※本記事は、野村不動産ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 野村不動産ホールディングスってどんな会社?
野村不動産グループの持株会社として、住宅、都市開発、資産運用、仲介、運営管理などの事業を統括しています。
■(1) 会社概要
同社は2004年6月に設立され、2006年10月に東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)に上場しました。2011年10月には資産運用機能の強化を目的として野村不動産投資顧問を発足させています。2022年4月にはグループ再編の一環として野村不動産と野村不動産ビルディングが合併しました。また、2024年4月にはUDSの全株式を取得し、完全子会社化しています。
同グループの連結従業員数は8,732名、単体では403名です。大株主の筆頭株主はその他の関係会社である野村ホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野村ホールディングス | 37.11% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.94% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長兼社長執行役員グループCEOは新井聡氏です。社外取締役比率は46.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新井 聡 | 代表取締役社長兼社長執行役員グループCEO | 1988年4月野村證券(現野村ホールディングス)入社。同社代表取締役兼副社長執行役員、野村不動産取締役等を経て、2023年4月より現職。 |
| 沓掛 英二 | 取締役会長 | 1984年4月野村證券(現野村ホールディングス)入社。同社取締役兼代表執行役副社長、野村不動産ホールディングス代表取締役社長兼社長執行役員等を経て、2023年4月より現職。 |
| 松尾 大作 | 代表取締役副社長兼副社長執行役員グループCOO | 1988年4月野村不動産入社。同社常務執行役員、野村不動産ホールディングス執行役員等を経て、2021年6月より現職。 |
| 芳賀 真 | 代表取締役副社長兼副社長執行役員コーポレート統括 | 1989年4月野村不動産入社。同社取締役兼専務執行役員、野村不動産ホールディングス取締役兼執行役員等を経て、2023年4月より現職。 |
| 黒川 洋 | 取締役兼執行役員都市開発部門長 | 1990年4月野村不動産入社。野村不動産投資顧問代表取締役兼専務執行役員、野村不動産専務執行役員等を経て、2021年6月より現職。 |
| 木村 博行 | 取締役(監査等委員) | 1984年4月野村不動産入社。野村不動産ホールディングス取締役兼執行役員、野村不動産投資顧問代表取締役兼副社長執行役員等を経て、2021年6月より現職。 |
| 高山 寧 | 取締役(監査等委員) | 1988年4月野村證券(現野村ホールディングス)入社。野村ホールディングス執行役員、野村證券執行役員等を経て、2019年6月より現職。 |
社外取締役は、髙倉千春(日本特殊陶業社外取締役)、山下良則(株式会社リコー取締役会長)、茂木良夫(元双日代表取締役副社長)、宮川明子(公認会計士)、高橋鉄(弁護士)、末村あおぎ(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「住宅事業」「都市開発事業」「海外事業」「資産運用事業」「仲介・CRE事業」「運営管理事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 住宅事業
マンション・戸建住宅の開発・分譲、賃貸マンションの開発・販売、シニア向け住宅やホテルの開発・運営などを行っています。個人顧客向けの住まいに関するサービス全般を提供しています。
収益は、主に住宅の分譲代金、賃貸収益、ホテルの運営収入などから得ています。運営は主に野村不動産、野村不動産ウェルネス、野村不動産ホテルズ、UDSなどが行っています。
■(2) 都市開発事業
オフィスビル、商業施設、物流施設等の開発・賃貸・販売を行っています。また、フィットネスクラブなどの運営事業も展開しています。
収益は、オフィスビルや商業施設の賃貸収益、開発物件の売却益、施設の運営収入などから得ています。運営は主に野村不動産、野村不動産ライフ&スポーツ、野村不動産コマースなどが行っています。
■(3) 海外事業
海外において、マンション・戸建住宅の開発・分譲・賃貸事業、オフィスビル等の開発・賃貸事業を行っています。
収益は、海外での住宅分譲収入やオフィスビルの賃貸収益などから得ています。運営は主に野村不動産、およびベトナムやタイ、英国などの現地法人が行っています。
■(4) 資産運用事業
REIT(不動産投資信託)、私募ファンド、不動産証券化商品等を対象とした資産運用事業を行っています。
収益は、ファンドの運用報酬などから得ています。運営は主に野村不動産投資顧問、英国のLothbury Investment Management Limitedなどが行っています。
■(5) 仲介・CRE事業
不動産の仲介・コンサルティング事業、保険代理店事業、銀行代理業などを行っています。個人および法人顧客に対し、不動産売買の仲介や有効活用などの提案を行っています。
収益は、不動産売買の仲介手数料やコンサルティングフィーなどから得ています。運営は主に野村不動産ソリューションズが行っています。
■(6) 運営管理事業
マンション・オフィスビル等の運営・管理事業、およびそれに付随する修繕工事・テナント工事等の請負事業、リフォーム事業を行っています。また、地域冷暖房事業や電力小売事業なども展開しています。
収益は、マンションやビルの管理委託料、工事請負代金、リフォーム代金、エネルギー供給の対価などから得ています。運営は主に野村不動産パートナーズ、野村不動産熱供給などが行っています。
■(7) その他
土地および建物の売買・賃貸などを行っています。
収益は、不動産の売買代金や賃貸収益から得ています。運営は主に野村不動産が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に増加傾向にあり、第21期には7,500億円を超えました。利益面でも、経常利益や当期純利益が増加基調にあり、第21期は過去5期間で最高の利益水準となっています。利益率も10%台を維持しており、安定した収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,807億円 | 6,450億円 | 6,547億円 | 7,347億円 | 7,576億円 |
| 経常利益 | 660億円 | 826億円 | 941億円 | 982億円 | 1,067億円 |
| 利益率(%) | 11.4% | 12.8% | 14.4% | 13.4% | 14.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 219億円 | 553億円 | 645億円 | 682億円 | 748億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高、営業利益ともに増加し、増収増益となりました。売上総利益率は前年同水準を維持しつつ、営業利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,347億円 | 7,576億円 |
| 売上総利益 | 2,445億円 | 2,666億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.3% | 35.2% |
| 営業利益 | 1,121億円 | 1,190億円 |
| 営業利益率(%) | 15.3% | 15.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が487億円(構成比33%)、委託顧問費が185億円(同13%)、広告宣伝費が163億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
住宅事業や仲介・CRE事業、運営管理事業などで売上が増加し、全体を牽引しました。特に住宅事業と仲介・CRE事業は増益にも貢献しています。一方、都市開発事業は売上が減少し、利益も減益となりました。海外事業は売上が大きく伸長し、黒字転換を果たしています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 住宅事業 | 3,580億円 | 3,671億円 | 415億円 | 488億円 | 13.3% |
| 都市開発事業 | 2,139億円 | 2,104億円 | 493億円 | 416億円 | 19.8% |
| 海外事業 | 46億円 | 94億円 | -4億円 | 66億円 | 70.4% |
| 資産運用事業 | 142億円 | 154億円 | 86億円 | 99億円 | 64.2% |
| 仲介・CRE事業 | 483億円 | 558億円 | 134億円 | 166億円 | 29.7% |
| 運営管理事業 | 956億円 | 992億円 | 101億円 | 119億円 | 12.0% |
| その他 | 3億円 | 3億円 | 2億円 | 1億円 | 49.3% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -91億円 | -104億円 | -% |
| 連結(合計) | 7,347億円 | 7,576億円 | 1,137億円 | 1,251億円 | 16.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 709億円 | -1,338億円 |
| 投資CF | -836億円 | -2,034億円 |
| 財務CF | 399億円 | 3,185億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、2030年ビジョンとして「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ - 幸せと豊かさを最大化するグループへ -」を掲げています。個々のお客様を起点にグループ全体で連携し、お客様の「幸せ」と社会の「豊かさ」の最大化を追求することを経営の方針としています。
■(2) 企業文化
同グループは、サステナビリティポリシーとして「Earth Pride-地球を、つなぐ-」を掲げています。「人間らしさ」「自然との共生」「共に創る未来」の3つのテーマをベースとし、2030年までに取り組むべき重点課題として「ダイバーシティ&インクルージョン」「人権」「脱炭素」「生物多様性」「サーキュラーデザイン」を特定しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期から2030年頃までを対象とする長期経営方針および2028年3月期までの中期経営計画を策定しています。2028年3月期の数値目標として、事業利益1,600億円(2025年3月期実績1,251億円)、ROE10%以上、ROA5%以上、事業利益年平均成長率8%水準などを掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「お客様の『幸せ』と社会の『豊かさ』の最大化」に向け、各事業の方針を策定しています。特に注力する事業方針として、住宅部門では開発・分譲事業等の強化、都市開発部門ではオフィスビル等の開発・運営の推進、海外部門では利益成長の加速などを掲げ、これらに基づく具体的・定量的な戦略を実行していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材戦略を経営戦略と連動させ、企業理念やビジョンの実現を目指す「人的資本経営」を推進しています。グループ人材戦略の重点テーマとして「ビジョンへの共感」「働きがいの向上」「人材の配置・登用」を掲げ、社員一人ひとりが能力を発揮し、自発的に成長できる環境づくりや、事業戦略に合わせた迅速・柔軟な人材配置などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.7歳 | 13.5年 | 11,831,448円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.4% |
| 男性育児休業取得率 | 111.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 56.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 60.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性マネジメント職層比率(18.9%)、男女育児休業取得率(103.1%)、1on1ミーティングの実施率(82.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産投資に伴うリスク
予期せぬ土壌汚染の判明、許認可取得の遅れ、追加工事の発生、ゼネコンの工事受注制約、工期の長期化、工事費やエネルギーコストの上昇などにより、計上時期の遅れや収益性の悪化が発生し、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。工事費上昇リスクに対しては、用地取得時に一定の追加コストを織り込むなどの対応を行っています。
■(2) 会社投資(M&A)・新規事業に伴うリスク
M&Aにおいて対象会社に期待する利益成長やシナジー効果が実現できなかった場合や、新規事業領域への取り組みにおいて当初計画やシナジー効果が実現できなかった場合、財政状態や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。投資実行時には慎重な調査・検討を行い、実行後は定期的なモニタリングを実施しています。
■(3) 市場の変化によるリスク
競合他社の動向、新規参入企業の出現、経済・政治・社会情勢の変動、地政学リスクの発現、災害の発生などが事業環境や市況の変化につながり、財政状態や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。各事業についての外部環境認識を定期的に更新し、市況変動の影響を一定程度に抑える投資判断や、財務の健全性確保に努めています。



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