日本トランスシティ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本トランスシティ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本トランスシティは、名古屋証券取引所(プレミア市場)および東京証券取引所(プライム市場)に上場する総合物流企業です。倉庫業を中核に港湾運送や国際複合輸送などを展開しています。直近の決算では、国際物流の取扱増や物流センターの稼働などが寄与し、売上高および各段階利益ともに前期を上回る増収増益となりました。


※本記事は、日本トランスシティ株式会社 の有価証券報告書(第111期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本トランスシティってどんな会社?


同社は、倉庫業を主体とした総合物流事業を展開する企業です。中部地区を基盤に、港湾運送や国際複合輸送など幅広い物流サービスをグローバルに提供しています。

(1) 会社概要


同社は1942年、四日市港運として設立され、1945年に旧四日市倉庫と合併しました。1949年に名古屋証券取引所、1961年には東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。1992年に現在の日本トランスシティへ社名変更し、近年では2023年に自動車部品専用の「三重朝日物流センター」を稼働させるなど、拠点の拡充を進めています。

同グループは連結従業員数2,472名、単体691名の体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は生命保険会社の明治安田生命保険、第3位はメガバンクの三菱UFJ銀行と、金融機関や機関投資家が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.86%
明治安田生命保険相互会社 6.40%
三菱UFJ銀行 4.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は安藤 仁氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
安藤 仁 代表取締役社長 社長執行役員 営業本部長兼管理本部長兼国際本部長 1981年同社入社。取締役、常務執行役員を経て、2019年6月より現職。
伊藤 豊久 取締役 専務執行役員 管理本部副本部長 1981年同社入社。総務部長、監査役、執行役員等を経て、2021年6月より現職。
小林 長 久 取締役 1966年同社入社。代表取締役社長、会長、相談役を経て、2021年6月より現職。
小川 謙 取締役 1971年同社入社。代表取締役社長、会長を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、豊田長康(元三重大学学長)、武内彦司(元四日市市副市長)、出口綾子(元オハイオ大学講師)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合物流事業」および「その他」事業を展開しています。

総合物流事業


当事業は同社グループの中核であり、倉庫業、港湾運送業、陸上運送業、国際複合輸送業などで構成されています。顧客から寄託された物品の保管、港湾での船積み・陸揚げ、トラックや鉄道による輸配送、輸出入貨物の一貫輸送など、サプライチェーン全体をカバーする物流サービスを提供しています。

収益は、顧客である荷主企業から受け取る保管料、荷役料、配送料、通関料、運送料などによって構成されています。運営は、日本トランスシティを中心に、四日市海運やトランスシティロジスティクス中部などの連結子会社が各機能を分担して行っています。

その他


物流以外の事業として、不動産業、建設業、損害保険代理店業、自動車整備業、ゴルフ場経営、情報システム開発、水素供給事業などを営んでいます。所有不動産の賃貸や、物流施設の建設・営繕、車両整備などが含まれます。

収益は、不動産賃貸料、ゴルフ場利用料、工事代金、システム開発・保守料などから得ています。運営は、ヨンソー開発(不動産・建設)、三鈴カントリー(ゴルフ場)、セントラル自動車整備(自動車整備)などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,000億円台前半から1,300億円台で推移しています。2023年3月期に過去最高水準の売上高を記録した後、翌期は一旦減少しましたが、直近期では再び増収に転じました。利益面では、経常利益率が5〜7%台で安定的に推移しており、底堅い収益力を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,012億円 1,168億円 1,341億円 1,226億円 1,248億円
経常利益 53億円 84億円 90億円 74億円 88億円
利益率(%) 5.2% 7.2% 6.7% 6.0% 7.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 41億円 42億円 31億円 45億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も改善しており、効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。販売費及び一般管理費は微増にとどまっており、コストコントロールが機能しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,226億円 1,248億円
売上総利益 135億円 151億円
売上総利益率(%) 11.0% 12.1%
営業利益 62億円 78億円
営業利益率(%) 5.1% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が32億円(構成比45%)、減価償却費が5億円(同6%)を占めています。売上原価では、作業諸費などの変動費や人件費が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力の総合物流事業は、国際複合輸送業の好調や倉庫の稼働安定などにより増収増益となりました。その他の事業も堅調に推移しています。全体として、物流需要の回復とコスト管理の徹底が業績向上に寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
総合物流事業 1,205億円 1,227億円 57億円 73億円 5.9%
その他の事業 20億円 21億円 7億円 6億円 28.0%
調整額 -30億円 -17億円 -1億円 -0億円 -
連結(合計) 1,226億円 1,248億円 62億円 78億円 6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本トランスシティは、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加し、資金状況が堅調に推移しました。営業活動では、税金等調整前当期純利益や減価償却費の増加により、前年同期比で大幅な収入増となりました。投資活動では、有形・無形固定資産の取得による支出がありましたが、前年同期比では支出が減少しました。財務活動では、借入金の返済等により資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 73億円 151億円
投資CF -180億円 -31億円
財務CF 122億円 -74億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、企業理念として「地域とともに生き、広く社会の発展に貢献する」を掲げています。顧客の物流部門の一翼を担う企業として、顧客に喜ばれるサービスを提供し続け、事業を通じて地域社会や経済の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


常に新しい領域への進出の可能性を求めるとともに、進出した地域の人々や社会と融和し、地域文化の発展に尽力する姿勢を重視しています。また、存在意義(パーパス)に基づき、地域社会との共生を大切にする文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画のスローガンとして『Grow with the Next Value』を掲げています。最終年度となる2025年度の数値目標として以下を設定しています。
* 売上高:1,300億円以上
* 経常利益:80億円以上(経常利益率6.0%以上の維持)
* ROE:6.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


収益基盤の拡充によるトップライン向上、グループ経営基盤の強化、ESG経営・サステナビリティの推進を基本方針としています。具体的には、自動車部品や医療・介護用食品等の取扱拡大、海外拠点の機能強化、物流DXの推進などに取り組んでいます。
* 関東エリアにおける自動車部品取扱専用センターの安定稼働
* 北海道石狩市の新物流センターおよび三重県木曽岬の危険品複合センターの稼働準備
* グローバル物流最適化のためのフォワーディングシステムの展開

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人財の尊重」を掲げ、社員をグループの財産と位置づけています。働き方改革や健康経営を推進するとともに、多様な人材が能力を最大限に発揮できるよう、職群制度の活用や職場環境の整備に取り組んでいます。また、人的資本経営を意識し、エンゲージメント向上やダイバーシティ推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.1歳 15.5年 7,031,414円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.3%
男性育児休業取得率 36.8%
男女賃金差異(全労働者) 51.7%
男女賃金差異(正規雇用) 52.1%
男女賃金差異(非正規) 52.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、GHG排出量(15,038tCO2)、年間有給取得日数(15.8日)、障がい者雇用(1.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営環境の変化


国内外の景気低迷による顧客企業の在庫調整や消費の落ち込み、輸出入の減少は、保管貨物量や輸配送量の減少に直結します。また、荷主からの物流合理化要請や競争激化による収支悪化も懸念されます。

(2) 規制・法令違反


倉庫業法や港湾運送事業法など、多岐にわたる法規制を受けて事業を行っています。法令違反による営業停止等の処分を受けた場合、社会的信用の失墜や損害賠償の発生により、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 安全衛生


物流事業の遂行上で重大な労働災害が発生した場合、従業員への補償や社会的信用の失墜を招く恐れがあります。また、伝染病の流行等により従業員の稼働が困難になった場合も、事業継続に支障をきたす可能性があります。

(4) 大規模災害


物流施設等の経営資源が中部、関東、関西地区に集中しているため、これらの地域で大規模な地震や災害が発生した場合、倉庫等の罹災により事業活動が困難となり、経営に多大な影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。