アイネス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイネス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイネスは東京証券取引所プライム市場に上場し、情報システムやネットワークの企画・開発から運用・保守までを一貫して手掛ける情報サービス事業を展開しています。業績トレンドとしては、直近の第64期において公共分野のシステム標準化対応の延伸や大型案件の反動減等により、減収および当期純損失となっています。


※本記事は、アイネスの有価証券報告書(第64期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイネスってどんな会社?


アイネスは、公共分野や民間分野向けに情報システムの企画から運用・保守まで一貫したITサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


アイネスは1964年に協栄計算センターとして独立して設立されました。1968年に地方自治体向けの住民情報システム開発を開始し、1984年に現在のアイネスへ商号を変更しました。1990年には東京証券取引所市場第一部に上場し、2018年には三菱総合研究所と業務資本提携を結んでいます。

従業員数は連結で1,204名、単体で870名です。筆頭株主は事業会社の三菱総合研究所で、第2位および第3位には資産管理業務を行う信託銀行等の金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
三菱総合研究所 19.47%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 9.15%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役社長は服部修治氏が務めています。社外取締役比率は63.6%です。

氏名 役職 主な経歴
服部修治 代表取締役社長 1988年同社入社。名古屋支社長、公共営業本部長などを歴任。2021年常務執行役員を経て、2024年より現職。
塚原進 代表取締役 1985年三菱銀行入行。同社財務本部長などを歴任。2023年代表取締役専務執行役員を経て、2026年より現職。
鈴木玲子 取締役 1990年同社入社。公共システム事業部長などを歴任。2024年取締役執行役員開発本部副本部長を経て、2025年より現職。
高田浩二 取締役(監査等委員) 1990年同社入社。経営企画本部長などを歴任。2024年取締役執行役員を経て、2025年より現職。


社外取締役は、村上嘉奈子(弁護士)、佐藤信行(大学教授)、森崎孝(元三菱総合研究所社長)、尾澤重知(大学教授)、筒井さち子(元日立製作所担当本部長)、早船勝利(公認会計士)、岩尾健太郎(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 公共分野


地方自治体向けに、国の標準に準拠した行政システムなどの情報システムの企画・開発から運用・保守までを提供しています。住民サービスに貢献する安心・安全なシステムの構築や、AI技術を活用した行政事務のDX化支援を主な事業としています。

収益源は、地方自治体等からのシステム開発費、運用・保守費用、および付帯する情報機器の販売代金などです。事業の運営は、主にアイネスおよび子会社のアイネスリレーションズ、アイネステクノロジーズが行っています。

(2) 民間分野


保険会社や銀行などの金融機関、流通業、産業分野の企業向けに、システム開発やクラウドサービス、マネージドサービスなどを提供しています。受託開発から、企業の課題解決に貢献するソリューション提供まで幅広く展開しています。

収益源は、民間企業からのシステム受託開発費、BPOサービスやクラウドサービス等の運用・保守費用などです。事業の運営は、主にアイネスおよび子会社のアイネスリレーションズ、アイネステクノロジーズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は400億円前後で推移していましたが、直近の期は減収となりました。利益面では前期まで黒字を維持していたものの、当期はシステム関連の減損損失や原価率の悪化等により、経常損失および当期純損失を計上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 400億円 424億円 406億円 406億円 366億円
経常利益 21億円 39億円 27億円 36億円 -5億円
利益率(%) 5.1% 9.2% 6.7% 8.9% -1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 22億円 11億円 28億円 -25億円

(2) 損益計算書


直近2期間の売上高は減少傾向にあり、それに伴い売上総利益および営業利益も減少しています。特に当期は営業損失となっており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 406億円 366億円
売上総利益 97億円 54億円
売上総利益率(%) 24.0% 14.6%
営業利益 35億円 -6億円
営業利益率(%) 8.7% -1.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が23億円(構成比38%)、福利厚生費が5億円(同8%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益と資産売却等によるキャッシュの流入を借入金の返済や株主還元に充てる「改善型」のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 15億円 35億円
投資CF -3億円 18億円
財務CF 15億円 -50億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「創造と和と挑戦をもって お客さまからの信頼をもとに未来をひらき、世界中のお客さまと感動と喜びを分かち合い、豊かで安全・安心な社会の創生に貢献する」という経営理念を掲げています。事業活動を通じた社会課題の解決と、ITテクノロジーを活用した新たな価値の創造に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、社員一人ひとりが活き活きと輝くことにより「挑戦・進化し続ける企業」の実現を目指しています。また、社員が仕事を通じて個人の価値を高めることで、会社の成長と個人の成長を共につくり上げる風土を重視し、自ら考え挑戦し続ける人材の育成に注力しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度より、新たに「2028中期経営計画」をスタートさせています。持続可能な社会の創造に貢献する「挑戦・進化し続ける企業」として、地域DX戦略、自治体パッケージ戦略、ソリューションビジネス戦略を事業戦略の3つの柱として掲げ、増収増益と持続的な企業価値の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、福祉ドメインを起点とした「地域DX戦略」、主力行政システムの次世代版を軸とした「自治体パッケージ戦略」、受託開発からソリューション提供モデルへ転換する「ソリューションビジネス戦略」を推進します。さらに、AIを活用した事業基盤の強化にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


価値創造の源泉である「人材」を最大の経営資源と位置づけています。事業戦略と連動した人材ポートフォリオの策定、データドリブンな育成推進、組織風土改革、多様な人材の確保と活用を重点施策としています。特に、専門能力の習得を適正に評価し、適所適材の機動的な配置と処遇へ反映させる運用を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.5歳 17.3年 7,063,658円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.4%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.6%
男女賃金差異(正規労働者) 85.8%
男女賃金差異(非正規労働者) 64.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(26.9%)、女性採用比率(44.8%)、一人当たり研修時間(124.3時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報処理・通信サービスにおける事業環境の変化


ITサービス業界における顧客の情報化投資動向や技術の急激な変化、新規参入企業の増加などにより、事業環境が大きく変化するリスクがあります。同社は情報化投資の動向を見極めた資源配分や、技術革新に対応できる質の高い技術者の育成に取り組むことで対応しています。

(2) ソフトウェア開発での品質と不採算案件の発生


受託開発やパッケージ製品において、品質不良や納期遅延が生じた場合、コスト増加による不採算案件化や顧客の業務停止を招くリスクがあります。損害賠償請求や信用失墜を防ぐため、品質管理部門の設置や外部専門家の配置など、管理体制の強化を図っています。

(3) 運用サービスでのシステム・回線障害


アウトソーシング等の運用サービスにおいて、大規模災害やサイバー攻撃、運用ミスなどでシステムダウンが発生した場合、顧客事業の停止による損害賠償や信用失墜のリスクがあります。同社はガイドラインに準拠した体制整備やバックアップ機能の強化、BCPの策定などを進めています。

(4) 情報資産の漏洩やサイバー攻撃の脅威


業務上取り扱う個人情報や機密情報が、コンピュータウイルスや不正アクセス、人為的過失により漏洩・改ざんされるリスクがあります。サイバーセキュリティの強化や社内IT基盤の高度化、各種認証の維持取得、従業員へのコンプライアンス教育を通じてリスク軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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