京阪ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京阪ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の京阪ホールディングスは、京阪電気鉄道を中心とする運輸業に加え、不動産業、流通業、ホテル等のレジャー・サービス業を展開する企業グループです。直近の業績は、レジャー・サービス業や運輸業における需要回復、不動産業の販売好調などにより、増収増益となっています。


※本記事は、株式会社京阪ホールディングス の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京阪ホールディングスってどんな会社?


京阪電気鉄道を中核に、不動産、流通、ホテルなど多様な事業を展開し、沿線価値向上に取り組む企業グループです。

(1) 会社概要


1906年に京阪電気鉄道として設立され、1910年に鉄道営業を開始しました。1949年に改めて京阪電気鉄道が設立され、2016年に持株会社体制へ移行し、現商号である京阪ホールディングスに変更しました。2022年には東証の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は6,354人、単体では141人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は同じく株式会社日本カストディ銀行(信託口)、第3位は三井住友信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 14.36%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 4.13%
三井住友信託銀行株式会社 2.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役会長CEO取締役会議長は加藤好文氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤 好文 代表取締役会長CEO取締役会議長 1975年入社。2011年代表取締役社長CEO兼COO。2019年より現職。京阪電気鉄道、京阪建物代表取締役会長を兼任。
石丸 昌宏 代表取締役社長COO執行役員社長経営企画室長 1985年入社。2013年執行役員、2017年取締役常務執行役員を経て、2019年より現職。
上野 正哉 取締役専務執行役員 1982年入社。取締役常務執行役員等を経て2021年より現職。グループ管理室長などを担当。
平川 良浩 取締役専務執行役員 1986年入社。取締役常務執行役員を経て2023年より現職。経営企画室副室長として経営戦略を担当。
道本 能久 取締役常務執行役員 1988年入社。2021年より現職。経営企画室副室長としてまちづくり推進を担当。不動産業統括責任者。
松下 靖 取締役常務執行役員 1987年入社。京阪流通システムズ社長等を経て2023年より現職。経営企画室副室長等を担当。流通業統括責任者。
稲地 利彦 取締役監査等委員(常勤) 1982年入社。取締役専務執行役員等を経て2023年より現職。


社外取締役は、橋爪紳也(大阪公立大学特別教授)、ケン・チャン・チェン・ウェイ(ペイシャンスキャピタルグループ代表取締役)、山本竹彦(元ダイビル会長)、梅﨑壽(元東京地下鉄社長)、田原信之(公認会計士)、草尾光一(弁護士)、濱崎加奈子(有斐斎弘道館館長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「運輸業」「不動産業」「流通業」「レジャー・サービス業」および「その他の事業」を展開しています。

運輸業


鉄道事業およびバス事業を展開しており、京阪線や大津線などの鉄道ネットワークや、京阪バスなどのバスネットワークにより、地域社会の基盤となる移動サービスを提供しています。

旅客からの運賃収入が主な収益源です。運営は、鉄道事業では京阪電気鉄道、叡山電鉄、京福電気鉄道などが、バス事業では京阪バス、京都バスなどが主に行っています。

不動産業


沿線を中心とした不動産の販売(マンション分譲等)や賃貸(オフィスビル、商業施設等)、建設工事請負などを行っています。個人顧客への住宅販売や法人顧客へのオフィス賃貸が中心です。

不動産の販売代金や賃貸料、工事代金などが収益源です。運営は、京阪電鉄不動産、京阪建物、京阪アセットマネジメントなどが不動産事業を、京阪ビルテクノサービスなどが建設事業を行っています。

流通業


京阪沿線を中心に、百貨店、スーパーマーケット、ショッピングモールなどを展開し、地域住民や来訪者に商品やサービスを提供しています。

顧客からの商品販売代金やテナントからの賃貸料などが収益源です。運営は、京阪百貨店、京阪流通システムズ、京阪ザ・ストア、ビオ・マーケットなどが行っています。

レジャー・サービス業


ホテル事業およびレジャー事業を展開しています。ビジネスホテルやリゾートホテルの運営、琵琶湖などでの観光船運航を行い、観光客やビジネス客にサービスを提供しています。

宿泊料、レストラン利用料、乗船料などが収益源です。運営は、ホテル京阪、京阪ホテルズ&リゾーツがホテル事業を、琵琶湖汽船などがレジャー事業を行っています。

その他の事業


クレジットカード事業や、「BIOSTYLE」を具現化する複合型商業施設「GOOD NATURE STATION」の運営などを行っています。

カード会員からの年会費や加盟店手数料、施設利用料などが収益源です。運営は、京阪カード、ビオスタイルなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上収益(営業収益)は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2021年3月期を底に回復傾向にあり、直近では3000億円台に達しています。利益面でも、2021年3月期は赤字となりましたが、その後は回復し、経常利益、当期純利益ともに増加基調を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 2,534億円 2,581億円 2,601億円 3,021億円 3,135億円
経常利益 2億円 165億円 205億円 331億円 409億円
利益率(%) 0.1% 6.4% 7.9% 11.0% 13.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -46億円 96億円 176億円 249億円 283億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、営業収益は増加し、営業利益も増益となりました。営業利益率は10%を超えており、収益性が向上しています。特に営業利益の伸びが顕著で、事業活動が順調に推移していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,021億円 3,135億円
営業利益 339億円 421億円
営業利益率(%) 11.2% 13.4%


販売費及び一般管理費のうち、経費が196億円(構成比39%)、人件費が146億円(同29%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに増収傾向にあります。特にレジャー・サービス業はインバウンド需要の取り込み等により大幅な増収増益となりました。運輸業も旅客需要の回復により増益です。不動産業は売上は微増ながら、開発案件の売却等により増益を確保しています。流通業もリニューアル効果等で増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
運輸業 890億円 914億円 92億円 123億円 13.5%
不動産業 1,389億円 1,391億円 202億円 223億円 16.1%
流通業 534億円 571億円 28億円 28億円 5.0%
レジャー・サービス業 350億円 400億円 33億円 49億円 12.3%
その他の事業 46億円 52億円 -8億円 1億円 1.3%
その他 -188億円 -191億円 -7億円 -4億円 -
連結(合計) 3,021億円 3,135億円 339億円 421億円 13.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金に加え、財務活動でも資金を調達し、それらを投資活動に積極的に振り向けている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 408億円 440億円
投資CF -269億円 -632億円
財務CF -79億円 102億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


京阪グループは、「人の暮らしに夢と希望と信頼のネットワークを築いて、快適な生活環境を創造し、社会に貢献します。」という経営理念を掲げています。地域社会、顧客、株主、社員を大切にし、法令遵守や環境保全に配慮しながら、鉄道事業を基幹としたライフステージネットワークを展開しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「BIOSTYLE」を京阪版SDGsとして経営の軸に据えています。これは、社会的価値と経済的価値を両輪で創造する取り組みであり、顧客第一主義のもと、常に新しいことに取り組み、自己改革を実現する姿勢を重視しています。安全安心を基盤としつつ、挑戦と変革を生む風土改革を推進しています。

(3) 経営計画・目標


2030年度を目標とした長期経営戦略および2025年度までの中期経営計画「BIOSTYLE~深化と挑戦~」を推進しています。持続可能な循環型社会の実現に向け、社会的価値と経済的価値の両立を目指しています。

* 2026年3月期 営業利益目標:446億円(予想)
* 2026年3月期 親会社株主に帰属する当期純利益目標:300億円(予想)
* 2026年3月期 EBITDA目標:696億円(予想)
* 2026年3月期 ROE目標:9.4%(予想)

(4) 成長戦略と重点施策


「沿線再耕」「体験価値共創」「地球環境保全」を主軸戦略として掲げています。駅周辺の都市開発やエリアマネジメントによる沿線価値向上、京都観光ゴールデンルートを中心とした観光コンテンツの共創、省エネ・創エネによる脱炭素化を推進しています。また、DXによる体験価値創出や経営管理の高度化、人財戦略による組織力強化にも取り組んでいます。

* 長期経営戦略(2031年3月期)営業利益目標:430億円以上
* 長期経営戦略(2031年3月期)親会社株主に帰属する当期純利益目標:300億円以上
* 長期経営戦略(2031年3月期)EBITDA目標:700億円以上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財戦略」を経営基盤強化の柱の一つとしています。多様な人材一人ひとりの能力を最大限引き出すとともに、挑戦と変革を生む風土改革を推進し、従業員が「BIOSTYLEなマインド」でいきいきと活躍できる環境整備を目指しています。自律的成長を促すマネジメントや、時間や場所に縛られない働き方の整備などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.2歳 20.6年 8,140,453円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.7%
男女賃金差異(正規雇用) 73.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 44.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性割合(41.8%)、運動習慣の定着率(67.2%)、年次有給休暇取得率(85.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外部経営環境に関わるリスク


感染症の流行や自然災害、気候変動などが事業に影響を与える可能性があります。また、原油価格や資材価格の高騰は鉄道・バス・ホテル等のコスト増要因となります。競合他社の参入や少子高齢化による沿線人口減少も、運輸業や流通業などの収益に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、BCPの策定や省エネ対策、沿線価値向上による居住・誘客促進に取り組んでいます。

(2) 財政状態


有利子負債の残高が一定規模あり、金利変動の影響を受ける可能性があります。また、退職給付債務については、割引率等の前提条件の変化や年金資産の運用状況により、将来の費用負担が増減するリスクがあります。さらに、保有資産の時価下落や企業買収後の業績推移によっては、減損損失が発生し、経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) コンプライアンス・事故等


公共交通機関としての大規模事故や、個人情報漏洩などの不祥事は、社会的信用の失墜や損害賠償請求につながる可能性があります。また、鉄道事業法などの法的規制の変更や、食品の安全・表示に関する問題などもリスク要因です。これらに対し、コンプライアンス教育の徹底や安全管理体制の強化、情報セキュリティ対策などを推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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