中央倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中央倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する京都地盤の総合物流企業です。倉庫業を中核に、運送業、国際貨物事業を展開しています。直近の連結業績は、国内物流事業における取扱貨物量の増加や料金適正化、国際貨物事業の堅調な推移により、売上収益は前期比5.0%増、経常利益は9.1%増の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社中央倉庫 の有価証券報告書(第145期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中央倉庫ってどんな会社?


京都市中央卸売市場の開設に伴い創業された、倉庫業を基盤とする総合物流企業です。

(1) 会社概要


1927年に京都中央市場倉庫として創立し、1937年に現商号へ変更しました。1979年に通関業の許可を受け国際物流へ進出、1985年には大阪証券取引所市場第二部に上場しました。2013年には東京証券取引所市場第一部へ上場し、2023年には株式会社テスパックを子会社化するなど、事業基盤を拡大しています。

同グループの連結従業員数は696名、単体では253名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位・第3位には地元の金融機関である京都銀行と滋賀銀行が名を連ねており、地域経済との結びつきが強い資本構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口)(注)2 5.52%
京都銀行 4.59%
滋賀銀行 4.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長は木村正和氏、代表取締役社長執行役員は谷奥秀実氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
木村 正和 代表取締役会長 1980年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。2010年同社入社。常務取締役営業統括本部長等を経て、2017年代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。
谷奥 秀実 代表取締役社長執行役員 1983年同社入社。経営企画室長、国際貨物第2部長等を歴任。2022年代表取締役専務執行役員企画管理本部長を経て、2024年6月より現職。
田口 忠夫 取締役常務執行役員営業統括本部長 1980年同社入社。東京支店長、滋賀支店長、営業統括本部営業部長等を歴任。2021年4月常務執行役員に就任。2021年6月より現職。
吉田 宏二 取締役上席執行役員企画管理本部長 1993年同社入社。経理課長、管理部長、執行役員総務部長兼経営企画室長等を歴任。2024年6月より現職。


社外取締役は、安達義二郎(元平成ビルディング取締役社長)、吉松裕子(京都成蹊法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内物流事業」、「国際貨物事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

(1) 国内物流事業


倉庫業と運送業を営んでおり、倉庫業では貨物の保管、入出庫、トランクルーム、文書保管、流通加工などのサービスを提供しています。運送業では貨物利用運送事業および貨物自動車運送事業を行い、トラック輸送や鉄道輸送の手配を行っています。顧客は多岐にわたる業種の企業です。

収益は、顧客である荷主企業から受け取る保管料、荷役料、運送料などで構成されています。運営は主に中央倉庫が行っているほか、関係会社の中倉陸運、中央倉庫ワークス、ユーシーエスが運送や荷役作業、フィルム加工などを担当しています。

(2) 国際貨物事業


精密機械類の輸出梱包や強化三層ダンボール等の梱包資材販売を行う梱包業と、輸出入手続きの代行や国際複合一貫輸送を行う通関業を展開しています。顧客は輸出入を行うメーカーや商社などが中心です。

収益は、顧客から受け取る梱包料、資材販売代金、通関料、輸送手配料などです。運営は中央倉庫に加え、梱包作業や資材販売を行う株式会社テスパック、中国での物流業務を行う安田中倉国際貨運代理(上海)有限公司が担っています。

(3) 不動産賃貸事業


物流施設以外の不動産(建物および土地)の賃貸を行っています。

収益は、テナントからの賃貸料です。運営は中央倉庫が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期分の業績推移を見ると、売上収益は2022年3月期に一時減少したものの、その後は増加傾向にあり、2025年3月期には278億円に達しました。経常利益も概ね20億円台前半で推移しており、安定した利益水準を維持しています。当期純利益については、直近で若干の減少が見られますが、安定的に黒字を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 259億円 239億円 259億円 265億円 278億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 19億円 21億円 24億円 22億円 24億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 14億円 17億円 17億円 16億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期の265億円から278億円へと増加し、売上総利益も29億円から33億円へ増加しました。これに伴い、売上総利益率は11.1%から11.9%へ改善しています。営業利益も19億円から22億円へ増加し、営業利益率は7.3%から7.9%へと上昇しました。全体として増収増益の基調にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 265億円 278億円
売上総利益 29億円 33億円
売上総利益率(%) 11.1% 11.9%
営業利益 19億円 22億円
営業利益率(%) 7.3% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2億円(構成比22%)、役員報酬が1億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内物流事業は、取扱貨物量の増加や機工部門の取扱い増により増収増益となりました。国際貨物事業は、輸入取扱数量の増加や子会社テスパックの寄与により増収増益となりました。不動産賃貸事業は、一部契約終了により微減収となったものの、費用見直しにより微増益を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内物流事業 211億円 223億円 22億円 26億円 11.5%
国際貨物事業 50億円 52億円 5億円 5億円 9.6%
不動産賃貸事業 4億円 4億円 2億円 2億円 42.9%
連結(合計) 265億円 278億円 19億円 22億円 7.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 28億円 41億円
投資CF -13億円 -21億円
財務CF -12億円 -21億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは、倉庫業を中心とする総合物流業を経済活動に不可欠な公共性の高い事業と認識しています。事業を通じて顧客のために、また顧客とともに物流システムの合理化・効率化を進めることで、社会と経済の発展に貢献することを基本方針としています。安定的な経営基盤の拡充により、株主、顧客、従業員の満足度を高めることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「誠実」「進歩」「挑戦」を企業理念とし、「未来を預かる、未来を運ぶ」をコーポレートスローガンに掲げています。「NEXT CS-100」のCSには社名と「Challenge Spirit」の意味を込め、次の100年に向けて高い目標に果敢に挑戦する精神を重視しています。また、3つの「TRY!」(自身にTRY!、組織でTRY!、社会へTRY!)を掲げ、能動的な行動と挑戦する風土を推奨しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から2027年度を対象とする第8次中期経営計画「NEXT CS-100」を策定しています。第7次中期経営計画の実績としては、2024年度において以下の数値を達成しました。

* 売上収益:278億4000万円
* 営業利益:21億8900万円
* 経常利益:24億3300万円
* 営業利益率:7.9%
* ROIC(投下資本利益率):4.7%

(4) 成長戦略と重点施策


「NEXT CS-100」において、成長分野への挑戦や物流ネットワークの拡充を掲げています。具体的には、リサイクルペット樹脂等の循環型ビジネスの拡販、機工(輸送付随業務)分野の強化、愛知県あま市の新物流拠点建設などを進めます。また、取引先とのDX共同推進やM&Aによる経営基盤の拡大、基幹システムの刷新、資本コストを意識した経営とPBR改善に向けたIR活動の強化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な人材が能力を最大限発揮できる企業を目指し、人材の多様化とスキル向上に注力しています。性別に関わらない計画的な育成、OJTや階層別教育に加え、複線型人事制度を導入しています。また、ワークライフバランスを重視し、勤務地限定職員制度や時間単位有給休暇、在宅勤務などを整備し、働きやすい環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.2歳 15.8年 5,530,178円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.2%
男女賃金差異(正規雇用) 59.5%
男女賃金差異(非正規) 76.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント(92%)、新卒採用者の入社3年以内離職率(27.1%)、LED照明設備導入率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 営業基盤を取巻く環境のリスク


国内外の景気動向や顧客企業の物流合理化、主要取扱貨物の市場縮小などが、貨物取扱量の減少につながり、経営成績に影響を与える可能性があります。これに対し、多様な業種・品目の取り扱いによるリスク分散や、環境問題などの社会課題に対応した貨物構成への転換によりリスク低減を図っています。

(2) 情報システム及び情報管理のリスク


システム障害やサイバー攻撃による情報漏洩、または技術進歩への対応遅れによるシステムの陳腐化が、業務遂行の困難や信用失墜を招く可能性があります。これに対し、セキュリティ対策の強化、バックアップ体制の整備、基幹システムの刷新プロジェクトの推進、専門人材の確保などを進めています。

(3) 人材の確保と育成に関するリスク


労働力不足が深刻化する中で、高い技術を持つ人材やDX対応人材の確保・育成が困難になった場合、事業拡大や業務運営に支障をきたす可能性があります。これに対し、採用の強化、業務のデジタル化・省力化、職場環境の改善、人事制度改定による多様な人材の活躍推進などに取り組んでいます。

(4) 新規事業の立上げのリスク


新規事業への先行投資や契約上の問題、想定外の環境変化により、計画通りの収益が見込めず投資回収が遅れる可能性があります。これに対し、資本コストを意識した事業検証、社外専門家の活用、取締役会等での多面的な議論、必要に応じた保険付保などによりリスクコントロールを行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。