NCS&A 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NCS&A 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、システム開発やITインフラ構築、保守・運用などのサービスをワンストップで提供しています。直近の決算では、自社製品によるソリューション事業の拡大や高収益案件への注力が寄与し、売上高・経常利益ともに前期を上回る増収増益を達成しました。


※本記事は、NCS&A株式会社 の有価証券報告書(第59期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NCS&Aってどんな会社?


NCS&Aは、システム開発から運用・保守までを一貫して提供する独立系のITサービス企業です。

(1) 会社概要


同社は1966年に日本コンピューターとして大阪で設立されました。1989年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2013年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2014年にアクセスと合併し、現在の商号であるNCS&Aに変更しています。2022年には東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結1,219名、単体933名です。筆頭株主は株式会社ZENで、第2位は保険事業を行う明治安田生命保険相互会社、第3位は個人株主の丸山幸男氏です。

氏名 持株比率
株式会社ZEN 11.44%
明治安田生命保険相互会社 6.56%
丸山幸男 5.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長は辻隆博氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
松木謙吾 代表取締役会長 日本アイ・ビー・エムを経て、1994年に入社。事業企画推進本部長、常務取締役、代表取締役専務などを歴任。2005年に代表取締役社長に就任し、2018年4月より現職。
辻隆博 代表取締役社長 1983年に入社。ソリューション事業本部営業事業部長、執行役員第二事業本部長、取締役執行役員常務エンタープライズ事業本部管掌などを歴任し、2018年4月より現職。


社外取締役は、團博己(元日本電気代表取締役執行役員社長)、後藤祐子(元株式会社三菱銀行入行)、榮藤稔(大阪大学先導的学際研究機構教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システム開発」「サービス」「システム機器等販売」事業を展開しています。

(1) システム開発


顧客からシステムの設計およびソフトウェアの開発を受託し、開発を行うとともに、パッケージソフトウェアのカスタマイズを行い、ソリューションを中心とした販売を行っています。

収益は、顧客からの開発受託費やソリューション販売代金などから得ています。運営は主に同社が行っていますが、開発作業の一部については連結子会社であるエブリ、NCSサポート&サービス、恩愛軟件(上海)有限公司に外注しています。

(2) サービス


コンピュータ機器の保守を行うハードウェア保守サービス、および企業のコンピュータシステムに対する全般的な支援サービスを行うシステムサポートサービスを中心に業務を行っています。

収益は、顧客からの保守サービス料やシステムサポート料などから得ています。運営は主に同社が行っていますが、業務の一部については連結子会社であるエブリに外注しています。

(3) システム機器等販売


コンピュータ機器および周辺機器、自社開発パッケージソフトウェア、他社開発パッケージソフトウェアの販売を行っています。

収益は、顧客への機器やソフトウェアの販売代金から得ています。運営は同社グループが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね200億円前後で推移していましたが、直近では増加傾向にあります。利益面では、経常利益および当期利益ともに増加傾向が続いており、利益率は着実に向上しています。特に直近の当期利益は大幅に増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 198億円 205億円 194億円 189億円 205億円
経常利益 10億円 14億円 16億円 18億円 21億円
利益率(%) 4.9% 6.9% 8.3% 9.3% 10.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 12億円 12億円 15億円 21億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を分析すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率も改善傾向にあります。営業利益および営業利益率についても、前期と比較して向上しており、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 189億円 205億円
売上総利益 56億円 62億円
売上総利益率(%) 29.8% 30.5%
営業利益 16億円 20億円
営業利益率(%) 8.7% 9.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が17億円(構成比39%)、その他が8億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、売上分類別に見ると、「自社製品によるソリューション」が前期比で大きく増加し、成長を牽引しています。「受託開発」や「機器・パッケージ」も増加しました。一方、「システムインテグレーション」は横ばいで推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
自社製品によるソリューション 44億円 54億円
システムインテグレーション 85億円 84億円
機器・パッケージ 18億円 21億円
受託開発 43億円 45億円
連結(合計) 189億円 205億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

NCS&Aは、堅調な営業活動により資金を創出し、事業投資と株主還元を両立させています。

営業活動では、本業の利益や仕入債務の増加などが主な収入要因となり、資金を創出しました。投資活動では、将来の成長に向けた無形固定資産の取得に資金を使用しました。財務活動では、株主への配当金支払いなどに資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 15億円 22億円
投資CF -3億円 -4億円
財務CF -5億円 -5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創業の精神である「コンピューターは社会に奉仕する」のもと、ITを通じて新しい価値を創造することで社会に貢献することを経営理念としています。「確かな技術で新たな価値を創造し、社会に貢献します」という理念を掲げ、顧客とともに成長し続けることで、企業価値の一層の向上に努めています。

(2) 企業文化


同社は行動指針として、「夢と未来にむかって、あたらしさへ挑戦します」「お客様の心の声に、しなやかな発想で応えます」「的確な判断と責任のもと、すばやく行動します」を宣言しています。また、「Grow on with Clients, now and forever」を企業メッセージとし、新たな技術への果敢な挑戦としなやかな発想を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2024年度から2026年度までの中期経営計画において、収益基盤の安定維持とサービス事業への転換、技術力向上と主力ソリューション強化の両立を掲げています。

* 2027年3月期 連結売上高230億円
* 連結営業利益率12%
* 連結配当性向45%以上
* ROE 10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の達成に向け、事業、人材、会社の3つの観点から基本方針を定めています。事業面では、自主ビジネスの強化と主力ソリューションへの投資拡大による収益性向上、新ビジネスの創出を推進します。また、自社ソリューションの機能強化や生成AIなどの新技術を活用した新規事業の創出、協業ビジネスにも取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「稼ぐ力の強化」「人材への積極投資」を基本方針とし、社員が生き生きと活躍できる環境構築と人材への積極的な投資を進めています。求める人材像として、全体を俯瞰し目標達成に必要なことを考えられる人、自ら論理的に考え行動できる人、変化と革新に挑戦し続ける人などを掲げています。OJTを中心とした組織的な人材育成や、多様な人材が個性を生かし活躍できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.5歳 16.4年 7,080,648円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.3%
男女賃金差異(正規雇用) 79.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 90.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得日数(17.2日)、1月当たりの平均残業時間(10.5時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢変化


IT関連投資は増加傾向にありますが、国内外の情勢変化や物価高騰の影響を受ける可能性があります。顧客企業の投資抑制が急速に進んだ場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、自社ソリューションへの投資や新規事業創出により、景気変動の影響を受けにくい体制を目指しています。

(2) 不採算プロジェクトの発生


システム開発において、仕様追加や工数増大により不採算プロジェクトが発生したり、納入後の不具合対応費用が発生したりする可能性があります。また、委託先の予期せぬ事態によるコスト増や納期遅延のリスクもあります。品質マネジメントシステムの構築やPMOによる監査、委託先の管理強化などで対策を講じています。

(3) 特定取引先への依存


日本電気株式会社(NEC)の販売特約店であり、NECグループからの受託開発やSIサービスの売上は事業の大きな柱となっています。そのため、NECグループの方針変更が業績に影響を与える可能性があります。協業関係を維持・拡大しつつ、顧客企業との直接取引拡大にも努めています。

(4) コンプライアンスに関するリスク


ハラスメントや法令違反が発生した場合、取引停止や社会的信用の失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス基本方針の制定や教育、内部通報窓口の設置などを通じて、コンプライアンス重視の企業風土の醸成に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。