ナガセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナガセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するナガセは、東進ハイスクールや四谷大塚など幼児から社会人までを対象とした教育事業と、イトマンスイミングスクールなどのスポーツ事業を展開しています。業績トレンドとしては、在籍生徒数の増加やスポーツ事業のグループ化等により、直近の当期は大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ナガセの有価証券報告書(第51期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ナガセってどんな会社?


ナガセは「東進ハイスクール」や「四谷大塚」などの教育事業を中心に展開する総合教育企業です。

(1) 会社概要


同社は1976年に設立され、1985年に現役高校生向けの「東進ハイスクール」を創設しました。1991年には映像授業を配信する「東進衛星予備校」のフランチャイズ展開を開始しています。2004年にジャスダック証券取引所に上場し、2006年には四谷大塚、2008年にはイトマンスイミングスクールを買収して事業領域を広げました。

現在の従業員数は連結で1,628名、単体で486名です。筆頭株主は創業者である永瀬昭幸氏の資産管理会社である昭学社で、第2位は創業者の永瀬昭幸氏です。第3位にはN,appleが名を連ねています。

氏名 持株比率
昭学社 37.00%
永瀬昭幸 17.91%
N,apple 9.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表者は取締役社長(代表取締役)の永瀬昭幸氏です。

氏名 役職 主な経歴
永瀬昭幸 取締役社長(代表取締役) 1974年野村證券入社。1976年ナガセ設立、代表取締役社長に就任。東進スクールや四谷大塚など主要グループ会社の代表を歴任し、2024年12月よりイトマンスポーツウェルネス代表取締役会長。
永瀬照久 専務取締役人事部担当 兼東進教育研究所長 1980年ナガセ入社。東進ハイスクール本部長やコンテンツ本部長などの要職を歴任し、2021年より人事部長を兼務。2024年4月より現職。
渋川哲矢 専務取締役東進ハイスクール本部長 兼衛星事業本部長 兼経営戦略担当 東京海上火災保険やボストンコンサルティンググループ等を経て、2017年ナガセ入社。経営戦略担当やコンテンツ本部長を歴任し、2025年4月より現職。
内海昌男 常務取締役総務本部長 1985年富士銀行入行。みずほ銀行の市場営業部長などを経て、2013年ナガセ入社。総務本部副本部長等を経て、2020年9月より現職。


社外取締役は、中島御(センターランド会長)、小池康博(慶應フォトニクス・リサーチ・インスティテュート所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「高校生部門」「小・中学生部門」「スポーツ事業部門」「ビジネススクール部門」および「その他」事業を展開しています。

高校生部門


主に高校生を対象とした教育事業を行っています。東進ハイスクールや東進衛星予備校、総合型・学校推薦型選抜の対策を行う早稲田塾を展開し、全国の高校生に向けた大学受験指導や模試の提供を行っています。

生徒からの授業料や加盟校からのロイヤリティが主な収益源です。運営はナガセのほか、東進四国、東進育英舎、早稲田塾、ヒューマレッジなどが行っています。

小・中学生部門


小学生および中学生を対象とした教育事業を展開しています。中学受験に強みを持つ四谷大塚や、兵庫・大阪地区を中心に展開する木村塾などを通じて、質の高い教育サービスを提供しています。

保護者からの授業料や教材の販売代金などが主な収益源です。運営はナガセをはじめ、四谷大塚、四谷大塚出版、四大印刷、東進四国、東進育英舎、ヒューマレッジなどが行っています。

スポーツ事業部門


幼児からシニア層まで幅広い世代を対象に、水泳教室やフィットネスクラブの運営を行っています。イトマンスイミングスクールを中心に、数多くのオリンピック選手を輩出する実績を持っています。

利用者からの会費やスクール受講料が収益源です。運営はイトマンスイミングスクール、イトマンスポーツスクール、イトマンスポーツウェルネスなどが行っています。

ビジネススクール部門


大学生や社会人を対象とした教育研修事業を行っています。語学やビジネス基礎力の研修に加え、近年は企業や大学のデジタル人材育成ニーズに応えるITやDX研修プログラムも提供しています。

受講生や企業からの研修費および受講料が主な収益源となります。本部門の運営は主にナガセが行っています。

その他部門


高校生向けの学習参考書を出版する出版事業、小中学生向けのオンライン学校事業、こども英語塾事業、国際事業などを包括して展開しています。

書籍の販売代金やオンライン講座の受講料などが主な収益源です。運営はナガセ、ナガセマネージメント、東進スクールなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は安定して成長を続けており、特に直近の当期は大幅な増収を達成しました。経常利益は一時的に減少傾向にありましたが、当期は急回復し、過去最高水準の利益を計上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 494億円 524億円 530億円 553億円 642億円
経常利益 52億円 51億円 43億円 39億円 58億円
利益率(%) 10.4% 9.7% 8.2% 7.0% 9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 35億円 37億円 26億円 26億円 39億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高と売上総利益がともに増加しています。また、営業利益も前期から大きく改善しており、営業利益率も上昇するなど収益性の向上が見られます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 553億円 642億円
売上総利益 144億円 167億円
売上総利益率(%) 26.1% 25.9%
営業利益 49億円 60億円
営業利益率(%) 8.8% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が44億円(構成比41%)、給料及び手当が19億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の収益を見ると、主力の高校生部門が在籍生徒数の増加により順調に売上と利益を伸ばしています。また、スポーツ事業部門はグループ会社の追加により大幅な増収となり、全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
高校生部門 270億円 295億円 47億円 57億円 19.5%
小・中学生部門 131億円 134億円 27億円 27億円 20.2%
スポーツ事業部門 119億円 178億円 5億円 5億円 3.1%
ビジネススクール部門 20億円 20億円 5億円 5億円 25.3%
その他 14億円 15億円 3億円 4億円 23.5%
調整額 - - -38億円 -39億円 -
連結(合計) 553億円 642億円 49億円 60億円 9.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスであり、本業で稼いだ資金で投資を行いながら借入金の返済を進める健全な財務状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 82億円 105億円
投資CF -78億円 -68億円
財務CF -83億円 -40億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


人財育成企業として「独立自尊の社会・世界に貢献する人財の育成」を教育目標に掲げています。教育の分野における技術革新を果敢に推進し、「心・知・体」を総合的に育成できる新しい教育体系を構築することで、社会への貢献を果たすことを経営理念としています。

(2) 企業文化


「教育の機会均等」を掲げ、新しい教育体系の確立に取り組む文化が根付いています。将来の経営環境の変化にも対応できるよう、組織と経営基盤の強化を図り、成長性、収益性、安定性に優れた企業をつくりあげることを基本方針として事業活動を推進しています。

(3) 経営計画・目標


株主重視の立場から収益性の向上に努め、売上高経常利益率を重要な指標としています。内部留保の充実と業績に応じた株主への利益還元を行うことで経営責任を果たすことを目標としており、当期の売上高経常利益率は9.1%となりました。

(4) 成長戦略と重点施策


「人間力(志)」の育成と「技術革新(AI)」を軸に、高品質の教育を提供していくことを経営課題としています。高校生部門ではAIを活用した講座の活用徹底や大学別模試の拡充を通じて難関大の合格実績の伸長を目指し、スポーツ事業部門では自治体や小中学校の受託事業拡大などを積極的に推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は社員が重要な経営資源であると認識しており、チャレンジ精神に富んだ人材を採用しています。失敗を恐れず果敢に挑戦し、自ら創意工夫や課題解決に取り組む組織風土をつくり、すべての社員が属性による区別なく活躍できる環境を目指して研修機会などを提供し、人材育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.3歳 12.0年 8,917,862円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.0%
男性育児休業取得率 44.4%
男女賃金差異(全労働者) 65.9%
男女賃金差異(正規雇用) 67.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 87.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化及び大学受験動向の影響


長期にわたる出生率低下による学齢人口の減少や、推薦入試など大学入試の選抜方法の多様化によるニーズの変化が、同社の経営成績に影響を与える可能性があります。時代のニーズに合った質の高い教育への対応が継続して求められています。

(2) 業績の3月に対する依存度


同社の主要事業のひとつである衛星事業に関するロイヤリティ収入は、生徒募集の最盛期である3月に売上計上が集中する傾向があります。そのため、3月の営業収入が全体に占める割合が高くなり、同月の業績によって通期の業績が大きく左右される可能性があります。

(3) 労務関連のリスク


同社グループでは労務管理を経営の重要課題と認識し、労働基準法等の関連法令を遵守して労務関連のリスク低減に取り組んでいます。しかしながら、労務管理に関する各種コンプライアンス違反等が発生した場合、信用の低下により業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。