トレーディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレーディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレーディアはスタンダード市場に上場し、五大港を拠点に輸出入貨物等の港湾運送・国際輸送事業を展開する企業です。直近の業績は、物価高等の影響を受け売上高はわずかに減少したものの、適正料金の収受や自社施設活用の強化によって収益性が改善し、経常利益および当期利益はともに増益を達成して堅調に推移しています。


※本記事は、トレーディアの有価証券報告書(第96期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トレーディアってどんな会社?


五大港を中心に輸出入業務や国際輸送を一貫して手がける総合物流企業です。

(1) 会社概要


同社は1941年に大日通運として設立され、神戸港での輸出入貨物取扱を開始しました。1968年に一般港湾運送事業免許を取得し、1971年に大阪証券取引所第二部へ上場しました。1994年に現在のトレーディアへ商号変更し、2013年には東京証券取引所第二部(現在はスタンダード市場)へ移行しています。近年は中国やベトナムにも拠点を構えています。

現在の従業員数は連結308名、単体308名です。筆頭株主は事業会社のトランコムで、第2位はトレーディア社員持株会、第3位は事業会社の大豊運輸倉庫となっています。

氏名 持株比率
トランコム 9.70%
トレーディア社員持株会 7.10%
大豊運輸倉庫 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役 社長執行役員は吉田大介氏が務めており、社外取締役の比率は約42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
吉田大介 代表取締役社長執行役員 1990年入社。京浜支店長代理等を経て2020年取締役執行役員海外戦略本部長。2023年より現職。
堀木靖之 取締役上席執行役員海外事業本部長兼名古屋支店長 1993年入社。国際営業第2部長等を経て2023年取締役執行役員海外統括本部長。2025年より現職。
羽澤哲朗 取締役上席執行役員営業統括本部長兼京浜支店長 1994年入社。神戸支店国際営業第2部長等を経て2023年取締役執行役員営業統括本部長。2025年より現職。
小林英之 取締役執行役員総務本部長 1989年入社。神戸支店総務部長兼情報システム室部長等を経て2023年執行役員総務本部長。2025年より現職。


社外取締役は、中弥和美(中弥和美税理士事務所所長)、織田研二郎(元みなと銀行常務執行役員)、石塚一夫(元MTI社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「輸出」「輸入」「国際」「倉庫」および「その他」事業を展開しています。

(1) 輸出


荷主である輸出貿易業者の委託を受け、輸出書類やネゴ書類の作成、貨物の梱包、通関手続業務、港湾における船舶への輸送、現地配送などを行う事業です。五大港において業務から荷役作業までを一貫責任体制で行っています。

顧客から業務委託料や作業料などを収受するビジネスモデルです。運営は主に同社が行い、海上コンテナやトラックによる陸運、はしけ運送については関連会社の阪神コンテナー輸送、三笠陸運、広瀬産業海運が担っています。

(2) 輸入


荷主である輸入貿易業者の委託を受け、海外産地から国内納入先までの船舶やコンテナ手配、官公庁への各種申請、貨物の受取や引渡しを行う事業です。五大港を拠点とする自家倉庫での商品保管や仕分など、輸入に関わる業務を代行しています。

顧客から各種手数料や作業料等を収受しています。運営は主に同社が行い、海上コンテナの輸送やトラック運送などの陸運業務は、関連会社の阪神コンテナー輸送および三笠陸運が担当しています。

(3) 国際


海外各国の業者と業務提携を行い、日本と諸外国間における外航海運の利用運送を行う事業です。諸外国の内陸運送や通関を含むドア・ツー・ドアの一貫輸送を引き受けています。

顧客から運送料等を収受するビジネスモデルです。運営は同社が行うほか、日本と中国間および中国国内の輸送については、関連会社の錦茂国際物流(上海)有限公司が担っています。

(4) 倉庫


阪神地区において、同社が保有する倉庫設備の一部を貸し出す事業を行っています。

借主からの賃料収入を収益源としています。運営は同社が行っています。

(5) その他


船内荷役や倉庫作業の請負、損害保険代理業、受託システム開発などの事業を行っています。

顧客から荷役料やシステム開発料、請負料などを収受しています。運営は同社のほか、連結子会社の大日物流、関連会社のソーラー・エンタープライズ、忠和商会が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間のうちデータのある直近2期間を見ると、売上高はわずかに減少したものの、経常利益および当期利益は増加傾向にあります。これは適正料金の収受等により収益性が改善したことによるものです。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - - - 166.5億円 164.5億円
経常利益 4.4億円 6.2億円 3.6億円 4.0億円 4.9億円
利益率(%) - - - 2.4% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.4億円 5.0億円 3.2億円 2.6億円 3.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間を見ると、売上高は微減となっている一方で営業利益は安定した水準を維持しており、営業利益率も同水準で推移しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 166.5億円 164.5億円
営業利益 2.5億円 2.4億円
営業利益率(%) 1.5% 1.4%

(3) セグメント収益


各セグメントの売上高を見ると、輸出部門は堅調を維持し、輸入部門と国際部門は荷動きの鈍化や運賃水準の下落などの影響を受けやや減少しています。倉庫部門は横ばいで安定推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
輸出 27.2億円 27.3億円
輸入 51.7億円 50.8億円
国際 85.9億円 84.5億円
倉庫 0.5億円 0.5億円
その他 1.1億円 1.4億円
連結(合計) 166.5億円 164.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期は営業活動で得た資金を元に、積極的な設備投資と借入れによる資金調達を行っており、成長投資に向けた「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4.6億円 5.0億円
投資CF -3.5億円 -14.0億円
財務CF -2.9億円 8.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も44.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「国際物流業務を通して世界の産業とくらしに貢献する」を事業コンセプトとしています。また、「顧客の課題を解決することによって付加価値の高いサービスを提供する」「経営基盤を強化し、存在感のある事業体となる」「社員にとって働きがいのある、いきいきとした職場を作る」を基本方針として掲げています。

(2) 企業文化


「国際物流のトータルプランナーとして常に革新する企業」を目指し、顧客ニーズの変化に的確に対応した経営を進めています。社会・環境の持続可能性を重要なテーマと認識し、課題解決と中長期的な企業価値向上に向けた取り組みを推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は自己資本利益率(ROE)と売上高経常利益率を重視し、収益性の高い企業体質を目指しています。サービスの多様化と経営資源の最適化を図るとともに、株主資本の効率的な運用と収益性の一層の向上により企業価値の向上を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


基幹港湾施設の機能強化と拡張によりコア事業を強化するとともに、グループ企業の活用による新規事業参入を目指しています。また、港湾関連データ連携基盤「サイバーポート」への接続などDXを推進し、デジタルフォワーダーとしての地位確立や、鉄道輸送を組み合わせたモーダルシフトによる環境負荷低減を図る戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員一人ひとりが高度で正確な業務処理を実行することを基本とし、顧客の課題解決型の高付加価値サービスを提供できる人材の育成を目標としています。次世代リーダー育成研修や、女性社員の継続就業支援、フレックス制度・在宅勤務等の働きやすい環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.4歳 19.1年 5,830,560円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.9%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.5%
男女賃金差異(正規雇用) 79.0%
男女賃金差異(パート・有期) 82.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事務リスク


膨大な取扱い件数や多種多様な貨物を取り扱う事務作業において、正確な事務を怠る、あるいは事故や不正を起こすことにより、取引先が損害を被り同社が損害賠償責任を負うリスクがあります。コンプライアンスの徹底やマニュアルの整備等で防止に努めています。

(2) 法務リスク


法令や契約書等に違反することや、不適切な契約締結により損失を被るリスクです。特に保税業務や通関業において重大な事故により行政処分を受けた場合、取引先からの信頼喪失や社会的信用の失墜につながり、業績へ重大な影響を与える可能性があります。

(3) 特定の取引先・貿易相手国への依存リスク


輸入部門および国際部門において中国からの輸入貨物の比率が非常に高く、各国の通商政策の転換や法制度改正、貿易摩擦などにより、当該地域での輸出入貨物の減少や事業活動が困難となるリスクがあります。新たな海外拠点の強化などを進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。