SCSK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SCSK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する住友商事系列のシステムインテグレーターです。システム開発、ITインフラ構築、BPOなどを展開し、製造・金融・流通など幅広い顧客を持ちます。当期はネットワンシステムズの子会社化や顧客のIT投資拡大により、売上収益・営業利益ともに2桁成長の増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社SCSK の有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. SCSKってどんな会社?


住友商事グループの主要SIerとして、コンサルティングから開発、検証、運用まで一貫したITサービスを提供しています。

(1) 会社概要


1969年に住商コンピューターサービスとして設立され、1989年に東証二部へ上場しました。2005年に住商エレクトロニクスと合併し、2011年にはCSKと合併して現在のSCSKへ商号変更しました。2024年にはネットワーク構築大手のネットワンシステムズを完全子会社化するなど、積極的な事業拡大を続けています。

連結従業員数は20,252名、単体では8,360名が在籍しています。筆頭株主は親会社である住友商事で、発行済株式の半数以上を保有しています。第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も同様に信託銀行の信託口となっています。

氏名 持株比率
住友商事 50.59%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.89%
日本カストディ銀行(信託口) 5.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役執行役員 社長は當麻 隆昭氏が務めています。社外取締役は11名中6名と過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
中島 正樹 取締役会長 1985年住友商事入社。同社専務執行役員などを経て、2025年6月より現職。
當麻 隆昭 代表取締役執行役員 社長 1987年住商コンピューターサービス入社。常務執行役員などを経て、2024年4月より現職。
竹下 隆史 取締役 執行役員 副社長 1989年ネットワンシステムズ入社。同社代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。
加藤 真一 取締役 1987年住友商事入社。同社専務執行役員などを経て、2024年6月より現職。
實野 容道 取締役(監査等委員)(常勤) 1986年住友商事入社。同社理事法務部長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、久保 哲也(元SMBC日興証券代表取締役会長)、平田 貞代(芝浦工業大学大学院教授)、山名 昌衛(元コニカミノルタ社長兼CEO)、三木 泰雄(元ヴイエムウェア代表取締役会長)、松石 秀隆(元リコー取締役)、早稲田 祐美子(弁護士・元第二東京弁護士会会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「産業IT」「金融IT」「ITソリューション」「ITプラットフォーム」「ITマネジメント」および「その他」事業を展開しています。

産業IT

製造、通信、エネルギー、流通、サービス、メディア業界の顧客に対し、基幹系・情報系システムやSCM、CRM等の開発・保守・運用を提供しています。また、自動車業界向けには、車載ソフトウェア(ECU)の開発や自社製ミドルウェアの提供など、モビリティ領域のソリューションをグローバルに展開しています。

主な収益は、顧客企業からのシステム開発費用や保守・運用サービス料です。運営は、同社および株式会社ベリサーブ、SCSK九州、SCSK北海道などの子会社に加え、海外現地法人が行っています。

金融IT

銀行、信託、生損保、証券、リース、クレジット等の金融機関に対し、システム開発から保守・運用までを提供しています。金融業務に関する深い知見を活かし、顧客のビジネス戦略実現や効率的な経営を支援する高度な金融システムの構築を行っています。

主な収益は、金融機関からのシステム構築対価や運用保守料です。運営は主に同社が担っており、アンチマネーロンダリング対策支援を行うSCSK RegTech Edgeなどの子会社も関与しています。

ITソリューション

自社開発ERP「PROACTIVE」やOracle等のERP導入・開発・保守運用支援(AMOサービス)、ECサービス、コンタクトセンターサービスなどを提供しています。ITと人手による支援を組み合わせたBPOサービスも展開しています。

主な収益は、ERPパッケージのライセンス料や導入支援費用、BPOサービスの受託料などです。運営は同社のほか、SCSKサービスウェアやダイアモンドヘッドなどの子会社が行っています。

ITプラットフォーム

ITインフラ分野およびCAD・CAE等のものづくり分野において、先端技術を活用した製品・サービスを提供しています。ネットワークやセキュリティ等のインフラ構築から、製造業向けの設計・解析ソリューションまで幅広くサポートしています。

主な収益は、ハードウェア・ソフトウェアの販売代金やインフラ構築・保守サービス料です。運営は同社に加え、2024年に子会社化したネットワンシステムズや、株式会社アライドエンジニアリングなどが担っています。

ITマネジメント

データセンター「netXDC」を核としたアウトソーシングサービスを提供しています。運用コスト削減やインフラ統合、ガバナンス強化などを支援するほか、各種クラウドインフラの提供やオンサイトでのマネジメントサービスも行っています。

主な収益は、データセンター利用料やシステム運用のアウトソーシングサービス料です。運営は同社およびSCSKシステムマネジメント、SCSK NECデータセンターマネジメントなどの子会社が行っています。

その他

上記セグメントに含まれない事業として、幅広い業種向けのソフトウェア開発、システム運用管理、機器販売、コンサルティングなどを行っています。地方拠点を活かしたリモート開発(ニアショア開発)もこの区分に含まれます。

主な収益は、システム開発や運用サービスの対価、機器販売代金などです。運営はSCSK MinoriソリューションズやSCSKニアショアシステムズなどの子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は毎期順調に増加しており、特に最終年度は大幅な増収を達成しています。利益面でも税引前利益、当期利益ともに増加傾向にあり、安定した利益率を維持しながら規模を拡大させています。M&Aなどの効果も含め、持続的な成長軌道にあることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 3,969億円 4,142億円 4,459億円 4,803億円 5,961億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 466億円 483億円 533億円 575億円 655億円
利益率(%) 11.7% 11.7% 12.0% 12.0% 11.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 334億円 335億円 373億円 405億円 450億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上収益は約24%増加し、それに伴い売上総利益も約25%増加しています。営業利益も約16%増加しており、事業規模の拡大が利益成長に寄与しています。ただし、売上総利益率と営業利益率は前期と比較して若干低下または横ばいとなっており、コストコントロールや利益率の維持が課題となりそうです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,803億円 5,961億円
売上総利益 1,280億円 1,595億円
売上総利益率(%) 26.6% 26.8%
営業利益 570億円 661億円
営業利益率(%) 11.9% 11.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が452億円(構成比49%)、減価償却費及び償却費が87億円(同10%)を占めています。売上原価においては、外注費が1,745億円(構成比40%)、物品費が1,186億円(同27%)、従業員給付費用が1,130億円(同26%)となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりましたが、特にITプラットフォーム事業はネットワンシステムズの連結効果により売上が倍増し、利益も大幅に増加しました。産業ITやITマネジメントも堅調に推移し増益に貢献しています。一方で、ITソリューションは特定顧客向け案件の終了等の影響で減益となり、赤字を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
産業IT 1,763億円 1,957億円 243億円 290億円 14.8%
金融IT 635億円 652億円 73億円 89億円 13.7%
ITソリューション 599億円 589億円 33億円 -19億円 -3.3%
ITプラットフォーム 886億円 1,758億円 134億円 217億円 12.4%
ITマネジメント 647億円 718億円 94億円 113億円 15.7%
その他 270億円 288億円 19億円 19億円 6.7%
調整額 3億円 0億円 -27億円 -48億円 -
連結(合計) 4,803億円 5,961億円 570億円 661億円 11.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で稼いだ資金に加え、財務活動でも資金調達を行い、それらを大規模な投資に充てる「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。特に当期はネットワンシステムズの子会社化に伴い投資CFのマイナス幅が大きく拡大しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 679億円 680億円
投資CF -199億円 -2,755億円
財務CF -259億円 1,679億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「夢ある未来を、共に創る」を経営理念として掲げています。お客様や社会が抱える課題を解決し、新たな価値を創造することで、共に成長し、持続可能な未来を築くことを目指しています。2030年の目指す姿として「共創ITカンパニー」を掲げ、社会課題解決を通じた持続的な事業成長を追求しています。

(2) 企業文化


同社は「人を大切にします。」「確かな技術に基づく、最高のサービスを提供します。」「世界中のお客様と、信頼で結ばれたパートナーとなります。」という「3つの約束」を行動指針としています。また、サステナビリティ経営を実践するため、社会課題解決や環境貢献、多様な人材の活躍など7つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、社員一人ひとりがこれらを共有し実践する「共感経営」を推進しています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた「グランドデザイン2030」において「売上高1兆円への挑戦」を掲げ、その実現に向けた第二期となる中期経営計画(FY2023-FY2025)を推進しています。

* 2026年3月期目標:営業利益650億円
* 2026年3月期目標:営業利益率12.5%以上
* 2026年3月期目標:ROE14%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「事業シフトを断行」を基本戦略とし、「顧客市場」「提供価値」「事業モデル」の3つの軸で高付加価値・高生産性モデルへの転換を進めています。また、成長市場での事業リードや社会との共創による次世代デジタル事業の創出にも注力しています。これらを支える基盤として、技術ドリブン推進、人材価値最大化、共感経営を強化し、3年間で1,000億円規模の成長投資を実行しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材価値最大化」を基本方針とし、社員の成長を会社の成長ドライバーと位置づけています。事業戦略と連動した人材ポートフォリオを策定し、高度デジタル人材や専門性の高いエンジニアの育成・獲得を強化しています。また、多様な人材が活躍できるD&Iの実践や、働きがいと健康を高めるWell-Being経営を推進し、処遇・報酬制度の整備を通じて社員の市場価値最大化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 17.2年 7,877,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.9%
男性育児休業取得率 93.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.4%
男女賃金差異(正規雇用) 83.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修時間(69時間)、研修費用(28.3万円)、エンゲージメント(89.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境リスク

ITサービス市場において、クラウド化やDX、AI技術の進展などにより開発・利用環境が変化しています。顧客企業のIT投資意欲が経済環境等の影響で減退した場合や、価格競争が激化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はサステナビリティ経営を掲げ、高付加価値分野へのシフト等で対応しています。

(2) システム開発リスク

システム開発において、計画通りの品質確保や納期遵守が困難になり、コストが増大する可能性があります。また、業務委託先の生産性や品質が維持できないリスクもあります。同社は専門部署による見積り段階でのチェックや、全社標準に基づく進捗・品質管理、委託先の審査等を徹底し、リスク低減に努めています。

(3) 情報セキュリティリスク

顧客の機密情報を取り扱う中で、サイバー攻撃や人為的過失により情報漏えいが発生する可能性があります。これにより損害賠償請求や信頼喪失を招く恐れがあります。同社はセキュリティシステムの導入、教育の徹底、委託先の管理強化、専用保険への加入などの対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。