京成電鉄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京成電鉄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する京成電鉄は、千葉や東京東部を地盤に鉄道・バス・タクシー等の運輸業を中核とし、不動産業や流通業なども展開する企業です。直近の業績トレンドは、空港輸送の需要獲得や不動産事業の拡大により増収となった一方で、事業再編やシステム改修に伴う費用の増加により減益となっています。


※本記事は、株式会社京成電鉄の有価証券報告書(第183期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京成電鉄ってどんな会社?


運輸業を中核事業とし、不動産や流通、レジャーなど幅広く展開する企業です。

(1) 会社概要


1909年7月に京成電気軌道として設立。1945年に商号を京成電鉄に変更しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、1978年には成田空港への乗り入れと空港特急の運転を開始しています。直近では2024年にバス事業、2025年にタクシー事業を再編し、同年に新京成電鉄を吸収合併するなど体制を強化しています。

従業員数は連結で13,231名、単体で2,474名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行となっています。また、第3位には事業会社であるオリエンタルランドが名を連ねており、レジャーや不動産関連で取引や協力関係を持つ提携先となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.96%
日本カストディ銀行(信託口) 8.26%
オリエンタルランド 3.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性4名の計19名で構成され、女性役員比率は21.1%です。代表取締役会長の小林敏也氏、代表取締役社長社長執行役員の天野貴夫氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は36.8%です。

氏名 役職 主な経歴
小林敏也 代表取締役会長 1982年同社入社。常務取締役開発担当、代表取締役社長等を経て2025年6月より現職。
天野貴夫 代表取締役社長社長執行役員 1988年同社入社。取締役、常務取締役、代表取締役専務執行役員等を経て2025年6月より現職。
持永秀毅 取締役常務執行役員鉄道本部長 1984年運輸省入省。国土交通省関東運輸局長等を経て2021年同社取締役。2024年6月より現職。
清水健司 取締役常務執行役員開発本部長 1990年同社入社。開発事業部長、執行役員、取締役執行役員等を経て2024年6月より現職。
吉川邦彦 取締役常務執行役員総務・経理担当 1987年新京成電鉄入社。同社常務取締役等を経て2025年同社顧問に就任。2026年6月より現職。
橋本武 取締役執行役員内部監査・経営統括担当 1992年同社入社。経理部長、内部監査部長、執行役員等を経て2026年6月より現職。
長塚健治 取締役執行役員グループ戦略・人事担当 1994年同社入社。総務部長兼人事部長、執行役員鉄道本部運輸部長等を経て2026年6月より現職。


社外取締役は、栃木庄太郎(弁護士)、菊池節(パウダーテック取締役会長)、網谷多加子(公認会計士・税理士)、中島明子(和洋女子大学名誉教授)、石内俊行(元三井住友信託銀行執行役員)、冨塚昌子(千葉経済大学短期大学部教授)、高橋渉(オリエンタルランド取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「運輸業」「流通業」「不動産業」「レジャー・サービス業」「建設業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 運輸業


鉄道事業では成田空港へのアクセスや関東エリアでの交通網を提供し、バスやタクシー事業も広範に展開しています。通勤・通学、観光客、インバウンドなどの利用者が主な顧客層です。

収益源は利用者からの運賃収入です。運営は同社のほか、北総鉄道、関東鉄道、千葉ニュータウン鉄道の鉄道各社、ならびに京成バス、帝都自動車交通などのグループ会社がそれぞれ担っています。

(2) 流通業


スーパーマーケットや百貨店の運営、ショッピングセンターなどの商業施設の展開を通じて、地域住民に生活必需品やサービスを提供しています。

各店舗を利用する顧客からの商品販売やサービス提供に伴う代金を収益源としています。ストア業は京成ストアやコミュニティー京成、百貨店業は水戸京成百貨店、その他流通業はユアエルム京成などが運営しています。

(3) 不動産業


沿線エリアを中心とした賃貸住宅や商業施設の開発・賃貸、中高層住宅の販売などを行い、地域に根ざしたまちづくりを推進しています。

テナントや入居者からの賃貸収入、マンション等の購入者からの不動産販売収入、建物の管理手数料が収益源です。運営は同社を中心に、京成不動産や関東鉄道、京成ビルサービスなどが担っています。

(4) レジャー・サービス業


ホテルや映画館の運営、ロープウェイの運行などを通じて、観光客やインバウンド、地域住民に向けて宿泊施設やエンターテインメントを提供しています。

宿泊者からの宿泊料金、映画館の来場者からのチケット代金や飲食代金などが収益源となります。事業の運営は、千葉京成ホテル、イウォレ京成、京成フロンティア企画などが展開しています。

(5) 建設業


鉄道施設の改良工事や商業施設の新築工事、外部からの民間・公共工事の請負など、土木・建築分野でのインフラ整備事業を提供しています。

グループ内および外部企業や官公庁からの工事請負代金が主な収益源です。運営は京成建設および京成電設工業の各社が行っています。

(6) その他の事業


グループ内外の鉄道車両の保守・整備や、自動車整備、教習所の運営などを通じて、交通インフラを裏方から支える技術的サービスを提供しています。

車両の整備代金や、教習所の受講者からの講習費用などを収益源としています。事業は京成自動車工業、京成車両工業、京成自動車整備、京成ドライビングスクールなどが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の連結業績を見ると、経常利益は大きく回復したのち高水準を維持しています。当期利益についても大幅な黒字転換を果たして成長基盤を確立したものの、直近では関係会社株式売却益の減少等の影響もあり減益となっています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 268億円 516億円 618億円 586億円
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 677億円 694億円 401億円

(2) 損益計算書


事業活動による本業の儲けを示す営業利益は、直近で若干の減少傾向が見られます。これは、事業再編に伴うシステム改修や人的投資の強化等により経費が増加したことが影響しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 360億円 340億円


販売費及び一般管理費のうち、人件費が221億円(構成比40%)、経費が205億円(同38%)、減価償却費が79億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上を見ると、中核である運輸業が全体の過半を占め、着実に売上を伸ばしています。不動産業や建設業、流通業など他の多くのセグメントにおいても前期を上回る売上を記録し、企業全体の増収に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
運輸業 1965億円 2051億円
流通業 577億円 588億円
不動産業 290億円 313億円
レジャー・サービス業 130億円 139億円
建設業 169億円 181億円
その他の事業 62億円 53億円
連結(合計) 3193億円 3324億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金を元手に、借入も活用しながら積極的な投資を行っている状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 411億円 415億円
投資CF -92億円 -755億円
財務CF -629億円 169億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様に喜ばれる良質な商品・サービスを、安全・快適に提供し、健全な事業成長のもと、社会の発展に貢献する」ことをグループ経営理念として掲げています。交通インフラを担う企業としての社会的責任を果たしつつ、地域社会や環境との調和を図りながら、あらゆるステークホルダーに持続的な価値を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


経営理念を実現するためのグループ行動指針として、「安全、接客、成長、企業倫理、環境」の5つの項目を定めています。これらをグループ各社の社員に周知し、「安全・安心」を最優先としたうえで、お客様第一主義を徹底する「BMK(ベストマナー向上)推進運動」を浸透させるなど、選ばれる企業グループの構築に向けた行動様式を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2022年度から2030年度までの長期経営計画「Dプラン」を推進し、2030年におけるグループビジョンとして「京成グループの事業エリアのみなさまとの共創、及び、日本の玄関口、成田空港の機能強化への寄与を通じ、サステナブルな社会の実現に貢献する」ことを掲げています。

* 営業収益:3,750億円
* 営業利益:380億円
* ROE:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


長期経営計画の第2段階として、空港アクセスの強化と外部環境変化への耐性強化を重点課題としています。成田空港の機能強化を成長機会と捉え、車両基地拡充や新型有料特急の導入、複線化などに継続的な大型投資を行う計画です。あわせて、第2の柱と位置づける不動産業の拡大により、環境変化に強い事業ポートフォリオの構築を推進していきます。

* 投資計画:約3,000億円(2025〜2027年度計)
* 株主還元:連結配当性向30%以上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長と生産性の向上のため、性別や国籍によらない公正な採用や登用を実施し、従業員の能力開発などの人材投資に積極的に取り組んでいます。ジョブローテーションや外部企業との人事交流、資格取得支援を通じた人材育成のほか、定年延長、サテライトオフィスの設置、時短勤務制度の整備など、多様な人材が効率的かつ安心して活躍できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.9歳 17.4年 7,987,187円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 63.8%
男女賃金差異(全労働者) 73.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.2%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 56.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人口動態の変化による需要低下


わが国における少子高齢化の進展や人口減少により、同社の事業エリアにおいても社会情勢の変化が見込まれます。提供する商品やサービスの需要が低下した場合や、労働力の確保および人材育成が困難となった場合には、収益の減少と経営コストの増加につながる可能性があります。

(2) 国際情勢と成田空港利用客への影響


同社の事業エリアには成田国際空港があり、運輸業における空港利用者への依存度が比較的高い状況です。そのため、海外でのテロ行為や国際紛争、感染症の流行等によって空港利用客が大幅に減少した場合や、原油・原材料価格が高騰した場合には、収益面やコスト面で大きな影響を受ける可能性があります。

(3) 運輸業等における法的規制への対応


中核となる鉄道やバスなどの運輸業を運営するにあたり、施設の新設・保全や運賃設定において鉄道事業法や道路運送法などの規制を受けています。今後、法的規制の新設や適用基準の重大な変更がなされた場合、企業活動の制限や対応コストの増加によって業績に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 業務システムの障害


列車の運行管理や座席予約システム、決算業務処理など各事業において情報システムを広範に活用しています。ハードウェアやネットワーク等に自然災害や人為的ミスによる重大な障害が発生した場合、業務に支障を来すだけでなく、長期間の復旧対応によるコスト増加や社会的信用の低下を招くおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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