東洋埠頭 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東洋埠頭 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する総合物流企業。倉庫業、港湾運送業を中心に、自動車運送業や国際物流事業も展開。2025年3月期の連結業績は、売上収益351億円、経常利益13.8億円と、運送費等のコスト増をこなして増収増益を達成しました。


#記事タイトル:東洋埠頭転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、東洋埠頭株式会社 の有価証券報告書(第114期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。


1. 東洋埠頭ってどんな会社?


同社は、1929年創業の倉庫・港湾運送を核とする総合物流企業です。国内の主要港湾に拠点を持ち、穀物やばら積み貨物の取扱いに強みを持つほか、ロシア・中国等への国際物流も展開しています。

(1) 会社概要


1929年に前身の日満倉庫が設立され、1940年に東洋埠頭商事として設立されました。1949年に東京証券取引所へ上場し、長きにわたり物流インフラを支えています。1993年には国際物流を強化するため東洋トランスを子会社化し、2003年にはモスクワに現地法人を設立するなど、海外展開も進めています。

連結従業員数は847名、提出会社(単体)は324名です。筆頭株主は生命保険会社の第一生命保険で、第2位は川崎港の物流企業である三井埠頭、第3位は太平洋セメントグループのデイ・シイとなっており、金融機関や関連事業会社が上位を占めています。

氏名 持株比率
第一生命保険 6.32%
三井埠頭 4.70%
株式会社デイ・シイ 4.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は原匡史氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
原 匡史 代表取締役社長 1985年入社。業務部長、港運部長等を歴任し、営業・国際部門を担当。2014年より現職。
西 修一 専務取締役川崎支店長 1986年入社。志布志支店長、港運部長を経て、2024年より現職。
鈴木 康司 常務取締役安全・品質管理部長総務部経理部情報管理部業務監査部広報部管掌 1982年入社。博多支店長、東扇島支店長、倉庫・運輸統括を経て、2024年より現職。
三上 慎治 常務取締役業務部長関西・中京地区統括青果営業部国際営業部経営企画部デジタル推進部通関部管掌 1987年入社。青果営業部長等を歴任し、2025年より現職。
冨永 超 取締役執行役員志布志支店長九州地区統括コンテナ事業推進部管掌 1990年入社。志布志支店長として実績を積み、2024年より現職。
山口 哲生 取締役(常勤監査等委員) 1981年入社。大阪支店長、九州地区統括を経て、2023年より現職。


社外取締役は、堀龍義(東光コンサルタンツ常務取締役)、南部雅実(第一生命保険常勤顧問)、山本博毅(原合同法律事務所パートナー)、鴇田英之(公認会計士)、杉本尚子(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内総合物流事業」および「国際物流事業」を展開しています。

国内総合物流事業


倉庫業、港湾運送業、自動車運送業、その他の業務で構成されています。倉庫業では普通倉庫やサイロ等での保管・荷役を行い、港湾運送業では大型機械を用いたばら貨物やコンテナの荷役を行います。自動車運送業では貨物自動車による輸配送を担い、その他として通関や施設賃貸等も行っています。

収益は、顧客からの保管料、荷役料、運送料、施設賃貸料等から得ています。運営は主に同社が行うほか、倉庫業務の一部を株式会社オーエスティ物流や鹿島東洋埠頭株式会社等が、自動車運送を東永運輸株式会社等が担当しています。

国際物流事業


国際輸送、倉庫、通関を主とする業務を行っています。ロシアや中国、カザフスタン等に拠点を持ち、国際複合一貫輸送サービスを提供しています。

収益は、顧客からの国際運送取扱料や倉庫保管料、通関手数料等から得ています。運営は、株式会社東洋トランス、OOO東洋トランス、OOOTB東洋トランス、上海青旅東洋物流有限公司等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2023年3月期にかけて売上高は増加傾向にありましたが、2024年3月期に一時減少しました。2025年3月期は再び増収に転じています。利益面では、2023年3月期まで経常利益が増加しましたが、2024年3月期に減益となり、直近の2025年3月期は回復傾向を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 342億円 361億円 381億円 347億円 351億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 13億円 18億円 18億円 12億円 14億円
利益率(%) 3.9% 4.9% 4.8% 3.3% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 11億円 13億円 10億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高は微増し、売上総利益および営業利益も増加しました。原価率は依然として高い水準にありますが、営業利益率は改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 347億円 351億円
売上総利益 34億円 35億円
売上総利益率(%) 9.8% 10.1%
営業利益 10億円 12億円
営業利益率(%) 2.8% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が15億円(構成比63%)を占めています。売上原価については内訳データがありません。

(3) セグメント収益


国内総合物流事業は、倉庫の保管残高減少等のマイナス要因があったものの、自動車運送や賃貸収入の増加により増収増益となりました。国際物流事業は、海上運賃の下落や貨物減少の影響を受けましたが、増収を確保した一方で営業利益は減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内総合物流事業 309億円 311億円 9億円 11億円 3.5%
国際物流事業 38億円 40億円 1億円 0億円 1.2%
連結(合計) 347億円 351億円 10億円 12億円 3.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 26億円 22億円
投資CF -11億円 -22億円
財務CF -18億円 23億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.6%で市場平均(スタンダード市場非製造業48.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、お得意さま・株主・地域社会・協力会社・従業員など、すべてのステークホルダーに対し、現在以上に価値ある企業・持続的に発展していく企業を目指すことを経営方針としています。

(2) 企業文化


社会全体のサステナビリティ確保への貢献を掲げ、環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みを重視しています。また、働きやすい職場環境の確立や、コンプライアンスの徹底、安全衛生管理の着実な実行を行動の指針としています。

(3) 経営計画・目標


2028年度の創業100周年に向けた長期ビジョンに基づき、2025年度を最終年度とする経営三カ年計画「Fly to the Next 2025」を推進しています。最終年度である2026年3月期の連結業績目標を以下のように定めています。

* 営業収益:400億円
* 営業利益:15億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:10億円

(4) 成長戦略と重点施策


新規業務の稼働や国際物流の拡大、DX推進による効率化を重点施策としています。具体的には、常陸那珂事業所での新倉庫建設やカザフスタンでの倉庫拡張を進めるほか、カーボンニュートラル社会に向けたCCS事業(CO2回収・貯留)への参画も検討しています。

* 総額180億円の関連投資

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の確保と育成を経営課題とし、多様な人材の採用やダイバーシティの促進に努めています。また、専門職の育成やグループ内人事交流、研修の充実を図るとともに、働きやすい職場環境の整備を通じて従業員の定着率向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 19.6年 7,591,736円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 82.7%
男女賃金差異(正規雇用) 83.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 20.9%


※男性育児休業取得率について、有価証券報告書において数値の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変動と競争激化


国内外の経済情勢や公的規制の変化、IT技術の進展による物流構造の変化が業績に影響を与える可能性があります。また、顧客の物流合理化に伴う競争の激化もリスク要因となります。同社は顧客ニーズに対応した物流提案や設備投資、IT導入により競争力強化を図っています。

(2) 物流施設の自然災害リスク


同社グループの事業基盤である物流施設は国内外に点在しており、地震や台風・豪雨等の大規模災害が発生した場合、甚大な被害を受ける可能性があります。気候変動による災害激甚化もリスクであり、計画的な施設の更新・補強やBCP(事業継続計画)の見直し、防災体制の強化を進めています。

(3) 海外事業と地政学リスク


ロシアやカザフスタン等で国際物流事業を展開しており、特にロシアによるウクライナ侵攻後の経済制裁等の情勢変化が現地法人の運営に支障をきたす可能性があります。現地の状況把握に努めていますが、今後の情勢によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) システム障害と情報セキュリティ


物流サービス提供や業務効率化のために情報システム網を構築していますが、災害やサイバー攻撃等によりシステム障害や情報漏洩が発生した場合、社会的信用の低下や業績への悪影響が懸念されます。セキュリティ対策や社内体制の整備に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。