トレーディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレーディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の国際物流企業です。神戸港を拠点に、輸出入貨物の通関、港湾運送、国際複合輸送、倉庫保管などを一貫して手掛けます。第95期は、輸出部門や国際部門の輸出取扱いが堅調に推移し、売上高は166億円と増収を達成しました。経常利益も4.0億円へ増加しましたが、特別利益の減少により当期純利益は減益となりました。


※本記事は、トレーディア株式会社 の有価証券報告書(第95期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トレーディアってどんな会社?


神戸港を基盤に80年以上の歴史を持ち、五大港での通関・港湾運送から国際輸送まで手掛ける総合物流企業です。

(1) 会社概要


同社は1941年に神戸港にて大日通運として設立され、1965年には倉庫営業を開始しました。1971年に大阪証券取引所市場第二部へ上場を果たし、1994年に現社名のトレーディアへと商号変更を行っています。2000年代以降はインドや中国の物流企業との提携や合弁会社設立を積極的に進め、2011年にはトランコムとの資本業務提携を締結するなど、国際物流網と経営基盤の強化を図ってきました。

第95期末時点の連結従業員数は318名、単体では317名です。筆頭株主は物流事業を展開するトランコムで、第2位は従業員による持株会、第3位は大阪府で運送・倉庫業を営む大豊運輸倉庫となっており、事業パートナーや社内関係者が上位を占めています。

氏名 持株比率
トランコム 9.70%
トレーディア社員持株会 6.50%
大豊運輸倉庫 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は吉田大介氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
吉田 大介 代表取締役社長執行役員 1990年同社入社。京浜支店営業第1部長、執行役員京浜支店長代理、取締役上席執行役員海外戦略本部長などを経て、2023年6月より現職。
古郡 勝英 代表取締役会長執行役員 1972年同社入社。取締役名古屋支店長、代表取締役専務取締役などを歴任。2015年に代表取締役社長執行役員に就任し、2023年6月より現職。
嶋津 清仁 取締役常務執行役員京浜支店長 1985年同社入社。執行役員京浜支店長、上席執行役員営業戦略本部国際営業本部長などを歴任。2021年6月より現職。
堀木 靖之 取締役執行役員海外統括本部長 1993年同社入社。名古屋支店国際営業第2部長、京浜支店国際営業第2部長、執行役員海外戦略本部長代理を経て、2023年6月より現職。
羽澤 哲朗 取締役執行役員営業統括本部長兼大阪支社長 1994年同社入社。神戸支店営業第2部長、京浜支店国際営業開発部長、大阪支社長代理を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、丸山英聡(日本郵船常勤顧問)、中弥和美(中弥和美税理士事務所所長)、織田研二郎(ひょうご経済研究所顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「輸出」「輸入」「国際」「倉庫」および「その他」事業を展開しています。

(1) 輸出部門


荷主(輸出貿易業者)の委託を受け、輸出書類作成、梱包、通関手続、港湾における船積み、現地配送までを一貫して行います。同社は神戸・大阪・名古屋・京浜・横浜の五大港において責任体制を敷いています。

収益は、輸出業務の委託を受けた荷主から受け取る作業料や手数料が主な源泉です。運営は主に同社が行い、海上コンテナ輸送は関連会社の阪神コンテナー輸送、トラック運送は三笠陸運、はしけ運送は広瀬産業海運などが担っています。

(2) 輸入部門


荷主(輸入貿易業者)の委託を受け、海外産地から国内納入先までの輸送手配、通関、関税・消費税の申告、港湾での貨物受渡しを行います。五大港を拠点とする自家倉庫での保管や仕分けなど、輸入に関わる全業務を代行しています。

収益は、輸入業務を委託された荷主から受け取る通関料、取扱料、保管料などが中心です。運営は同社が主体となり、陸上輸送部分については阪神コンテナー輸送や三笠陸運などの関連会社が協力して行っています。

(3) 国際部門


海外の業者と提携し、日本と諸外国間の外航海運利用運送や、内陸運送、通関を含むドア・ツー・ドアの一貫輸送サービスを提供しています。海外合弁会社などを通じてグローバルな物流ネットワークを構築しています。

収益は、一貫輸送サービスを利用する顧客からの運送賃や取扱手数料などが源泉です。運営は同社が行うほか、中国方面の輸送などは関連会社の錦茂国際物流(上海)有限公司などが担っています。

(4) 倉庫部門


阪神地区において同社が保有する倉庫設備の一部を外部に賃貸する事業です。物流施設としての機能を活用し、安定的な資産運用を行っています。

収益は、倉庫施設を賃借するテナントからの賃料収入です。運営は同社が行っており、資産の有効活用による収益確保を図っています。

(5) その他


上記セグメントに含まれない事業として、船内荷役事業やその他の関連事業を行っています。また、連結子会社によるシステム開発支援なども含まれます。

収益は、船会社等からの荷役料や、システム開発委託元からの受託料などです。運営は同社および連結子会社の大日物流などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第95期は、売上高が166億円、経常利益が4.0億円となりました。過去5期間の推移を見ると、第93期に売上高約199億円、経常利益約6.2億円のピークを記録した後、第94期に一度減少しましたが、当期は再び回復傾向にあります。当期純利益は2.7億円で、前期と比較して減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 149億円 184億円 199億円 150億円 166億円
経常利益 1.6億円 4.4億円 6.2億円 3.6億円 4.0億円
利益率(%) 1.0% 2.4% 3.1% 2.4% 2.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.1億円 3.1億円 5.2億円 3.3億円 2.7億円

(2) 損益計算書


当期は前期比で増収となりましたが、売上総利益率はほぼ横ばいの6.2%でした。営業利益は2.5億円と前期より増加し、営業利益率は1.5%となりました。売上の増加に伴い売上総利益も増加しましたが、利益率の大幅な改善には至っていません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 150億円 166億円
売上総利益 10億円 10億円
売上総利益率(%) 6.3% 6.2%
営業利益 2.0億円 2.5億円
営業利益率(%) 1.3% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が3.4億円(構成比43%)、賞与引当金繰入額が0.3億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は、国際部門が大きく伸長し増収となりました。輸出部門は機械機器等の取扱いが堅調で黒字転換しました。輸入部門は保管料収入が増加しましたが、作業減少により損失計上となりました。国際部門は輸出が好調で増収となりましたが、輸入の競争激化により利益は減少しました。倉庫部門は安定的に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
輸出 25億円 27億円 -0.5億円 0.0億円 0.1%
輸入 50億円 52億円 -0.4億円 -0.2億円 -0.3%
国際 74億円 86億円 2.4億円 2.0億円 2.3%
倉庫 0.5億円 0.5億円 0.5億円 0.5億円 96.1%
その他 1.1億円 1.1億円 0.1億円 0.2億円 13.7%
調整額 -0.0億円 -0.1億円 - - -
連結(合計) 150億円 166億円 2.0億円 2.5億円 1.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ資金(営業CFプラス)をもとに、設備投資(投資CFマイナス)や借入返済(財務CFマイナス)を行っており、健全な財務活動が行われています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.6億円 4.6億円
投資CF 1.2億円 -3.5億円
財務CF -4.4億円 -2.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「国際物流業務を通して世界の産業とくらしに貢献する」を事業コンセプトとして掲げています。また、「国際物流のトータルプランナーとして常に革新する企業」を目指し、顧客ニーズの変化に的確に対応できる事業体となることを経営の指針としています。

(2) 企業文化


同社は、「顧客の課題を解決することによって付加価値の高いサービスを提供する」、「経営基盤を強化し、存在感のある事業体となる」、「社員にとって働きがいのある、いきいきとした職場を作る」という3つの基本方針を重視しています。顧客への貢献だけでなく、社員の働きがいや組織としての存在感向上を目指す姿勢が特徴です。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、収益性の高い企業体質を目指し、特に以下の指標を重視して経営を進めています。
* 自己資本利益率(ROE)
* 売上高経常利益率

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、地政学リスクや物流形態の変化に対応するため、基幹港湾施設の機能強化やDX推進による業務効率化、海外事業の拡大に注力しています。具体的には、サイバーポートへの接続やIT環境の整備によるデジタルフォワーディング事業者としての地位確立を目指すほか、環境負荷低減に向けたモーダルシフトの推進や、アジアを中心とした海外拠点の充実強化に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員の意識改革や教育制度の充実を通じて人的資本の価値を最大化し、収益性向上につなげる方針です。具体的には、入社1〜3年目のフォローアップ研修や他部署研修による連携強化、中堅・管理職向けの外部研修活用を行っています。また、女性社員の継続就業支援や、フレックス制度・在宅勤務等の環境整備により、多様な人材が活躍できる職場づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.1歳 18.8年 5,638,145円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.7%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.2%
男女賃金差異(正規) 77.0%
男女賃金差異(非正規) 126.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事務・法務およびコンプライアンスリスク


膨大な貨物取扱事務において事故やミスが発生し、損害賠償責任を負う可能性があります。また、認定通関業者として業務を行う中で、法令違反や不適切な契約締結、重大な事故により行政処分を受けた場合、社会的信用の失墜や業績への悪影響が生じます。

(2) システム障害およびサイバー攻撃リスク


業務運営に不可欠なコンピューターシステムのダウン、誤作動、またはサイバー攻撃による不正使用が発生した場合、業務停止や情報漏洩などの損害を被る可能性があります。同社は情報資産管理やバックアップ体制を整備していますが、リスクは完全に排除できません。

(3) 特定の取引先・貿易相手国への依存


主要顧客である機械機器メーカーや商社の業績、および中国をはじめとする貿易相手国の経済情勢や政策変更の影響を強く受けます。特に輸入部門や国際部門は中国への依存度が高く、同国の政策や経済動向が業績に大きな影響を与える可能性があります。

(4) 財務・与信リスク


港湾物流業界特有の商習慣として、海上運賃や関税等の立替金が多く発生します。取引先の倒産等による貸倒れリスクや、為替レートの変動が立替金回収に影響を与える可能性があります。同社は与信管理の徹底や前受金の活用等でリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。