※本記事は、株式会社トーカイの有価証券報告書(第71期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. トーカイってどんな会社?
同社は医療・介護分野のレンタル事業や調剤薬局、環境美化用品の提供などを通じて社会を支える企業です。
■(1) 会社概要
1955年に東海綿業として設立し、1962年に病院用寝具のレンタル事業へ進出しました。1968年にダストコントロール事業を開始し、1975年に現在の社名に変更しています。その後、1995年に調剤薬局事業、1996年には介護用品レンタル事業へと領域を広げました。直近ではシルバー事業を中心に積極的なM&Aを進めています。
同社グループは連結で4,694名、単体で2,007名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社の小野木興産で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には従業員等の組織であるトーカイ共友会が名を連ねており、安定した関係性を築いています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小野木興産 | 18.26% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.36% |
| トーカイ共友会 | 4.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は浅井利明氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浅井 利明 | 代表取締役社長 | 1986年同社入社。病院関連事業本部や寝具・リネンサプライ事業本部の要職を経て、2022年代表取締役専務に就任。2023年より現職。 |
| 小野木 孝二 | 代表取締役会長 | 1977年同社入社。1981年取締役、1991年専務、1994年副社長を経て、1998年より代表取締役社長に就任。2023年より現職。 |
| 松野 英子 | 取締役たんぽぽ薬局代表取締役社長 | 1996年たんぽぽ薬局入社。業務本部などで要職を歴任し、2017年同社代表取締役社長に就任。2019年より同社取締役に就任し、2024年より現職。 |
| 堀 弘和 | 取締役病院関連事業本部統括本部長 | 1996年同社入社。病院関連事業本部の各要職を経て、2025年取締役に就任。2026年より現職。 |
| 浅野 智義 | 取締役(監査等委員) | 1984年同社入社。病院関連事業本部のマネジャーやトーカイフーズ代表取締役を歴任。2022年取締役に就任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、小里孝(元十六銀行専務)、川島健資(元ゴールドマン・サックス証券資本市場部長)、後藤智子(弁護士)、川添衆(元ライオンハイジーン社長)、深田修(元厚生労働省審議官)です。
2. 事業内容
同社グループは、「健康生活サービス」「調剤サービス」「環境サービス」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 健康生活サービス
医療機関や介護施設への寝具・リネン類レンタル、介護用品のレンタル、給食業務の受託、宿泊施設への寝具レンタルなどを幅広く展開しています。
収益は、医療機関や個人利用者等から受け取るレンタル料や給食提供の受託料等からなり、運営は主に同社や同仁社、介護センター花岡などの関連会社が行っています。
■(2) 調剤サービス
基幹病院の門前を中心とした調剤薬局「たんぽぽ薬局」の展開や、関西地区におけるドラッグストアのチェーン運営を行っています。
収益は、患者や保険機関からの調剤報酬や、店舗における商品販売代金等からなり、運営は主にたんぽぽ薬局やmik japanが行っています。
■(3) 環境サービス
「リースキン」ブランドによるマットやモップ等の環境美化用品のレンタル・販売や、医療機関や介護福祉施設を中心とした清掃・管理サービス等を提供しています。
収益は、加盟店や顧客から受け取る商品のレンタル・販売代金や業務受託料からなり、運営は主に同社やティ・アシストなどの関連会社が行っています。
■(4) その他
連結子会社である日本情報マートが事業主体となり、企業向けに経営情報の提供等を行う事業を展開しています。
収益は、顧客企業から受け取る情報提供の対価などからなり、情報提供を通じた企業活動の支援を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、堅調な事業拡大が伺えます。経常利益も直近では過去最高を更新するなど、安定した収益基盤を確立しながら着実な増益トレンドを描いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,235億円 | 1,302億円 | 1,382億円 | 1,495億円 | 1,597億円 |
| 経常利益 | 89億円 | 81億円 | 85億円 | 88億円 | 101億円 |
| 利益率(%) | 7.2% | 6.2% | 6.2% | 5.9% | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 39億円 | 52億円 | 52億円 | 60億円 | 56億円 |
■(2) 損益計算書
主力のレンタル事業や調剤薬局の売上伸長により、売上高が大きく増加しています。また、M&A効果や原価低減の取り組みにより、売上総利益や営業利益も堅調に伸びており、収益力の向上が見られます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,495億円 | 1,597億円 |
| 売上総利益 | 354億円 | 388億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.7% | 24.3% |
| 営業利益 | 82億円 | 94億円 |
| 営業利益率(%) | 5.5% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が129億円(構成比44%)、賞与引当金繰入額が14億円(同5%)を占めています。売上原価では、外注費が133億円(構成比47%)、労務費が63億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収を達成しており、特に主力の健康生活サービスはレンタル売上の好調や提供価格の適正化により大幅な増益を牽引しています。調剤サービスも処方箋単価の上昇等により堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 健康生活サービス | 769億円 | 818億円 | 71億円 | 85億円 | 10.4% |
| 調剤サービス | 580億円 | 629億円 | 24億円 | 24億円 | 3.9% |
| 環境サービス | 144億円 | 148億円 | 12億円 | 12億円 | 8.3% |
| その他 | 2億円 | 2億円 | 0億円 | 0億円 | -14.6% |
| 連結(合計) | 1,495億円 | 1,597億円 | 82億円 | 94億円 | 5.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえるキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 101億円 | 114億円 |
| 投資CF | -114億円 | -42億円 |
| 財務CF | -52億円 | -78億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.0%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人」と「地球」の「清潔と健康」を使命とし、縁ある全ての人々の幸せを実現するという「パーパス」を掲げています。持続可能な社会の実現の一助となるべく、社会課題の解決に貢献する企業グループを目指しています。
■(2) 企業文化
「創業以来の基幹事業であるレンタルビジネスを通じて、廃棄物の削減、循環型社会の実現に貢献します」「グループ全従業員が笑顔で、たくさんのありがとうに囲まれた会社を目指します」というミッションを掲げ、従業員を大切にしながら社会課題の解決に寄与する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「Vision2035」に掲げるありたい姿の実現に向けて、2028年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の連結数値目標を掲げています。
- 売上高1,700億円
- 営業利益95億円
- ROE8%
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益性向上と新たな価値創出に向けた種まき」のフェーズと位置付け、各事業の構造改革や、ヘルスケア領域における新規事業の開発、グループシナジーの創出を推進します。また、人的資本への積極的な投資や、新規事業・M&Aへの成長投資を実施し、企業価値の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員を企業の成長を担う「人財」と位置づけ、主体性とホスピタリティを持つ人材や、次世代につながる新たな価値を生み出す人材の育成に取り組んでいます。心身の健康を保ちながら安心して働ける職場環境を整備し、専門性を高める教育や多様な働き方の推進を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.3歳 | 10.7年 | 5,510,960円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.4% |
| 男性育児休業取得率 | 109.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.3% |
| 男女賃金差異(正規労働者) | 67.3% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 90.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用者管理職比率(50.0%)、1人当たり年間研修時間(24.8時間)、女性管理職候補比率(26.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 社会保障制度の改定等によるリスク
同社は医療・介護業界で事業を展開しているため、介護保険法や診療報酬の改定によるサービス適用範囲や料金の見直しなどが、収益構造や顧客である医療機関等の経営状況を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材確保に関するリスク
高度な衛生管理が求められる現場や調剤薬局において、専門知識を持つ人材の確保が不可欠です。労働力不足により必要な人材が確保できない場合、サービス提供の機会損失や待遇改善に伴う労務費の増加が生じる可能性があります。



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