中央倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中央倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する中央倉庫は、倉庫業を中心とした国内物流事業、輸出梱包や通関を行う国際貨物事業、不動産賃貸事業を展開する総合物流企業です。直近の業績では、物流ネットワークの拡充や取扱量の増加などが寄与し、安定的な売上成長と増収増益のトレンドを維持して強固な事業基盤を確立しています。


※本記事は、株式会社中央倉庫の有価証券報告書(第146期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中央倉庫ってどんな会社?


国内物流や国際貨物の取扱い、不動産賃貸事業を展開する京都発祥の総合物流企業です。

(1) 会社概要


1927年に京都中央市場倉庫として設立され、1937年に中央倉庫へ社名変更しました。1970年に京都証券取引所に上場し、その後東証一部(現プライム市場)へ移行しています。トランクルームや国際梱包などサービスを継続的に拡充し、中国・上海への拠点開設などグローバルな物流ネットワークの構築も進めてきました。

同社グループは、連結従業員数707名、単体258名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は京都銀行で、第2位は滋賀銀行です。第3位には資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行が名を連ねており、主として金融機関が上位株主として安定した資本関係を構築しています。

氏名 持株比率
京都銀行 4.74%
滋賀銀行 4.57%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長は木村正和氏、代表取締役社長執行役員は谷奥秀実氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
木村正和 代表取締役会長 元三和銀行(現三菱UFJ銀行)信濃橋支社長。2010年に同社へ入社し、取締役や営業統括本部長、代表取締役社長を経て、2024年より現職。
谷奥秀実 代表取締役社長執行役員 1983年に同社へ入社。経営企画室長や国際貨物第2部長、営業統括本部長、企画管理本部長などの要職を歴任し、2024年より現職。
田口忠夫 取締役常務執行役員営業統括本部長 1980年に同社へ入社。東京支店長や滋賀支店長、営業統括本部営業部長などを経て、2021年より現職。
吉田宏二 取締役上席執行役員企画管理本部長 1993年に同社へ入社。総務課長や経理課長、管理部長、総務部長兼経営企画室長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、吉松裕子(京都成蹊法律事務所入所)、村本真甲夫(平成ビルディング社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内物流事業」「国際貨物事業」「不動産賃貸事業」を展開しています。

国内物流事業


同社の基幹事業として、顧客から貨物を預かる倉庫業と貨物の輸配送を行う運送業を展開しています。食料品向けの定温・定湿保管や外国貨物用の保税蔵置場の提供に加え、書類や家財を保管するトランクルームサービス、商品の流通加工など、多様な顧客ニーズに対応した総合的な物流サービスを提供しています。

主な収益源は、貨物の保管料や荷役料、および輸配送に伴う運送収入です。運営は同社のほか、子会社の中倉陸運や中央倉庫ワークスなどが担っており、グループ内の連携によって荷役作業から輸配送までの一貫した国内物流ネットワークを構築し、安定した収益基盤を形成しています。

国際貨物事業


精密機械類などの輸出梱包や梱包資材の販売を行う梱包業と、顧客に代わって輸出入手続き等を行う通関業を展開しています。強化ダンボール等の資材を活用した高品質な梱包サービスを提供するほか、国際複合一貫輸送事業の認可を受け、海外拠点と連携したグローバルな貨物輸送をサポートしています。

主な収益源は、輸出梱包作業に伴う梱包料や資材販売収入、および通関手続きの代行や国際輸送に伴う通関料です。運営は同社に加え、梱包作業や資材販売を担う子会社のテスパック、中国での国際貨物の運送代理などを手掛ける関連会社の安田中倉国際物流有限公司が共同で事業を推進しています。

不動産賃貸事業


同社が保有する倉庫などの物流施設以外の不動産を有効活用し、安定的な収益確保を目的とした賃貸事業を展開しています。具体的には、京都府内を中心とした所有地において、オフィスビルや宿泊施設などの建物および土地の賃貸サービスを幅広い顧客層に向けて提供しています。

収益源は、所有する不動産のテナントや契約者から毎月支払われる賃貸収入です。この事業は同社単独で運営を行っており、物流事業の業績変動リスクを補完しつつ、保有資産の有効活用による継続的なキャッシュ・フローの創出とグループ全体の収益安定化に大きく寄与しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績トレンドを見ると、売上高は着実な成長を続けており、安定した事業基盤を維持しています。経常利益も毎年20億円を超える水準で堅調に推移しており、当期利益に関しても増益基調を保ちながら高い利益水準を確保し、継続的な収益性の高さを証明しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 239億円 259億円 265億円 278億円 280億円
経常利益 21億円 24億円 22億円 24億円 24億円
利益率(%) 8.8% 9.3% 8.3% 8.6% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 17億円 16億円 16億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を見ると、売上高はわずかに増加したものの、売上総利益と営業利益はほぼ横ばいまたは微減で推移しています。これは、人件費の上昇やシステム投資に関連する費用の増加が利益率を押し下げたことが主な要因となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 278億円 280億円
売上総利益 33億円 33億円
売上総利益率(%) 11.9% 11.8%
営業利益 22億円 21億円
営業利益率(%) 7.9% 7.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.8億円(構成比22%)、業務委託費が1.4億円(同12%)、役員報酬が1.3億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上動向を見ると、主力の国内物流事業はほぼ横ばいで安定的に推移しています。一方、国際貨物事業は新規受注の獲得により売上が増加し、不動産賃貸事業も新規物件の賃貸開始によって微増となり、全体としての安定成長に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
国内物流事業 223億円 223億円
国際貨物事業 52億円 54億円
不動産賃貸事業 3.6億円 3.6億円
連結(合計) 278億円 280億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 41億円 30億円
投資CF -21億円 -20億円
財務CF -21億円 0.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「誠実・進歩・挑戦」という企業理念のもと、「未来を預かる、未来を運ぶ」をコーポレートスローガンに掲げています。総合物流を公共性の高い事業と位置づけ、あらゆる物資を高い品質で預かり運ぶことで、ステークホルダーの幸福と社会の持続的な発展に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


誠実さを全ての判断基準に置き、時代とともに進歩し挑戦し続ける文化を重視しています。また、100年近い歴史で培ったノウハウを活かし、卓越した専門性と実行力でお客様や社会に新しい価値を提供し続ける「中長期ビジョン」を共有し、多様な人材がやりがいを持って働ける組織風土の構築を目指しています。

(3) 経営計画・目標


第8次中期経営計画「NEXT CS-100」(2025年度〜2027年度)を策定し、最終年度において以下の目標を掲げています。

・営業収益:315億円
・営業利益:25億円
・経常利益:26.5億円
・営業利益率:7.9%
・ROE(自己資本利益率):5.0%

(4) 成長戦略と重点施策


成長分野への挑戦として化学品等の取引拡大や循環型ビジネスの強化を図り、愛知県での新倉庫建設による物流ネットワークの拡充を進めています。また、デジタルトランスフォーメーションの推進や物流基幹システムの刷新によって生産性を高め、キャッシュ・アロケーション方針の高度化により資本効率の改善に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を持続的成長の源泉と捉え、経営戦略と連動した人材戦略を推進しています。高度化する顧客ニーズに対応するため、中堅人材の研修充実や専門性の高い営業・企画人材の採用育成に注力するほか、勤務地限定制度の導入や多様な価値観を活かす組織づくりを進め、働きがいのある職場環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 15.9年 5,706,726円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.5%
男女賃金差異(正規雇用) 62.9%
男女賃金差異(パート・有期) 75.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、3年以内離職率(26.5%)、良好な回答率(81%)、運送車両の燃費向上(4.17km/L)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境のリスク


顧客企業の経営判断や景気動向の影響を受けやすく、新規事業の立ち上げに伴う先行投資負担が利益率を押し下げる可能性があります。また、関連法規の改正や地政学的リスクによる物流の遅延、金利変動による設備投資コストの増加なども業績に直接的な影響を及ぼすリスクとなります。

(2) 事業継続に関するリスク


自然災害や異常気象などにより物流施設や社会インフラが機能不全に陥った場合、通常の業務遂行が困難になります。さらに、慢性的な人手不足と少子高齢化の進行により、高い専門知識を持つ人材や情報システム要員の安定的確保が難しくなることも事業の継続に対する重大な懸念事項です。

(3) 情報システム及び情報管理のリスク


基幹業務システムの障害やサイバー攻撃によるデータの喪失、個人情報の漏洩が発生した場合、事業の停止や信用失墜に直結します。また、老朽化したシステムの刷新やデジタルトランスフォーメーションへの対応が遅れると、顧客ニーズを満たせず事業競争力を失うリスクが伴います。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。