※本記事は、株式会社サカイ引越センターの有価証券報告書(第49期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サカイ引越センターってどんな会社?
引越運送事業を中心に、電気工事やクリーンサービス、リユース事業など新生活を総合的に応援する事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1979年9月に貨物自動車取扱事業を目的にアーイ引越センターとして設立され、1990年10月にサカイ引越センターへと商号変更しました。2006年3月に東証二部へ上場し、2007年3月に東証一部、2022年4月にプライム市場へと移行しています。近年はリユース事業などの周辺事業の拡大を推進しています。
従業員数は連結6,989名、単体6,083名です。筆頭株主はアーイで、第2位および第3位には資産管理業務を行うファンドや創業家関係者が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アーイ | 35.68% |
| BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND(常任代理人 三菱UFJ銀行) | 5.69% |
| 田島通利 | 5.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は田島哲康氏が務めており、社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田島哲康 | 代表取締役社長 | 1991年4月同社入社。1993年6月取締役、2000年10月常務取締役、2008年6月取締役副社長などを経て、2011年6月より現職。 |
| 田島通利 | 専務取締役 | 1992年2月同社入社。1998年1月中部・東海ブロック長、2001年6月取締役、2007年7月常務取締役などを経て、2023年6月より現職。 |
| 山野幹夫 | 専務取締役 | 1995年4月同社入社。2003年5月総務部長、2003年6月取締役、2011年6月常務取締役などを経て、2023年6月より現職。 |
| 飯塚健一 | 取締役 | 1995年6月同社入社。2004年1月東関東C副ブロック長兼大宮北支社支社長、2005年6月東日本副本部長を経て、2005年6月より現職。 |
| 太田富美子 | 取締役(常勤監査等委員) | 1987年10月同社入社。2021年1月西日本副本部長、2022年1月執行役員、2022年4月ダイバーシティ推進室室長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、井﨑康孝(井﨑法律事務所開設)、田中計久(クリアウォーターOSAKA取締役)、長野智子(智聖法律会計事務所開設)、高橋正哉(高橋正哉公認会計士事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「引越事業」「電気工事事業」「クリーンサービス事業」「リユース事業」および「その他」事業を展開しています。
■引越事業
同社グループの中核であり、広く不特定多数の個人および法人を対象とした引越サービスや、それに付随する業務を提供しています。
顧客から引越運賃料金や付帯サービス対価を受け取る収益モデルです。運営はサカイ引越センターのほか、新世紀サービス、サカイパンダロジが担当しています。
■電気工事事業
引越に伴うエアコンなどの家電製品の移設工事や、家電製品の販売といったサービスを提供しています。
顧客からの工事請負代金や商品販売代金が主な収益源です。運営は主にエレコンおよびBlue Washが行っています。
■クリーンサービス事業
引越に伴うハウスクリーニングや建物の清掃、改装工事などの付加価値サービスを提供しています。
顧客からの清掃・工事代金が収益源となっています。運営はSDホールディングス、ダイカンサービス、ディ・アイ・ティー、クリーン・システムが担当しています。
■リユース事業
リユース品の買取および販売を行う店舗の経営を行っています。
環境に配慮したリユース品の販売代金が主な収益源です。運営はサカイ引越センターおよびジェイランドが担当しています。
■その他事業
報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸事業などを展開しています。
賃貸物件の入居者やテナントからの賃貸料が主な収益源です。運営はサカイ引越センター、クリーン・システム、新世紀サービスが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の過去5期間の業績推移を見ると、売上高は毎期増加を続けており、安定した増収基調を維持しています。経常利益についても堅調に推移しており、高い水準での利益を確保しています。利益率はおおむね10%〜11%台で安定推移し、底堅い収益力を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,039億円 | 1,096億円 | 1,169億円 | 1,210億円 | 1,247億円 |
| 経常利益 | 113億円 | 121億円 | 129億円 | 131億円 | 132億円 |
| 利益率(%) | 10.9% | 11.0% | 11.0% | 10.9% | 10.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 65億円 | 72億円 | 75億円 | 79億円 | 77億円 |
■(2) 損益計算書
同社の損益状況を見ると、当期は売上高が前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。一方で、従業員の待遇改善などに伴う販売費及び一般管理費の増加が影響し、営業利益は前期と比べてわずかに減少しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,210億円 | 1,247億円 |
| 売上総利益 | 465億円 | 471億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.4% | 37.7% |
| 営業利益 | 129億円 | 126億円 |
| 営業利益率(%) | 10.7% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が137億円(構成比40%)、販売手数料が37億円(同11%)、広告宣伝費が20億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の業績を見ると、主力の引越事業をはじめ、電気工事事業、クリーンサービス事業、リユース事業の全セグメントにおいて売上高が前期を上回る結果となりました。引越事業の好調が関連子会社の収益拡大を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 引越事業 | 1,034億円 | 1,054億円 |
| 電気工事事業 | 46億円 | 50億円 |
| クリーンサービス事業 | 55億円 | 58億円 |
| リユース事業 | 68億円 | 78億円 |
| その他 | 7億円 | 8億円 |
| 連結(合計) | 1,210億円 | 1,247億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 97億円 | 93億円 |
| 投資CF | -79億円 | -31億円 |
| 財務CF | -36億円 | -67億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営の基本方針として「CSRの追求」を掲げ、事業活動を進めています。「まごころこめておつきあい」をモットーに地域社会への貢献を第一に考えており、「新生活応援グループ」として、「よりよいサービスを提供し、社会に貢献する」という企業の社会的責任の実践を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、受付から引越作業に至るあらゆるシーンで品質の向上を追求する文化を持っています。全従業員参加による改善活動を通じた引越技術の向上や、ISO9001を中心とした関連法規・法令遵守を徹底しています。また、従業員の健康意識向上や柔軟な働き方を促進し、長期にわたり高い生産性を発揮できる環境整備を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、資本効率を高め収益性の高い事業展開を目指すという観点から、経営指標として自己資本利益率(ROE)を一定水準維持することを目標としています。
・自己資本利益率(ROE)8%を超える水準を維持
■(4) 成長戦略と重点施策
自社引越事業の成長を起点として、物販・電気工事・リユースを組み合わせた顧客価値の最大化を図ります。また、法人顧客のネットワークを活かした高付加価値サービス領域への展開や、非個人領域の拡大を推進します。あわせて、生産性向上の成果を従業員へ還元し、ITやAI導入を通じたオペレーションの効率化を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、すべての従業員が長期にわたり高い生産性を発揮できる環境の整備を通じて「人が集まる会社」の実現を目指しています。従業員一人ひとりが自律的に学び成長できるよう、各階層に応じたキャリア支援や多様な教育プログラムを提供するとともに、女性管理職の育成や外国人材、障がい者の雇用など、多様な人材の確保と活躍を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 34.5歳 | 8.4年 | 4,950,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | 84.9% |
| 労働者の男女の賃金差異(全労働者) | 83.3% |
| 労働者の男女の賃金差異(正規雇用労働者) | 72.2% |
| 労働者の男女の賃金差異(パート・有期労働者) | 166.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.7%)、リーダー層・マネジメント層女性比率(8.5%)、自律参加型教育プログラム参加人数(44名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業界に対する法的規制
引越事業においては「貨物自動車運送事業法」等の法的規制を受けており、法令の改正や新たな規制の導入により営業活動に制限が加わった場合、売上高の減少や対応費用の発生が生じる可能性があります。
■(2) 引越需要の変動
引越需要は季節や月末・週末に集中する傾向があり、需要の偏在が人員や車両の配置に悪影響を及ぼします。広告宣伝や法人営業を通じて需要の平準化を図っていますが、需要変動が業績に直接的な影響を与えるリスクがあります。
■(3) 労働力の確保と支社の開設
引越運送業務は労働集約型産業であり、少子高齢化を背景に若年層の人材確保が困難になる恐れがあります。有能な労働力が十分に確保できない場合、支社の開設や事業拡大に支障が生じ、業績に影響する可能性があります。
■(4) 重要な訴訟によるリスク
同社グループはコンプライアンスやガバナンス体制の構築に努めていますが、事業活動に関して訴訟等の対象となる可能性があり、その結果によっては業績や財務状況に影響を及ぼすリスクが存在します。



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