※本記事は、株式会社ナガセ の有価証券報告書(第50期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナガセってどんな会社?
教育事業とスポーツ事業を主軸に、「独立自尊の社会・世界に貢献する人財の育成」を目指す企業です。
■(1) 会社概要
1976年に設立され、1985年に現役高校生向けの「東進ハイスクール」を創設しました。その後、2006年に中学受験指導の「四谷大塚」、2008年に「イトマンスイミングスクール」を傘下に収め事業を拡大しています。2014年には「早稲田塾」を買収し、直近では2024年に「イトマンスポーツウェルネス」を連結子会社化するなど、教育とスポーツの総合的なサービス展開を進めています。
連結従業員数は1,607名、単体では476名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である昭学社で、第2位は創業者の永瀬昭幸氏、第3位はN,appleとなっており、安定的な株主構成を維持しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 昭学社 | 37.05% |
| 永瀬 昭幸 | 17.91% |
| N,apple | 9.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は永瀬昭幸氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 永瀬 昭幸 | 取締役社長(代表取締役) | 野村證券を経て1976年に同社を設立。以来、社長としてグループ全体を牽引し、東進スクールや四谷大塚、イトマンスイミングスクール等の代表も兼任する。 |
| 永瀬 照久 | 専務取締役人事部担当 兼東進教育研究所長 | 教員を経て1980年に入社。教務、運営、コンテンツ各本部長を歴任し、教育研究所長としてコンテンツ開発を主導。現在は人事部担当も務める。 |
| 渋川 哲矢 | 専務取締役東進ハイスクール本部長 兼衛星事業本部長 兼経営戦略担当 | ボストンコンサルティンググループ等を経て2017年に入社。経営戦略やコンテンツ部門を統括し、現在は東進ハイスクールおよび衛星事業の本部長を務める。 |
| 内海 昌男 | 常務取締役総務本部長 | 富士銀行(現みずほ銀行)に入行し、市場営業部長等を歴任。2013年に同社に入社し、総務本部長として管理部門を統括する。 |
社外取締役は、中島御(センターランド会長)、小池康博(慶應義塾大学教授・慶應フォトニクス・リサーチ・インスティテュート所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「高校生部門」「小・中学生部門」「スポーツ事業部門」「ビジネススクール部門」および「その他」事業を展開しています。
■高校生部門
東進ハイスクール(直営校)、東進衛星予備校(フランチャイズ)、早稲田塾等を展開し、主に高校生を対象とした大学受験指導や教育サービスを提供しています。独自の学習システムと実力派講師陣による映像授業が特徴です。
主な収益源は、生徒からの受講料や模試受験料、およびフランチャイズ加盟校からのロイヤリティ収入です。運営は主にナガセ、東進四国、東進育英舎、早稲田塾、ヒューマレッジが行っています。
■小・中学生部門
中学受験指導の四谷大塚、地域密着型の木村塾、東進スクール等を展開し、主に小学生・中学生を対象とした学習指導を行っています。全国統一小学生テストなども主催しています。
収益は生徒からの授業料や講習料、教材販売収入、テスト受験料などが中心です。運営はナガセ、四谷大塚、四谷大塚出版、四大印刷、東進四国、東進育英舎、ヒューマレッジ等が担っています。
■スポーツ事業部門
イトマンスイミングスクール、イトマンスポーツスクエアとして、水泳教室やフィットネスジムを運営しています。オリンピック選手を輩出する高い指導力が強みです。
主な収益源は、会員からのスクール会費や施設利用料です。運営はイトマンスイミングスクール、イトマンスポーツスクール、イトマンスポーツウェルネスが行っています。
■ビジネススクール部門
東進ビジネススクールを展開し、主に大学生や社会人を対象に、語学、ビジネス基礎力、ITスキル等の教育プログラムを提供しています。
企業向けの研修受託や受講料が主な収益源となります。運営は主にナガセが行っています。
■その他部門
出版事業、オンライン学校事業、こども英語塾、国際事業などを展開しています。東進ブックスの出版や通信教育などを手掛けています。
収益は書籍の販売収入や通信教育の受講料などです。運営はナガセ、ナガセマネージメント、東進スクールなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では第48期をピークに経常利益および当期純利益が減少傾向にあります。当期は売上高が過去最高を更新したものの、経常利益率は低下しており、利益率の改善が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 459億円 | 494億円 | 524億円 | 530億円 | 553億円 |
| 経常利益 | 45億円 | 52億円 | 51億円 | 43億円 | 39億円 |
| 利益率(%) | 9.8% | 10.4% | 9.7% | 8.2% | 7.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 24億円 | 34億円 | 40億円 | 26億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、営業利益の伸び率は売上高の伸びを上回っており、本業の収益性は維持されています。一方で、経常利益以下の利益項目が減少している要因には、持分法による投資損失や減損損失などの計上が影響しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 530億円 | 553億円 |
| 売上総利益 | 143億円 | 144億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.0% | 26.1% |
| 営業利益 | 45億円 | 49億円 |
| 営業利益率(%) | 8.6% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が38億円(構成比39%)、給料及び手当が18億円(同19%)を占めています。売上原価に関しては、人件費や物件費などが主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
高校生部門は生徒数増加により増収増益となり、全体の利益を牽引しました。スポーツ事業部門はM&Aにより大幅な増収となりましたが、人件費増やのれん償却等の影響で減益となりました。小・中学生部門は減収ながら経費削減で増益を確保しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 高校生部門 | 266億円 | 270億円 | 41億円 | 47億円 | 17.3% |
| 小・中学生部門 | 131億円 | 131億円 | 25億円 | 27億円 | 20.4% |
| スポーツ事業部門 | 99億円 | 119億円 | 5億円 | 5億円 | 4.2% |
| ビジネススクール部門 | 21億円 | 20億円 | 8億円 | 5億円 | 24.8% |
| その他 | 13億円 | 14億円 | 3億円 | 3億円 | 24.0% |
| 調整額 | -12億円 | -12億円 | -37億円 | -38億円 | - |
| 連結(合計) | 530億円 | 553億円 | 45億円 | 49億円 | 8.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**健全型**:営業CFがプラスで、投資CFと財務CFがマイナスの状態です。本業で稼いだ現金を、将来への投資や借入金の返済に充てている健全な状態と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 41億円 | 82億円 |
| 投資CF | -20億円 | -78億円 |
| 財務CF | 48億円 | -83億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均(7.2%)を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.6%で市場平均(48.5%)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「独立自尊の社会・世界に貢献する人財の育成」を教育目標に掲げています。教育分野における技術革新を推進し、「心・知・体」を総合的に育成できる新しい教育体系を構築することで社会貢献を果たすことを経営理念としています。
■(2) 企業文化
「教育の機会均等」を掲げ、常に新しい教育体系の確立に取り組む姿勢を持っています。将来の環境変化に対応できるよう組織と経営基盤の強化を図り、成長性・収益性・安定性に優れた企業づくりを目指す方針です。また、人財育成企業として、失敗を恐れず挑戦し、創意工夫や改善に取り組む風土を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
株主重視の立場から収益性の向上に努め、「売上高経常利益率」を重要な経営指標として位置づけています。内部留保の充実と業績に応じた株主への利益還元を行うことで経営責任を果たすことを基本方針としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「独立自尊の社会・世界に貢献する人財の育成」の実現に向け、AIやIoTを活用した新学習形態やコンテンツ開発を推進しています。高校生部門ではAI活用講座の拡充、小・中学生部門では指導力強化、スポーツ事業ではM&Aによる商圏拡大や多世代向けサービスを展開し、グループ全体のシナジー効果を高めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「独立自尊の社会・世界に貢献する人財の育成」という企業理念に共感し、チャレンジ精神に富んだ人財を採用・育成する方針です。性別や国籍等を問わず活躍できる環境を目指し、全社員に対して理念浸透とスキル向上のための研修機会を提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.3歳 | 11.6年 | 8,613,693円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.2% |
| 男性育児休業取得率 | 20.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 64.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 87.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(14.7%)、男性労働者の育児休業取得率(22.2%)、労働者の男女の賃金の差異(81.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 少子化及び大学受験動向の影響
長期的な出生率低下による学齢人口の減少や、大学入試制度の多様化は、教育業界にとって大きな課題です。生徒保護者のニーズ変化や競争激化に対応し、時代の要請に合った教育サービスを提供できなければ、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 業績の3月に対する依存度
主要事業である予備校事業では、生徒募集の最盛期である3月に営業収入や利益が集中する傾向があります。そのため、3月の募集状況や売上計上のタイミングのずれが、通期の業績に大きな影響を与える可能性があります。
■(3) フランチャイズ契約に伴うリスク
全国でフランチャイズ展開を行っていますが、加盟校は独立した法人であるため、同社の指導が及ばない範囲での契約違反や事故等が発生した場合、ブランドイメージの低下や業績への悪影響が生じる可能性があります。
■(4) 労務関連のリスク
多くの拠点や講師・スタッフを抱える事業特性上、労務管理は重要課題です。労働基準法等の遵守に努めていますが、労務関連のコンプライアンス違反等が発生した場合、社会的信用の低下により業績に影響を与える可能性があります。



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