※本記事は、鴻池運輸株式会社 の有価証券報告書(第85期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 鴻池運輸ってどんな会社?
鴻池運輸は、製造現場での工程請負や物流サービス、空港・医療関連業務など、多岐にわたるアウトソーシング事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1880年に創業者が運輸業を開始し、1945年に設立されました。2013年に東京証券取引所市場第一部に上場しています。近年では海外展開を加速しており、2024年にカナダで合弁会社を設立したほか、2025年にはインド国営企業を買収して子会社化するなど、グローバルな事業基盤の拡大を進めています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は16,650人、単体では9,264人です。筆頭株主は江之子島商事株式会社で9.49%を保有し、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)(8.93%)、第3位は鴻池運輸従業員持株会(7.96%)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 江之子島商事 | 9.49% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.93% |
| 鴻池運輸従業員持株会 | 7.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名(社外取締役含む)の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長兼社長執行役員は鴻池忠彦氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鴻池 忠彦 | 代表取締役会長兼社長執行役員 | 1976年鴻池組入社、1981年同社入社。常務、専務、副社長を経て2003年代表取締役社長に就任。2021年6月より現職。大阪港総合流通センター代表取締役副社長を兼任。 |
| 鴻池 忠嗣 | 取締役専務執行役員海外事業担当兼技術革新担当 | 2006年三井住友銀行入行、2013年同社入社。経営企画本部部長、執行役員、常務執行役員等を経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、大田嘉仁(元京セラ代表取締役会長)、増山美佳(増山&Company代表社員社長)、藤田泰介(ホギメディカル代表取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「複合ソリューション事業」「国内物流事業」「国際物流事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 複合ソリューション事業
鉄鋼、化学、食品、航空、医療など幅広い業界の顧客企業に対し、製造工程や流通工程の業務請負を行っています。単なる運搬にとどまらず、製造請負、製品検査、医療機器の洗浄・滅菌、空港地上支援業務、プラント設備の設計・施工など、専門性の高いサービスを提供しています。
収益は、顧客企業からの業務請負対価やサービス料から得ています。運営は、鴻池運輸および鴻池メディカル株式会社、コウノイケ・エアポートサービス株式会社、株式会社Kグランドサービス、株式会社エコイノベーションなどのグループ会社が行っています。
■(2) 国内物流事業
国内の冷凍・冷蔵倉庫を拠点とした定温物流業務と、ドライ倉庫を拠点とした一般物流業務を行っています。食品メーカーや流通・小売業向けの定温輸送や倉庫運営、機械・衣料品向けの保管・配送など、商品の保管から流通加工、配送までを一括して提供しています。
収益は、顧客からの倉庫保管料、荷役料、運送賃などから得ています。運営は、鴻池運輸および九州産交運輸株式会社、関西陸運株式会社、日本空輸株式会社などのグループ会社が行っています。
■(3) International Logistics Business
国内外において、海上・航空貨物の取扱業務や輸出入貨物の倉庫業務を行っています。生鮮食品から精密部品まで多様な貨物を扱い、国際複合一貫輸送やフォワーディング、海外での定温・一般物流業務、プラント輸送などを提供し、顧客の海外展開を支援しています。
収益は、国際輸送に係る運賃、フォワーディング手数料、倉庫保管料などから得ています。運営は、鴻池運輸およびKonoike-Pacific California, Inc.、BEL International Logistics Ltd.などの海外現地法人が行っています。
■(4) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、ソフトウェア開発や保守業務、情報処理受託業務などを展開しています。
収益は、システム開発や保守サービスの対価から得ています。運営は、シャイン株式会社やコウノイケITソリューションズ株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は大幅な増収となりました。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに右肩上がりで推移しており、利益率も改善傾向にあります。コロナ禍の影響からの回復や海外事業の伸長などが寄与していると見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,923億円 | 3,014億円 | 3,118億円 | 3,150億円 | 3,450億円 |
| 経常利益 | 94億円 | 118億円 | 143億円 | 170億円 | 213億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 3.9% | 4.6% | 5.4% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 50億円 | 63億円 | 74億円 | 83億円 | 94億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は10.8%から11.7%へと改善しました。営業利益も増益となり、営業利益率は5.3%から6.2%へと向上しており、収益性の高まりが見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,150億円 | 3,450億円 |
| 売上総利益 | 339億円 | 403億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.8% | 11.7% |
| 営業利益 | 166億円 | 214億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、社員給与金が46億円(構成比24%)、消耗品費が24億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収増益となりました。複合ソリューション事業は空港関連の回復やエンジニアリング関連の好調により堅調に推移しました。国内物流事業は適正価格への変更等が奏功しました。国際物流事業は航空貨物運賃市況の回復や海外子会社の連結効果等により、売上・利益ともに大きく伸長しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 複合ソリューション事業 | 2,020億円 | 2,166億円 | 174億円 | 206億円 | 9.5% |
| 国内物流事業 | 539億円 | 567億円 | 31億円 | 38億円 | 6.7% |
| 国際物流事業 | 591億円 | 716億円 | 30億円 | 47億円 | 6.6% |
| その他 | 0.3億円 | 0.7億円 | -2億円 | -1億円 | -209.2% |
| 調整額 | -35億円 | -37億円 | -66億円 | -76億円 | - |
| 連結(合計) | 3,150億円 | 3,450億円 | 166億円 | 214億円 | 6.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
鴻池運輸は、営業活動で得た資金で投資活動や借入金の返済、配当金の支払いを行っています。営業活動によるキャッシュ・フローは増加しており、これは主に本業での利益が堅調であったことによります。投資活動では、設備投資や子会社株式の取得に資金を投じており、前年よりも支出が増加しました。財務活動では、借入金の返済や株主への配当金の支払いを実行しました。これらの結果、期末の現金及び現金同等物は減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 177億円 | 235億円 |
| 投資CF | -78億円 | -170億円 |
| 財務CF | -99億円 | -129億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「「人」と「絆」を大切に、社会の基盤を革新し、新たな価値を創造します」という企業理念を掲げています。創業以来の信頼と信用、サービスの安全・品質への強い想いを示し、ブランドメッセージ「私たちの約束:期待を超えなければ、仕事ではない」のもと、持続的成長を目指しています。
■(2) 企業文化
全従業員の行動指針として「私たちの覚悟」を定めています。また、ブランドメッセージ「私たちの約束:期待を超えなければ、仕事ではない」を掲げ、顧客の期待を超える価値を提供することを重視する文化があります。140年以上の歴史の中で築いた信頼と、「人」を根幹とする事業姿勢が企業風土の基盤となっています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期から始まる「中期経営計画2027」を策定し、「2030年ビジョン」の実現を目指しています。テーマは「成長投資と人・技術・ICTへの基盤投資で、従業員の幸せと企業価値の最大化を実現する」としています。
* 2028年3月期目標:売上高4,100億円、営業利益260億円、ROE10%以上
* 2031年3月期目標:営業利益300億円、ROE10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
海外ではインドと北中米を注力地域とし、成長投資を継続します。インドでは製造業拡大を背景に物流・請負を強化し、北中米では冷蔵冷凍事業やエンジニアリング事業を推進します。国内ではメディカル・空港分野の強化や物流事業の戦略的展開を進めるほか、技術・ICTを活用した「KOMBO」活動により生産性向上と事業モデル変革を図ります。
* 成長投資:3年間で480億円(M&A枠200億円含む)
* 人的投資:3年間で200億円以上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「従業員の幸せと企業価値の最大化を実現する」方針の下、人的資本経営を推進しています。人材不足を課題と捉え、多様な人材の確保・育成、処遇改善、ウェルビーイング向上に注力しています。具体的には、人材戦略委員会を設置し、事業戦略と連動した人材育成や新たなマネジメント構築を進めるとともに、働きやすい職場環境づくりを強化しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.7歳 | 13.3年 | 5,710,981円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 11.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 48.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 52.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修費用(6.6億円)、研修時間(20.2時間/人)、3年以内離職率(20.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向および顧客企業等の動向について
同社グループは製造業や流通業などのアウトソーシング事業を展開しており、景気や消費動向の影響を受けます。特に鉄鋼業界向け売上が約15%、飲料・食品業界向けが約25%を占め、これらの業界動向や主要顧客の生産調整、拠点閉鎖などが経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の育成・確保について
事業の根幹は人であり、専門知識を持つ人材の確保・育成が不可欠です。労働力人口の減少や「2024年問題」による人手不足が深刻化する中、人材確保や労働環境維持のためのコスト増加、必要な人材の配置に支障が生じた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 事故及び労働災害について
トラックや大型機械の操作など危険を伴う作業が含まれており、安全衛生管理を最重要課題としています。しかし、不測の事態により重大事故や労働災害が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜、行政処分等により、事業運営や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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