阪急阪神ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

阪急阪神ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、関西を地盤に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、不動産事業や都市交通事業の回復等が寄与し、営業収益は1兆1,069億円、経常利益は1,112億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社阪急阪神ホールディングスの有価証券報告書(第187期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 阪急阪神ホールディングスってどんな会社?


同社グループは、京阪神エリアを基盤とする鉄道・不動産事業に加え、宝塚歌劇や阪神タイガースなどのエンタテインメント事業、旅行、国際輸送などを多角的に展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1907年に前身となる箕面有馬電気軌道が設立され、1910年に鉄道営業を開始しました。1943年には京阪電気鉄道と合併し京阪神急行電鉄へ社名を変更(後に分離)。2005年に持株会社体制へ移行し阪急ホールディングスとなり、2006年には阪神電気鉄道との経営統合により現在の社名となりました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は23,033人、単体では229人です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行(日本マスタートラスト信託銀行)、第2位も資産管理業務を行う信託銀行(日本カストディ銀行)となっています。第3位には外国法人等が名を連ねており、国内外の機関投資家が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.69%
日本カストディ銀行(信託口) 4.21%
STATE STREET BANK WEST CLIENT - TREATY 505234 2.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長グループCEOは嶋田泰夫氏です。取締役10名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
嶋 田  泰 夫 代表取締役社長グループCEO 1988年阪急電鉄入社。同社代表取締役社長を経て、2022年同社代表取締役副社長、2023年代表取締役社長、2024年12月より現職。
久 須  勇 介 代表取締役副社長 1984年阪神電気鉄道入社。阪急阪神不動産代表取締役副社長を経て、2023年阪神電気鉄道代表取締役社長(現任)。同年6月より現職。
遠 藤  典 子 取締役 1994年ダイヤモンド社入社。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、2015年慶應義塾大学特任教授。2019年同社取締役、2024年早稲田大学研究院教授より現職。
鶴     由 貴 取締役 2000年弁護士登録。2016年一橋大学監事。2020年同社取締役より現職。
小 林  充 佳 取締役 1982年日本電信電話公社入社。西日本電信電話代表取締役社長を経て、2022年同社相談役(現任)、同年同社取締役より現職。
島 谷  能 成 取締役 1975年東宝入社。同社代表取締役社長を経て、2022年同社代表取締役会長(現任)。2015年同社取締役より現職。
荒 木  直 也 取締役 1981年阪急百貨店入社。阪急阪神百貨店代表取締役社長を経て、2020年エイチ・ツー・オー リテイリング代表取締役社長(現任)、同年阪急阪神百貨店代表取締役会長(現任)。2017年同社取締役より現職。
橋 本  一 範 取締役監査等委員(常勤) 1983年阪神電気鉄道入社。同社常務取締役、同社執行役員を経て、2021年阪神電気鉄道常任監査役(現任)。2024年より現職。
小 見 山  道 有 取締役監査等委員 1971年検事任官。最高検察庁検事、神戸地方検察庁検事正等を経て、2013年弁護士登録。2017年同社監査役、2020年より現職。
髙 橋  裕 子 取締役監査等委員 1978年京都大学医学部附属病院医員。奈良女子大学保健管理センター教授等を経て、2016年京都大学大学院医学研究科特任教授(現任)。2022年より現職。


社外取締役は、遠藤典子(早稲田大学研究院教授)、鶴由貴(弁護士)、小林充佳(西日本電信電話相談役)、小見山道有(弁護士)、髙橋裕子(医師)です。

2. 事業内容


同社グループは、「都市交通事業」、「不動産事業」、「エンタテインメント事業」、「情報・通信事業」、「旅行事業」、「国際輸送事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 都市交通事業


京阪神エリアを中心に、鉄道、バス、タクシー等の旅客輸送サービスや、駅ナカ店舗での流通事業などを提供しています。主な顧客は沿線住民や観光客などの一般利用者です。

運賃収入や商品販売収入などを顧客から受け取るモデルです。運営は、鉄道事業を阪急電鉄、阪神電気鉄道、北大阪急行電鉄などが、自動車事業を阪急バス、阪神バスなどが担っています。

(2) 不動産事業


オフィスビルや商業施設の賃貸、マンション・戸建住宅の分譲、ホテル運営などを手掛けています。また、海外における不動産開発や賃貸も行っています。

賃料収入、分譲収入、宿泊料などを顧客から受け取ります。運営は、賃貸・分譲を阪急電鉄、阪神電気鉄道、阪急阪神不動産などが、ホテル事業を阪急阪神ホテルズなどが担っています。

(3) エンタテインメント事業


スポーツ事業(プロ野球「阪神タイガース」、阪神甲子園球場等)と、ステージ事業(宝塚歌劇等)を展開しています。ファンや観客に夢と感動を提供する事業です。

チケット販売収入、グッズ・飲食物販売収入、放映権料などを得ています。スポーツ事業は阪神電気鉄道、阪神タイガースなどが、ステージ事業は阪急電鉄、宝塚クリエイティブアーツなどが運営しています。

(4) 情報・通信事業


システム開発、ビル管理システム、インターネット接続サービス、ケーブルテレビ事業などを提供しています。法人顧客および個人顧客が対象です。

システム開発費、保守運用費、通信サービス利用料などを顧客から受け取ります。運営は、アイテック阪急阪神、ユミルリンク、ベイ・コミュニケーションズなどが行っています。

(5) 旅行事業


「阪急交通社」ブランドで、国内・海外の募集型企画旅行や個人旅行、法人向け旅行サービスを提供しています。

旅行代金や取扱手数料を顧客から受け取るモデルです。運営は、阪急交通社が主に行っています。

(6) 国際輸送事業


航空・海上貨物の利用運送事業(フォワーディング)やロジスティクス事業をグローバルに展開しています。主に法人顧客の物流ニーズに対応しています。

運賃や通関料、倉庫保管料などを顧客から受け取ります。運営は、阪急阪神エクスプレスなどが担っています。

(7) その他


建設・環境事業、広告代理業、人事・経理代行業、グループカード事業などを展開しています。

工事代金、広告制作費、業務受託料、カード手数料などを得ています。運営は、ハンシン建設、阪急阪神マーケティングソリューションズ、阪急阪神ビジネスアソシエイトなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、営業収益は新型コロナウイルス感染症の影響からの回復基調により、5,689億円から1兆1,069億円へと大幅に増加しました。経常利益も赤字から黒字転換し、直近では1,112億円と過去最高水準で推移しています。親会社株主に帰属する当期純利益も順調に回復し、安定した利益水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 5,689億円 7,462億円 9,683億円 9,976億円 11,069億円
経常利益 -76億円 385億円 884億円 1,094億円 1,112億円
利益率(%) -1.3% 5.2% 9.1% 11.0% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -367億円 214億円 470億円 678億円 674億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加し、営業利益も増加しました。売上総利益率は前期と同水準を維持しています。全体として増収増益の基調にあり、本業の収益力が堅調に推移していることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 9,976億円 11,069億円
売上総利益 1,385億円 1,444億円
売上総利益率(%) 13.9% 13.0%
営業利益 1,057億円 1,109億円
営業利益率(%) 10.6% 10.0%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が161億円(構成比47.9%)、経費が119億円(同35.6%)を占めています。売上原価については、運輸業等営業費及び売上原価として一括計上されており、営業費全体に占める割合は96.6%となっています。

(3) セグメント収益


当期は、不動産事業が分譲マンションの増加等により大幅な増収増益となり、全体を牽引しました。旅行事業も需要回復により大幅な増収増益となりました。一方、エンタテインメント事業は前期のプロ野球関連特需の反動等により減益、国際輸送事業は運賃下落等の影響で減収減益(赤字)となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
都市交通事業 2,033億円 2,096億円 343億円 350億円 16.7%
不動産事業 3,183億円 3,678億円 498億円 576億円 15.7%
エンタテインメント事業 826億円 825億円 141億円 114億円 13.8%
情報・通信事業 646億円 701億円 61億円 69億円 9.8%
旅行事業 2,169億円 2,611億円 50億円 53億円 2.0%
国際輸送事業 1,003億円 1,047億円 2億円 -13億円 -1.2%
その他 601億円 651億円 34億円 38億円 5.8%
調整額 -484億円 -541億円 -73億円 -78億円 -
連結(合計) 9,976億円 11,069億円 1,057億円 1,109億円 10.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ資金に加え、借入や社債発行による資金調達を行い、積極的な投資活動を展開しています。特に大型プロジェクトや成長分野への投資を継続しており、将来の成長に向けた「積極型」のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,235億円 874億円
投資CF -1,413億円 -1,676億円
財務CF 285億円 795億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「安心・快適」、そして「夢・感動」を届けることで、顧客の喜びを実現し、社会に貢献することを使命としています。すべてはお客様のためにという「お客様原点」を価値観の中心に据え、誠実さ、先見性・創造性、そして事業に携わる一人ひとりの尊重を大切にしています。

(2) 企業文化


同社は「お客様原点」「誠実」「先見性・創造性」「人の尊重」を価値観として掲げています。これらを守り使命を果たすための行動規範として、顧客の立場に立った最善の行動、法令遵守と社会的責任の自覚、仕事への責任と誇り、中長期的な視点、現状に満足しない姿勢、思いやりと相互尊重、活発なコミュニケーション、グループ全体の発展への協力を定めています。

(3) 経営計画・目標


同社は「未来のありたい姿」に向けた財務面での目標として、2030年度までに「ROE 8%の達成」を掲げています。また、サステナビリティに関する重要テーマごとに非財務目標も設定し、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


「長期経営構想」に基づき、「圧倒的No.1の沿線の実現」「コンテンツの魅力の最大化と新コンテンツの開拓」「エリアを超えた展開(首都圏・海外)」「ビジネスソリューションへの注力」の4つの方向性で経営資源を配分します。沿線での競争優位性を高めつつ、成長市場への投資を行い、グループ全体の有機的な成長を目指します。

* 2025年度事業利益:1,180億円
* 2025年度親会社株主に帰属する当期純利益:750億円
* 2025年度EBITDA:1,930億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を成長の源泉と位置づけ、多様かつ有能な人材を確保し、成長分野へ積極的に投入する方針です。従業員の処遇向上やロイヤリティ向上施策を実施し、人的資本への投資を継続します。また、「一人ひとりの活躍」を実現するため、働きがいの向上や労働環境の整備、健康経営、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 18.3年 9,000,236円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.9%
男性育児休業取得率 90.2%
男女賃金差異(全労働者) 73.8%
男女賃金差異(正規雇用) 73.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 131.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、当社主催人権研修受講率(97.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害等


地震や台風などの自然災害、大規模な事故、テロ行為等が発生した場合、顧客や営業施設への被害、事業活動の制限等により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。特に気候変動による災害の激甚化リスクが高まっており、同社は設備の維持更新や耐震補強、安全性を最優先にした体制整備等に取り組んでいます。

(2) 感染症の流行


感染症の流行により人々の往来が制限された場合、鉄道の旅客減少、商業施設の休館、イベントの中止、旅行の催行中止等、各事業で大きな影響を受ける可能性があります。同社は感染予防措置を講じつつ事業継続に努め、収益力の向上と安定した財務体質の確保を図ることで対応します。

(3) 情報管理


各事業で情報システムを利用しており、事故、サイバー攻撃等により機能停止や情報漏えいが生じた場合、事業運営への支障や損害賠償、社会的信用の失墜等の影響を受ける可能性があります。同社はセキュリティ対策の強化、「グループCSIRT」の整備、個人情報保護体制の構築等に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

阪急阪神ホールディングスの転職研究 2026年3月期2Q決算に見るキャリア機会

阪急阪神ホールディングスの2026年3月期2Q決算は、万博需要とタイガース優勝が追い風となり大幅な増収増益。ガバナンス刷新による権限委譲や海外不動産事業の急成長など、組織の変革も加速しています。「なぜ今阪急阪神HDなのか?」「転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのか」を最新実績から整理します。