※本記事は、株式会社NANKAIの有価証券報告書(第109期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NANKAIってどんな会社?
関西エリアを中心に、交通ネットワークと生活密着型サービスを提供するインフラ企業です。
■(1) 会社概要
1885年に阪堺鉄道として創業し、その後南海鉄道への事業譲渡や高野山電気鉄道の設立を経て現在の事業基盤を形成しました。2008年に東証一部(現プライム)へ上場しています。2025年には泉北高速鉄道と合併し、2026年4月に鉄道事業を分社化のうえ現在のNANKAIへと社名を変更しました。
同社グループは、連結従業員数9,408名、単体従業員数3,000名の体制で事業を推進しています。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は日本カストディ銀行となっており、上位の株主には信託業務を担う金融機関が名を連ねる安定した資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.56% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.66% |
| HSBC HONG KONG-TREASURY SERVICES A/C ASIAN EQUITIES DERIVATIVES | 2.27% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長は遠北光彦氏、代表取締役社長は岡嶋信行氏が務めており、社外取締役比率は53.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 遠北光彦 | 代表取締役会長兼CEO | 1978年同社入社。2013年取締役、2015年代表取締役兼CEO、取締役社長を経て2023年より現職。 |
| 岡嶋信行 | 代表取締役社長兼COO | 1989年同社入社。2021年上席執行役員、2023年社長兼COOを経て同年より現職。 |
| 芦辺直人 | 取締役 | 1984年同社入社。取締役、常務執行役員、専務執行役員、住之江興業社長を経て2026年より現職。 |
| 梶谷知志 | 取締役 | 1987年同社入社。常務執行役員、鉄道事業本部長、専務執行役員、南海電気鉄道社長を経て2017年より現職。 |
| 大塚貴裕 | 取締役 | 1992年同社入社。経理部長、常務執行役員、専務執行役員、事業戦略本部長等を経て2021年より現職。 |
社外取締役は、常陰均(元三井住友トラスト・ホールディングス取締役)、肥塚見春(元髙島屋代表取締役)、望月愛子(経営共創基盤取締役CFO)、堀直樹(元三菱UFJフィナンシャル・グループ常務執行役員)、國部毅(元三井住友フィナンシャルグループ取締役会長・指名委員長)、三木章平(元三井生命保険代表取締役副社長・監査等委員長)、田中崇公(中之島中央法律事務所パートナー)、林理恵(元日本放送協会専務理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運輸業」「不動産業」「流通業」「レジャー・サービス業」「建設業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 運輸業
鉄道、軌道、バス、フェリーなどの交通ネットワークを通じて、通勤・通学やインバウンドを中心とした旅客輸送サービスを提供しています。また、地域のインフラを支える貨物運送や車両の整備事業も手掛けています。
主に利用者からの運賃や定期券代が収益源となります。事業の運営は、鉄道事業を担う南海電気鉄道をはじめ、バス事業の南海バスや関西空港交通、フェリー事業の南海フェリーなど、同社グループの各子会社が行っています。
■(2) 不動産業
駅周辺などの沿線エリアを中心に、オフィスビルや商業施設、物流施設等の不動産賃貸事業を展開しています。さらに、戸建て住宅やマンションの分譲、収益不動産の販売といった不動産販売事業も手掛けています。
テナントからの賃貸料や、顧客への物件引き渡し時の販売代金が主な収益源です。事業の運営は同社が主体となって行うほか、南海不動産などのグループ子会社も物件の販売や管理を担当しています。
■(3) 流通業
ショッピングセンターの経営や、駅構内を中心としたコンビニエンスストア、飲食・物販店の運営を行っています。生活に密着した店舗展開により、沿線住民や駅利用者の日常的な利便性向上に貢献しています。
テナントからの施設賃貸料や、店舗での商品販売代金が収益源となります。ショッピングセンターの運営は同社やパンジョが行い、駅ビジネス事業は南海商事がフランチャイズ展開などを通じて運営を担っています。
■(4) レジャー・サービス業
旅行商品の企画・販売、ホテルや旅館の運営、ボートレース施設の賃貸など、多様なレジャー事業を展開しています。加えて、オフィスビルや商業施設の清掃、警備といったビル管理メンテナンス事業や葬祭事業も行っています。
旅行者や宿泊客からの利用料、施設賃貸料、ビル管理の委託料が主な収益源です。南海国際旅行が旅行業を、中の島がホテル・旅館業を、南海ビルサービスがビル管理メンテナンス業をそれぞれ運営しています。
■(5) 建設業
民間住宅の建築工事や、学校や下水道整備などの公共工事を請け負っています。沿線内外のインフラ整備や建物の建設を通じて、地域社会の発展と安全な街づくりに寄与しています。
工事契約に基づき、顧客から受け取る工事請負代金が収益源となります。事業の運営は、グループ内で唯一の上場子会社である南海辰村建設や、電気通信工事を担う日電商会などの子会社が担当しています。
■(6) その他の事業
グループ内外に向けた経理業務や情報処理業務の代行サービスなどを提供しています。シェアードサービスの導入により、業務の効率化と専門性の向上を図り、グループ全体の経営基盤をサポートしています。
サービスの提供先から受け取る業務委託料が収益源となります。事業の運営は、経理業務代行を担う南海マネジメントサービスや、情報処理業務代行を行う南海システムソリューションズなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、新型コロナウイルスの影響を受けた時期から着実な回復を遂げています。特にインバウンド需要の増加や不動産事業の成長が寄与し、経常利益、当期利益ともに右肩上がりの増収増益トレンドを形成しており、安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2018億円 | 2213億円 | 2416億円 | 2608億円 | 2647億円 |
| 経常利益 | 99億円 | 190億円 | 293億円 | 356億円 | 378億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 8.6% | 12.1% | 13.6% | 14.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 146億円 | 239億円 | 225億円 | 251億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は緩やかに増加しており、売上総利益と営業利益も順調に拡大しています。各段階の利益率が向上していることからも、事業運営の効率化や収益性の高い不動産事業への注力が奏功し、強固な利益体質へと進化していることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2608億円 | 2647億円 |
| 売上総利益 | 426億円 | 490億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.3% | 18.5% |
| 営業利益 | 347億円 | 399億円 |
| 営業利益率(%) | 13.3% | 15.1% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が39億円(構成比43%)、経費が39億円(同43%)を占めています。
■(3) セグメント収益
運輸業は運賃の改定やインバウンド需要の取り込みにより増収増益となりました。不動産業は物流施設の竣工等で好調に推移し、レジャー・サービス業も事業の拡大により大幅な増益を達成しました。一方、建設業は完成工事高の減少により減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運輸業 | 1115億円 | 1160億円 | 133億円 | 149億円 | 12.8% |
| 不動産業 | 478億円 | 516億円 | 124億円 | 143億円 | 27.7% |
| 流通業 | 283億円 | 297億円 | 37億円 | 39億円 | 13.1% |
| レジャー・サービス業 | 321億円 | 369億円 | 34億円 | 47億円 | 12.7% |
| 建設業 | 408億円 | 304億円 | 25億円 | 29億円 | 9.5% |
| その他の事業 | 3億円 | 1億円 | 1億円 | 1億円 | 65.6% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -5億円 | -9億円 | -% |
| 連結(合計) | 2608億円 | 2647億円 | 347億円 | 399億円 | 15.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 438億円 | 475億円 |
| 投資CF | -393億円 | -568億円 |
| 財務CF | -5億円 | 60億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「地域を起点に人々と向き合い、『しあわせなくらし』を育み、広げ、未来へとつなげます」という社会的使命を掲げています。交通輸送サービスを基軸に生活に密着した事業を展開し、社会の信頼に応えることで企業価値の増大を目指しています。
■(2) 企業文化
経営規範として「安全・安心の徹底」「環境重視」「コンプライアンスの徹底」「顧客志向の追求」を定めています。すべての事業において安全を最優先し、地域社会やステークホルダーと共創・協働しながら持続可能な社会の実現に取り組む価値観を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「NANKAIグループ中期経営計画 2025-2027」において、2027年度の数値目標を設定しています。資本コストや株価を意識し、収益性と資本効率の向上を推進する経営を行っています。
* 営業利益:420億円以上
* 純有利子負債残高/EBITDA倍率:7倍台
* ROE:7%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
コア事業である不動産事業と公共交通事業への集中的な投資を最優先の戦略としています。不動産事業ではM&Aの手法も加え、大家業から総合不動産事業への飛躍的な拡大を図ります。公共交通事業では分社化による機動性向上と未来に向けた投資を実行し、事業の存続と成長に挑戦します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「NANKAIグループ人財戦略」を策定し、多様な専門性を持つ人財の確保・育成と、いきいきと健康に働ける環境づくりを推進しています。すべての社員が「NANKAI版イノベーション」に取り組むことで、事業創造や既存事業のバリューアップの実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.2歳 | 22.6年 | 6,665,128円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.3% |
| 男性育児休業取得率 | 93.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 73.6% |
また、同社は「人的資本、多様性に関する取組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用の管理職比率(11.2%)、イノベーションスキル習熟度目標水準到達者(24.3%)、年次有給休暇取得率(93.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢と人口動態の変動
少子高齢化や沿線地域の人口減少、インバウンドをはじめとする空港利用者の動向により、運輸業の旅客数が減少するリスクがあります。また、国内外の景気動向や金利・為替の変動、資材や電力価格の高騰が各事業の売上やコストに悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合他社との競争激化
鉄道事業において一部の路線が他社と競合しているほか、自家用車等への輸送手段の移行が影響を及ぼす可能性があります。また、バス事業における新規路線の参入や、なんばエリアの大型商業施設に対する他エリアの施設との競争激化が、業績に影響を与えるリスクとなります。
■(3) 法的規制や法改正による影響
鉄道事業は鉄道事業法等の厳しい法的規制を受けており、違反により事業停止や許可取消を受けた場合には多大な影響が生じます。加えて、各事業が受けるさまざまな法令や規則が強化された場合、対応のための費用が増加し、財務状況を圧迫する可能性があります。



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