名古屋鉄道 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

名古屋鉄道 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、愛知県・岐阜県を基盤とする交通事業のほか、運送、不動産、レジャー・サービス等の多角的な事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、全セグメントでの増収に加え、営業利益や純利益も伸長し、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社名古屋鉄道 の有価証券報告書(第161期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 名古屋鉄道ってどんな会社?


中部圏を基盤に、鉄道・バス等の交通事業をはじめ、運送、不動産、レジャー、流通など幅広い生活関連サービスを展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1921年に名古屋鉄道(旧)として設立され、1935年に名岐鉄道と愛知電気鉄道が合併して現在の名古屋鉄道となりました。1949年に名古屋証券取引所、1954年に東京証券取引所に上場しています。交通事業を核に多角化を進め、2022年には東証プライム市場へ移行しました。直近では2024年に名鉄リテールホールディングスを設立し、流通事業の体制強化を図っています。

同グループの従業員数は連結で31,013名、単体で5,043名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行です。第3位には事業資金の融資等で関係の深い日本生命保険が名を連ねており、機関投資家や金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 13.10%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 3.73%
日本生命保険相互会社 2.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表者は代表取締役社長社長執行役員の髙﨑裕樹氏です。取締役会における社外取締役の比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
安 藤 隆 司 代表取締役会長 1978年入社。人事部長、不動産事業本部長、代表取締役社長などを歴任。2021年6月より現職。
髙 﨑 裕 樹 代表取締役社長社長執行役員 1983年入社。不動産事業本部長、専務取締役などを経て、2021年6月より現職。
鈴 木 清 美 代表取締役副社長執行役員地域活性化推進本部長 1983年入社。鉄道事業本部長、専務取締役などを経て、2020年6月より代表取締役副社長執行役員。2024年4月より現職。
坂 幡 公 治 取締役専務執行役員鉄道事業本部長 1985年運輸省(現 国土交通省)入省。近畿運輸局長を経て2018年入社。常務執行役員などを経て2024年6月より現職。
古 橋 幸 長 取締役常務執行役員 1989年入社。財務部長、グループ事業部長などを歴任。2022年6月より現職。
加 藤 悟 司 取締役常務執行役員 1991年入社。総務部長、人事部長などを歴任。2023年6月より現職。


社外取締役は、福島敦子(ヒューリック取締役)、内藤弘康(リンナイ代表取締役社長社長執行役員)、村上晃彦(豊田通商取締役会長)、高村江津子(日本郵便取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「交通事業」「運送事業」「不動産事業」「レジャー・サービス事業」「流通事業」「航空関連サービス事業」および「その他」事業を展開しています。

交通事業


鉄軌道事業、バス事業、タクシー事業を展開しており、地域の移動を支える公共交通ネットワークを提供しています。主な顧客は沿線住民や観光客などの利用者です。

収益は、鉄道・バス・タクシーの運賃収入が中心です。運営は、鉄軌道事業を同社や豊橋鉄道などが担い、バス事業は名鉄グループバスホールディングスや名鉄バス、岐阜乗合自動車などが、タクシー事業は名鉄タクシーホールディングスなどがそれぞれ行っています。

運送事業


トラックによる貨物輸送事業およびフェリーによる海運事業を展開しています。法人顧客の物流ニーズや一般顧客の貨物・旅客輸送ニーズに対応しています。

収益は、トラック輸送の運賃やフェリーの乗船料・航送運賃などから得ています。運営は、トラック事業を名鉄NX運輸や信州名鉄運輸などが、海運事業を太平洋フェリーが担当しています。

不動産事業


不動産の賃貸、分譲、管理業を展開しています。オフィスビルや商業施設の賃貸、マンション分譲、ビル管理サービスなどを個人・法人顧客向けに提供しています。

収益は、不動産の賃貸料、分譲マンションの販売代金、管理業務の受託料などです。運営は、不動産賃貸・分譲を同社や名鉄都市開発などが、不動産管理を名鉄ビルサービスなどが行っています。

レジャー・サービス事業


ホテル業、観光施設事業、旅行業、広告代理業を展開しています。国内外の観光客やビジネス客に対し、宿泊、観光、旅行商品、広告サービスを提供しています。

収益は、宿泊料、施設入場料、旅行代金、広告料などです。運営は、ホテル業を名鉄ホテルホールディングスなどが、観光施設を中央アルプス観光などが、旅行業を名鉄観光サービスが担っています。

流通事業


百貨店業および物品販売業を展開しています。百貨店での商品販売や駅売店・コンビニエンスストア等の運営を通じ、一般消費者に商品を提供しています。

収益は、顧客への商品販売代金です。運営は、百貨店業を名鉄百貨店が、その他物品販売を名鉄リテールホールディングスや名鉄生活創研などが行っています。

航空関連サービス事業


航空関連サービス事業を展開しており、ヘリコプター等の運航や航空機内食の調製・搭載などを行っています。主な顧客は官公庁や航空会社などです。

収益は、航空機の運航受託料や機内食の販売代金などから得ています。運営は、中日本航空や名古屋エアケータリングなどが行っています。

その他の事業


設備保守整備事業、情報処理業、建設業、保険代理業などを展開しています。鉄道設備の保守やシステム開発、建設工事、各種サービスを法人顧客中心に提供しています。

収益は、工事代金、システム開発・保守料、手数料収入などです。運営は、名鉄EIエンジニア、メイテツコム、矢作建設工業(持分法適用関連会社)などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上収益(営業収益)は一貫して増加傾向にあり、直近では6,907億円に達しています。利益面では、2021年3月期は赤字でしたが、翌期以降は黒字転換し、経常利益・当期利益ともに増加基調を維持しています。特に直近の当期利益は377億円となり、コロナ禍からの回復と成長が顕著です。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 4,816億円 4,909億円 5,515億円 6,011億円 6,907億円
経常利益 -81億円 131億円 264億円 375億円 477億円
利益率(%) -1.7% 2.7% 4.8% 6.2% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -288億円 94億円 189億円 244億円 377億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、営業収益は約900億円増加し、それに伴い営業利益も増加しています。売上総利益についての記載はありませんが、営業利益率は5.8%から6.1%へと改善しており、収益性の向上が見られます。増収効果がコスト増加を吸収し、利益拡大につながっていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 6,011億円 6,907億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 348億円 421億円
営業利益率(%) 5.8% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が332億円(構成比53.2%)、賃借料が40億円(同6.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上を見ると、すべてのセグメントで前期を上回っています。特に運送事業や不動産事業の伸びが大きく、全体を牽引しています。交通事業やレジャー・サービス事業も堅調に推移しており、主力事業全体が回復・成長局面にあることがわかります。

なお、下表の各区分の売上高には、グループ会社間の内部取引が含まれています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
交通事業 1,466億円 1,598億円 130億円 196億円 12.3%
運送事業 1,383億円 1,802億円 18億円 -37億円 -2.1%
不動産事業 1,079億円 1,290億円 160億円 189億円 14.7%
レジャー・サービス事業 988億円 1,027億円 27億円 25億円 2.5%
流通事業 667億円 691億円 -27億円 -13億円 -1.9%
航空関連サービス事業 263億円 298億円 11億円 23億円 7.6%
その他の事業 564億円 680億円 33億円 46億円 6.8%
調整額 -398億円 -479億円 -4億円 -9億円 -
連結(合計) 6,011億円 6,907億円 348億円 421億円 6.1%

出典:有価証券報告書・決算説明資料

(4) キャッシュ・フローと財務指標

本業の稼ぎのカバレッジは57%にとどまり、不足する594億円は外部調達や手元現金で補填している「積極投資型(成長加速)」です。外部資金を活用して積極的な成長投資を加速しており、事業拡大フェーズにあります。成長の波に乗りながら実務経験を積みたいチャレンジ志向の人材にとって、魅力的な転職先となりうるフェーズです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 555億円 787億円
投資CF -684億円 -1,381億円
財務CF 180億円 559億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.9%で市場平均(24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」を使命として掲げています。この使命のもと、信頼の源泉となる「安全」を基盤とし、「驚き」から「感動」、そして「憧れ」につながるグループならではの価値を提供し続けることを経営ビジョンとして定めています。

(2) 企業文化


同社は、最優先事項である「安全」を確保し、顧客への「安心」の提供に努めることを重視しています。また、築き上げてきた信頼のトップブランドをさらに磨き上げるとともに、新しいことにも挑戦し、「名鉄、すごいね!」と思われるような価値を提供し続ける企業集団へと変革していく姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、「名鉄グループ中期経営計画」(2024年度~2026年度)を策定し、最終年度である2026年度に向けた数値目標を設定しています。本期間を「成長基盤構築・収益力強化期」と位置付け、持続的な成長に向けた基盤構築と収益力の強化を図ります。

* 営業利益:500億円
* ROE(純利益/自己資本):8%程度
* 純有利子負債/EBITDA倍率:6倍台

(4) 成長戦略と重点施策


「名鉄グループ中長期経営戦略」に基づき、リニア中央新幹線開業などを見据えた「名鉄名古屋駅地区再開発」を推進し、魅力ある地域づくりを進めます。また、公共交通を中心としたモビリティネットワークの実現や、構造改革による稼ぐ力の強化、経営資源の適切な配分による経営の強靭化に取り組みます。さらに、人的資本への投資を通じて人財の確保・育成を図ります。

* 2026年度営業利益目標:500億円
* 2026年度ROE目標:8%程度

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人財」を中長期経営戦略実現の源泉と位置付け、「人財力の基盤(人権・健康)」を確立した上で、「挑戦・創意工夫」「成長・能力発揮」「DE&I」の3要素を軸に「人財力の向上」を目指しています。多様な人材が能力を発揮し、ウェルビーイングを向上させることで企業価値を創出する好循環を生み出す方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.6歳 23.7年 6,335,018円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%
男性育児休業取得率 85.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.1%
男女賃金差異(正規雇用) 85.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇の取得率(96.6%)、高ストレス者率(7.6%)、中途管理職比率(34.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害・感染症のリスク


鉄軌道や不動産事業を展開する同グループは多数の設備を保有しており、巨大地震等の大規模災害が発生した場合、施設被害により経営成績に影響が出る可能性があります。また、新たな感染症の流行は、交通、レジャー、流通など幅広い事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 事故等のリスク


鉄軌道・バス・タクシー・トラック等の事業において、重大事故が発生した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、テロや火災による施設被害、流通・レジャー事業における商品品質や食品安全性に関わる問題が発生した場合も、信用失墜や減収につながる恐れがあります。

(3) 事業環境の変化に関するリスク


主要事業である交通・運送事業では電力や燃料を多用するため、原油価格や原材料費の高騰は経営を圧迫する要因となります。また、法的規制の変更、金利上昇による資金調達コストの増加、保有資産(不動産・株式)の価格下落、中部圏の経済情勢悪化なども、業績や財務状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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