※本記事は、福山通運株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 福山通運ってどんな会社?
福山通運は、全国ネットワークを活かした特別積合せ等の貨物運送を中心に総合物流サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1948年に設立され、貸切便事業からスタートしました。1970年に株式を上場し、全国に輸送網を構築しています。近年は環境負荷低減や労働力不足に対応するため、2013年に専用貨物列車の運行を、2017年にはダブル連結トラックの運行を開始するなど、次代の物流を創造し続けています。
同社の従業員数は連結で22,501名、単体で10,994名です。筆頭株主は教育支援等を行う公益財団法人渋谷育英会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は日本生命保険相互会社が名を連ねており、安定した資本基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人渋谷育英会 | 15.76% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.61% |
| 日本生命保険相互会社 | 5.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役会長は小丸成洋氏、代表取締役社長は熊野弘幸氏が務め、取締役8名のうち社外取締役が6名(75.0%)を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小丸成洋 | 代表取締役会長 | 1974年入社。代表取締役、取締役社長、社長執行役員等を経て2025年より現職。 |
| 熊野弘幸 | 代表取締役社長 社長執行役員 | 2005年入社。取締役営業部長、代表取締役副社長、副社長執行役員等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、前田美穂(元滋賀労働局長)、野中智子(弁護士)、冨村和光(元京都地方検察庁検事正)、重枝豊英(元在リトアニア共和国特命全権大使・指名報酬諮問委員長)、大本卓志(元広島国税局調査査察部長)、青木光男(レック代表取締役会長CEO兼社長COO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運送事業」「貸切事業」「流通加工事業」「国際事業」および「その他」事業を展開しています。
■運送事業
全国にネットワークを構築し、特別積合せなどの貨物運送や港湾運送を提供しています。重厚長大貨物や高付加価値貨物の取り扱いに強みを持ちます。
収益源は顧客からの貨物運送運賃や港湾運送収入です。運営は同社や東京福山通運、九州福山通運などの子会社が連携して行っています。
■貸切事業
運送事業の全国ネットワークやアセット、ノウハウを有効活用し、貸切貨物輸送サービスを提供しています。パートナー企業との連携で輸送枠を拡充しています。
収益源は荷主企業からの貸切輸送運賃です。運営は運送事業と同一の会社が行っており、同社が主体となって展開しています。
■流通加工事業(ロジスティクス事業)
倉庫機能を有する物流施設を活用し、保管業務や入出庫業務を請け負う3PL事業や流通加工業を提供しています。複合一貫輸送サービスによる利便性向上を図っています。
収益源は顧客企業からの倉庫保管料や流通加工などの業務受託料です。運営は同社および東京福山通運などの子会社が行っています。
■国際事業
ASEAN地域での海外拠点展開と国内の通関事業所を連携させ、国際運送業、国際利用運送業、および輸出入貨物の通関業を提供しています。
収益源は越境輸送運賃やフォワーディング手数料、通関手数料です。運営は同社や福山通運グローバル、および海外子会社が行っています。
■その他事業
不動産の賃貸、物品販売、コンビニエンスストア運営、損害保険代理、旅行業、労働者派遣、電気設備工事など、物流事業に付帯・関連する多様な事業を展開しています。
収益源は不動産の賃貸料や物品販売代金、各種業務委託料などです。運営は同社およびグリーンスタッフサービスなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が2,800億円台から3,100億円台へと拡大傾向にあります。経常利益は一時期減少したものの直近では増益に転じており、運賃の適正化や重厚長大貨物の取り込みといった収益改善施策が着実に成果を上げていることがうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2913億円 | 2934億円 | 2876億円 | 3025億円 | 3186億円 |
| 経常利益 | 232億円 | 230億円 | 130億円 | 99億円 | 115億円 |
| 利益率(%) | 8.0% | 7.8% | 4.5% | 3.3% | 3.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 134億円 | 186億円 | 77億円 | 101億円 | 111億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加え、輸送効率の改善と単価改定による収益性の向上が寄与し、売上総利益・営業利益ともに前期を上回る実績となりました。特に営業利益率は改善傾向にあり、コストコントロールと適正料金の収受が機能しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3025億円 | 3186億円 |
| 売上総利益 | 169億円 | 194億円 |
| 売上総利益率(%) | 5.6% | 6.1% |
| 営業利益 | 74億円 | 93億円 |
| 営業利益率(%) | 2.4% | 2.9% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が46億円(構成比46.1%)、租税公課が16億円(同15.9%)を占めています。売上原価においては、取扱手数料が773億円(構成比30.3%)、人件費が749億円(同29.4%)、傭車費が543億円(同21.3%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力の運送事業は、重厚長大貨物の増加と継続した単価改定により増収増益となりました。貸切事業や流通加工事業も新規顧客の開拓や適正料金の収受により好調に推移しています。国際事業は海外取扱件数の増加や買収効果により大幅な増収増益を達成しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運送事業 | 2345億円 | 2446億円 | 49億円 | 65億円 | 2.6% |
| 貸切事業 | 262億円 | 278億円 | 22億円 | 26億円 | 9.3% |
| 流通加工事業 | 224億円 | 237億円 | 33億円 | 38億円 | 16.1% |
| 国際事業 | 119億円 | 152億円 | 3億円 | 4億円 | 2.9% |
| その他事業 | 75億円 | 73億円 | 12億円 | 9億円 | 12.8% |
| 調整額 | -79億円 | -80億円 | -46億円 | -49億円 | - |
| 連結(合計) | 3025億円 | 3186億円 | 74億円 | 93億円 | 2.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金を設備投資に充てつつ、借入金の返済などにも回している健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 245億円 | 276億円 |
| 投資CF | -291億円 | -77億円 |
| 財務CF | 52億円 | -193億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「お客様とともに歩み、総合物流企業として文化の向上と豊かな生活の創造及び地域経済の発展に貢献すべく、たゆまぬ創意と工夫で物流フロンティアを先駆し続けること」を経営理念に掲げています。社会インフラである物流を支え、次代の物流を提案し続けることで、より豊かで快適な社会づくりを牽引することを目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来の企業文化として、「質の高い安全・安心な物流サービスの提供」「従業員の確保・育成のための環境整備」「積極的な事業展開とコンプライアンスの徹底」「社会貢献並びに従業員との信頼関係に基づく労使協調」を企業価値の源泉と位置づけています。これらを最大限に活用し、良き企業市民として社会的責任を果たしています。
■(3) 経営計画・目標
第6次中期経営計画「Change & Growth 2026」において、持続可能な成長と資本効率の向上を推進しています。重要な経営指標として売上高営業利益率およびROEを設定し、中長期的な目標の達成に向けて取り組んでいます。
* 2026年度目標:売上高3,400億円
* 2026年度目標:営業利益180億円
* 2026年度経過目標:営業利益率5.3%、ROE6.5%
* 中長期的目標:ROE8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に従業員満足(Employee Satisfaction)を加えた「ESG+ES」を基本方針としています。運送事業では重厚長大荷物の取扱強化や共同輸送などの外部連携を進め、貸切事業を新たな収益の柱として育成します。また、DXの推進や積極的なM&Aによる事業領域の拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な視点や価値観を尊重し、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が活躍できる環境づくりを進めています。運転者確保のためのリファラル採用やアルムナイ採用、外国人技能実習生・特定技能人材の受け入れを推進するほか、eラーニングを用いた次世代幹部の育成にも注力し、従業員エンゲージメントの向上にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.9歳 | 15.6年 | 5,166,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.5% |
| 男性育児休業取得率 | 37.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 95.7% |
また、同社は「人的資本・多様性に対する取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、運転者採用人数(14,222人)、集配者の離職率(9.9%)、女性ドライバー数(305人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 貨物自動車運送業界における過当競争
同社が主力とする商業荷物の輸送分野は同業他社も多く、景気動向に左右されやすい厳しい事業環境にあります。輸送品質の向上や顧客ニーズへの対応、生産性向上のための設備投資や労働環境改善への投資が不可欠であり、これに伴うコスト増加が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制や環境対応によるコスト増加
貨物自動車運送事業法や道路交通法などの改正への対応に伴い、輸送コストが上昇する可能性があります。さらに、カーボンニュートラルに向けた排気ガス規制などの環境条例が強化されることで、環境対応車両や設備への投資負担が増加し、業績に影響を与える懸念があります。
■(3) 慢性的な労働力不足
物流業界全体が直面している慢性的なドライバー不足は、同社にとっても持続的な事業運営において重要な課題です。労働力の確保に向けた採用活動の強化や賃金水準の向上、働きやすい環境づくりを進めていますが、将来にわたる輸送力の確保が困難になった場合、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。