※本記事は、東洋埠頭株式会社の有価証券報告書(第115期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東洋埠頭ってどんな会社?
物流事業を中心に、国内総合物流と国際物流を展開し、持続的な発展を目指す企業です。
■(1) 会社概要
1929年に前身である日満倉庫が設立され、1940年に大東園として設立後、東洋埠頭商事と改称しました。1947年に現在の東洋埠頭へ社名を変更し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。その後、川崎、東京、鹿島、志布志などに事業拠点を拡大し、2023年にはカザフスタンに現地法人を設立して国際物流網も強化しています。
従業員数は連結で848名、単体で331名です。筆頭株主は第一生命保険で、第2位は三井埠頭、第3位はデイ・シイとなっており、事業会社などが大株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 第一生命保険 | 5.71% |
| 三井埠頭 | 4.84% |
| デイ・シイ | 4.33% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は原匡史氏が務めており、社外取締役の比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 原 匡史 | 代表取締役社長 | 1985年同社入社。経営企画部長、業務部長、港運部長などを経て2014年より現職。 |
| 西 修一 | 専務取締役川崎支店長 | 1986年同社入社。志布志支店長を経て、2024年より現職。 |
| 三上 慎治 | 常務取締役業務部長関西・中京地区統括青果営業部国際営業部経営企画部デジタル推進部通関部管掌 | 1987年同社入社。青果営業部長などを歴任し、2025年より現職。 |
| 冨永 超 | 取締役執行役員志布志支店長九州地区統括コンテナ部管掌 | 1990年同社入社。志布志支店長などを経て、2026年より現職。 |
| 大野 武一 | 取締役執行役員管理本部長総務部経理部情報管理部業務監査部安全品質管理部広報部管掌 | 1989年第一生命保険入社。2009年に同社出向、2016年転籍。2026年より現職。 |
| 鈴木 康司 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年同社入社。博多支店長、東扇島支店長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、堀龍義(東光コンサルタンツ常務取締役)、南部雅実(第一生命保険常勤顧問)、山本博毅(原合同法律事務所パートナー)、鴇田英之(鴇田ビジネスパートナーズ代表取締役)、杉本尚子(杉本会計事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、国内総合物流事業および国際物流事業を展開しています。
■国内総合物流事業
倉庫業、港湾運送業、自動車運送業、および関連するその他の業務を提供しており、農産品や合成樹脂などの保管や、ばら積み貨物・コンテナの取扱などを展開しています。得意先企業などの顧客に対し、多種多様な貨物の特性に応じた最適な物流サービスを提供しています。
収益源は、顧客からの貨物の保管料や荷役作業料、運送料などです。運営は主に同社が行い、業務の一部をオーエスティ物流や鹿島東洋埠頭、東京東洋埠頭などの関連会社に委託して事業を展開しています。
■国際物流事業
ロシアやカザフスタン、中国などに拠点を有し、輸出入に伴う通関や納税などの法令手続きの処理をはじめ、陸海空を組み合わせた国際複合一貫輸送サービスを提供しています。
収益源は、顧客からの国際輸送にかかる運賃や通関手数料、倉庫での保管料などです。運営は主に東洋トランスやOOO東洋トランスなどの関連会社が担い、顧客のグローバルなサプライチェーン構築を支援しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績は、新規施設の本格稼働や農産品、合成樹脂などの取扱数量増加により、売上と利益ともに堅調に推移しています。経常利益は一時的に落ち込む時期もありましたが、直近では回復傾向にあります。継続的な成長に向けた積極的な投資や海外ネットワークの拡大が奏功しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | 351億円 | 381億円 |
| 経常利益 | 18億円 | 18億円 | 12億円 | 14億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | 4.0% | 5.0% |
| 当期利益 | 7億円 | 8億円 | 9億円 | 9億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および営業利益ともに増加傾向にあります。新規施設の稼働や中央アジア向け貨物の取扱い増加が増収増益に貢献し、堅実な事業運営が業績の安定を支えています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 351億円 | 381億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 12億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 3.4% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が16億円を占めています。事業活動における業務効率の改善やシステム化を進め、コスト管理と経営基盤の強化に取り組んでいます。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上動向を見ると、国内総合物流事業と国際物流事業のいずれも増収を達成しています。国内では倉庫業や港湾運送業における農産品やばら積み貨物の取扱いが増加し、国際では中央アジア向け輸送の伸びが収益拡大に寄与しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内総合物流事業 | 311億円 | 327億円 |
| 国際物流事業 | 40億円 | 54億円 |
| 連結(合計) | 351億円 | 381億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 22億円 | 33億円 |
| 投資CF | -22億円 | -35億円 |
| 財務CF | 23億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、お得意さま、株主、地域社会、協力会社、従業員などすべてのステークホルダーに対し、現在以上に価値ある企業、持続的に発展していく企業を目指すことを経営方針として掲げています。事業展開を通じて社会のサステナビリティ確保に貢献し、企業価値の向上を推進しています。
■(2) 企業文化
同社は「経営理念」を経営の拠りどころとし、日常の行動においては「行動の指針」を実践することで、健全な姿で持続的に発展していく会社を目指しています。また、コンプライアンスを最重要課題と位置づけ、リスク管理体制の強化や安全な職場環境の整備など、社会的責任を果たす企業風土を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2028年度を最終年度とする経営三カ年計画「Fly to the Next 2028」を策定し、継続的な成長と安定した利益の確保を目指しています。地政学リスクなどの変化に対応しつつ、事業基盤の強化を進めています。
・営業利益16億円
・営業利益+減価償却費(EBITDA)47億円
■(4) 成長戦略と重点施策
新たな収益の柱となる新規業務の稼働や、自社埠頭などを活かした独自性のある倉庫業務の深化を追求しています。また、海外拠点の拡充による国際物流網の拡大や、デジタル化による業務プロセスの改善を進めています。さらに、カーボンニュートラル社会に向けたCCS事業への参画など、環境に配慮した投資にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材こそがすべての企業活動の基本であると考え、人材の育成や成長を通じて持続的に発展していくことを目指しています。通年採用やダイバーシティの促進で多様な人材を確保し、体系的な研修プログラムで能力向上を図るとともに、給与制度の見直しや福利厚生の充実など、働きやすい職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.6歳 | 19.7年 | 7,936,247円 |
※平均年間給与は賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.9% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.4% |
| 男女賃金差異(正規社員) | 85.0% |
| 男女賃金差異(非正規社員) | 43.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合(志布志東洋埠頭5.6%)、男性労働者の育児休業取得率(志布志東洋埠頭25.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変動リスク
国内外の経済情勢や公的規制の変化、IT技術の進展に伴う物流の変化、顧客の物流合理化による競争の激化などが、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は顧客ニーズに対応した物流提案や、適時適切な設備投資の推進により経営基盤の強化を図っています。
■(2) 物流施設の災害被災リスク
同社グループは国内外に物流施設を有しており、大規模な地震や台風、豪雨などの自然災害が発生した場合、甚大な被害を受ける可能性があります。同社は老朽施設の更新や補強投資を計画的に行うとともに、事業継続計画(BCP)の策定や防災教育を徹底して緊急事態に備えています。
■(3) 海外事業展開に伴う地政学リスク
ロシアやカザフスタンなどを拠点とする国際物流事業において、経済制裁やウクライナ情勢などの地政学リスクの影響を受ける可能性があります。同社は現地の状況を常に把握できる体制を構築し、駐在員の安全確保に万全を期していますが、情勢次第では事業運営に支障をきたすリスクがあります。



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