サカイ引越センター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サカイ引越センター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する引越業界のリーディングカンパニーです。主力の引越事業に加え、電気工事やクリーンサービス等の関連事業も展開しています。直近の業績は、売上高が1210億円(前期比3.6%増)、経常利益が131億円(同1.9%増)と増収増益で推移しており、堅調な成長を続けています。


※本記事は、サカイ引越センター の有価証券報告書(第48期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サカイ引越センターってどんな会社?


引越専業の運送事業者として国内トップクラスの実績を誇り、全国規模のネットワークと高品質なサービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社のルーツは1971年、新海商運の営業所として貨物自動車運送事業を開始したことに始まります。1979年にアーイ引越センターを設立し、本格的に引越事業へ参入しました。1990年には八洲運送を存続会社として合併し、現在の商号に変更しました。その後、順調に支社網を拡大し、2006年に東京証券取引所市場第二部に上場、翌2007年には同市場第一部へ指定替えを果たしました。近年では、電気工事やリユース事業などの周辺領域を担う子会社の設立やM&Aを推進しています。

同社グループは、連結従業員数6,961名(単体6,032名)の体制で事業を展開しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業家資産管理会社と思われるアーイ、第2位は信託銀行のファンド口、第3位は専務取締役の田島通利氏となっています。安定株主比率が高く、強固な経営基盤を有していることが特徴です。

氏名 持株比率
アーイ 35.66%
BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND (PRINCIPAL ALL SECTOR SUBPORTFOLIO)(常任代理人 三菱UFJ銀行) 6.06%
田島通利 5.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は田島哲康氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田島哲康 代表取締役社長 1991年入社。取締役、常務取締役、事業副本部長、九州ブロック部長などを歴任。2008年に取締役副社長となり、2011年6月より現職。
居倉義文 取締役副社長 1990年八洲運送(現同社)入社。中四国ブロック長、西日本副本部長、常務取締役、専務取締役を経て、2023年6月より現職。
田島通利 専務取締役 1992年入社。中部・東海ブロック長、中部東海本部長、常務取締役などを歴任し、2023年6月より現職。
山野幹夫 専務取締役 1995年入社。総務部長、取締役、常務取締役を経て、2023年6月より現職。
飯塚健一 取締役 1995年入社。東関東C副ブロック長兼大宮北支社長、東日本副本部長を経て、2005年6月より現職。
太田富美子 取締役(常勤監査等委員) 1987年入社。西日本副本部長、執行役員、ダイバーシティ推進室室長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、井﨑康孝(井﨑法律事務所代表)、田中計久(クリアウォーターOSAKA取締役)、長野智子(智聖法律会計事務所代表)、高橋正哉(新月有限責任監査法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「引越事業」「電気工事事業」「クリーンサービス事業」「リユース事業」および「その他」事業を展開しています。

引越事業

主力の引越運送サービスを提供しており、個人および法人顧客を対象としています。国内全域に展開する支社ネットワークを活用し、引越作業およびそれに付随する梱包などのサービスを行っています。
引越運賃および作業料を顧客から受け取るビジネスモデルです。運営は主にサカイ引越センターが行っていますが、関連業務として新世紀サービス(商品販売)、サカイパンダロジ(運送)なども担っています。

電気工事事業

引越に伴うエアコン等の家電製品の移設工事や販売、アンテナ工事などを提供しています。引越サービスの付加価値を高める役割を担っています。
工事代金および商品販売代金が主な収益源です。運営は主にエレコンおよびBlue Washが行っています。

クリーンサービス事業

ハウスクリーニングやオフィスの清掃、消毒サービスなどを提供しています。引越前後の清掃ニーズに対応するほか、定期清掃なども行っています。
清掃サービス料が収益源です。運営はSDホールディングス、ダイカンサービス、ディ・アイ・ティー、クリーン・システムなどが行っています。

リユース事業

リサイクルショップの運営や、引越時に発生する不用品の買取・販売を行っています。エコ需要の高まりに対応し、循環型社会への貢献を目指しています。
リユース品の販売収益が主な収入です。運営はジェイランド、キッズドリーム、サカイ引越サンターなどが行っています。

その他

不動産賃貸事業などを展開しています。保有資産の有効活用を図っています。
賃貸料収入が主な収益源です。運営はサカイ引越センター、クリーン・システム、新世紀サービスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、1000億円規模から1200億円台へと順調に成長しています。経常利益も110億円台から130億円台へと推移しており、高い収益性を維持しながら増益基調にあります。利益率も10%前後と安定しており、堅実な経営体質がうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1003億円 1039億円 1096億円 1169億円 1210億円
経常利益 117億円 113億円 121億円 129億円 131億円
利益率(%) 11.7% 10.9% 11.0% 11.0% 10.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 71億円 65億円 72億円 75億円 79億円

(2) 損益計算書


前期と当期を比較すると、売上高は増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約38%と高い水準を維持しており、営業利益率も10%台後半を確保しています。コスト管理と売上成長のバランスが取れており、安定した収益構造であることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1169億円 1210億円
売上総利益 449億円 465億円
売上総利益率(%) 38.4% 38.4%
営業利益 127億円 129億円
営業利益率(%) 10.9% 10.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が131億円(構成比39%)、販売手数料が37億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに売上高は増加傾向にあり、特にリユース事業は二桁成長を示しています。主力の引越事業は売上の大半を占め、利益面でもグループ全体を牽引しています。電気工事やクリーンサービスなどの周辺事業も黒字を確保しており、引越事業とのシナジー効果を発揮しながら収益に貢献しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
引越事業 1001億円 1034億円 113億円 115億円 11.1%
電気工事事業 46億円 46億円 7億円 7億円 14.2%
クリーンサービス事業 53億円 55億円 5億円 5億円 8.5%
リユース事業 62億円 68億円 0.2億円 0.9億円 1.3%
その他 7億円 7億円 5億円 6億円 83.1%
調整額 -37億円 -41億円 -1億円 -1億円 -
連結(合計) 1169億円 1210億円 129億円 131億円 10.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得たキャッシュを元手に、投資活動を行いつつ借入金の返済や配当支払いも実施する「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 96億円 97億円
投資CF -69億円 -79億円
財務CF -13億円 -36億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.4%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「CSRの追求」を経営の基本方針とし、その中でも「株主満足度の向上」を優先事項としています。高い成長力と収益力を備えた活力ある企業づくりを目指し、引越サービスの向上や技術開発による差別化を通じて、高品質なサービスと顧客満足の提供を掲げています。また、「地域社会から信頼される企業」となることを目指しています。

(2) 企業文化


創業以来、「まごころこめておつきあい」をモットーに、地域社会への貢献を第一に考える文化が根付いています。全従業員参加による改善活動を行い、関連法規の遵守や引越技術の向上に努める風土があります。また、「新生活応援グループ」として、「暮らしの中にもっと“SAKAI”を!」を合言葉に、顧客との接点を大切にする姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、資本効率を高め収益性の高い事業展開を目指す観点から、経営指標として自己資本利益率(ROE)に関する具体的な数値目標を掲げています。

* 自己資本利益率(ROE):8%を超える水準を維持すること

(4) 成長戦略と重点施策


「2024年問題」に伴う人手不足を課題と捉え、採用力強化や待遇改善、生産性向上に取り組む方針です。「価値の訴求」をキーワードに、「共創の経営」「人材活用」「生産性向上」「シェア拡大」「グループ戦略」の5つの指針を推進しています。特に関東エリアでのシェア拡大や、BtoB・BtoG領域への参入、周辺事業(電気工事、リユース、クリーンサービス)の強化、M&Aの検討を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の成長が企業価値向上に直結するとの考えのもと、従業員の働きがい向上を重視しています。多様性の確保や将来の人材獲得競争を見据え、外国人材の採用を開始するなど、新たな人材確保策を推進しています。また、研修・教育体制の構築、配置転換によるキャリア支援、事務職のリスキリングなど、生産性向上と人材育成の両面から組織力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.4歳 8.2年 4,861,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 80.1%
男女賃金差異(全労働者) 84.3%
男女賃金差異(正規雇用) 72.3%
男女賃金差異(非正規) 159.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.6%)、エンゲージメントスコア(BB)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界に対する法的規制

引越事業は「貨物自動車運送事業法」などの法的規制を受けています。法令遵守体制を整備していますが、法改正や新たな規制、環境規制の強化などにより営業活動に制限が生じた場合、売上減少や対応費用の発生により業績に影響を与える可能性があります。

(2) 引越需要の変動

引越需要は季節や月末・週末に集中する傾向があり、人員や車両配置の効率に影響します。広告宣伝や法人営業強化で需要平準化に努めていますが、需要変動が業績に影響を与える可能性があります。

(3) 労働力の確保と支社の開設

労働集約的な事業であるため、少子高齢化による若年層の減少に伴い、人材確保が困難になる恐れがあります。省力化や作業形態の見直しを進めていますが、必要な労働力を確保できない場合、支社開設や事業運営に支障をきたし、業績に影響する可能性があります。

(4) 重要な訴訟によるリスク

適正なコンプライアンス体制構築に努めていますが、事業活動に関して様々な形で訴訟等の対象となる可能性があります。その結果によっては、グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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