※本記事は、日本トランスシティ株式会社の有価証券報告書(第112期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本トランスシティってどんな会社?
同社は国内外に物流拠点を構え、倉庫・港湾・陸上・国際輸送を融合させた総合物流サービスを提供しています。
■(1) 会社概要
1942年に四日市港運として設立され、1949年に現社名の中核となる四日市倉庫へと改称し名証へ上場、1961年に東証第一部へ上場しました。1985年の米国現法設立を皮切りに海外展開を加速し、1992年に日本トランスシティへ社名変更しました。近年も大型物流センターの開設や拠点拡充を推進しています。
同社グループは連結従業員2,442名、単体700名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は保険会社、第3位はメガバンクとなっており、機関投資家や金融機関が上位を占める安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.62% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 6.47% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は安藤仁氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安藤 仁 | 代表取締役社長社長執行役員営業本部長兼管理本部長 | 1981年同社入社。常務執行役員、海外本部長などを経て2019年より現職。 |
| 青井 光大 | 代表取締役専務執行役員営業本部副本部長 | 1985年同社入社。秘書室長、SCM事業部長、運輸事業部長などを経て2025年より現職。 |
| 田中 克典 | 取締役常務執行役員管理本部副本部長 | 1987年同社入社。関連事業部長、秘書室長、関西支社長などを経て2025年より現職。 |
| 小川 謙 | 取締役 | 1971年同社入社。代表取締役社長、取締役会長などを経て2023年より現職。 |
社外取締役は、豊田長康(元鈴鹿医療科学大学学長)、武内彦司(元四日市市副市長)、出口綾子(元オハイオ大学日本語講師)です。
2. 事業内容
同社グループは、「総合物流事業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 総合物流事業
倉庫での物品保管や入出庫・物流加工に加え、港湾での船積・陸揚作業、トラックや鉄道による陸上運送、および航空・海上を用いた国際複合輸送を提供しています。多様な手段を組み合わせた一貫輸送体制を構築し、国内外の顧客のサプライチェーンを強力に支援しています。
収益源は、顧客から受け取る保管料、荷役料、配送料、通関料などです。事業運営は日本トランスシティが主体となり、港湾サービスを提供する四日市ポートサービスや四日市海運、トラック輸送を担う四倉運輸など、国内外の多数のグループ会社と連携して展開しています。
■(2) その他の事業
総合物流事業の基盤を活かし、不動産の賃貸、建設工事、損害保険の代理店業務、車両の点検・整備、およびゴルフ場の経営や水素供給事業など、多角的なサービスを提供しています。地域社会に密着した幅広い事業展開を行っています。
収益源は、テナントからの不動産賃貸収入や、ゴルフ場利用者からのプレー代、車検・整備代金などです。事業運営は、建設・不動産管理を担うヨンソー開発、自動車整備を行うセントラル自動車整備、ゴルフ場を運営する三鈴カントリーなどの各子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は1,100億円台から1,300億円台で堅調に推移しています。経常利益率も6〜7%台を安定して維持しており、一時的な市況変動の影響を受けつつも、新規物流センターの稼働増や取扱貨物の底堅い需要により、盤石な利益水準を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,168億円 | 1,341億円 | 1,226億円 | 1,248億円 | 1,255億円 |
| 経常利益 | 84億円 | 90億円 | 74億円 | 88億円 | 95億円 |
| 利益率(%) | 7.2% | 6.7% | 6.0% | 7.1% | 7.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 41億円 | 42億円 | 31億円 | 45億円 | 54億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、港湾貨物の取扱増加や効率的なオペレーションによる生産性向上の結果、売上総利益・営業利益ともに増加しました。営業利益率も6.8%に改善し、本業の収益力が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,248億円 | 1,255億円 |
| 売上総利益 | 151億円 | 158億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.1% | 12.6% |
| 営業利益 | 78億円 | 85億円 |
| 営業利益率(%) | 6.3% | 6.8% |
販売費及び一般管理費(72億円)のうち、報酬及び給料手当が31億円(構成比43%)、減価償却費が4.4億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の総合物流事業は、新規センターの稼働やトラック・鉄道輸送の取扱量増加が寄与し、堅調な売上を確保しています。その他の事業も自動車整備やゴルフ場の利用増に支えられ、全社の収益基盤を安定させています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 総合物流事業 | 1,227億円 | 1,234億円 |
| その他の事業 | 21億円 | 21億円 |
| 連結(合計) | 1,248億円 | 1,255億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で借入金の返済や設備投資を賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 151億円 | 93億円 |
| 投資CF | -31億円 | -62億円 |
| 財務CF | -74億円 | -60億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「地域とともに生き、広く社会の発展に貢献する」という企業理念を掲げています。新しい領域への進出の可能性を求めるとともに、事業を通じて進出した地域社会との融和を図り、お客さまの物流部門の一翼を担う企業として高品質なサービスを提供し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
行動規範において、「様々な人材育成手段や公正で適切な処遇方法の構築により、一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮できるよう相互に理解し合い、その多様な資質を尊重する」と定めています。また「安全は全てに優先する」という理念を基盤とし、安全衛生レベルの維持向上や心身の健康維持を重視する姿勢を徹底しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度を初年度とする中期経営計画において、スローガンに『基礎を鍛え、価値を磨き、そして前へ』を掲げています。サステナビリティ経営を推進しながら、中長期的な成長を通じた企業価値の向上を目指しています。
* 売上高:1,400億円
* 経常利益:110億円
* 経常利益率:7.0%以上の維持
■(4) 成長戦略と重点施策
経営基盤の強化や業態のベストミックスによる利益率の向上を重点施策に据えています。既存の4業態(倉庫・港湾・陸上・国際複合輸送)を横断的に展開し、特殊化学品や半導体関連といった高付加価値貨物の取扱拡大を図ります。また、拠点整備やシステム導入による省人化・省力化を進め、持続可能な物流体制の構築を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業基盤である「人」を最重要視し、従業員の自立と能力開発を促進するキャリアアップ支援や、働きがいのある職場作りを推進しています。多様性に応じた雇用形態の導入に加え、健康宣言のもとでの健康経営やワークライフバランスの支援を通じて、全社員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.6歳 | 15.7年 | 7,342,782円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.6% |
| 男性労働者の育児休業等取得率 | 67.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 54.1% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 55.4% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) | 44.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用(2.4%)、年間有給取得日数(16.5日)、健康診断受診率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営環境の変化によるリスク
総合物流事業は国内外の景気動向に影響を受けやすく、景気低迷による在庫調整や消費の落ち込みが貨物取扱量の減少を招く可能性があります。また、荷主からの物流合理化要請や同業他社との競争激化が収益を圧迫するリスクがあります。
■(2) 規制・法令違反リスク
各種業法に基づく厳しい法規制を受けており、法令違反により営業停止等の処分が課された場合、社会的信用の失墜や損害賠償が発生するリスクがあります。同社はコンプライアンス委員会を設置し、法令遵守の強化や社内教育に努めています。
■(3) 安全衛生に関するリスク
物流業務の遂行中に重大な労働災害が発生した場合、従業員への補償や社会的信用の低下を通じて経営に多大な影響を及ぼす可能性があります。これを未然に防ぐため、安全品質グループを通じた教育やパトロール、職場環境の改善を継続的に実施しています。
■(4) 大規模災害等リスク
倉庫等の物流施設が集中する地域で地震や火災などの大規模災害が発生し、稼働が困難になった場合、業績に重大な影響が生じるリスクがあります。対策として施設の耐震化や非常用電源の導入、事業継続に向けたスクラップ・アンド・ビルドを計画的に進めています。



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