NCS&A 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NCS&A 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NCS&Aは東京証券取引所スタンダード市場に上場するシステムインテグレーターです。システムの構築から保守・運用にわたるITサービスをワンストップで提供しています。直近の業績は売上高225億円、経常利益29億円と増収増益を達成しており、自社製品を用いたソリューション事業が業績を牽引しています。


※本記事は、NCS&A株式会社の有価証券報告書(第60期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NCS&Aってどんな会社?


システムの構築から保守・運用にわたるITサービスをワンストップで提供する企業です。

(1) 会社概要


NCS&Aは1966年に日本コンピューターとして設立されました。1989年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2013年に東京証券取引所市場第二部へ上場しています。2014年にアクセスと合併し、現在のNCS&Aへ商号を変更しました。近年はAI関連の取扱いなど新たな技術にも挑戦しています。

同社グループは連結で1,228名、単体で946名の従業員を擁しています。筆頭株主はZENで、第2位は個人の丸山幸男氏、第3位は金融機関である明治安田生命保険相互会社となっています。

氏名 持株比率
ZEN 12.25%
丸山幸男 6.27%
明治安田生命保険相互会社 3.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役会長は松木謙吾氏、代表取締役社長は辻隆博氏が務めており、取締役5名中3名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
松木謙吾 代表取締役会長 1993年日本アイ・ビー・エム退社後、1994年同社入社。2005年代表取締役社長などを経て、2018年より現職。
辻隆博 代表取締役社長 1983年同社入社。ソリューション事業本部営業事業部長、執行役員第二事業本部長などを経て、2018年より現職。


社外取締役は、團博己(元NECネクサソリューションズ代表取締役執行役員社長)、後藤祐子(ジャパンバレーボールリーグ経営アドバイザー)、榮藤稔(大阪大学先導的学際研究機構特任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、システム開発や保守・運用までを網羅するITサービス事業を展開しています。

(1) システム開発


顧客からシステムの設計およびソフトウエアの開発を受託しています。また、パッケージソフトウエアのカスタマイズを行い、ソリューションを中心とした販売を展開し、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。

運営は主に同社が行っており、開発作業の一部については、連結子会社のエブリ、NCSサポート&サービス、恩愛軟件(上海)有限公司に外注することで、専門性の活用と効率的な開発体制を構築しています。

(2) サービスおよびシステム機器等販売


コンピュータ機器のハードウエア保守サービスや、企業のコンピュータシステムに対する全般的な支援サービスを中心に展開しています。さらに、コンピュータ機器や周辺機器、各種パッケージソフトウエアの販売も行っています。

サービス業務の中のハードウエア保守およびシステムサポートについては、その業務の一部を連結子会社のエブリに外注しています。自社製品や外部製品を組み合わせたワンストップサービスによって継続的な収益を上げています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は概ね200億円前後で堅調に推移し、直近では225億円まで拡大しています。経常利益も右肩上がりで成長を続け、利益率は6.9%から12.8%へと大幅に改善しました。自社製品を用いたソリューションなど高収益案件への注力が結果に結びついています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 205億円 194億円 189億円 205億円 225億円
経常利益 14億円 16億円 18億円 21億円 29億円
利益率(%) 6.9% 8.3% 9.3% 10.3% 12.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 13億円 15億円 21億円 21億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約20億円増加し225億円となりました。売上総利益率も30.5%から31.9%へと向上しており、営業利益は27億円まで拡大しています。主力ソリューションへの投資とプロジェクトの品質管理強化による収益性の改善が明確に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 205億円 225億円
売上総利益 62億円 72億円
売上総利益率(%) 30.5% 31.9%
営業利益 20億円 27億円
営業利益率(%) 9.7% 12.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が15億円(構成比34%)、賞与引当金繰入額が5億円(同11%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスの「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良な状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 22億円 30億円
投資CF -4億円 -6億円
財務CF -5億円 -25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.7%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も64.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「コンピューターは社会に奉仕する」という創業の精神のもと、「私たちは、確かな技術で新たな価値を創造し、社会に貢献します」を経営理念に掲げています。企業や地域社会が直面する課題に対してITソリューションを提供することで、社会の持続可能な発展への寄与を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「夢と未来にむかって、あたらしさへ挑戦します」「お客様の心の声に、しなやかな発想で応えます」「的確な判断と責任のもと、すばやく行動します」を行動指針としています。「Grow on with Clients, now and forever」という企業メッセージのもと、新たな技術に果敢に挑戦し、顧客とともに成長し続ける組織風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は2024年度から2026年度までの3カ年を対象とする中期経営計画を策定しています。最終年度である2027年3月期の数値目標として、以下の数値を掲げて経営の効率化や株主資本の有効活用を図っています。

・連結売上高:205億円
・連結営業利益率:12.8%
・ROE(自己資本利益率):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「稼ぐ力の強化」「人材への積極投資」「企業価値の向上」を基本方針に成長戦略を推進しています。レガシーシステム刷新の需要に応えるべく、自社ソリューションへの積極的な投資やマイグレーション事業の強化を図り、持続的な成長を目指しています。また、生成AIなどの新しい技術を活用した新規事業の創出にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な価値観を持つ人材が能力を最大限に発揮できる企業風土を目指しています。「全体を俯瞰して考えられる人」「自ら論理的に考え行動できる人」「自己成長のエンジンを持つ人」を求める人材像とし、職場内実践教育(OJT)や階層別教育を通じて人材育成に努めています。また、テレワークと出社が共存するハイブリッド勤務の推進など柔軟な働き方にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.1歳 16.1年 7,443,411円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 52.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得日数(16.6日)、1月当たりの平均残業時間(11.4時間)、採用10年前後の継続雇用割合(50.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定取引先への依存


同社は日本電気の販売特約店としてシステムや機器を販売しており、同社グループからの受託案件も主要な収益源となっています。日本電気グループの事業方針が大幅に変更された場合、同社の業績に影響が及ぶ可能性があります。これを回避するため、顧客との直接取引の拡大等に努めています。

(2) 不採算プロジェクトの発生


システム開発において、仕様追加や開発方式の変更等で作業工数が増大し、不採算となるプロジェクトが発生するリスクがあります。同社はプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)を設置し、進捗や重要度を監査することで、不採算プロジェクトの発生防止に取り組んでいます。

(3) 最新技術への対応と技術革新


AIなどの最新技術への対応が遅れた場合、市場競争力が低下し受注を確保できなくなるリスクがあります。同社は新しい技術スキルを獲得するための社内スタートアップ制度を導入し、生成AIの機能を自社ソリューションへ組み込むなど、技術革新に積極的に挑戦しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。