※本記事は、福山通運株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 福山通運ってどんな会社?
貨物自動車運送事業を中核に、流通加工や国際物流、通関業務などを展開し、国内外で総合的な物流サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1948年に福山貨物運送として設立され、1950年に現社名へ改称しました。1970年に上場し、1972年には東証一部へ指定されました。近年では、2013年に専用貨物列車「福山レールエクスプレス号」、2017年にはダブル連結トラックの運行を開始するなど輸送効率化を推進しています。2024年より貸切事業を独立した報告セグメントとしています。
連結従業員数は22,469名、単体では10,988名です。筆頭株主は創業家に関連する公益財団法人で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。その他、大手生命保険会社や地方銀行、取引先持株会などが上位株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人渋谷育英会 | 14.04% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.19% |
| 日本生命保険相互会社 | 5.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長社長執行役員は小丸成洋氏です。社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小丸成洋 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1974年入社。常務、専務を経て1995年代表取締役、1997年取締役社長に就任。2011年より社長執行役員を兼務。 |
| 熊野弘幸 | 代表取締役副社長副社長執行役員営業本部長 | 2005年入社。取締役営業部長、常務を経て2010年代表取締役副社長・営業本部長に就任。2011年より副社長執行役員を兼務。 |
| 藤田眞司 | 取締役常務執行役員輸送統括担当兼安全統括室長 | 1981年入社。運行管理部次長、監査役室長、監査役、常務執行役員などを経て2022年より現職。 |
社外取締役は、前田美穂(元滋賀労働局長)、野中智子(弁護士)、冨村和光(弁護士)、重枝豊英(元在リトアニア共和国特命全権大使)、大本卓志(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運送事業」「貸切事業」「流通加工事業」「国際事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 運送事業
貨物自動車運送事業および貨物運送取扱事業を行っており、企業間物流における特別積合せ貨物運送などを提供しています。全国に展開する輸送ネットワークを活用し、顧客の荷物を配送しています。
収益は、荷主である顧客からの運賃収入が主な柱です。運営は、福山通運をはじめ、九州福山通運、東京福山通運、甲信越福山通運、ジェイロジスティクスなどの子会社や関連会社が連携して行っています。
■(2) 貸切事業
特定の顧客専用に車両を手配する貸切輸送サービスを提供しています。第6次中期経営計画より新たな収益の柱として位置づけられ、独立した事業部として創設されました。
収益は、貸切輸送契約に基づく運賃収入によって構成されています。運営は、運送事業と同一の会社である福山通運などが、既存のネットワークや資産、ノウハウを活用して行っています。
■(3) 流通加工事業(ロジスティクス事業)
顧客の荷物を保管する倉庫業務や、入出庫に伴う検品・梱包などの流通加工業務を提供しています。複合一貫輸送サービスの一環として、3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)事業を展開しています。
収益は、顧客からの保管料や荷役料、流通加工料などから得ています。運営は、福山通運や東京福山通運などの子会社、および関連会社の高崎貨物自動車などが行っています。
■(4) 国際事業
国際運送業、国際利用運送業、通関業を展開し、海外における輸送やフォワーディング業務を提供しています。ASEAN地域での営業強化などを進めています。
収益は、国際輸送運賃や通関手数料などから構成されています。運営は、福山通運のほか、海外子会社のFUKUYAMA TRANSPORTING (MALAYSIA) SDN.BHD.や福山通運グローバルなどの子会社が行っています。
■(5) その他事業
不動産の賃貸、物品販売、コンビニエンスストア運営、損害保険代理店、ボウリング場運営、旅行業、警備業、電気設備工事など多岐にわたる事業を行っています。
収益は、賃貸料、商品売上、手数料収入などが源泉となります。運営は、福山通運のほか、グリーンスタッフサービス、福山ロジスティクス、福山ツーリストなどのグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は3,000億円前後で推移しており、当期は3,000億円台に乗せました。利益面では、2023年3月期までは高い利益水準を維持していましたが、直近2期は利益率が低下傾向にあります。当期純利益は前期比で増加しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,855億円 | 2,913億円 | 2,934億円 | 2,876億円 | 3,025億円 |
| 経常利益 | 225億円 | 232億円 | 230億円 | 130億円 | 99億円 |
| 利益率(%) | 7.9% | 8.0% | 7.8% | 4.5% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 117億円 | 134億円 | 186億円 | 77億円 | 101億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。これはコストの上昇が利益を圧迫していることを示唆しています。特に営業利益率は低下しており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,876億円 | 3,025億円 |
| 売上総利益 | 193億円 | 169億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.7% | 5.6% |
| 営業利益 | 104億円 | 74億円 |
| 営業利益率(%) | 3.6% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が45億円(構成比46.6%)、その他が27億円(同27.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに売上高は前期比で増加しました。特に国際事業と貸切事業の伸びが目立ちます。運送事業は主力として全体の売上を牽引していますが、利益面ではコスト増の影響を受けています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 運送事業 | 2,249億円 | 2,345億円 |
| 貸切事業 | 240億円 | 262億円 |
| 流通加工事業 | 209億円 | 224億円 |
| 国際事業 | 107億円 | 119億円 |
| その他事業 | 71億円 | 75億円 |
| 連結(合計) | 2,876億円 | 3,025億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
* **積極型**(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 185億円 | 245億円 |
| 投資CF | -268億円 | -291億円 |
| 財務CF | -62億円 | 52億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、顧客とともに歩み、総合物流企業として文化の向上と豊かな生活の創造、地域経済の発展に貢献することを目指しています。たゆまぬ創意工夫で物流フロンティアを先駆し続けることを理念とし、変化する社会に対応したネットワーク構築や次代の物流創造を通じて、豊かで快適な社会づくりを牽引したいと考えています。
■(2) 企業文化
創業以来の企業文化である「質の高い安全・安心な物流サービスの提供」「従業員の確保・育成のための環境整備」「積極的な事業展開とコンプライアンスの徹底」「社会貢献と労使協調」を企業価値の源泉としています。これらを基盤に、ESG(環境・社会・ガバナンス)に従業員満足(ES)を加えた「ESG+ES」を基本方針として掲げています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度を初年度とする第6次中期経営計画「Change & Growth 2026」を策定しています。最終年度である2026年度には、以下の数値目標の達成を目指しています。
* 売上高:3,400億円
* 営業利益:180億円
* 営業利益率:5.3%
* ROE:6.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
運送事業では、運賃適正化や顧客拡大、他社との共同輸送強化による効率化を図り、持続的成長を目指します。貸切事業は新たな収益の柱として位置づけ、パートナー連携を強化します。流通加工事業は倉庫の新設やM&Aを推進し、国際事業は営業力強化とASEAN地域での展開を加速します。また、DXによる業務効率化や「ESG+ES」の推進にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な企業価値向上のため、人材の確保と育成を重視しています。採用ではリファラルやアルムナイ採用に加え、外国人技能実習生等の受け入れを推進しています。育成面ではeラーニングや研修を充実させ、多様な人材の適正配置に努めています。また、柔軟な労働時間制度やエンゲージメント調査を通じて職場環境を改善し、従業員満足度の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.3歳 | 15.3年 | 5,108,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | 22.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 87.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(集配者)(8.9%)、女性ドライバー数(247人)、シルバー人材活用数(142人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 貨物自動車運送業界の競争激化とコスト増加
同社グループが主力とする貨物自動車運送業界は、規制緩和による事業者数の増加や同業者間の激しい過当競争に晒されています。特に商業荷物の輸送は景気動向の影響を受けやすく、競争が厳しい状況です。輸送品質向上や労働力確保のための賃金改善、労働環境改善への投資が必要不可欠であり、これらに伴うコスト増加が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制および環境対応コストの増加
法令遵守を最優先課題としていますが、重大な車両事故等により法的規制が課される可能性があります。また、道路交通法の改正や排気ガス規制等の環境条例強化に伴い、車両等の設備投資コストが増加する可能性があります。これらの規制強化や対応コストの発生は、同社グループの業績に悪影響を与える要因となり得ます。
■(3) 燃料価格の変動による業績影響
同社グループは主として貨物自動車運送事業を営んでおり、事業運営において燃料費は主要なコスト要因です。原油価格の変動に伴う軽油等の燃料価格の上昇は、輸送コストを押し上げ、利益を圧迫する要因となります。燃料価格の高騰が継続した場合、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 深刻化する労働力不足と人材確保
貨物自動車運送事業において、ドライバーなどの労働力の確保は事業継続の要です。少子高齢化や労働人口の減少に伴い、将来にわたって労働力不足が懸念されています。人材確保が困難になった場合や、採用・定着のための人件費負担が増加した場合、事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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