名古屋鉄道 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

名古屋鉄道 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する名古屋鉄道は、鉄軌道やバスなどの交通事業を中心に、運送、不動産、レジャー・サービスなど幅広く事業を展開する企業です。直近の業績トレンドでは、営業収益が前期比で微増となった一方、営業利益および経常利益は減益となっています。


※本記事は、名古屋鉄道株式会社の有価証券報告書(第162期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 名古屋鉄道ってどんな会社?


交通事業や運送事業、不動産事業などを幅広く展開し、地域の生活基盤を支える企業です。

■(1) 会社概要


1921年に設立され、その後数々の鉄道会社や自動車会社を吸収合併・設立して事業を拡大してきました。1949年に名古屋証券取引所、1954年に東京証券取引所に上場を果たしています。近年では、2021年に名鉄ホテルホールディングス、2022年に名鉄グループバスホールディングスなどを設立し、グループ体制の強化を進めています。

同社グループの従業員数は連結で30,637人、単体で5,096人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位には個人の野村絢氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.18%
日本カストディ銀行(信託口) 2.35%
野村絢(常任代理人 三田証券) 1.82%

■(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長は髙﨑裕樹氏が務めています。取締役10名のうち、社外取締役が4名を占めています。

氏名 役職 主な経歴
髙﨑裕樹 代表取締役社長 社長執行役員 1983年入社。不動産事業本部副本部長、常務、専務、副社長執行役員を経て、2021年より現職。
安藤隆司 代表取締役会長 1978年入社。人事部長、常務、代表取締役社長 社長執行役員等を経て、2021年より現職。
鈴木清美 代表取締役 副社長執行役員 地域活性化推進本部長 1983年入社。鉄道事業本部長、専務などを経て、2020年より代表取締役 副社長執行役員。
坂野公治 取締役 専務執行役員 鉄道事業本部長 運輸省(現 国土交通省)入省。近畿運輸局長を経て、2018年入社。2024年より現職。
加藤悟司 取締役 専務執行役員 1991年入社。総務部長、人事部長、常務執行役員等を経て、2026年より現職。
松下明 取締役 1989年入社。グループ監査部長、常任監査役等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、内藤弘康(リンナイ代表取締役社長社長執行役員)、村上晃彦(豊田通商取締役会長)、高村江津子(日本郵便取締役)、奥村浩子(ほくほくフィナンシャルグループ取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「交通事業」「運送事業」「不動産事業」「レジャー・サービス事業」「流通事業」「航空関連サービス事業」および「その他の事業」を展開しています。

■交通事業


鉄軌道、乗合・貸切バス、タクシーによる旅客輸送サービスを提供しています。主に旅客から運賃を受け取ります。

運営は名古屋鉄道や豊橋鉄道のほか、名鉄バス、名鉄タクシーホールディングスなどの各グループ会社が行っています。

■運送事業


トラックによる貨物輸送やフェリーによる旅客・貨物輸送サービスを提供しています。顧客から運送料等を受け取ります。

運営は主に名鉄NX運輸、信州名鉄運輸などの運送各社や、太平洋フェリーが行っています。

■不動産事業


ビルやマンションなどの不動産分譲、賃貸、不動産の管理受託やコインパーキングの運営を行っています。不動産分譲代金や賃貸料、管理手数料を収益としています。

運営は名古屋鉄道や名鉄都市開発、名鉄協商などが行っています。

■レジャー・サービス事業


ホテルや観光施設の経営、旅行商品の販売などを行っています。宿泊客や旅行者からの利用料・代金等を収益としています。

運営は名鉄ホテルホールディングス、名鉄観光サービス、名鉄インプレスなどが行っています。

■流通事業


百貨店での販売、コンビニエンスストアや雑貨店などでの商品販売を行っています。顧客からの商品販売代金を収益としています。

運営は名鉄百貨店や名鉄生活創研などが行っています。

■航空関連サービス事業


飛行機・ヘリコプターを利用した調査測量事業や機内食の調製・提供を行っています。サービス対価を収益としています。

運営は中日本航空や名古屋エアケータリングなどが行っています。

■その他の事業


電気設備の企画・設計・施工や車両整備、情報システム開発・保守運用などの事業を展開しています。工事代金やシステム利用料等を収益としています。

運営は名鉄EIエンジニアやメイテツコムなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

■(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、経常利益および当期利益はコロナ禍からの回復により増加傾向にありましたが、当期は減益に転じています。収益力の強化と回復が今後の課題といえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益(または売上高) - - - - -
経常利益 131億円 264億円 375億円 477億円 384億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 47億円 73億円 132億円 207億円 316億円

■(2) 損益計算書


営業利益は前期の421億円から当期は362億円へと減少しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 421億円 362億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、人件費が326億円、賃借料が42億円を占めています。

■(3) セグメント収益


各セグメントの売上を見ると、交通事業やレジャー・サービス事業が増収となった一方で、不動産事業および運送事業は減収となりました。連結全体としては微増収を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
交通事業 1,569億円 1,753億円
運送事業 1,798億円 1,704億円
不動産事業 1,164億円 1,003億円
レジャー・サービス事業 1,021億円 1,062億円
流通事業 655億円 658億円
航空関連サービス事業 297億円 326億円
その他の事業 403億円 409億円
連結(合計) 6,907億円 6,916億円

■(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 787億円 614億円
投資CF -1,381億円 -1,509億円
財務CF 559億円 897億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

■(1) 経営理念


同社は「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」という使命を掲げています。また経営ビジョンとして、「信頼の源泉となる『安全』を基盤として、『驚き』から『感動』、そして『憧れ』につながる名鉄グループならではの価値を提供し続けます」と定めています。

■(2) 企業文化


最優先である「安全」を確保し、顧客に「安心」して利用してもらえるサービスや商品の提供に努めることを重視しています。築いてきた「信頼のトップブランド」をさらに磨き上げ、新しいことにも挑戦し価値を提供し続ける企業集団への変革を目指す文化があります。

■(3) 経営計画・目標


「名鉄グループ中期経営計画(2024年度〜2026年度)」において、2026年度の数値目標を定めて経営を行っています。

・営業利益 500億円
・ROE 8%程度
・純有利子負債/EBITDA倍率 6倍台

■(4) 成長戦略と重点施策


現在の中期経営計画期間を「成長基盤構築・収益力強化期」と位置づけ、収益力の早期回復・強化を図り、株主還元を強化していく方針です。重点テーマとして「魅力ある地域づくり・まちづくり」「公共交通を中心とするモビリティネットワークの実現」「稼ぐ力の強化・構造改革の推進」「攻守両立による経営の強靭化」「人的資本の充実」を掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

■(1) 人材戦略・方針


「人的資本の充実」を重点テーマの一つとして設定し、「あなたらしく、そしてその先へ」という人事ビジョンを掲げています。従業員が自身の個性を発揮し、やりがいを持って働ける環境を整え、積極的な人財投資を通じて価値を高めることで、グループ全体の成長と地域への還元を目指しています。

■(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.4歳 23.3年 6,614,236円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

■(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.7%
男性育児休業取得率 104.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 83.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 87.5%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 67.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途管理職比率(39.5%)、年次有給休暇の取得率(94.2%)、資格取得支援制度利用件数(80件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

■(1) 事業環境の変化に関するリスク


交通事業や運送事業で使用する電力や燃料などの価格高騰、法規制の強化などが収益に影響する可能性があります。また、継続的な設備投資のために資金調達を行っており、市場金利の上昇や地価の下落による評価損等が経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

■(2) 事故等のリスク


鉄軌道やバス、トラックなどの事業において、人為的なミスや不慮の事故等により重大な事故が発生した場合や、テロ等不法行為、火災によって施設や設備に被害が生じた場合、同社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

■(3) 事業遂行に関するリスク


事業運営に必要な人財の確保や育成ができない場合、事業運営に支障をきたすおそれがあります。また、保有する個人情報の漏洩や情報システムの故障・停止などが発生した場合、社会的信用の低下や対応費用の発生により、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

名古屋鉄道の転職研究 2026年3月期通期決算に見るキャリア機会

名古屋鉄道の2026年3月期通期決算は、交通事業の成長や新規連結の寄与による収益安定化が特徴です。「なぜ今名古屋鉄道なのか?」「転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのか」を整理します。


名古屋鉄道の転職研究 2026年3月期2Q決算に見るキャリア機会

名古屋鉄道の2026年3月期2Q決算は、営業収益3,356億円(前年比+0.3%)の微増収。運送事業の赤字化を受け5拠点の統廃合を断行する一方、リート事業への初参入など構造改革を急いでいます。「なぜ今名鉄なのか?」、変革期にある同社で転職希望者が担える役割とキャリア機会を整理します。