※本記事は、乾汽船株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
乾汽船グループは、外航海運事業、倉庫・運送事業、不動産事業を主軸に展開しています。物流と不動産という多角的な事業を通じて、社会インフラを支える役割を担っています。
単体従業員数は82名、連結従業員数は188名です。セグメントは外航海運事業、倉庫・運送事業、不動産事業の3つです。
主な国内グループ会社は、イヌイ運送(倉庫・運送事業)、イヌイ倉庫オペレーションズ(同)などです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
乾汽船は、外航海運、倉庫・運送、不動産といった多岐にわたる事業を展開しており、安定した事業基盤を持つ企業です。同社グループは「よくはこぶ」を長期ビジョンに掲げ、持続可能な社会への貢献と従業員の働きがいを重視する企業文化を育んでいます。社員一人ひとりが長く活躍できる環境づくりに力を入れていることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
乾汽船では、平均年齢が40代半ばであり、平均勤続年数も10年を超えています。このことから、社員が長期にわたってキャリアを築いている傾向が見られ、安定した環境で働くことができる企業文化がうかがえます。中堅層が活躍している職場環境であると考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 8,865,000円 |
| 平均勤続年数 | 14年2ヶ月 |
| 平均年齢 | 44歳9ヶ月 |
| 単体従業員数 | 82人 |
| 連結従業員数 | 188人 |
| 単体のグループ内比率 | 43.6% |
乾汽船は、確定給付型の退職給付制度(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる制度)を導入しています。この制度は、主に同社および一部の連結子会社を対象としています。
また、退職一時金制度も設けています。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
直近の退職給付債務は5.3億円、年金資産は3百万円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
乾汽船は、サステナビリティを重要な経営課題と認識し、その一環として人的資本に関する戦略を推進しています。同社グループは「Fun to Work」を掲げ、就労環境の差別をなくし、社員の「やりがい」を創出する環境整備に注力しています。
人材育成においては、一人ひとりの社員の成長が組織全体の競争力の源泉であると考え、教育研修体系の拡充を通じて自発的な能力開発を支援しています。年齢、性別、国籍等に関係なく、社員が能力を発揮し、生涯プレイヤーとして活躍できる組織づくりを目指しています。
社内環境整備では、65歳定年制を導入し、社員が健康で長く活躍できるよう健康保持・増進支援に力を入れています。また、適正な労働条件や快適な職場環境の整備に加え、出産・育児、介護を理由とした離職ゼロを目標に、安心して働き続けられる環境づくりに努めています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
連結子会社は法定開示の公表義務対象外のため、提出会社単体のデータを示します。男女賃金差異については、雇用する全ての労働者に係る実績のみを記載しており、雇用管理区分ごとの実績は省略されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 5.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異 | 63.9% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
乾汽船グループは、外航海運事業、倉庫・運送事業、不動産事業の3つの柱でビジネスを展開しています。それぞれの事業が異なる収益モデルを持ち、多角的な経営を行っていることが特徴です。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループの主力は外航海運事業であり、これに倉庫・運送事業と不動産事業が続きます。各事業は独立した収益源を持ち、グループ全体の安定に貢献しています。
外航海運事業
船舶の自社運航による貨物輸送や、用船者への船舶貸渡を行っています。収益は、市況の変動や為替の影響を受けつつも、新造船の稼働や運賃収入の増加によって得ています。運営は、DELICA SHIPPING S.A.が主に担当しています。
倉庫・運送事業
倉庫保管、文書保管、貨物運送といったロジスティクスサービスを提供しています。倉庫業の取扱高は安定しており、引越業の取扱高が増加したことで収益を伸ばしています。運営は、イヌイ倉庫オペレーションズ、イヌイ運送が行っています。
不動産事業
勝どきエリアを中心に、自社が所有する住宅や事務所の賃貸を行っています。プラザ勝どきの閉館により収益は減少しましたが、都心部の賃貸市況は堅調に推移しています。
同社グループは、外航海運事業において米ドル建ての収入があるため、為替変動による影響を受けやすい特性があります。そのため、為替変動による資金効率の悪化を抑えるため、円と米ドル双方の通貨を多く保有する財務政策をとっています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 外航海運事業 | 236億円 | 257億円 |
| 倉庫・運送事業 | 39.0億円 | 39.5億円 |
| 不動産事業 | 42.8億円 | 39.3億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの売上高は直近の連結会計年度で増加傾向にありますが、利益面では前期から大きく減少しています。特に親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な減益となりました。
この利益減少には、前期に計上された船舶売却益の剥落や、不動産事業における減損損失といった一時的な要因が影響しています。本業のキャッシュ創出力を示す営業活動によるキャッシュ・フローは資金を創出しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 376億円 | 443億円 | 295億円 | 318億円 | 336億円 |
| 経常利益 | 136億円 | 134億円 | 19.2億円 | 38.4億円 | 19.6億円 |
| 経常利益率 | 36.0% | 30.3% | 6.5% | 12.1% | 5.8% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 118億円 | 98.6億円 | 11.9億円 | 50.2億円 | 8.3億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 473.87 | 393.71 | 47.64 | 199.88 | 33.11 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高(連結)は前期から増加しており、事業規模の拡大がうかがえます。一方で、従業員1人あたり営業利益(連結)は前期から減少する結果となりました。
これは、売上高の増加に対して利益の伸びが追いついていない状況を示しています。利益減少には、外航海運事業の市況変動や減価償却費の増加、不動産事業の減損損失などが影響していると考えられます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 175.5百万円 | 178.9百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 20.2百万円 | 11.5百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
乾汽船は、本業で安定した資金を生み出しつつ、将来に向けた積極的な投資を行っている状況です。これにより、同社グループの事業の持続的な成長を目指していることがうかがえます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
乾汽船の財務基盤を見ると、自己資本比率は当期で47.5%となっており、プライム市場の製造業平均に近い水準を示しています。これは、同社グループの事業運営における安定性を示す指標の一つです。ROE(自己資本利益率)は当期2.2%で、前期の14.7%から減少しています。手元資金である現金及び預金は当期で192億円を確保しており、事業活動を支える十分な流動性があることがうかがえます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 369億円 | 374億円 |
| 自己資本比率 | 49.2% | 47.5% |
| ROE(自己資本利益率) | 14.7% | 2.2% |
| 現金及び預金 | 190億円 | 192億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
乾汽船のキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは当期で44.5億円のプラスとなりましたが、前期の80.0億円から減少しています。これは主に、税金等調整前当期純利益や減価償却費、利息の支払額、法人税等の支払額によるものです。投資活動によるキャッシュフローは、当期で△44.5億円の資金を使用しており、固定資産の取得や有価証券の取得による支出が主な要因となっています。財務活動によるキャッシュフローは、前期の11.8億円の資金獲得から一転し、当期は△5.8億円の資金を使用する状況となりました。これは長期借入による収入があった一方で、長期借入金の返済や配当金の支払額が影響しています。結果として、自由に使える資金を示すフリーキャッシュフローは、前期の35.8億円のプラスから当期は△1百万円のマイナスに転じています。同社グループは本業で資金を生み出しつつ、積極的な投資を行っている成長投資フェーズにあることがうかがえ、将来の事業拡大に向けた動きが見られます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 80.0億円 | 44.5億円 |
| 投資CF | △44.2億円 | △44.5億円 |
| 財務CF | 11.8億円 | △5.8億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 35.8億円 | △1百万円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループの外航海運事業は、世界経済の動向や政治的・社会的要因、ハンディサイズ船の市況に影響を受ける可能性があります。また、倉庫・運送事業では、ペーパーレス化による紙取扱量の減少や働き方改革による需要減少のリスクが想定されています。外航海運事業の売上高の大部分が米ドル建てであるため、為替レートの変動が業績に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループの倉庫・運送事業においては、社会課題となっている人材不足が事業環境に影響を与え続けるリスクがあるとしています。安全で働きがいのある労働環境づくりを推進し、事業基盤の安定を目指す方針が示されています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
乾汽船は、120年を超える歴史を持つ実業を通じて社会を支え、「よくはこぶ」という長期ビジョンを掲げています。働く喜びを大切にし、独自性を追求する企業文化を育んでいます。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
乾汽船グループは、海運業と倉庫業を祖業とし、人の営みに欠かせないモノを運ぶ実業の一端を担い、産業や社会を支えることを使命としています。同社グループは長期ビジョンとして「よくはこぶ」を掲げています。
経営の基本方針には、「資産の力を事業の力に」「Fun to Work」「『らしさ』の追求」の3つを定めています。商道徳の正義を重んじ、時代の変化に適応しながら実業を続ける術を備えている会社です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは「Fun to Work」を企業風土の基盤としています。これは「よくはこぶ」の実践における働く喜びの源であり、就労環境の差別をなくし、やりがいを創出する環境整備に注力する考え方です。
また、「らしさ」の追求を大切にしており、実業に向き合い、地道な努力を練り込みながら生まれる独自性を追求することを「元気の素」としています。
社員一人ひとりの成長が組織と会社の持続的な成長に繋がると考え、自発的な能力開発支援やキャリア形成を通じて、総員が生涯プレイヤーとして活躍できる組織づくりを目指しています。65歳定年制を導入し、健康保持・増進支援に力を入れるとともに、出産・育児、介護を理由とした離職ゼロを目標に、安心して働き続けられる環境整備に努めています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、長期ビジョン「よくはこぶ」の実現を通じて持続可能性(サステナビリティ)を高める取り組みを重要な経営課題として認識しています。
外航海運事業では、乗組員のマネジメント体制を整備し、「よくはこぶ」力の強化に取り組んでいます。
倉庫・運送事業では、「Fun to Workを基盤にした現場力の錬磨」や「デジタルツールを活用した営業活動強化」を「Basic」として進化を図っています。また、独自の物流モデル「NPPL」の構築や、新しい求車求荷の仕組み“Flying Module”の始動・拡散により、新たな事業領域の開拓を進めています。
サステナビリティ関連のリスク及び機会は、リスク・コンプライアンス委員会で管理され、全社的なリスク管理体制に統合されています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
乾汽船は、監査役制度を採用しており、取締役会の監督機能の強化に努めています。取締役6名のうち3分の2にあたる4名を社外取締役として選任し、経営の健全性、透明性、効率性を高める体制を構築しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
乾汽船の株主構成は、機関投資家や事業会社など多様な主体に支えられています。特定の株主が過半数を占める状況ではなく、幅広い投資家によって株式が保有されていることが特徴です。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.61% |
| US BANK NATIONAL ASSOCIATION JP ACCTS TS(常任代理人:三菱UFJ銀行) | 7.50% |
| 松岡冷蔵 | 3.82% |
| 東京海上日動火災保険 | 3.57% |
| 三井住友銀行 | 3.37% |
| LIM JAPAN EVENT MASTER FUND(常任代理人:立花証券) | 3.11% |
| LIM JAPAN EVENT MASTER FUND(常任代理人:みずほ銀行決済営業部) | 2.82% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人:インタラクティブ・ブローカーズ証券) | 2.70% |
| みずほ信託銀行(常任代理人:日本カストディ銀行) | 1.99% |
| 尾道造船 | 1.88% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
乾汽船の役員は10名(男性8名・女性2名)で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は乾康之氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 乾 康之 | 代表取締役社長 | 2004年4月同社入社。2008年12月同社代表取締役社長に就任。2016年4月同社代表取締役社長より現職。 |
| 乾 隆志 | 取締役 専務執行役員 倉庫・運送事業セグメント担当 | 2007年8月旧乾汽船株式会社入社。2014年10月同社取締役専務執行役員海運事業部門担当に就任。2023年10月同社取締役専務執行役員倉庫・運送事業セグメント担当より現職。 |
社外取締役は、神林伸光氏(元川崎重工業常務執行役員・指名・報酬委員会委員長)、村上章二氏(元郵船ロジスティクス代表取締役専務執行役員・指名・報酬委員会委員)、岩田研一氏(元三菱地所執行役専務)、幸村潮菜氏(株式会社ウィルミナ代表取締役社長)です。
乾汽船は監査役会設置会社であり、監査役制度を基礎とした企業統治体制を構築しています。取締役6名のうち4名が社外取締役であり、独立した立場からの監督機能の強化を図っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
乾汽船の役員報酬は、固定金銭報酬、業績連動金銭報酬、株式報酬(固定・業績連動)を組み合わせた体系です。社外取締役は固定金銭報酬と固定株式報酬、監査役は固定金銭報酬のみが支給されます。役員賞与や役員退職慰労金、使用人分給与は設けられていません。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 2名 | 1.6億円 | 81.5百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 7百万円 | 7.0百万円 |
| 社外役員 | 8名 | 63百万円 | 7.9百万円 |
なお、連結報酬等の総額が1億円以上の役員は存在しません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
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