アイネス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイネス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の情報サービス企業です。自治体向けの公共システムや金融・産業向けの民間システム開発・運用を主力事業としています。当連結会計年度は、公共分野での標準化対応システムの導入等により売上高は横ばいでしたが、ファシリティコストの反動減等により営業増益となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社アイネス の有価証券報告書(第63期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイネスってどんな会社?


独立系の情報サービス企業として、自治体向けの公共システムや民間企業向けのシステム開発を展開しています。

(1) 会社概要


1964年に協栄計算センターとして独立し、1984年にアイネスへ商号変更しました。1990年には東証一部へ上場しています。2018年に三菱総合研究所と業務資本提携を締結し、2022年の市場区分見直しに伴い東証プライム市場へ移行しました。2024年には本社機能を東京都中央区日本橋蛎殻町へ移転・集約しています。

連結従業員数は1,247名、単体では915名です。筆頭株主は業務資本提携先であるシンクタンク・システム開発企業の三菱総合研究所で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には外国法人の証券会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
三菱総合研究所 19.48%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 11.96%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 5.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役社長は服部修治氏が務めています。社外取締役比率は約63.6%です。

氏名 役職 主な経歴
服部 修治 代表取締役社長 1988年同社入社。営業統括本部公共営業本部長、運用サービス事業部第一運用サービス本部長、事業戦略本部担当本部長等を歴任。2024年4月より現職。
塚原 進 代表取締役専務執行役員 1985年三菱銀行入行。同行企画部主計室室長等を経て、2014年同社執行役員財務本部長に就任。2023年6月より現職。
鈴木 玲子 取締役 1990年同社入社。公共システム事業部第二公共システム本部長、執行役員人事総務本部副本部長等を歴任。2025年4月より現職。
高田 浩二 取締役(監査等委員) 1990年同社入社。中部支社長、執行役員経営企画本部長等を歴任。2025年6月より現職。


社外取締役は、村上嘉奈子(のぞみ総合法律事務所パートナー)、佐藤信行(中央大学大学院法務研究科教授)、森崎孝(三菱総合研究所取締役会長)、尾澤重知(早稲田大学人間科学学術院教授)、筒井さち子(株式会社タチエス社外取締役)、早船勝利(ykrアカウンティングアドバイザリー合同会社代表社員)、岩尾健太郎(清明監査法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス事業」の単一セグメントですが、顧客属性により「公共」および「民間」の分野で事業を展開しています。

(1) 公共分野


主に地方自治体向けに、住民情報システム等の基幹業務システムの開発・導入・運用サービスを提供しています。自社パッケージ「WebRings」等のソリューションを展開し、行政サービスの効率化や住民サービスの向上を支援しています。

収益は、自治体からのシステム開発費、導入支援費、および継続的な運用・保守サービス料から得ています。運営は主に同社が担当しており、子会社のアイネスリレーションズも関連業務を行っています。

(2) 民間分野


金融機関(銀行・保険)や流通・産業・サービス業等の民間企業向けに、システム開発、運用保守、クラウドサービス等を提供しています。DX推進支援やAI技術を活用したソリューション提供にも注力しています。

収益は、民間企業からのソフトウェア開発費、システム運用管理費、クラウドサービス利用料等から得ています。運営は同社および、システム運用監視やクラウドサービスを提供するアイネステクノロジーズ等が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移です。売上高は400億円台前半で安定的に推移しています。利益面では変動が見られ、2023年3月期に高い利益率を記録した後、翌期は低下しましたが、直近の2025年3月期には経常利益率8.9%まで回復しています。当期利益も回復傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 416億円 400億円 424億円 406億円 406億円
経常利益 29億円 21億円 39億円 27億円 36億円
利益率(%) 7.0% 5.1% 9.2% 6.7% 8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 14億円 22億円 11億円 28億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高はほぼ横ばいですが、営業利益および経常利益は大幅に増加しています。売上総利益率は約24.0%で安定していますが、営業利益率は7.1%から8.7%へと改善しました。これは主に販売費及び一般管理費の抑制によるものと考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 406億円 406億円
売上総利益 97億円 97億円
売上総利益率(%) 24.0% 24.0%
営業利益 29億円 35億円
営業利益率(%) 7.1% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が23億円(構成比37%)、福利厚生費が5億円(同7%)を占めています。売上原価においては、外注費が126億円(構成比41%)、労務費が66億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


公共分野は、標準化対応システムの導入等により増収となりました。一方、民間分野は、保険業向けや小売業向けのシステム開発案件の減少等により減収となりました。全体としては公共分野の伸びが民間分野の落ち込みを補い、売上高は前年並みを維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
公共 185億円 199億円
民間 221億円 207億円
連結(合計) 406億円 406億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


パターン:積極型

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21億円 15億円
投資CF -100億円 -3億円
財務CF 39億円 15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「創造と和と挑戦をもって お客さまからの信頼をもとに未来をひらき、世界中のお客さまと感動と喜びを分かち合い、豊かで安全・安心な社会の創生に貢献する」という経営理念を掲げています。この理念に基づき、事業活動を通じた社会課題解決と、ITテクノロジーを活用した新たな価値の創造に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は「挑戦・進化し続ける企業」を目指すべき姿として掲げています。社員一人ひとりが輝き、持続的に成長し活躍できる環境・企業風土の醸成を目指しており、「創造」「和」「挑戦」を重視する価値観を持っています。AIを活用したDX企業への変革に向け、自律的な人材育成や多様な人材の確保を推進する風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2024年度から2026年度までの3年間を対象とする「2026中期経営計画」を策定し推進しています。「地方公共団体情報システムの標準化対応」「次世代ソリューションの開発」「事業基盤拡充」の3本柱を通じて、計画達成を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向け、自治体システム標準化への対応と、標準化後を見据えた次世代「WebRings」の開発に注力しています。また、三菱総合研究所との協業による「地域共創DX」の推進や、AIを活用した品質・生産性の向上にも取り組んでいます。人的資本への投資として、エンジニアの専門性を軸とした人事制度改定や社内リスキルを推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「2026中期経営計画」に基づき、「自律型人材の育成・戦略的配置」「評価・処遇制度の見直し」「多様な人材の確保」を推進しています。社員を最大の経営資源と位置づけ、データに基づいたスキル開発や配置の最適化を行っています。また、専門職等級を軸とした人事制度への刷新や、外部人材・シニア人材の活用も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.2歳 18.0年 7,037,180円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 10.8%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 83.7%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 85.0%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 70.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均残業時間/月(法定外)(15.4時間)、平均有給休暇取得日数(15.9日)、3年後離職率(6.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境リスク


情報サービス産業は技術革新や顧客の投資動向の変化が激しく、競争が激化しています。新規参入企業の増加等により事業環境が大きく変化した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対応するため、事業ポートフォリオの適宜見直しや、質の高い技術者の育成に取り組んでいます。

(2) システム開発リスク


受託開発やパッケージ製品において、品質不良や納期遅延によるコスト増加、不採算案件の発生リスクがあります。万が一、不具合により顧客業務に支障をきたし損害賠償請求を受けた場合、業績への悪影響や信用失墜の恐れがあります。これを回避するため、品質管理部門の設置や管理体制の強化を進めています。

(3) システム運用リスク


運用サービスにおいて、災害、サイバー攻撃、運用ミス等によるシステム障害が発生し、顧客事業が停止した場合、損害賠償請求や信用失墜のリスクがあります。これに対し、同社はITIL準拠の体制整備、設備投資、技術者教育、BCP(事業継続計画)の策定等に継続的に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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