して拡大しています。経常利益も826億円から1,248億円へと右肩上がりで成長を続けており、利益率も12%〜14%台の安定した高水準を維持しています。主力事業の好調が全社業績を牽引しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,450億円 | 6,547億円 | 7,347億円 | 7,576億円 | 9,425億円 |
| 経常利益 | 826億円 | 941億円 | 982億円 | 1,067億円 | 1,248億円 |
| 利益率(%) | 12.8% | 14.4% | 13.4% | 14.1% | 13.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2,350億円 | 275億円 | 283億円 | 402億円 | 397億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で大きく伸長し、営業利益も堅調に推移しています。増収効果が利益の絶対額の押し上げに寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,576億円 | 9,425億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 1,190億円 | 1,382億円 |
| 営業利益率(%) | 15.7% | 14.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が534億円(構成比32.5%)、委託顧問費が199億円(同12.1%)、広告宣伝費が184億円(同11.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
住宅事業および都市開発事業が売上高の大部分を占めており、いずれも前期比で大幅な増収を達成しています。また、仲介・CRE事業や運営管理事業も安定して売上を伸ばしており、全社の増収に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 住宅事業 | 3,671億円 | 4,317億円 |
| 都市開発事業 | 2,104億円 | 3,187億円 |
| 海外事業 | 94億円 | 37億円 |
| 資産運用事業 | 154億円 | 161億円 |
| 仲介・CRE事業 | 558億円 | 623億円 |
| 運営管理事業 | 992億円 | 1,097億円 |
| その他 | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 7,576億円 | 9,425億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も28.5%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1,338億円 | 449億円 |
| 投資CF | -2,034億円 | -591億円 |
| 財務CF | 3,185億円 | 156億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ - 幸せと豊かさを最大化するグループへ -」を掲げ、個々のお客様を起点にグループ全体で連携し、お客様の「幸せ」と社会の「豊かさ」の最大化を追求しています。
■(2) 企業文化
サステナビリティポリシー「Earth Pride-地球を、つなぐ-」や、企業理念「あしたを、つなぐ」を指針とし、「人間らしさ」「自然との共生」「共に創る未来」の3つのテーマを重視しています。社員一人ひとりが多様な価値観を尊重し合い、自発的に挑戦・成長できる組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
長期経営方針(2026年3月期から2030年頃)において、企業の持続的な成長に向けた中長期的な財務指針を掲げて経営を推進しています。
* ROA:5%以上
* ROE:10%以上
* 事業利益年平均成長率:8%水準
* 自己資本比率:30%水準
* 総還元性向:40~50%
■(4) 成長戦略と重点施策
価値観の多様化やサステナビリティ意識の高まり、少子高齢化などの環境変化に対応するため、住宅部門での高付加価値商品の提供や都市開発部門での再開発事業の推進に注力します。また、脱炭素や生物多様性など重要課題の解決を通じた社会貢献と、事業成長の両立を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「グループ人事・人材開発ビジョン」を掲げ、事業戦略と人材戦略を連動させる人的資本経営を推進しています。「ビジョンへの共感」「働きがいの向上」「人材の配置・登用」を重点テーマとし、経営陣との対話促進や研修体系の充実、社内公募制度の導入などを通じて、多様な個の活躍を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.9歳 | 13.5年 | 12,482,286円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.7% |
| 男性育児休業取得率 | 96.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 107.4% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1on1ミーティングの実施率(83.2%)、人権・ウェルネス・D&I研修参加率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産投資に伴うリスク
不動産投資・開発事業において、土壌汚染の判明や許認可取得の遅れ、追加工事の発生、建築費やエネルギーコストの上昇などが生じた場合、事業の計上時期の遅延や収益性の悪化につながり、同社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 会社投資(M&A)・新規事業に伴うリスク
M&Aによる投資先企業への期待や新事業領域への取り組みにおいて、当初計画していた利益成長やグループ間でのシナジー効果が実現できなかった場合、同社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 市場の変化によるリスク
競合他社の動向や革新的な企業の参入、経済情勢・地政学リスクの発現、災害の発生等が事業環境や不動産市況の変化につながった場合、同社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 法令違反によるリスク
宅地建物取引業法や建築基準法、金融商品取引法、個人情報保護法などの関係法令に違反し、信用の失墜や行政処分、罰金等が課された場合、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。社内規程の遵守と定期的な研修を通じてリスクの予防に努めています。



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