NANKAI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NANKAI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する南海電気鉄道は、鉄道等の運輸業を基軸に不動産、流通、建設業等を展開しています。2025年3月期の連結業績は、インバウンド需要の回復や運賃改定効果等により増収となり、営業利益・経常利益も増益となりましたが、当期純利益は前期の固定資産売却益の反動減等により減益となりました。


※本記事は、南海電気鉄道株式会社 の有価証券報告書(第108期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

なお、同社は現在、株式会社NANKAIに商号変更しています。

1. 南海電気鉄道ってどんな会社?


同社は、大阪・難波を拠点に和歌山や関西空港を結ぶ鉄道事業を核とし、沿線のまちづくりや流通、レジャー事業を総合的に展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1885年に難波・大和川間での運輸営業を開始したのが創業です。2007年には大規模商業施設「なんばパークス」が全館営業を開始しました。2015年に泉北高速鉄道を連結子会社化し、2025年4月には同社を吸収合併して「泉北線」として営業を開始するなど、沿線価値の向上とグループ再編を進めています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は9,247名(単体2,717名)です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様の日本カストディ銀行、第3位は大手生命保険会社の日本生命保険です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.70%
日本カストディ銀行(信託口) 5.25%
日本生命保険 2.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は岡嶋 信行氏が務めています。なお、取締役15名中8名が社外取締役であり、社外取締役比率は53.3%です。

氏名 役職 主な経歴
遠北 光彦 代表取締役会長(兼CEO) 1978年入社。取締役社長、社長を経て、2023年4月より現職。
岡嶋 信行 代表取締役社長(兼COO) 1989年入社。上席執行役員等を経て、2023年4月より現職。内部監査室担当。
芦辺 直人 代表取締役 1984年入社。常務取締役、常務執行役員、専務執行役員等を経て、2021年6月より現職。公共交通室長。
梶谷 知志 取締役 1987年入社。常務執行役員等を経て、2017年6月より現職。専務執行役員、鉄道事業本部長。
大塚 貴裕 取締役 1992年入社。執行役員、常務執行役員、CFO等を経て、2021年6月より現職。経営戦略室長、CEO補佐。
浦井 啓至 取締役監査等委員(常勤) 1986年入社。計画管理部長兼IT推進部長、執行役員、常任監査役等を経て、2021年6月より現職。
泰田 崇義 取締役監査等委員(常勤) 1988年日本開発銀行入行。日本政策投資銀行管理部長等を経て、2020年7月同社入社。2023年6月より現職。


社外取締役は、常陰 均(元三井住友信託銀行社長)、肥塚 見春(元髙島屋代表取締役)、望月 愛子(経営共創基盤共同経営者)、堀 直樹(三菱UFJ銀行取締役会長)、國部 毅(三井住友フィナンシャルグループ取締役会長)、三木 章平(元日本生命保険取締役)、井越 登茂子(元最高検察庁検事)、田中 崇公(中之島中央法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「運輸業」「不動産業」「流通業」「レジャー・サービス業」「建設業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 運輸業


鉄道事業、バス事業、海運業等を展開しています。鉄道では南海線や高野線などを運行し、関西国際空港へのアクセスも担います。バス事業では地域の足となる路線バスや空港リムジンバス等を運行しています。2025年4月に泉北高速鉄道を合併しました。

収益は、鉄道やバス、フェリー等の旅客・貨物運送に伴う運賃・料金収入が主となります。運営は同社のほか、阪堺電気軌道、南海バス、和歌山バス、南海フェリーなどのグループ会社が行っています。

(2) 不動産業


同社沿線のなんばエリアや泉北エリア等において、オフィスビルや商業施設の賃貸、マンション分譲等の不動産開発を行っています。なんばスカイオやなんばパークスなどの大型複合施設も保有・運営しています。

収益は、保有するオフィスビルや商業施設のテナントからの賃貸料収入、および分譲マンション等の不動産販売収入です。運営は主に同社が行い、一部業務を南海不動産などの子会社が担っています。

(3) 流通業


なんばCITY、なんばパークスといったショッピングセンターの経営や、駅ナカにおけるコンビニエンスストア、飲食店の運営を行っています。魅力的なテナント誘致やリニューアルにより、集客力の向上を図っています。

収益は、ショッピングセンターのテナントからの賃貸料収入や、駅ナカ店舗での商品販売収入等です。運営は同社のほか、パンジョ、南海商事などのグループ会社が行っています。

(4) レジャー・サービス業


旅行業、ビル管理メンテナンス業、ボートレース施設賃貸業、ホテル・旅館業、葬祭事業などを幅広く展開しています。和歌山エリアでの観光事業強化やeスポーツ事業など、新たな分野にも取り組んでいます。

収益は、旅行商品の販売収入、ビルメンテナンスの受託料、ボートレース施設の賃貸料、ホテルの宿泊料など多岐にわたります。運営は南海国際旅行、南海ビルサービス、住之江興業などのグループ会社が行っています。

(5) 建設業


鉄道関連工事やマンション建設、公共工事などを請け負っています。グループ内の工事だけでなく、官公庁や民間からの受注も行い、大阪・関西万博関連工事なども手掛けています。

収益は、顧客から請け負った建設工事の完成工事代金です。運営は主に南海辰村建設などのグループ会社が行っています。

(6) その他の事業


情報処理業務の代行や経理業務の代行など、グループ各社の業務効率化を支援する事業等を行っています。

収益は、グループ会社等からの業務受託料です。運営は南海システムソリューションズ、南海マネジメントサービスなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期はコロナ禍の影響で最終赤字となりましたが、その後は回復基調にあります。売上収益は右肩上がりで推移しており、経常利益も大幅に改善しました。2025年3月期は増収増益(経常利益ベース)を達成していますが、当期純利益は前期の固定資産売却益の反動等により微減となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 1,908億円 2,018億円 2,213億円 2,416億円 2,608億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 19億円 99億円 190億円 293億円 356億円
利益率(%) 1.0% 4.9% 8.6% 12.1% 13.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -19億円 40億円 146億円 239億円 225億円

(2) 損益計算書


売上高は増加傾向にあり、売上総利益率も改善しています。営業利益も増加しており、本業の収益力が向上していることがわかります。営業利益率は2期間とも10%を超えており、安定した収益性を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,416億円 2,608億円
売上総利益 379億円 427億円
売上総利益率(%) 15.7% 16.4%
営業利益 308億円 347億円
営業利益率(%) 12.8% 13.3%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が38億円(構成比47%)、経費が34億円(同42%)を占めています。売上原価については、運輸業等営業費及び売上原価として計上されており、詳細は内訳として記載されています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。特に運輸業はインバウンド需要や運賃改定効果で大幅な増益となりました。建設業も万博関連工事等で好調でした。一方、不動産業は販売収入の反動減で減収減益となりましたが、依然として高い利益率を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
運輸業 1,006億円 1,115億円 81億円 133億円 11.9%
不動産業 519億円 478億円 147億円 124億円 25.8%
流通業 261億円 283億円 27億円 37億円 12.9%
レジャー・サービス業 296億円 321億円 34億円 33億円 10.4%
建設業 331億円 408億円 18億円 25億円 6.0%
その他の事業 2億円 3億円 2億円 1億円 32.8%
調整額 -億円 -億円 -1億円 -5億円 -%
連結(合計) 2,416億円 2,608億円 308億円 347億円 13.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

南海電気鉄道は、資金調達において市場環境や金利動向を考慮し、複数の金融機関とのコミットメントライン契約やキャッシュマネジメントシステムを導入しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費等により資金を獲得しました。一方、投資活動では、固定資産や投資有価証券の取得により資金を使用しました。財務活動では、長期借入金の返済と新規借入れ等により資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 622億円 438億円
投資CF -105億円 -393億円
財務CF -468億円 -48億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、鉄道事業をはじめとする交通輸送サービスを基軸に、不動産、流通、レジャー・サービス等の生活に密着した事業を幅広く展開し、社会の信頼に応え、その発展に貢献することを通じて、企業価値の増大をはかることを基本方針としています。普遍的なテーマとして「安全・安心の徹底」「環境重視」「コンプライアンスの徹底」「顧客志向の追求」を掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは、「沿線への誇りを礎に、関西にダイバーシティを築く事業家集団」という2050年の企業像の実現を目指しています。「南海版イノベーション」として、社員一人ひとりが現在の事業・業務を見つめ直し、社会や顧客が本当に望んでいることを捉えて実現していくことを重視しており、「事業創造」「既存事業のバリューアップ」「業務改革」に取り組む文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


「NANKAIグループ中期経営計画2025−2027」を策定し、2027年度の数値目標として以下を掲げています。
* 営業利益:360億円以上
* 純有利子負債残高/EBITDA倍率:7倍台
* ROE:7%程度

また、将来的には営業利益460億円以上、ROE8%以上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


人口減少などの課題に対し、不動産事業と公共交通事業の2つのコア事業へ集中的に投資を行います。不動産事業では「大家業から総合不動産事業への脱却」を図り、M&A等も含めた飛躍的な拡大を目指します。公共交通事業では、将来の人材不足を見据え、2026年4月に鉄道事業を分社化し、経営の機動性を高めるとともに、安全・安心を前提とした事業運営の高度化・最適化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「南海グループ人財戦略」を策定し、「多様な人財と多様な専門性の向上」「グループ共通の価値観浸透とスキル向上」をテーマに掲げています。人的資本経営を加速させ、多様な人材がいきいきと働ける環境を整備することで、全社員が「南海版イノベーション」に取り組む状態の実現を目指しています。また、経営人材と専門人材の確保・育成を強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.9歳 22.5年 6,501,554円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.4%
男性育児休業取得率 97.7%
男女賃金差異(全労働者) 76.9%
男女賃金差異(正規雇用) 79.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 59.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率[連結](6.4%)、新規採用者に占める女性比率[連結](22.6%)、年次有給休暇取得率[単体](94.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢等の変動


少子高齢化による沿線人口の減少や、国内外の景気・消費動向の変化が、運輸業の旅客数や不動産・流通業等の売上に影響を与える可能性があります。また、金利・為替の変動、原油価格や資材価格の高騰が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。保有不動産の地価下落や投資有価証券の株価下落による減損処理のリスクもあります。

(2) 競合の激化


鉄道事業における他社路線との競合や自家用車への移行、バス事業における新規参入や乗務員不足が業績に影響する可能性があります。また、主力拠点である「なんばエリア」の商業施設は、大阪市内の梅田や天王寺等の他エリアの大型商業施設と競合関係にあり、競争激化が収益に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 自然災害及び感染症等の影響


南海トラフ地震等の大規模地震や津波、台風等の風水害などの自然災害により、鉄道施設やビル等が被害を受けた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルスのような感染症の流行も、移動需要の減少等を通じて業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(4) 事故・システム障害等の発生


鉄道やバス等の輸送サービスにおいて事故や火災、重大インシデントが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により業績に多大な影響が出る可能性があります。また、システム障害による事業運営の支障もリスク要因となります。安全対策やシステム管理に努めていますが、予期せぬ事象が発生する可能性は否定できません。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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